始まり
この世界はある法則によって成り立っている。
ある者は姉たちに苛められながらも舞踏会に参加し、後に王子と結婚した。
ある者はこの世で一番美しいと言われ、嫉妬した王妃によって殺されそうになるが、王子のキスによって命を吹き返し、幸せな生活を送るようになった。
ある者はおばあさんのお見舞いへ行き、悪いオオカミに騙されて食べられてしまうが、駆けつけた猟師によって助けられた。
このように人によって異なる人生を送っている。しかし、これは偶然ではない。
すでに決められた必然の世界なのだ。
この世界は物語と呼ばれる、すでに創られた世界である。そして、この世界を創った者――作者が存在する。
作者は各物語に一人ずつ存在する。彼らは自由に物語の結末を決めることが出来る。
幸せな結末、不幸な結末。はたまた、どちらともいえない結末。それを決めるのも、すべて作者だ。
そして、その世界に存在する者は作者の物語通りに動かなければならない。
いや、正確には動くことしか出来ない。
その世界に存在する者は物語の存在を知らない。故に物語通りに動いていることにすら気づいていない。
自分の運命が決まっているとも知らずに……
さらに、この世界の面白いところは、終わりがない永遠の世界ということだ。
終わりがないというのは語弊がある。物語の終わりは存在する。ただし、物語自体が終わるわけではない。
物語が終わりを迎える。するとどうなるか? 新たな物語が始まるのである。
内容が変わるわけではない。新たな物語として終わりを迎えた物語が再び始まりに戻るのだ。
終わりを迎えたら再び始まりへ……これが物語自体が終わらない原理である。
ふと疑問に思ったことがあるだろう。もし物語が終わりを迎えて始まりへと戻ったとするのならば、物語の人物たちはどうなるのかと。
物語を終えた時点で存在していた人物たちは全員消され、新しく人物を作り直すのか?
または、記憶を消され、再び同じ物語の世界を歩まされるのか?
それはよくわかっていない。もしかすると、物語によって異なるのかもしれない。もしかすると、どちらでもないのかもしれない。
物語――原理がわからないことが多く存在する。だが、一つだけ共通していえることがある。
作者が存在して、作者が創った世界で、作者の望み通りに動く登場人物。例外はない。
すべての物語がこの法則を外れたことがない。
そして、作者が創造した物語はこう呼ばれる――
――FairyTalesと――
新しく投稿しました。毎週日曜日と木曜日に投稿したいと思いますので、よろしくお願いします。