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その世界を見るために  作者: 坂崎高々
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伍話。四国からの来訪者1

深夜。時刻は丑三つ時を少し過ぎた頃合いだろうか。コンは空からぼおっと、直の家の屋根から街並みを眺めていた。

直の家は悪魔払いの中でも旧家の出であり、大阪、兵庫、奈良の悪魔払いの統括を行う家であり、平安の頃から続く由緒正しい家だ。

そのため、帝塚山の一等地に広大な土地を構え、昔情緒を感じさせる瓦屋根の木造住宅だ。

家の内装も畳の割合が多く、ため池なども完備されており、さながら貴族の寝殿造を彷彿とさせるような造りとなっている。

コンはもうこんな時間だというのに明かりのついている家がたくさんあるのを見て、

「平安の時は貴族が夜更かしをしてたが、今は平民がやるのか………。ふっ、長い時が経っても、人は変わらないな。儚いと……知っていながら」


そう言って、コンは姿を見せなくなった。


「兄様、起きてくださいまし」

朝の七時を過ぎて、二つ下の中学三年生の従姉妹、兎がエプロンを着けながら起こしに来た。

「おい、兎。いつも起こしてくれるのは結構なんだが、今日は休日だぜ、ちょっとは休ましてくれよ」

俺はあくびをしながらそう言うと、兎は、「来客が来てるから、当主候補としてはでなければダメですよ」と言う。

兎は鼻唄を歌いながら、朝食を作りにいく。

ショートボブで、胸は控え目ながらも手足が長く、スレンダーであり、幼さを残した整った顔立ちは、親族の贔屓目なしでも、美少女と呼ぶに相応しい部類だろう。

そして、彼女は悪魔払いとしても優秀で、既にフェイズⅢを一度撃破している。

しかし、彼女は樺八坂家の当主候補になることを拒否し、今は俺の陣営に就いている。という形になっている。

しかし、当の俺はと言うと……大した戦果を挙げることもできず、俺を含めて三人いる次期当主候補のなかで3位、つまり一番見込みがない。

そのため、兎とその家族を除いて、一族に俺の味方をしてくれる奴はいない。

俺は自分の手を見て、ため息をつく。

「なんか、申し訳ないな」

「まぁ、落ち着けや。直」

俺の目の前に俺の一人言をニヤニヤしながらキセルを吸い、聞いている狸がいた。

俺はこいつを知っている。なにせ、こいつにさんざん騙されてきた経験があるからだ。

「おい、何のようだよ。て言うか用も無いのに四国から出てくんなよ、ゲン。」

狸、ゲンはカッカッカと笑う。そして、

「俺は確かによく暇潰しに大阪と神戸に来てるが、今日はちょっと違うんだよ」

ゲンは普段はコン同様ふざけているが、今回はその印象が見受けられず、それだけで、緊張をしてしまう。

「ほらよ、これが蓮池はすいけ からの手紙だ」

俺はそう言われて、より緊張し出す。なにせ、蓮池だ。

蓮池はすいけ 家は樺八坂家同様、悪魔払いを統括していて、南海道の悪魔払いを統括している。

そして、地理的に中四国、近畿(この場合では樺八坂の管轄地は)は隣接しており、中国地方の悪魔払いを統括する 檜木ひのきぎ家と共に仲がよいのだが、その蓮池が

俺に何のようだと思い、見てみると、出てきたのはエロ本だった。

俺はすぐさまゲンの頭を掴むと、尋問を始めた。

「おい、これはなんだ」

俺は怒気を膨らませて言うと、ゲンは笑いながら、 喋り始める。

「カッカッカ、これは俺が神戸で買ってきたエロほ………痛い痛い!」

俺は思いきり頭を握った。

「悪かったよ、んで、これが手紙だ」

きれいに折り畳まれてある手紙を直に渡し、ゲンはキセルを吸い始める。


やぁ、久し振りだね、直くん。ウチのゲンが粗相をやらかしていないだろうか、まぁ、許してやってくれるとありがたい。

そして、君に大切な話をしなければならない。君の今の当主候補争いの現状は酷いものだ。このままでは、簡単に争いに破れてしまうだろう。私としては、他の候補者は我らとのかかわり合いがなく、西日本の絆を疎かにされるなら、君のスポンサーになった方がいいと思ってね。ちなみに、これは檜木の孝弘も同じ意見だ。では、いい答えを期待しさているよ。


「なあ、これ本当なのか」

すると、ゲンは面倒くさそうにああそうだ。と答える。

「それにだ、俺はわざわざここまで足を運ぶのはめんどくさくてあんまりしたくねぇんだよ」

「何言ってんだ、たまに化けて神戸のキャバクラで遊びまくってるお前が言うか。普通」

すると、ゲンは誤魔化すようにあくびをする。

「それにしても、本当なのか?」

俺が誰に質問するでもなく、呟くと、本当よ。と声がした。

長くしなやかな蒼く、かつ輝くような髪。惜しげもない大きな胸に整った顔立ちに、自信満々な表情。そして、小柄な体格には合わない大きなギターケース。

俺の幼馴染でもある彼女は蓮池彩加。

蓮池家の当主の一人娘にして、次期当主のものだった。

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