壱話、樺八坂


前のエピソード――零話。そうして物語が始まる
壱話、樺八坂
「ちょっと待ってくれよ。なんで今日に限ってこんなに悪魔が出没するんだよ!絶対理不尽だ。こんなのよぉ、」
一人の少年が文句を言いながら制服で大阪駅を走っている。手にはアタッシュケースを持っている。
時刻は既に夕刻を過ぎているためか、サラリーマンで辺りはごった返していて、通りづらい。そんな中、白くて可愛らしい狐が現れる。
「だらしがないなぁ、直は、こんなのちゃちゃっと片付ければいいのに」
退屈そうに少年、直に向かって狐が話す。すると、直はこめかみをたてて、
「そもそもよ、コン。お前が俺を目的地まで連れていってくれたら良かったのに、何が眠いからだよ。」
直が不貞腐れたかおでそう聞くので、狐、コンはヤレヤレと言わんばかりの顔をして、両手を軽く振る。
「仕方ないじゃないか、お前が女だったら僕も快く連れていってあげれるけど、お前が男だから、僕的にはとてもとても不快で堪らないんだよ、それぐらいの理由でもまともと思いやがれ」
すると、直はため息をつく。
「本当に、お前って使い魔とは思えないぐらいの命令の聞かなさだよな」
と、悪態をつくと、コンは自信満々に頷く。
「それが僕の美点だと思ってるよ」
そう言いながら走った。
目的地は残り百メートルを切っただろうか、それぐらいの位置でコンが突然に爆弾発言を繰り出す。
「なぁ、直。今回の仕事をミスってお前が死にかけの大怪我を追ったら直してやる変わりにお前のエロ本を僕にくれよ」
「お前なぁ、使い魔のくせに主人を助けるのに物を要求するって……………おい!お前。なんでその事を知ってんだよ!」
「そんなの………主人のことを思って、主人がナニやってようが、僕は黙ってやる。だからそのエロ本を寄越せ」
全く答えになっていない強引な答えでも、思春期の男子にとってそれは死活問題のため、直に焦りの色が見えだす。
「チクショウ‼使い魔に脅迫されるなんてあんのかよ、ていうよりも、第一にお前は使い魔として命とか壮大な代物の駆け引きじゃなくてエロ本で良いのかよ?」
するとコンは当然と言うような顔で頷く。
「当たり前じゃん、それに、命って言ったって僕はこれでも神獣なんだ。勝手に寿命が延ばされるんだから別に構わないし、なら、自分の欲望に忠実な方が面白いからな。それに、お前だって悪魔払いを生業にしてるんだから、手持ちのエロ本一つで怪我を無かったことにできるのはすごい得してると思うぞ」
そう言ってコンはあくびをする。
確かにコンの言っていることは事実だ。
この世界には悪魔払いと呼ばれる者達が存在する。彼らは人の憎しみ、悲しみ、嫉妬といったそれら負の感情によって作られる悪魔と呼ばれるものを倒す者達のことを指す。
悪魔の危険度はフェイズⅠからフェイズⅥまであり、悪魔が誕生してから時間の経過と共に危険度が上がっていく。
そのため、悪魔の早めの駆除を求められるが、コンの場合は少し違うが危険度が上がっるにつれ知識が増えて、人間との共和を求める悪魔も出て来て、それらを半魔と呼ばれる。
ちなみに、コンのように人々の信仰によって成り立っているものを神獣と呼ぶ。
神獣のみが人々の信仰によって、その長い命を使い、自身の傷を治したり、他者の傷を治したりすることができる。
そして、悪魔が出没したとされる付近に着いた。
今回は公園であって意外と見晴らしが良かった。悪魔の出没のため、近隣の一般人は
「そろそろだよ、直。とっとと仕事を終わらせて、僕にコロッケの一つぐらい後で奢ってくれよ」
「それはまともに働いた奴の言うことであって、人がひたすら戦ってんのにそれを尻目にあくびしながら可愛い女の子探ししているお前は無理だ」
「なんだよケチ、けど、今回の敵は、少し面倒くさいと思うけど、まぁ、ガンバ」
見ると、前には赤い髪の男が一人青色の二メートル半はあるだろう大きさの悪魔を刺し殺していた。
口元はつり上がり、目はキラキラしており、まるで悪魔を殺すのが楽しいと言わんばかりの表情だ。
「始めまして、樺八坂直君。僕はブリキと言うんだ。君に会いたくて会いたくて、このナイフがウズウズしていたところなんだよ。さぁ、君の『世界』で僕をグチョグチョに、ボキボキに、メチャメチャに…………潰してくれよ」
直は薄気味悪く感じて一歩下がる。まだこのブリキと言う男が敵か味方かは分からないが、危険な人物という印象だけは持てた。
「まず質問なんだが、その、『世界』ってのは何なんだよ?」
直が質問すると、ブリキは驚き、そして声を荒げた。
「なんだと‼まだ覚醒してないのか!」
「だから、どういう……」
すると、ナイフを舐める。
「なら、仕方ない。ここで覚醒させるだけだ」
すると、豆粒ぐらいの大きさのものをポケットから取り出した。
「解放」
そう言うと、子供や大人、合計で七人が出てきた。
「お前……それはなんだ」
直は怒りの籠った声で重々しく尋ねると、ブリキはあっけらかんとしたように答える。
「これは、君を殺すための贄だよ。情報によると、君は見ず知らずの人でも助けようとするらしいからね、なら、助けてみなよ。そのアタッシュケースにある銃でさぁ」
直はアタッシュケースから銃を二丁とも取り出す。
「ヒヒヒヒヒ、やっぱり君は、最高だ。聞いていた通り、非常に見所がある。だから……」
そう言い、ブリキは近くにいた男の喉にナイフを指す。
この世のものとは思えない、断末魔は、正に地獄と言うに値するものだろう。
口元を抑え、迫り来る強烈な吐き気に耐えようとする者、気絶する者、残りの六人も、心に大きな傷を負った。
「おまぁえぇぇぇぇ!」
怒りを露にした直は手にしていた拳銃でブリキの腕を狙う。
それは見事に成功したものの、ブリキは全くの無傷だった。
「腕はいいね、けど、計算の違いだ。残念だよ」
そう言って、ブリキは直が気づかないよう、素早く間合いを詰めて、蹴りを入れる。直は嗚咽をもらし、少し飛んで倒れた。
「期待していたのに、これとは、非常に残念で堪らないですよ。」
そう言ってブリキはナイフで直を刺そうとした。
しかし、ブリキは直を殺せなかった。なぜならブリキは寸前に吹き飛ばされたからだ。白い、大きな九つの尾を持っている狐に…………
「やりますねぇ、樺八坂君の使い魔のコンさん。」
すると、怒りの形相で九尾となったコンは睨み付ける。
「俺の主人なんでね、こうもやってくれると、腹がたつよ」
そう言うと、少しの間沈黙が流れ、両者は一斉に殺意を全開にして、駆けた。