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俺は幸せをこの手で掴み取る  作者: シラス
一章イシュタージュへようこそ
5/30

4話「覚悟」

本編4話です。




「すまない、少し冷静さを欠いた」

「いえ…」


 あれから数分の沈黙の後、騎士が唐突に謝った。


「ゴホンッ、まぁ今後は慢心せずにまずは経験を積むことだ。先ほど行った事も経験しなければどうにもならないからな」

「はい…」


 そうは言われたがこれからどうすればいいか…。全くわからない…わけでもないか。目の前にはかなりの手練れの騎士がいる。一か八か言ってみるか?

 言ってみよう。


「あの、お願いがあります」

「うん?どうした突然」


 突然、お願いといわれ少し驚いてる感じになる。でももう引き下がりたくはない。


「あの、俺に稽古を付けてください!」

「なぜ?」


 騎士は俺を試すような雰囲気で聞いてきた。そして、その問いに対しての俺思いをぶつける。


「俺は強くなりたい、強くなって今度こそ自分の大切な者を守りたい。でも今のままの俺じゃとても強くなる事が難しい。俺は俺自身の覚悟も信念も技術も経験も何もかもが足りてなかった!

だから今は俺に足りないものを身に付けたい。そのために俺に稽古を付けてください、お願いします!」


 今度こそ、俺は強くなりたい、ゲームでのステータスの高さじゃない、俺自身の心を、体を全てを強くしたい。そして今度こそ大切な人をこの手で守りたい!


「2つ、聞かせてもらおう。お前の言う信念とはなんだ」

「この手で今度こそ大切な人を守りたいって気持ちだ」

「そうか、次にお前の言う覚悟となんだ」

「大切な人を守るためならどんなに辛い事だって乗り越えてみせる、大切な人を守るためならこの命を捨ててでも守り抜いてみせる」

「そうか…」


 騎士に問われ自分の気持ちを素直にぶつけた。

 だが…


「その程度の覚悟か、ならお前に教えることはない」

「なっ⁉︎なんで!」

「自分で考えろそれくらいの時間はやる」


 ──何がいけなかったんだ…?俺には守れないって言うことか?くそっわけわかんね!なんで…

 

 考えても一向に答えが出てこない。今騎士は木に背中を預け目を瞑っている。

 

 ──あぁ!なんなんだよ!くそっ!俺に覚悟が足りないってことか!そんな気持ちじゃ守れないってこと…あっ


「その顔だと、気付いたか」

「守るために死んだら意味がない…」

「そういうことだ。気付けたじゃないか。ひとつ成長したな」


 騎士の言ったことは正しかったと思った。守って死んだとしてその後どうするか。どうもできない。死んだらそこで終わりだ。もう守ることも一緒にいることすらできなくなる。


「その覚悟を持つものは多いだろうが、私の意見だがそんな覚悟など捨て置け。

 仮に守って死んだとしよう。それによりその大切な者とやらは助かった。だがその者は心に、深い傷を負うだろう。そしてその傷を付けたのは紛れもなくお前自身だ。守りたいと言いながら自分で傷付けてどうする。それで守ったなどただの自己満足に過ぎない。押し付けられた方はとんだ迷惑だと思わないか?」


 もう、何も言葉が浮かばない。ただ、悔しいという気持ちが残った。


「悔しいか、なら、その悔しさを力に変えろ。自分の弱さを知りただ嘆くだけの者なら私は捨て置く。お前はどっちだ」

「そんなの…決まってる!俺は、大切な人も俺自身も救えるくらい強くなってみせる!

 それに言われてから気付いた、自分で気付けたらよかったけど、自分の命も守れない奴に他人を守ることなんてできやしない。そう思った。」

「ふっいい目になったな、今のお前になら稽古を付けてやろう。ただ私にも仕事がある。時間は夜と早朝しか取れないぞ」

「いや、俺からお願いしたんだ。むしろありがたいよ」

「そうか…では王都に戻るとしよう」

「あ、名前言ってなかった。俺はダイチって言うんだ」

「む?あぁ、私はエルメ…、エルナードだ」


 ん?今言い直した?…なんで?

「あぁエルナード、改めてよろしくお願いします」

「あ、あぁ!ビシバシ鍛えてやる。もちろん甘えたことを言ったらさらにきつくなるからな」


 …もしかしてヤバイ?

 エルナードがどんなメニューにするかと呟きながら黒い笑みを浮かべていた。


「団長〜!」

 そんな黒い笑みを浮かべるエルナードに俺は冷や汗が出てきている中こちらに向かってくる騎士の集団がいた。そして先ほど声を掛けてきた人にエルナードが声を掛けた。


「お前達か…遅いぞ」

「いやいや、遠征の帰りにいきなり全力で走って消えて行ったの団長じゃないですか」

「それはそうせざるおえない状況があったからだ」

「はいはい、どうせその隣にいる男が魔物に襲われてるところを助けたとかでしょ。それで王都まで送って行くってところですか」


なぜ、そこまで具体的にわかるのか。


「まぁそんな感じだ、付け加えるならこの男に稽古を付けることになった」

「はっ?マジで?」

「なんだ貴様その目は、斬られたいか?」


 こわっ!ちょエルナードの目が据わってる!しかもガチで剣を抜いております。矛先は話していた男騎士、なんと言うかエルナードを怒らせるのに適した性格をしてそう。してるね。顔はやっぱりイケメンなんだよな。エルナードもイケメンだしわけわからねぇな。ちなみに話している騎士の方は顔は年齢問わず好まれそうな顔をしている。


「すみませんでした」

 背筋を伸ばし90度に頭を下げた綺麗な謝罪をしているが。


「あ、そこの人」

「俺ですか?」


 先程エルナードと話していた騎士が話しかけて来た。


「僕はヒルズって言うんだ。よろしくね」

「俺はダイチって言います。よろしく」

「では、王都に行こうか」

 エルナードの声で隊が一斉に動く。それに俺もついて行く。


 ──なんて言うか鎧の男まみれで暑苦しい…。


 そんなことを思いながら。




太一「強く、なりたい」

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