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7/10

互いに気持ちよく

 誕生日の当日も、いつも通り彼は仕事で。私も働く彼を眺めつつ、お店の片隅でいつものようにコーヒーを楽しむ。

 その夜、プレゼントの一つとして連れて行ってもらった、少しオシャレなフレンチレストランは、さすがにストライクゾーンの真ん中近くで。

 彼と私のストライクゾーンの重なり方に、お料理と一緒に、うれしさもかみしめる。


「喜んでもらえて、良かった」

 ラムチョップにナイフを入れる彼が、ホッとした顔で笑う。

「孝さんは、今までにも来たことがあったの?」

「まあ、ね。会社勤めの時には、営業職をしていたし、この辺りは、ホームグラウンドみたいなものかな?」 

 接待用の店とか、友人たちと飲みに行く店とか。色々調べたよ? 

 なんて言っている彼と、また一つ、仲間になった。

 私自身も仕事の武器として、確かにそういった“お店リスト”は持っている。

「辞めるまで、ずっと営業畑?」

「いや。この前、店に来た小山が転勤になった頃に、俺も情報管理へ異動になったけどね」

「その後で脱サラ?」

 頷く彼は、フォークを口へと運ぶ。


「だったら、この辺りにお店を……って、思わなかった?」

 ワインを一口飲んでから尋ねる。

「うーん。地代とかの条件が厳しかったし。何よりも、あの家に呼ばれたから」

「呼ばれた?」

「うん。里香さんは、“calling”って、知ってる?」

 逆に尋ねられて。つけ合わせのオクラをカットしながら考える。


「呼ぶとか、電話がかかるとかの意味じゃなかった?」 

 あまり得意ではなかった英語の授業を思い出して、答える。

「そう。あとは、“天職”」

 へえ。

「俺も祖父からの受け売りだけどね」

 天から『お前の進む道はここだ』と、呼ばれるらしい。

 

「開店に必要な諸々の準備をしている段階で、不動産屋の資料であの家のことを知ってから、どうしても気になって。それで実物を見せてもらった瞬間に、あの店のイメージがバーンと」

「はあ。なるほど」 

「店をするなら、ここだ! って」

 改装の必要性も感じないほど惹かれたから、居抜きで買い取った、とか。


 幸せそうな顔で来し方を語る孝さんを眺めながら考える。


 私は今まで、何かに呼ばれただろうか?

 これから、どこかに呼ばれるのだろうか?



 翌日。

 朝一番のメールチェックをしていると、隣のデスクの後輩、田尻さんが出勤してきた。

 彼女が来たなら、そろそろ始業だと、思いながら次のメールを開く。

「坂口さん、昨日は誕生日ですよね?」

 挨拶もそこそこに尋ねられて、ディスプレイから顔を上げる。

「めでたくもない歳だけどね」

 苦笑を混ぜて、軽く自嘲してみせる。

 彼女やその同期あたりが、私のことを“営業のお局”と呼んでいることくらい、知っている。

「いやいや。そんなこと、ないですって」

「そう?」

「で、彼氏からはプレゼント、もらいました? ね、教えて下さいよー」

 この流れは……去年まではなかった。

 ため息を殺しつつ、ちらりと目を向けると、課長が興味津々って顔で私達の会話を聞いているのが見えた。


 真夏に一度だけ、突発の飲み会をパスした私に、課長が『今夜は、デートか?』なんて言ったせいで、この流れなんですけど?



 何をもらったとしつこい後輩に、あっさりと『好きなアーティストのCD』と答える。

「えー。じゃぁ、デートが特別だったんですか?」

「別に。向こうにも 仕事(せいかつ)ってものがあるし」

「そんなに隠さなくっても、いいじゃないですか」

「隠してないって」

 たとえ、特別なデートをしていたとしても。 

 朝から“そういう話”ができる若さは、やっぱり私にはないわ。



 午前中の外回りにひと段落つけて。

 一度会社へ戻ってから、昼食に出る。電話当番らしき経理の子と、軽く挨拶を交わす。

 そう言えば、私が断ったお見合い話は、一つ年下の彼女へと流れたとか、流れなかったとか?


 それはそれとして。

 今日のお昼は……コーヒーショップで済ませようか。


 お昼時とあって、会社から通りを挟んだところに建つお店は、かなり混んでいた。

 二階の禁煙席の隅に座って、アイスコーヒーにシロップを垂らす。ミルクは無しが、ここでのストライクゾーン。

 聞き覚えのある笑い声が、すりガラス状のパーティション越しに聞こえてきた。

 あれは、田尻さんと仲間たちだな、と思いながらストローに口をつける。


 半分ほどクロックムッシュを食べたところだっだろうか。

「で、さ。うちのお局」

 田尻さんの声に、一瞬。肩に力がこもった気がした。

 私のことを、噂してる?

「昨日、誕生日だったんだけど。彼氏からのプレゼントがCD一枚だって。普通ないよね?」

 続く言葉は、嘲りの色を含んでいた。


「ないわー。絶対に、あり得ない」

 応える声は、おそらく経理の若い子。

「でしょ? それに。まだ、続きがあるんだってば」

「え、何、何?」

 違う声が、話を煽る。

「デートも無しだったんだって」

「それは、さすがのお局も、怒るでしょ?」

「それがさ、全然。『向こうにも生活があるから』だって」

「ちょっと、それって……」

 誰かの言った“不倫”の言葉に、悲鳴のような笑い声が被さる。


 もう、どれが誰の声か。分からないくらい、気持ちは荒れて。

 体全体が燃えているようだった。


「だったら、繋がるんじゃない? 奥さんに財布を握られてて、しょぼいプレゼントしかできないようなオッサンなんだよ。きっと」

「おおー」

 勝手に決めつけるな。

「逆に、不倫を隠す隠れ蓑とか?」

「え? 何、それ。何、それ」

「人妻と付き合っている男が、カムフラージュに……」

「あり得る、かも?」

「少なくても、本命の彼女って扱いじゃないよね」

「だよねー」

 知ってるわよ。それくらい。

 彼にとって今、一番大事なのは、お店の経営だって。


 深呼吸をして。目の前に見えている一点。今は、ガムシロップの空容器に意識を集中する。


 怒るな。 

 流せ。


 ほら。できるよね? 

 伊達にこの仕事、続けてなんかいない。


 きゃあきゃあと姦しいはしゃぎ声を、意識からシャットアウトして。

 冷めてしまったクロックムッシュにかじりつく。


 氷の溶けたアイスコーヒーは、無性に孝さんのコーヒーを恋しくさせた。



 かといって。

 互いの休みでもない月曜日の夜に、ふらりと訪ねることも気が引けて。

 何よりも、午後からの仕事の能率ががた落ちで残業になってしまったこともあって。


 次に、彼のコーヒーを飲んだのは、木曜日の朝だった。


 前日の夜、お店をしめた頃合いに電話がかかってきた。

[明日、どうする?] 

 そんなお伺いから始まるのも、携帯にかかってくるのも、いつしか彼が作り出した”約束事”だった。

[一つ、わがままを言ってもいい?]

[珍しいね。どうした?]

[仕事に行く前、モーニングコーヒーを飲ませて?]

 自意識過剰、かもしれない。

 でも、この三日間、どうしても田尻さんとその仲間たちの視線が痛く感じてしまって。


 彼に、彼のコーヒーに。

 癒されたかった。



 『朝ごはんも食べずにおいで』と言われて、そのまま出勤できる状態で朝のお店へと向かう。

 早起きな猫たちも路地で餌にありついていた。


「おはようございまーす」

 初めて来たとき同様に暖簾のかかっていない引き戸を開けながら、店内に挨拶をする。

「おはよう、里香さん」

 作務衣とは違う孝さんが、カウンター内で微笑む。


 モーニングサービス的な朝ご飯を食べて。

 一日の、活力が生まれる。


「そうだ、孝さん」

 戸口まで見送りに来た彼に

「この前のCD、孝さんは聞いた?」

 まだだったら貸そうか? と聞くと

「いや、自分の分も買ったし」 

 意外なことを聞かれた、って顔をされた。


 孝さんの部屋に、あのポスターが貼られているところを想像しようとして。

「なに? 妙な顔をして」

「いや、あのポスターを貼っている孝さんが想像できない……」

「貼ってないから。想像しないの」

 だからあれは、里香さんへの特別サービス。

 そう言った孝さんが、私の腕時計を指さす。   

「時間、大丈夫? ラッシュの電車、嫌いなんでしょ?」

 おっと。そろそろ行かないと。


 半日後のデートを約束して。

 私は、店を出た。



 このあと、朝限定でコーヒーのテイクアウトと、モーニングサービスを彼が始めたのは、数ヶ月後のこと。

 そして、私も週に二回程度、朝のメールチェックのお供にコーヒーを持って出勤するようになる。



 年明けに一度、織音籠のライブへと二人で出かけて。初めてYUKIの歌声を聞いた。

 彼の歌うレクイエムは、聞くだけで自然と頭を下げてしまうような祈りの曲で。

 秋に出たバラード集も、カバーアルバムだったにも関わらず、好調な売れ行きらしいし。

 『織音籠は、この方向でブレイクするのかな』なんて思いながら、メロディーに身を委ねる。


 〈明日の朝が来る保証は、誰にも、どこにもありません。もし、先延ばしにしていることが何かあるなら。ためらわずに行動してください。後悔だけはしないで〉

 昔と違って標準語を話す後輩の言葉に、隣に立つ人を盗み見る。


 この言葉で彼は、未来を決めた。

 そして『決意を確かめるために』と、毎年一月には一度だけでもライブへ足を運んでいると、言っていた。

 お店を始めた去年も、それから今年も。ライブの日が定休日にあたって、ラッキーだったと本人は言っていたけど。


 彼の“道”に

 後悔の入り込む隙間がないように

 彼を“呼んだ”天の声が

 ささやかな力を振るったような気がした。

 

 

 翌月には、バレンタインデーなどというものが、やってくる。

 当日が水曜日。モーニングコーヒーを買いに来る時に渡すか、翌日のデートの時に渡すか。

 渡し方一つにも悩むうえに、彼の仕事が仕事だけに、どんな物を用意するかでも、悩む。


 悩みに悩んで。直前の週末は三連休。

 土曜日の午前中、ターミナル駅に近いデパートの特設会場でストライクゾーン真ん中のチョコを買い求める。ついでに仕事がらみの義理チョコも準備して。

 買い物を置きに一度、家へと帰ってから、孝さんのお店へと向かう。


 お昼時を少し過ぎた店内には、部活帰りらしき女子高生のグループが入り口近くのテーブルに、そしてお隣の薬屋さんのおじいさんがカウンターの一番奥に、それぞれ座っていた。

 私も、いつもの流れで注文まで済ませて。お冷やのグラスを手に取る。

 お、今日のコースターは新作だ。


 女子高生たちは、どうやらこの後、バレンタインチョコを買いに行くらしく、雑誌を眺めながら相談をしている。

 こういうことに、歳は関係ないよね。高校生も、お局も。


 微笑ましく眺めながら、シャトルを操って、タティングを始める。

モチーフはそのまま、色を変えて編んだ栞はこれで四枚目。だいぶん形も整ってきたように思う。

 あと少しで、編み上がるから、間に合えば……チョコに添えて、もいいかな。


「おにーさん」

 私のテーブルにコーヒーを置いた孝さんを、高校生が呼び止める。

「このページの中だったら、どれがいいと思う?」

 壁際に座った子が、覗き込むようにして尋ねる。

「どれと、言われてましても……」

「参考、参考」

 深く考えない、と、隣の子が茶化す。

「男子学生の好みとは、恐らく離れますよ?」

「大丈夫」

「貰うとしたら……ウイスキーボンボンですかね」

 おー。今日の買い物は、大当たり。 


「ずっるー。そんなの、未成年には無理!」

「ですから、男子学生の好みではありません、と」

 言ったね。確かに。 

 聞こえてくるやりとりに、秘かに笑っていると、彼は。

「貰えるだけで、男子はうれしいものですよ」

 なんて言いながら、カウンターに戻る。


 薬屋さんとぽつりぽつり言葉をかわしながら、孝さんが針仕事を始める。

 最近は座布団カバーのような物を作っているらしい。

 いずれは、店内の椅子に座布団が敷かれる日が来るのかもしれない。



「ちょっと、見て。おにーさんが」

「えー」

 高校生の声のトーンが上がって。私の方に背中を向けていた子が、そっと立ち上がる。 

 足音を忍ばせてカウンターへと近づくと、伸び上がるようにして覗き込む。


「どうかされましたか?」

 気配に気づいた孝さんが顔を上げると、彼女は慌てたような声で

「あ、あの。おトイレ……」

 と、尋ねた。

 そのやりとりに、テーブルから忍び笑いが洩れる。


 奥の御手洗から戻ってきた女の子を、周りの子が小突く。

「なんか……刺繍? してた」

「えーっ」

 なるほど。さっきのは、偵察か。

 でも、悲鳴を上げるほど驚かなくても……。

「トイレのペーパーホルダー? のカバーが、こんな刺繍だった」

 さっき御手洗へ行った子が、コースターをつまみ上げて、友人達に示したのが、こちらからも見えた。 

「ええー。まさかの手作り?」

「これって、おばさんたちが暇つぶしにするヤツだよね?」

「刺繍なんてできる?」 

「私は無理。家庭科で習ったことないし」

「うちは、ママでも無理っ」

「できるかどうかってより、男の人は、しないって。普通」

「おにーさんじゃなくて、実は“おねーさん”?」

「やだー」

 甲高い彼女たちの声に、苛立ちを覚えて。

 眉間にしわがよる。


 『うるさい』と一言、怒鳴ればいいのだろうか。

 『“約束”も読めないわけ?』と、嫌味でも言ってやろうか。


「最近、年のせいか、高い声が頭に響くんだよ」

 おかわりを注文したおじいさんが、困ったような声で言う。

「マスター、いい薬ない?」

「それは、ご隠居の専門でしょう?」

 笑いながらヤカンに水を汲む孝さんに、『私もお代わりを』と声を上げる。

 頷く彼は、いつもと同じ穏やかな笑顔を見せる。


 そして、そのままの笑顔で。

「申し訳ありませんが、もう少しだけ声のトーンを下げて下さいね」

 カウンター越しに高校生たちへと、声をかける。


 騒ぎ過ぎたことに、やっと気付いた彼女たちのしゃべり声が、小さくなった。


 波風立たない注意へと雰囲気を作ったおじいさんに、心の中で拍手を送って。

 お湯飲みに残ったコーヒーを、飲み干した。



「でもさ、贔屓だと思わない?」

 一度は静かになったテーブルから、再び興奮したような声が上がる。

 今度は多分。学校の先生への不満だな。

「そりゃ、私達も騒ぎ過ぎたかもしれないけど。あっちのおばさんのさ、『お代わりー』も、結構大きな声だったじゃない」

 

 おっと。もしかして、これは……私か。 


「おにーさんに、アピールでもしたかったんじゃないのぉ?」

「えー。でもさ、相手は“おねーさん”かもよ? だって、さっきの……」 

 嫌な感じのクスクス笑い。 

「“おねーさん”にも、いろいろあるみたいよ? 恋愛対象が」

「色々って?」

「“おねーさん”なのを隠すためだけに、彼女を作るとか?」

「きゃー」

 自分たちの言葉に興奮したらしく、“女性的な男性”を揶揄するような言葉が飛び交う。


 注意されたことに対する意趣返しのつもりだろうか。

 彼女たちは、私をバカにしているように見せかけて、孝さんを貶めていた。


 そんな中で、タイミングが良いのか、悪いのか。

 コーヒーができてしまったようだった。


「お嬢さん、こちらへ来られませんか?」

 お盆を片手に孝さんがカウンターを抜けようとしたところで、おじいさんが振り返って私の方へと向いた。

「私、ですか? お嬢さんという歳では……」

「レディーが一人でいるのは、良くありませんよ」

 更に恥ずかしい言葉を重ねられた。


 助けを求めて、視線が孝さんへと向かう。


 空いた手が伸べられて。

 カウンター席を指す。



「じゃあ、お言葉に甘えて」

 荷物をまとめて移動する間に、私の分のお代わりがカウンターにセットされた。


 『レディーが……』なんて発言をしたおじいさんは、若い頃にヨーロッパの方へ留学の経験があるらしい。

 穏やかに語られるヨーロッパの思い出を聞かせて貰って。

 背後からの、下世話な会話を意識から締め出す。


 カウンター内に腰掛けた孝さんも、その間は刺繍に手を伸ばすことはなかった。



 その夜。

 夕食の水炊きをつつきながら、孝さんに謝られた。

「孝さんが謝ること?」

「店の雰囲気を変えられなかった。ごめん。気分、悪かっただろ?」

 疲れたようなため息を漏らして、白菜をポン酢に浸す。

「気分が悪かったのは、孝さんの方じゃない? 大丈夫?」

「うん。ある意味、慣れてるし。会社勤めの間に、流すことくらい覚えたよ」

 確かに。仕事の上で出会ってしまう嫌な話題を、聞かなかったふりで流すことなんて、日常茶飯事だ。

 そういう意味で、私は彼の仲間だ。

 でも、一つひっかかったのは 

「慣れてるって?」

 頷く彼の、次の言葉を待って。豆腐に箸を入れた。


「俺、中学校時代の仇名が“主婦”だった」

「主婦?」

「うん。小学校の家庭科にドはまりしてさ」

 暇つぶしに手芸をするような子、だったらしい。

「中学の家庭科が女子限定なのが悔しくてさ。 休みの日には自分でお菓子を作るようになって」

 それを知ったお祖母さんが面白がって、『一人でできる 子供の料理』みたいな本を彼に買い与えた。

 お菓子バージョンを孝さん、料理バージョンは弟さんと、二冊の本を兄弟で仲良く分け合ったらしい。

 長じて彼は、この仕事を始めた訳だけど。


 『材料を買いに行った先で同級生の女子と鉢合わせとか、付き合っていた彼女に呆れられて……なんて経験もあった』と、肩をすくめてみせる。



「“おしゃべり 云々”って、約束事の意味が、よーく分かったわ」

「この事態は、想定してなかったけど」

「そう? じゃあ、何を考えていたの?」

「店でのおしゃべりで、例えば仕事の愚痴をこぼしたとしてさ」

「あー、うん」

 やるね。私も時々。千賀子たちと。 

「隣の席に、仕事相手のことを知っている人がいたら?」

「うーん」

「変に『知り合いのことだ』と思い込む人が、後ろに座っていたら?」

 そのパターンは……最悪かも?


「だったら、聞こえない程度の声で話せば? って、考えたわけ」

 そう締めくくって。彼は、柔らかく煮えた人参を、鍋から引き上げた。

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