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第28話 神隠し戦−『神隠しと信頼の強さ』

 祭りの賑わいが町中を包み始めた頃、空は星空になり夜が訪れた。町の中心には辺りを照らすかのような照明が設けられている。高い木の柱に小さな魔鉱石が何個も埋められていて、眩い光を放つ柱だ。その柱は、祭り会場を含めその周囲すらも照らしている。だが、その光が届かない所は何があるのかも分からない暗黒の夜になっていた。

 その柱に光が点いた時、フレッグは恨めしそうな目でそれを見ていたが、カリオペに額を聞いてフレッグは暗い顔をしている。小さな魔鉱石だが、闇を切り裂くかのような鋭い光を放つその石一つは金貨1枚分の価値があるだからだ。そんな石を何十個も使っている柱をフレッグが買えるはずがないだろう。もし、それができるのなら既に手に入れているはずだからだ。

 俺は懐かしい祭りを肌で感じながら、懐かしい味を満喫していた。焼きそば、わた飴、イカ焼き、文章だけでここまで再現できるとは驚きだ。見た目や味、この世界の人たちにとっては見たことのない文化のはずだ。なのに、ここまで再現できているのにはポロクルの細かい読術によってなしたことだそうだ。

 祭りに参加しながらポロクルは俺とミルを隣に置き、百科事典を読んでいる。再現したものをどれだけ文章に近づけていられるのか、また、どうすれば改善できるか現物と照らし合わせて調べているのだ。隣で無邪気で楽しそうにわた飴を食べているミルを見ると、十分にこの世界の人に受け入れられているのだろう。

 ポロクルはシルトタウンの人に本の内容をいくらか知らせている。この祭りのこともそうだが、シルトタウンで新しい技術、特に兵器開発を行わせているらしい。なぜ、ポロクルがシルトタウンでそこまで顔が利くのだろう。ポロクルの努力も実りつつあり、シルトタウンに着くころには色んな物ができている予定だそうで、俺に現物を使ってみて欲しいそうだ。細かな所で違うこの世界でどこまで近いものが作られたか楽しみでもある。

「と、言うことなので、神隠しは無視して、シルトタウンに入りたいのが本心ですね」

 俺は果たしきれているか危ういが、お互い部隊では軍師の役職が付けられている者同士だ。たまにだが、ポロクルとお互いの考えを話すことがある。

「でも、決めるのはアヌビスだろ。アヌビスが神隠しのことを放り出してでもシルトタウンを目指す切っ掛けがない限り無理な話だろ」

 俺は、ポロクルの告白に過去の経験から得た答えを答えてみた。そのことはポロクルも分かっているので、複雑な笑みを浮かべている。

「もし、アヌビスが放り出すとしたら、何が切っ掛けになるんだ」

「そうですね。……アヌビスの上にいるセトか聖竜王の直接の命令があれば動くでしょうね。あとは……いえ、これはいいです」

 ポロクルは、もう一つ心当たりがあるようだがそれは明かさず飲み込んでいた。

「二人とも、もうじきアレクトが寝るそうだ。フレッグの家に行こうか」

 俺達を呼びに来たのはアンスだった。どこか生気の抜けた彼はため息を吐きそれだけ伝えて行ってしまった。

「相当嫌われたようですね。ふふふ、美しき兄弟愛……いや、愛ですか」

 ポロクルはまだ酒が残っているのだろうか。似合わない薄気味悪い笑みを浮かべながらフレッグの家へと足を向けていた。

 俺もフレッグの家へと歩き出すとミルに手を引かれて歩みを止められた。

 右手にわた飴を握り締めた彼女は左手で俺の中指を握っていた。

「どうしたの。疲れたの」

 俯いたミルが顔を上げると、俺の顔を半ば睨み付けるような表情になっていた。

「我を生かすのはいいけど、世界人に飲まれる己の心とはこの世の偽りの心になりてそれは我を生かすと言うのか」

 いつもとは違う表情のミルに睨まれて、叱られているような気持ちになり、心臓を握られたかのような圧迫を感じる。

 それに、彼女のこの系統の発言。いつも意味深な言葉の意味を理解できず聞き流していた。だが、今回のこの言葉は完全には理解できてはいなかったが、俺のことを言っているのだと分かり辛かった。

「ミル、俺はどうすればいいと思う」

「さあ。だが、己が欲するものを手に入れたとき、心から欲するものが己の偽りではなく心のなのだと言うことだろう」

 ミルはケルンに呼ばれて走っていってしまった。最後に見せた顔はいつものミルの笑顔に戻っていた。


「アレクトが寝るそうだ」

 フレッグの家の前でみんな集めてアヌビスが大きな声でそう言った。夜も十分更けたころだが、身の安全のために町中の人はまだ騒いでいる。そんな中、寝る行動をとるのは作戦開始の合図であり勇気ある行動でもある。

「あ、アヌビス。それは流石に恥ずかしいよ」

 そりゃあそうだ。私今から寝ます。詳細を知らない人にとっては意味不明な発言をしているのと同じことだからな。

「気にするな。それより早く寝ろ」

「うう、仲間外れにされた気分」

 アヌビスにほぼ無理矢理に家に押し込められたアレクトの姿が見えなくなるのと同時に、屋根に止まっていた十数羽の銀色の鳥が一斉に夜空に飛び立った。あの鳥はフレッグの家だけではなく、周囲も見回るケルンの鳥達だ。ケルン自身が動くため一羽一羽の鳥は自立していてケルンの意志で動いているのではなく、決められた所を飛ぶものだそうだ。もし、異変があったらケルンに知らせるようになっている。そのことを考えると、魔法のおかげで一部の技術は元いた世界より数段上を行っているようだ。

「よし、ポロクル。役割と作戦を話せ」

 アヌビスと代わったポロクルは一枚の紙を広げた。それにはこの町の周囲のことがこと細かく書かれていた。それを真っ先に覗き込んだのはミルとルリカだ。それを見て不機嫌そうな顔になったアヌビスはポロクルを睨んだ。

 すると、目を見てアヌビスの言いたいことが分かったのかポロクルは苦笑いをして冷や汗を拭いていた。

「ええっと、では、ミルとルリカの子守はケルンにお願いします。魔力も残り少ないでしょうが、お願いできますか」

「それぐらいならできるかな。断ったらアヌビスが怒り出しそうだし、さっそく行かせてもらいます」

 ポロクルに指名されたケルンも苦笑いを浮かべミルとルリカの二人の手を優しく引いて家の中に入って行った。

「さて、残るメンバーの仕事ですが、アンスは外の巡回をお願いします。町の人に害がないといいきれない以上、町の近くに問題がないか調べていてください」

 落ち込んでいたアンスがいきなり輝いた瞳になって、ニヤニヤし始めた。

「怪しい奴がいたら狩ってもいいのか」

「いきなり狩るのはちょっと……」

「俺が許可する。巡回内に怪しい奴がいたら喋れる程度まで痛みつけてつれて来い」

 ポロクルより権限があるアヌビスの許可を得たアンスは喜びの雄叫びを上げて町の外れへと走り出した。それを見てポロクルは疲れた表情をアヌビスに向けた。

「アヌビス。あんなことを言って、もし」

「もし殺してしまったらどうするんだ……か。アンスもそこまで馬鹿じゃない。それぐらい知っているだろうに。それに、奴も犯人と敵の見分けぐらいできる。犯人は町に入れるよう心得ているだろうよ」

 心配性のポロクルより信じているアヌビスの言葉の方が信用できて強く感じた。

「で、俺とリョウは何をする予定だ」

 ポロクルはこの打ち合わせの権利を持っていたのに、いつのまにかアヌビスのペースで話が進んでいた。だが、それがアヌビスらしさというか、俺中心宣言をするアヌビスらしい行動だ。

「アヌビスとリョウは直接アレクト周囲の監視をしてもらいます。と、言いましても隣の部屋でとなります。くれぐれも、犯人に気付かれないようにしてください。アレクトは一人だと思わせられなければ意味がないのですから」

 今回の目的はあくまでもアレクトを神隠しの被害者にすること。監視する俺達は犯人に警戒心を抱かせて誘拐の決意を揺らがしてはならないのだ。

「となると、ポロクルは何をするんだ」

 別に彼がサボると思ったわけではない。ただ、全体の動きを知りたくて自分の口から自然と出た言葉だった。

「私は、カリオペと祭りの方を見ていようと思います。もうじき、祭りを落ち着かせるつもりです。すると静かな闇が増えるので、その時に犯人が来ると思います。そのタイミングを逃さないでください」

 それだけ言い残すと、ポロクルは祭りの賑わいの中へ消えていった。

「よし、リョウ。今夜は長くなるぞ。少し語るか」

 アヌビスは透き通った美しい液体の入った青い瓶を見せた。まるで、青い空をその中に閉じ込めたようなものだ。

「俺、酒は飲めないんだが」

「気にするな俺もだ。なに、ただの魔水だ」

 アヌビスは聞きなれない飲み物を片手にフレッグの家へと入った。今まで体験したことのないものを味わえる期待と、いつもと様子がおかしいアヌビスの気味が悪いのが混ざって複雑な気持ちだ。


 俺とアヌビスが入ったのはアレクトが眠る隣の部屋だ。そこには木製のテーブルと椅子しかない綺麗な部屋だ。その部屋に照明になるようなものは無いが、窓から差し込む青白い月光で十分明るく感じた。

 フレッグの家自体が町の隅にあるので、賑わいと光を弱めた祭りの華やかさとはかけ離れ暗い闇の中にある家になっていた。おかげで、唯一神隠しに合いやすい条件を満たした家であり静かで眠りに着きやすい所へとなった。

「まあ、飲んでおけ」

 アヌビスがグラスに注いだもの。魔水などといっていたが、無色無臭の水のようなものだ。

「魔水ってなんだ」

「魔力を落ち着かせる水だ。魔法を使う者なら飲んでみたいもので、水以上に飲むものもいるものだ」

 アヌビスが飲んでいるのを見て、俺も一口飲んでみた。味は無く普通の水と変わりない。

「水……」

「味はそうだな。だが、これを求める魔術師は少なくない」

 魔水をグラスの半分ほど飲んだアヌビスは月を何も言わず眺めている。俺も、そんな落ち着いたアヌビスに影響されて月を眺めていた。

「リョウも変わったな」

 先に口を開いたのはアヌビスだ。その声はいつもの不機嫌そうなものではなく、どこか懐かしむような声音だった。

「竜神になるようになったことか」

「いや、まあ、それもあるが、臆病だったお前がここまでなるとはな」

 確かに、始めてこの世界に来たころは竜一匹に怖がり、剣先にすら脅えていた。だが、竜神の力や周りのみんながいるようになってからは、それが俺の力なんだと勇気付けられ戦ってこられていた。これからも、この勇気が揺るがないように、そして、折れない強固なものへとなっていってもらいたいものだ。

「まあ、アレクトに比べたらまだまだだがな」

「アレクトってそんなに強いのか」

 すると、アヌビスは甘い香りのタバコに火をつけて大きく煙を吐いた。そして、笑みを浮かべていた。

「強い。奴の実力なら、魔道書を持たないネイレードと並んでもおかしくは無い」

「なら、俺の実力はどのあたりなんだ」

 俺の質問にアヌビスは一瞬、不機嫌そうな色を見せたが、すぐに満足そうな表情に戻った。

「測る基準が違う。お前の成長を褒めてはいるが、ただそれだけだ」

「何だよそれ」

 俺が不機嫌そうに魔水を飲み乾すとアヌビスが剣を抜いて俺の頬を軽く叩いた。アヌビスに剣を向けられたのは久しいもので、忘れていたアヌビスへの恐怖が一瞬目覚めた。だが、アヌビスは剣をすぐに鞘に戻した。ただ俺を驚かせたかっただけのようだ。

「多少戦えるようになったからっておごるなよ。まあ、お前が今いる道は誰もが一度は通る道だ。自分だけが特別だと思うな」

「道って何だよ」

「戦い方を覚えて、自分の立ち位置を覚えた頃。自分はできるんだと誤解するなということだ。ようやく一人の足で立てるだけになっただけだ。背中を押されただけで倒れるような餓鬼と、背中を預けられるアレクト、比べる価値が違うだろ。リョウ、お前は餓鬼としてはいいが、背中を預けられるほどではないということだ」

 つまり、俺はミルやルリカと同じ存在。邪魔にはならないけど、手を引く役割すらしないということか。

 俺の今までの頑張りを全否定されたようで落ち込んでいると、アヌビスは不気味に笑った。

「だが、俺の背中を預けられるのは、アレクトとポロクル。それとグロスシェアリングだけだ。初めから目標が違ったな。初めは、アンスあたりを目指すんだな」

 あの弟を溺愛する兄を目指せと言われてより一層落ち込んでしまった。


 バタン。

 何かの音がして目が覚めた。すぐそばで聞こえたその音の源は隣の部屋のようだ。

「ようやく目覚めたか」

 痛いほど目が閉じたがるのを無理矢理開けると、アヌビスが部屋の扉の前に息を潜めていた。

「神隠しか」

 大きな音が一つしかしていないが、妙に緊張して思わず小声になってしまっている。

「分からん。アレクトが部屋から出たようだが」

 アヌビスが少しと扉を開けて外の廊下の様子をうかがっている。俺もその隙間から覗くと、アレクトが廊下を歩いていた。

 あの明るい彼女からは想像できないような無気力な表情、焦点の合っていない瞳。まさに寝起きのようで、その状態でふらふらと歩いていた。

「いつもと変わらないな」

 俺にとっては異常に見えたが、寝起きの彼女はあれが正常のようだ。

「追うぞ」

 アレクトが廊下を曲がり見えなくなった直後、アヌビスは部屋を出た。

 アレクトと一定の距離を保ちながら尾行をする。彼女の周りには誰もいない。アレクトは彼女の意思で歩いて行動しているようだ。歩む方向からしたら、家を出ようとしているようだ。

「リョウ、お前はケルンにこのことを報告してこい。あと、不振なことが無かったか聞いてこい」

 アヌビスの命令に俺は無言で頷いて、ケルンとミルたちの眠る部屋へと向った。


 コンコン。

 一応、ノックしてみる。紳士的な行動をしてみたが、返事が無くてむなしくなった。

「ケルン。入るぞ」

 扉を開けると、俺達がいた部屋にベッドが置かれているだけの簡素な部屋だった。ベッドにはミルとルリカが、そのすぐそばの壁にケルンが背中を預けて寝ていた。

「なんだよ。ケルンまで寝てるのかよ」

 人のことは言えないが、不満を呟きながら部屋に一歩踏み込んだ。

「動くな。喉、飛ばすよ」

 踏み込んだ瞬間だった。離れた所で寝ていたケルンが俺の喉元に矢の先を向けていつでも射られる状況でいた。

「お、俺だ俺」

「あ、リョウか。何かあったの」

 矢を収めてくれてようやく安心できた。でも、あの一瞬で弓と矢を出して俺を止めることができるのは凄いと思えた。

「実は、アレクトが動いたんだが、何か異変はあったか」

 そもそも、周囲に異変があれば、すぐにでも知らせてくるだろう。一応、礼儀のようなものだ。

「特には何も無かったけど。この部屋に入ってきたのはリョウが初めてだし、町内部にも特に変わったことがあったって報告はなかったよ」

「本当にだろうな。寝ていたからなぁ」

 疑ってはないなが、そのような眼差しをすると、ケルンは面白いかのように頬を膨らませた。

「うー、僕寝てないもん」

「いや、寝ていただろあれ」

「違うもん。それに、この部屋に何か入ってきたら分かるように魔法を施していたの。だから、寝ていてもリョウが来たのが分かったんだから、それまでは誰も入ってきてないの」

「ってことは、俺が来る前までは寝ていたんだな」

「うう、誘導尋問は僕認めないよ」

 緊張していた気分が少し和らいだ。俺はケルンに引き続き二人の警護を頼むとアヌビスを追いかけた。

 フレッグの家を出るとアヌビスが待っていた。

「アレクトは何処にいったんだ」

 アヌビスが指差す方向には、暗い森の方へ歩んでいるアレクトがいた。

「追うぞ」

 森の中に消えたアレクトを追うために俺達も森に入った。

 暗い森の中は夜なのも混ざって、恐怖を感じる空間となっている。姿の見えない鳥の鳴き声、飛び交う謎の虫。目の前にいるのに全身が黒いアヌビスは闇と一体になりそうだ。だが、時折振り返ると、赤い瞳が闇で輝いて存在が分かる。悲鳴を上げたくなるほど怖いのは秘密だが。

 俺は、首に掛けた十字架のアミュレを強く握って自分の力の存在を確かめた。


 森の中をしばらく歩くと、開けた空間へと出た。そこは、森の中に走る崖のようだ。向こう岸には森の続きが見える。だが、何処にも向こう岸へ渡るための橋がない。

 その、進む先がないところに出たが、アレクトは歩む足を止めない。寝ぼけているにしては限度がある話だ。

「お、おい。アレクト」

「まて、まだだ」

 アレクトの危険を感じた俺が飛び出そうとしたが、アヌビスの剣で止められた。いくら信頼しているからと言っても、このままではアレクトが崖の下に……。

「アレクトは俺に命を預けた。俺のものを勝手に奪わせはしない」

「くそ、待ってられるかよ」

 俺は、アヌビスの制止を無視してアレクトへと駆け寄った。

 すると、アヌビスは白い剣を地面に突き刺した。

 その後すぐに風を切る音がした。アレクトが崖の下に落ちたのだ。俺は崖の下へと手を伸ばしたがアレクトはそのずっと下にいた。

根を張る銀色の糸(ヴァリーフレイク)

 落ちていくアレクトを眺めている俺の後ろでアヌビスの声が聞こえた。すると、崖の岩肌全体から銀色の糸が雨のように何本も現われた。まるで、蜘蛛の糸が網を張るように崖の下全体に巨大な銀の糸の蜘蛛の巣ができた。アレクトはその銀の糸に絡まって落下を間逃れていた。

「た、助かったのか」

「ふん。俺の魔法は万能だからな」

 俺の疑問を自分の自慢で答えたアヌビスは崖の下へと飛び降りた。

「ぬにゃー。こ、ここはどこなの。うわあ、た、高い。怖い。暗い」

「煩い。騒ぐな」

 崖の下からアレクトのわめき声が聞こえる。それを聞いてようやく全身の力が抜けて、その場に座り込んだ。

 ようやく落ち着けた俺は、後ろの森からの草の揺れる音を聞き反射的に何も考えず振り向いた。すると、白いものが森の奥へと消えていくのが見えた。

 暗い闇の森で数秒とも見えなかったが、特徴的なものがよく見えた。黒くて長い髪、白いゴスロリの服、そして、この夜中に森に一人ではいるにはおかしい幼い女の子だ。それに、俺はその女の子と見たことがある。

「メネシス……」

 俺が、見覚えのある敵武将の名を呟くと、夜空を小さな機械竜が飛ぶ風の音と金属音が聞こえて、遠くへと消えていった。


この物語はフィクションです。

登場する人物名・団体名・地名などは全て空想のものです。

実際に存在するものとはなんら関係がありません。

一部、誤解を招きやすい表記があるかもしれませんが、ご了承ください。

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