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the end of war

     四章


 それから三日後の深夜のことである。

 まだ両国間の大規模な戦闘はなく、準備段階という感じの雰囲気であった。

 だが、日本國軍内では防衛戦が張られ、特に日本海側の金沢駐屯地などでは臨戦態勢であったし日本海には駆逐艦で編成された第七防衛艦隊が展開していた。

 横浜港はまだ落ち着いてはいるが民間船は一切見られない。

 EMS社内も夜にもかかわらず、蜂の巣をつついたような忙しさが続いている。それは日本國軍より配給された弾薬であったり、出撃予定の空母に艦載機を積んだりといろいろな作業がある。

 そんな中第一機動空挺課の面々はまだ落ち着いた雰囲気で事務室にいたが、非常勤務体制として家には交代で帰り、帰ったとしても数時間しか家にいられないような生活が続いていた。そして、机の横には防弾チョッキとライフルなどの銃が置かれ、太ももにはホルスターに収められた拳銃があるなどすぐに出撃できる状況を作っていた。

 そうして各自が好きなことをしている中、SCARのメンテナンスをしていた佐伯が口を開いた。

「そういえば恵一、なにか私たちに作戦降りた?」

「うん?いや特には。俺らは属性的には特殊部隊だしもっと戦況が熱くなってからじゃないと動きはないだろ」

 佐伯はそれに対してため息をついていった。

「はぁ、困るのよね。仕事くれないと。出撃なきゃ危険手当なんてちょっとしか付かないじゃない」

 その言葉をきいたソフィアが、驚きながら言った。

「危険手当少しって・・・・通常時の給料より五万円増えてるんですよ?それを少しって・・・」

「だって、戦争始まるからって服屋はセールやってるし、スーパーでもいろいろ買うものあったし。とにかく買い物いっぱいしたから足りないのよ」

 それにソフィアは納得し、伊達はあきれきった表情で佐伯を見た。

 そうした会話は通常不謹慎と思うかも知れないが彼らからすれば普通の話である。

 彼ら民間軍事会社社員というものの本業は警備などではなく、戦争を請け負うことである。

 佐伯はそれから数十分後にメンテナンスを終わらせ、お茶を飲み始め、秋宮は事務室を出て散歩へと出かけた。

 あまり行く場所もないが、ずっと室内にいたのでは体がなまると思ったためである。

 適当にその辺を歩き回り、夜の海風に当たる心地よさを味わっていた秋宮は海上プラントのある方角に十数機のヘリコプターの隊列がいることに気づいた。

「夜間訓練か。航空隊もよくやるもんだ」

 そう感心している秋宮であったが次の瞬間その認識が間違いであると気づく・

 左に旋回したヘリコプターの胴体に書かれている文字を秋宮のBIが自動的に拡大した。

 そこにはハングルで「大韓民国軍事警備会社」と書かれている。

 そして、秋宮と同じタイミングで発見したのか海上プラントに設置されている防空砲が火を噴いている。

 だが、その防空砲がヘリを撃ち落すよりも早く海上プラントが爆発し、燃え盛り始める。

「くっそッ」

 そう短くはき捨てて事務室へと戻るのと同時にサイレンが鳴り響き、基地自体が臨戦態勢に突入する。

 秋宮は事務室に戻ると、装備パックを装備して第一機動空挺課の面々とともに事務室の外へと出る。

「まずは状況確認だ。固まって行動するぞ」

 そういって秋宮たちは基地を走り回り現状を確認しようとするが、そんな暇はすでになかった。

 襲撃が武装ヘリ数十機であればEMS社の基地設備なら迎撃できたであろうが、それだけではなく潜水揚陸艦などにより、一個大隊ほどの戦力が上陸していたためだ。

 その襲撃に加え、前々から計画されていたのであろう。海上プラントや弾薬庫が爆破され反撃すらも弱弱しかった。

 秋宮たちは、海上プラントのほうから上陸してくる敵兵に対し応戦した。

「個々で判断して動くぞ。通信だけは切るな!」

 秋宮は隊員に向けてそう言いながら射撃する。

 自分が撃ち殺したウェットスーツを着ている敵兵の死体を踏みこえるように全身する。

 EMS社の機能している部隊が総力を上げて反抗に出ているが、すでに基地のほとんどは爆破されあちこちで火の手が上がっており、夜の闇に炎が鮮明に移る。

 海上プラントなどは正常な機能を残したものがあと何機あるのかすらもわからない。

 陸上地区から見るだけでも少なくとも三機の海上プラントは全壊し、海に沈んでいく。

 秋宮たちのBIにはさまざまな通信が混線している。

 秋宮たちは重要度の高い通信だけを受け取り、他部隊の通信は遮断するほどであった。

 彼らが前進していると、第二陸戦小隊と合流しともに行動をする。

「おい、あそこの装甲車に乗り込むぞ」

 まだ爆破されていない装甲車を指差してそちらの方向に彼らは走る。

 伊達が装甲車の運転席に乗り込み、少しばかり前に出すと、ハッチを開けて順番に乗り込んでいく。

 佐伯とソフィアが乗り込み、秋宮と第二陸戦小隊の隊員たちは追跡してくる敵兵にたいして応射し続ける。

 第二陸戦小隊の隊員が一人乗り込んだところで、次に乗り込もうとした隊員が頭を打たれて、死亡する。

 秋宮はすぐ横にいたためにそれを受け止め生死を確認するが、死亡していることを確認すると、少し前に出てSCARを残弾が切れるまで撃ちつづける。

「くそったれがッ」

 弾が切れると、振り返り全員が乗り込んだことを確認し秋宮も装甲車に乗り込んでハッチを閉め、運転席の伊達のほうへと向かった。

「脱出するぞ。ゲートに向かえ」

「わかってる。後ろに座ってろ」

 そういわれ、秋宮は伊達の肩を叩くと後部の兵員収容スペースの簡易椅子に座った。

「なにがおきたのかまったくわからないわ」

 佐伯がそう呟き、残っている第二陸戦小隊の隊員四名もため息をついた。

「おい、隊長は?」

 秋宮が第二陸戦小隊に対して言うと、一人が手を上げた。

「陸戦大隊第二陸戦小隊所属の金子 信三だ」

 そういいながら金子は秋宮に握手を求め、秋宮は差し出された手を握り握手に答えた。

 短く挨拶を済ませると、秋宮が金子に聞いた。

「確か陸戦隊の本部は第二プラントだろ?なにか知ってるか?今回のことについて」

「よくはわからないが、とにかくいきなり爆発する音と火災警報が鳴り響いたと思ったらヘリから敵兵が降りてきて・・・・・俺らは命からがらプラントから逃げ出せたが、プラントはあれじゃ沈没だろうな」

 秋宮は、頭を抱えながらそう答えた金子の肩を叩き、少しばかりの慰めをした。

 そうしているとき、BIに緊急メールが送られてくる。その送信者は日本國陸軍からのものであった。


伝令

 日本國陸軍より、EMS社社員へ。

 有事同盟規約により、日本國軍の展開を完了。

 敵勢力の掃討を行い、数時間で完了する見込みである。EMS社社員は各部隊の残存戦力にかかわらず日本國陸軍根岸駐屯基地まで退却すること。

 正面ゲートおよびBゲートの制圧は完了している。検問を通り基地外へと避難すること


 その内容のメールを読むと、秋宮は伊達に一番近いBゲートに向かうように指示し伊達はうなづき秋宮は席に戻った。

 強襲に対しての驚きなどで社内は静まり返っていた。

 Bゲートに着くと、そこには厳戒態勢での戦闘体制と検問がしかれており、秋宮たちは敷かれていた検問を通る。

 全員が装甲車から手を上げて外に出て、IDなどを見せて基地の外へと出る。

 根岸駐屯地に着くまでは誰も話さず、ただ沈黙が続いた。

 根岸駐屯地に到着すると、金子をはじめとする第二陸戦小隊の隊員たちは第一機動空挺課に敬礼をして自分たちの部隊の集合地点とされていた場所へと向かった。

 秋宮たちはとりあえずと、食堂に向かい自分たちの喉を潤した。

 そこで、彼らは今回の被害の甚大さを思い知ることとなった。

 食堂の電子掲示板には被害報告が次々と書かれていった。

 その被害は現在わかっているだけで、第一プラント中破・第二から第三プラント崩壊・第四プラント大破・本部ビル崩壊・その他施設の被害甚大・空母小破・駆逐艦二隻中破・戦死者千名以上という結果であった。

 それを見て、ソフィアが呟いた。

「まるで真珠湾攻撃ですね」

 第一機動空挺課の面々はそのたとえが的を得ていると思った。

 真珠湾攻撃とは、1941年12月8日、太平洋戦争の開戦の折に日本軍がアメリカ軍におこなった奇襲攻撃のことである。

 日本軍は航空機と潜水艇によってアメリカ海軍の太平洋艦隊と基地に対して攻撃を行った。日本軍の損害は軽微であったが、アメリカ軍の損傷は甚大なものであった。

「まったくだよ。こんな早くに奇襲攻撃を仕掛けてくるとはな」

 そういいながら、空になったドリンクボトルをゴミ箱に投げ込む。

 そんな秋宮を横目に見ながら頬杖をついて佐伯が言った。

「まぁ、それでも空母が小破だったのはよかったんじゃない?うちのあれが大破、轟沈でもしようものならうちの国の戦力がどれだけ落ちるか」

 大げさに聞こえるかもしれないが、佐伯の言うことは正しかった。

 日本國海軍は空母を一隻しか保有しておらず、アジア諸国全体からすれば保有数は少ないどころの話ではない。だが、日本の民間軍事会社が空母を保有しているため、日本は全部で五隻の空母を保有する国となっており、アジアで最も大きな国である中国と同程度の戦力を保持する国家となっているのだ。そして、空母四隻のうちの二隻を保有するのがEMS社であり、もしそのうちの一隻が戦闘不能になるようなことになれば日本の戦力は著しく減少することになる。

 

 大韓民国軍事警備会社のEMS本部襲撃から二時間後 防衛庁

襲撃を受け、すぐに基地から脱出したEMS社社長の一は総理大臣である鹿間(シカマ) (マコト)から防衛庁本部への呼び出しがあり、防衛庁のある東京都 渋谷区へと向かっていた。襲撃から二時間後に防衛庁へと到着し一は防衛庁の緊急会議へと出席することになっていた。

 その緊急会議には陸海空の代表将校数名だけではなくABCT社社長の渡貫(ワタヌキ) 昨夏(サッカ)と海老原民間警備会社社長の海老原 貫太郎が出席していたが、首相である鹿間は出席していなかった。

 その緊急会議は六席議会と呼ばれるものでもあった。日本の主な軍備をつかさどるトップが集まる会議であるためそのような名称がつけられている。

 一はその無駄に大きいといわざるを得ない豪華な装飾の飾られた会議室に入ると、自分のために用意されていた席に着席した。

「では、全員揃ったようだし、会議を始めようか」

 その会議室にいる中で一番階級の高い陸軍大将がそういい、海軍中将がそれにつづけて言った。

「じゃあ、まず一に事情を聞こうか」

 一は咳払いを一つすると席を立って今回のことを話し始めた。

「まだ、私自身すべてがわかっているわけではないので曖昧な報告になることについてはお許しください。まず、襲撃を感知することができなかった理由ですが我が社の分析官によると襲撃時刻時には韓国の軍艦どころか民間船舶もいなかったとのことです。海上警備隊も感知していなかった。恐らく敵は他国の籍に偽装した船などを使用してプラントに接近したものと思われます。それについては事実関係がわかり次第議会に提出します。

 そして、現在のわが社の残存戦力は物資や弾薬などを始めさまざまなものを破壊されたため通常時の四割程度まで戦力を低下させられました。我が社だけでこの戦争に全面参戦するのは非常に厳しいといわざるを得ません。損害についてはBIのメールで送信いたしましたのでそちらをご参照ください。以上になります」

 そういって一礼すると、一は席に座った。

 他の五名は一が送信した損害報告をBIで見ているのかしばらくの沈黙が続く。

 どの人物の顔も非常に険しい顔をしていた。

 そんな中、手を上げたのはABCT社の渡貫であった。

「一、聞きたいことがある」

「まだわかってないことも多いが、答えられることは」

 そう言うと、渡貫は椅子に深く腰をかけて言った。

「お前の会社の部隊で通常通りに機能する部隊は何部隊ある?」

「少し待ってくれ」

 一はそう言うと、報告があがっている限りの部隊のデータをBIのネットワーク演算機能を使用して通常通り機能する部隊の数を計算する。

「まだ、不確定だが現在わかっているだけで通常機能する部隊は一之瀬師団、瀬川航空中隊、第一機動空挺課、だけだ。一之瀬師団傘下の部隊は損害がないわけではないが機能する。それと一週間あれば恐らく空母も通常機能と考えてよいと思われる」

 あまりに深刻なその答えに渡貫は顔を曇らせる。

 一之瀬師団はEMS社内の三分の一を傘下に入れる部隊である。その全体人数は七千人強で通常の軍隊の師団よりは人数が少なく編成されているが十分な人数である。

 そこで海軍中将が口を開いた。

「今、送られた資料を見たところ、一之瀬師団と瀬川航空中隊を報告したのはいいがなぜ第一機動空挺課を報告に入れた?この部隊は民間人一名と社員五名で編成された部隊じゃないか。完全な状態で残っているとしてもこの部隊が戦力になるとは考えにくいのだが」

 それに対して一は少し得意気に答えた。

「ええ、他にもこの規模であれば残っている部隊はいくつかありますが、この部隊は特殊なんですよ。戦闘員は我が社でも少ない全身義体の兵士だけで編成されていまして通常時からも対テロ戦闘を経験しているため、錬度は非常に高いです。実績は最近ですと元町中華街での自由日本共産党による虐殺事件に貢献したり、韓国大使館の占拠事件の解決などです。元日本國軍出身の兵士も多く、イギリス特殊空挺部隊の出身者もおります。隊長の秋宮は2040年の竹島極秘潜入での野戦基地破壊にも貢献しました。

 彼らは確かに戦争の表舞台に立つ部隊ではありませんが、裏の戦争史に名を刻むことのできる部隊であると確信しているため報告に入れさせていただきました」

 その説明を受けて会議室の全員がその実力に関心した。

 そして、陸軍大将が深い息を吐くと言った。

「まだ、確定ではないが私は現状での作戦を今練った。細かい修正点はあるだろうが説明をしてもいいかな?ここにいる全員の力を借りる作戦だ」

 それに対して全員が首を縦に振った。その理由は陸軍大将は名将として知られる東条 禮次郎であるためだ。

 東条の考え実行された作戦は数百に及ぶが、その中で失敗した作戦は数十個しかないためである。

「私は、この戦争は早期に終わらせるべきだと思っている。そして敵は韓国ではない。大韓民国軍事警備会社という国際テロ組織だ。そしてそのトップは韓国の現首相だ」

 そこで会議室の五名がざわめいた。だが、それに反応せず東条は続ける。

「私もなにも証拠なく言っているわけではないよ。南雲機関に調べさせていたんだよ。元町中華街虐殺事件に大韓民国軍事警備会社がかかわっていることを聞いてからね。その結果、現首相と大韓民国軍事警備会社のCEOであるキム・チョンヒのつながりが明確になった。その証拠もある。これは韓国という国の革をかぶったテロ組織との戦いだ。

 では、本題に入ろうか。私の作戦は数日中に韓国本土に総攻撃をかける。空母、巡洋艦、駆逐艦のほとんどを投入し、決戦を仕掛ける。だが、それでは韓国を痛めつけるだけだ。私は韓国という国を潰したいのではない。決戦を仕掛けている間に一君自慢の機動空ああ挺部隊に暗殺任務を行ってもらう。もちろん機動空挺部隊だけではないがね。暗殺の目標はリ・ヒョンソンとキム・チョンヒだ。これならEMS社が被害を受けている状態でも我が国は勝利することができる。そして、軍が日本本土を離れる間の治安維持は海老原警備会社に委託しようと思う。この案は君たちの同意が得られたら総理に通して実行に移す。どうする?同意なら右手を挙げてくれ」

 渡貫と海老原は少し考えると、同意することを示す右手を上げだ。

 そして、海軍中将と空軍少将も手を上げる。それから数十秒後に一もゆっくりと右手を上げた。

「では、これから私は作戦書を製作し今日中に総理に提出する。今日の夕方までには結果を知らせるからそのつもりでいてくれ。では会議を終わりにする」

 そういうと、東条は会議室を出て行き、それにつづくように海、空軍の将校も会議室を出た。

 海老原も一と渡貫に一礼して会議室を出た。

「それにしても、東条大将はすごいよな。これだけの情報であれだけの戦略を練るんだ。天才としかいいようがない」

 渡貫が一にそういった。

「ああ、本当にすごいよ。それと、渡貫、これからは世話になるかもしれない。すまないな。」

 一は渡貫にそう詫び、渡貫はそれに答えた。

「まぁ、ビジネスライバルにはかわりないけど、お前たちEMSがいないとうちの国はやばい。助けるところは助けるさ。代わりにこんど一杯おごってくれよ」

 そういって渡貫は席を立って会議室を出る。それと一緒に一も会議室を出て第一機動空挺課のいる根岸駐屯地へと向かった。

 根岸駐屯地へと向かう途中の高速道路で、一は窓の外を見ていた。

 襲撃から数時間し、もうすでに夜は明けて外は少しばかり明るいが、夜が明けるのと同じタイミングで雨が降り始めていた。

「ただでさえ気分が暗いっていうのに雨なんてさらに暗くなるな」

 そう一が呟いた直後のことである。

 一の目の前にいた運転席のシートに穴が開いた。一の頭にはスレスレで当たることはなかったが、シートに穴を開けたものは紛れもなく弾丸であった。

 運転手の頭に弾があたり、運転手が死亡し右足がアクセルを強く踏んだ。車は突然加速し速度は150km/hを超える。

 ぐらりと一の体が後部座席のシートに叩きつけられそうになり、手をシートに置き、体を固定した。

 だが、そうしたとき、一の頭は運転席と助手席の間に出る形になっていた。

 次の瞬間、フロントウィンドウにもう一つの穴が開き、一の脳髄を貫いた。

 車はコントロールを失い、高速道路のコンクリートの壁に車のフロント右側が叩きつけられた。

 爆発はしなかったものの、そのような速度でフロント右側が叩きつけられたため車は派手に横転し数回車は回転し、他の車にぶつかり大きな事故を巻き起こしながら転がった。

 横転が止まったときには車はぐしゃぐしゃになり、原型をとどめていなかった。

 そして、一番大きかったことは、ガソリンがもれていたことと横転により車の電気系統から火花が起きていたことだ。

 車は横転し終わってから数秒後に、ガソリンに火花が散り大きな爆発を巻き起こした。

 巻き添えにあった周りの車から人が降りてくると、警察と救急に電話をし、それから五分ほどで警察や救急、消防が数多く到着した。

 警察は炎上している車を消防が消火すると警察は現場の捜査を開始した。

 それから数十分後、車に乗っていた人物と、死亡した人物の身元を警察が特定した。

 もちろんEMS社の副社長などの幹部の元へと一が死亡したことを伝える連絡が来たのであった。

 それはEMS社の幹部だけではなく、民間軍事会社や東条の耳にもその情報は届いた。報告があったのは警察の捜査などにより、会議終了から一時間以内に一が暗殺されたという事実に彼らは耳を疑ったが、東条の次の行動は早かった。

 東条は、EMS社の指揮権を自らが取ると言った。

 EMS社の副社長はそれに同調し、指揮権を東条に委譲した。

 そして、東条は一番最初に第一機動空挺課を防衛庁に呼び出した。

 その連絡は日本國軍通信隊からの緊急招集メールとして第一機動空挺課の隊員の下に届いた。

 そこに固まっていた隊員四人はすぐに日本國軍から車を借り受け、千代田や冴島を迎えに行こうとした。

 迎えに行くために、千代田と冴島に連絡を取った結果、千代田はとりあえずとして二階堂インターナショナルコンポレーション本社にいた。

 千代田は自分で向かうため、場所の地点データだけ送ってくれればよいという話になり、そして冴島はすでに防衛庁の中にいるから迎えはいらないということを知り、彼らは四人で防衛庁へと向かった。

 車の中で助手席の佐伯が言った。

「ねぇ、なんで私たちが呼び出されてるのかね」

 それに対して、秋宮が答える。

「まぁ、今回の襲撃か戦争に関してだろうな。俺らの本質は特殊部隊だからな・・・・」

 さすがの秋宮たちもすでに軽口を叩ける雰囲気ではなかった。

 車で数十分ほどで、防衛庁に到着しゲートでIDを提示すると、駐車場に車を停めた。

 秋宮は、到着したことを冴島に伝えるために、BIで通信をする。

『課長、着いたんですけど今どこにいます?』

『防衛庁内の正面ロビーにいるよ。とりあえず、俺のところまで来てくれ。千代田はもう来てるから』

 BIでの通信を切ると、正面ロビーへと向かった。

 正面ロビーは本館の正面口を入ると、すぐにある。

 秋宮たちはすでに本館の裏にある駐車場にいたため、正面ロビーに向かうには時間はかからなかった。

 正面口を入ると、すぐに正面ロビーであり冴島と千代田は一番見えやすい場所にいた。

「課長、なんで招集かかったんですか?」

 ソフィアが冴島にそう聞くと、冴島は鼻の頭を少し搔いて言った。

「あぁ、事情はあとで話すんだがまず大事なことだけ伝えておく。まず一つ目はうちの社長である一が何者かに暗殺された。そしてもう一つはこれから会うのは名将として名高い東条大将だ。東条大将は社長が暗殺された後である今、一時的にEMS社の全権を握っているってことだ」

 だが、第一機動空挺課の面々は一つ目に告げられたニュースが深刻なあまりそのほかの二つはあまり耳に入っていなかった。

 その第一機動空挺課の面々に対して、冴島は続けた。

「とにかく、今は急ぎだ。あとで詳しく話すから黙って着いて来てくれ」

 そういって歩き始めた冴島に五人は着いていく。

 エレベーターに乗ると冴島は九階のボタンを押した。

 エレベーターの中は沈黙の時が流れ、三十秒ほどで九階到着する。

 九階は会議室の並ぶところで、冴島は九階の一番奥にある第七会議室に入った。

 その会議室の椅子の一つにはすでに東条が鎮座しており、第一機動空挺課の隊員たちは空いている座席に着席した。

「冴島君から簡単にでも話は聞いていると思う。私が今から言うことは本当であれば一君が伝えるはずだったことだ」

 そういわれ、第一機動空挺課の面々はうなずきそれを見た東条は言葉を続けた。

「君たちには、これから総力を上げて日本が行う作戦の裏で活動してもらうことになる。詳しくは後に資料などを送るが今から概要だけ説明する。

 これから日本は韓国に対して総攻撃を仕掛けることになった。だが、それでは今回の戦争の火種は消えることはない。その火種が残っている限りまた同じような自体が起こるだろう。君たちには今回の総攻撃にまぎれて韓国に潜入してもらい火種である大韓民国軍事警備会社のCEOとそれと深くつながっている韓国首相を暗殺してもらう」

 そう言い切った東条の言葉に第一機動空挺課の面々は衝撃を受け、そして秋宮が言った。

「今、俺らの指揮官は東条大将、あなただ。だからあなたが命令するなら俺らは園とおりに実行する。だが、CEOの暗殺はまだいい。首相の暗殺をするについては少し詰まるものがあるんだが」

 それに佐伯も続ける。

「秋宮の言うとおり私たちは仕事として実行するからやりますけど、なにも根拠がないのであれば日本が批判を受ける可能性もありますよ」

 秋宮と佐伯の質問に対して東条が答えた。

「君たちのいうことは間違っていないが、私も理由なく首相まで暗殺するといっているわけではないさ。君たちは知っていると思うけど南雲機関の調べによって首相とCEOの黒い関係が露呈したんだ。作戦後の問題は私たちが解決する。君たちは安心して作戦を実行してくれ」

 第一機動空挺課の戦闘員の四人は黙ってその話を聞き、東条が言い終えると全員が頷いた。

「わかった。任務は請け負うよ。ただ東条大将、給料はそれなりにくださいよ?」

 隊として仕事を請けるかどうかの決定権のある秋宮がそう言うと、東条は笑って言った。

「そうだな。給料については期待していなさい」

 そういわれると、佐伯とソフィアはガッツポーズをとりそうになり、伊達もにやけ始めており、千代田は爪を見て少しこすると爪に息を吹きかけた。

 そして、第一機動空挺課の隊員たちは冴島以外が席を立つと部屋を出た。

 部屋を出る際に、秋宮は足を止めて東条に聞いた。

「東条大将、作戦の概要はいつ送られますか?」

 それに対して東条は少し考えて答えた。

「ああ、とりあえず今日の夜から明朝にかけての間に送る。あと、冴島君に話しておくが君たちの装備などについては日本國軍の装備と施設を使用してくれ。あとで施設を移動してもらうかもしれない」

「了解です」

 秋宮はそう答えると、扉を出る前で背筋をピンッと張って踵をそろえて敬礼し部屋を出た。

 来た道を戻り、エレベーターを待っているときにソフィアが口を開いた。

「秋宮さん、あの人誰ですか?偉いのはわかるんですけど」

 秋宮は東条という名将を知らないことに一瞬驚いたが、ソフィアはEMS社の前はイギリス軍に在籍しており、日本國軍とは末端でしかつながりはなかったことを思い出し納得すると、ソフィアに説明を始めた。

「東条大将は第三次世界大戦時に小さな作戦から大きな作戦まであわせて二百を超える作戦を提案し、実行された作戦はその七割ぐらいだ。で、その七割のうち失敗した作戦は一割にも満たないんだ。だから名将といわれているし、日本國軍が第三次世界大戦で活躍したのはあの人がいた体ともいえるんだよ」

 秋宮が、そう説明するとソフィアは納得して頷き、それと同時のタイミングでエレベーターもそこに到着し、全員がエレベーターに乗り込んだ。

 エレベータに乗り込むと伊達が言った。

「でもよ。秋宮の言ったとおり東条大将はすごい人だしあの人の作戦に参加したこともあるが、なんで俺らみたいな小さい部隊をピンポイントで指名してくるんだ?暗殺にしたって別に俺らじゃなくても日本國軍にそういう部隊はあるだろ」

 それに壁に寄りかかっていた佐伯が答えた。

「さぁ、詳しいことはここの誰にもわからないでしょ。知ってるとすれば課長ぐらいのものね。とにかく、私たちは東条大将に期待されてて失敗できない作戦を言い渡されたと思ってればいいのよ」

 佐伯のその言葉は正しかった。伊達の問いに関しては冴島でさえもすべての答えを知っているわけではない。彼らは命令されたとおりに動き任務を遂行するのみなのだ。

 そうしているうちにもエレベーターは一階に到着した。

 エレベーターを降りると駐車場に向かい根岸駐屯地へと帰る。

 駐屯地で借りていた車を返却すると、演習用の運動場に設置された大量のテントの一つに入り、骨組みと布だけで作られた簡易ベッドに陣取るとそれまでの疲れからか眠くなり千代田以外は全員そこで眠りに着いた。

 千代田は別段待機をしなければいけない戦闘員でもないため、必要になるまでは帰宅することにすると秋宮に伝え帰宅した。

 全員が疲れによって四時間ほど寝ていたとき、BIへの緊急メールの着信があり全員が目を覚ました。

 外をみればすでに暗くなっており、サーチライトや照明がついている。

 ARによってメールの内容が視界に表示された。その内容は東条が立案した作戦の詳しい概要であった。

 その作戦概要書には、『第一機動空挺課は直ちに根岸駐屯基地で武器管理主任から物資の補給を受け体制を整えた上で指定時刻に用意されたヘリに乗り込み佐世保基地へと向かうこと』と書かれていた。

 彼らは指令書のとおり根岸駐屯地の武器管理主任兵に会いに行った。

 基地を歩いている兵士に居場所を聞くと武器管理庫にいるらしく、秋宮たちは武器管理庫に向かうと武器管理庫の受付けでコーヒーを飲んでいた。

 秋宮がタブレットに書類を表示し、武器管理主任兵にそれを見せると彼はそれをしばらく読んで席から立ち上がって言った。

「ああ、話は聞いてるよ。とりあえずなんでも必要なものは言ってくれ。特殊な任務だと聞いているからある程度のものは用意するよ」

 すでに上層部からの話は彼に伝わっているらしく話は早かった。

「とりあえず武器庫に連れて行ってもらえるか?」

 秋宮がそう言うと、武器管理主任兵は鍵の束を彼に渡した。

「持っていくものを教えてくれさえすれば何を持って行ってもいいから好きに持っていけ。そこの通路を進んだところの扉から先が全部そうだよ」

 最初からそういえばいいものをと隊員全員が思っていたが、秋宮は軽く礼を言って指示された通路を進んだ。

 扉の鍵を秋宮が開け中に入るとすばやく武装を選び始めた。

 佐伯とソフィアは奥にある戦闘服の置き場に行き、秋宮たちは彼女らが着替える間に武装を選んでいた。

佐伯とソフィアは戦闘服を脱ぐと下着だけというきわどい格好で着替えるものを選ぶ。本当であれば更衣室がほしいものだと佐伯は思っていたが、この状況で贅沢はいえない。

だが、彼女らの下着姿を見ていた伊達が秋宮に言った。

「なぁ、秋宮。やっぱりソフィアって胸でかいよな」

 秋宮は大きくため息をつくと彼に言葉を返す。

「伊達、そんなわかりきったこと言ってどうするんだよ。ていうか佐伯がそんなにないのだって戦闘の邪魔になるから小さくしてるだけだぞ?言っちゃ悪いが胸のサイズなんて後付でいくらでも変えられる今日に胸の大きさで鼻の下伸ばすやつなんてお前ぐらいのもんだぞ」

 伊達は秋宮に諭されるようにそういわれ、秋宮に小さく反論した。

「お前はわかってねぇな・・・・まぁ、お前の言うこともわかるけどさ」

 そして話は佐伯とソフィアのほうに戻すと戦闘服置き場には彼らが普段着用している戦闘服のほかに強化スーツなども置かれていた。

「恵一、強化スーツとかって使ってもいいんだよね」

 そう聞かれた秋宮は手に取ったライフルのゆがみなどをチェックしながら言った。

「ああ、別にかまわないけど」

 秋宮の承諾がとれた佐伯とソフィアは一着の強化スーツを手に取った。

 そのスーツはE39型強化服と呼ばれる特殊戦闘服であった。

 防弾性能に優れ、BIと同期することでそのつど環境に適応した迷彩の柄にスーツの色を変えることができ、なおかつ電磁迷彩発生装置も内蔵されている。

佐伯とソフィアはスーツを着ると同型のE39型タクティカルベストを装着し、BIとE39型強化服とタクティカルベストを同期する。

すると、BIのAR表示に迷彩柄の選択項目が追加され佐伯とソフィアはテストを兼ねて数回柄を変え、異常なく柄が変わることを確認すると秋宮たちの下へと向かった。

秋宮たちは、武装を選び自分たちが使う武装はそこに置かれている整備机の上においていたがまだ銃器を決められてはいなかった。

だが、佐伯たちが来ると戦闘服の置き場に向かい佐伯たちと同じくE39型強化服とE39型タクティカルベストを着用しBIと同期する。

佐伯たちと同じように数回柄を変えて異常なく柄が変わることを確認し再び武装を置いてある整備机の元に戻っていく。

 そして、銃器に関しては全員が同じ銃である21式自動小銃を選択し、拳銃は私用の拳銃を除き、隊で共通して使用する拳銃はP36を選択した。P36は富岡工業の最新式拳銃で装弾数は十八発という多さでありながら軽く射程は長い。

 そして、狙撃兵であるソフィアは通常であれば違うライフルを携行するが補給が受けられるかわからない状況での弾薬の共通化を考え21式自動小銃を狙撃銃モデルに改造したものを私用することとなった。

 タクティカルベストに弾倉や手榴弾などをポーチに入れていき最後に非常用品バックパックを背負い、タブレットで持ち出し装備をチェックすると武器庫から出て行く。

 受付けで武器管理主任兵にタブレットを見せると彼はそのデータを吸い出してタブレットを秋宮に返し、秋宮たちは武器管理庫から出ていった。

 すでに時間はヘリ搭乗時間が近くなっており、彼らは指定されていたヘリポートへと向かった。

 ヘリポートではヘリの離発着が続いている。そのヘリはほとんどがこれからの総攻撃に備えて軍艦などに物資を詰め込んだりするための物資の運搬での離発着である。

 第一機動空挺課はその物資運搬のためのヘリの一機に乗ることになっていた。

 サーチライトと照明で照らされるヘリポートの中で第一機動空挺課の乗り込むヘリは彼らが到着してもしばらく弾薬などの物資の積み込みをしていた。

 第一機動空挺課の隊員と同じくすることもなく待機していたパイロットの下へと第一機動空挺課は向かった。

 パイロットの下に到着すると、秋宮がパイロットに挨拶をする。

「第一機動空挺課隊長の秋宮 恵一です。今日はよろしくお願いします」

 そういって右手を差し出すと、パイロットはそれまで吸っていたタバコを足元に落としてブーツで踏みつけて火を消すとその手を握り握手をすると同時にいった。

「いや、こちらこそよろしく頼むよ。三時間ぐらい狭い機内で過ごしてもらうことになるが、しばし我慢してくれ」

 そうしているうちに、物資の積み込みが終了したらしく、パイロットが離陸する準備に入るように声をかけられる。

「じゃあ、貨物スペースの簡易座席に座ってシートベルトしておいてくれ」

 第一機動空挺課の隊員たちはタラップを踏んでヘリに乗り込み荷物を簡易座席下のネットのついた収納スペースに入れると21式自動小銃を抱えてシートベルトをつけた。

 そのうちに、タラップが折りたたまれそのタラップの下のハッチが閉まる。

 バラバラとローターの動く音が響き、数十秒後に浮遊感を感じる。

 それからは、パイロットの言ったとおり三時間ほどヘリの中でなにもすることなく過ごし佐世保に到着した。

 佐世保基地に到着し、ヘリを降りると彼らを迎えに来た士官が秋宮に聞いた。

「第一機動空挺課の皆様ですか?」

 ヘリのプロペラの音がうるさくその声は必然的に大きくなっていた。

「ああ、そうだ」

 怒鳴るように言ってやっと相手に聞こえるほどだ。隊員たちは歩き始めた士官について歩きながら彼の話を聞いた。

「お待ちしていました。上からは皆様が到着したら作戦まで休息をとらせるようにとのことなので宿舎に部屋を用意しています」

 それからしばらく歩くとプレハブのような簡単なつくりの宿舎に到着した。

 士官はプレハブの扉の鍵を開けると、彼らになにかあれば自分を探してくれと言い残し、彼のBIのアドレスを教えると彼の本来の業務へと戻って行った。

 プレハブの中に入ると、彼らの人数分のベッドが用意されていた。

 彼らは個々にベッドに陣取ると、21式自動小銃をベッドの脇に立てかけてタクティカルベストだけを脱ぐとベッドに横になったりおいてあるテレビを見たりして時間を潰していて一時間ほどするとプレハブの扉が二回ほどノックされた。

 扉に一番近かった佐伯がベッドから降りて扉のほうへと向かう。佐伯はいつもの癖か腰の拳銃に手を当ててドアスコープを覗くとそこにはさきほどの士官とは違う兵士が立っていた。

 ゆっくりと少しだけ扉を開けると用件を聞いた。

「南雲機関所属、第一特務小隊所属の音無 礼二少尉です。」

 そういって彼は敬礼をした。佐伯は扉を開けて彼を中に入れると扉を閉めてベッドに座った。

 音無は扉から少し入ったところで止まり話を始めた。

「第一特務小隊は少しばかりですが皆様の今回の作戦のバックアップをします。知ってるとは思いますが、総攻撃の開始は六時間後に開始です。我々は韓国本国へと向かう駆逐艦に乗り込み上陸部隊にまぎれて韓国に潜入する予定です。潜入後は私たちと第一機動空挺課だけで撤退以外の援護は期待できません。潜入から任務完了までの時間は軍港が攻撃され首都が慌てふためいている時間だけですからせいぜい二日といったところです。標的の場所はこちらでつかんでいますのであとは殺害だけです」

 第一機動空挺課の隊員たちは銃などの手入れをしながらそれを聞いていた。そして伊達が口を開いた。

「駆逐艦への乗り込みは何時間後?」

 それを聞いた音無はBIで予定を確認すると答えた。

「えーと四時間後ですね。乗り込んだ後韓国へと向けて出航です」

 伊達はうなづいて答えると音無は「他に質問は?」と隊員たちに聞いた。

 全員が「特にない」と答えると彼は敬礼をしてプレハブから出て行った。

 それから彼らは銃の簡易整備などを一通り終えると、作戦開始時刻までベッドに横になり睡眠をとった。

 それから三時間半ほど睡眠をとると、BIの目覚まし機能でアラームが頭に鳴り響く。

 目を覚ますとアラームは自動的に消える。プレハブの窓にかかっているブラインドを覗くと外では出撃直前ということもあり兵士ではなく整備員が走っている。

 第一機動空挺課の隊員たちは装備を持つとプレハブから外に出て搭乗艦へと向かった。

 整備車両などをよけながら歩いて搭乗艦へと向かう。

 搭乗艦は古鷹型一番艦「古鷹」である。

 艦頭に「古鷹」と書かれた艦の搭乗口へと向かう。

 艦に乗り込むと艦橋へと向かい艦長への挨拶を済ませようとする。

 その艦橋には艦長への挨拶のあとに会いに行こうと思っていた音無が艦長と話していた。

 第一機動空挺課の存在に艦長が気づくと音無も振り向いて彼らに挨拶した。

「音無少尉、艦長への挨拶の後に伺おうと思っていたのですが。ちょうどよかったです」

「ああ、よかったです。もう出航なので。一時間ほどで作戦海域に到着する予定です。機を見て出撃して潜入します」

 それに続いて艦長が彼らに言った。

「すまないが君たちの待機する部屋は用意できなかったから艦橋の隅の席に座っていてくれ。作戦開始後はすぐに君たちの作戦も開始されるから問題はないと思う」

 秋宮がそれに承諾すると、誘導されて用意されていた艦橋の予備席に座る。そのとき、艦長の下に兵士が小走りに走ってくると出航準備完了を知らせる。

 艦長は出航を本部に無線で知らせるように通信係にいい、古鷹は出航した。

 出航してからしばらくすると、艦長が第一機動空挺課の隊員の下にきて言い渡した。

「君たちのコードネームだが、今回は君たちを『ストライカー』とすると先ほど司令部から連絡が来た。番号はそのままだ。それとな。今まではボートでの上陸だったが変更だ。後部へリポートにあるヘリに乗ってもらう」

 全員が「了解」と答えた。コードネームや作戦が直前で変わった理由は諜報員などによる情報流出を見込んでのことだろう。

 それからは予定通り古鷹の所属する第三特殊作戦艦隊の艦と共に韓国海域へと進軍した。

 海域に到着すると艦を停め攻撃開始時間まで待機する。

 その待機時間に第一機動空挺課の隊員は出撃準備へと移る。

 駆逐艦の船尾にある小型艇の射出口へと向かうと装甲で覆われた小型艇に必要物を詰め込んでそれに乗り込んだ。

 第一次攻撃の時刻は彼らが準備を終えると同時に訪れた。

 戦闘機が発進するため空母の通信区画内は非常に慌しかった。

「ストライカー2発進せよ」「イーグル4出撃せよ」など機体のコードネームを呼んだ後に発進を促し、その指示に従って戦闘機や爆撃機が発進していく。

戦闘機が発進されると共に駆逐艦からは短距離ミサイルが放たれる。

 ミサイルは軍港へと着弾するよりも前に海上に展開している対空艦部隊に撃ち落されほとんどが着弾せず上空で爆発した。

 それは古鷹をはじめ各艦の艦橋のモニターで表示されていた。

 だが、それに動じるものは誰一人いなかった。ミサイルが撃ち落されることはもともとの計画段階でわかっていたことであったし、ミサイルは対空砲火を爆撃機や戦闘機に向けないための囮でしかないのだ。そのミサイルには普通のミサイルとは違いチャフグレネードと同じような原理の散布物が入っておりミサイルを上空で撃墜した対空艦の上空では通常のレーダーは反応しなくなっていた。

 もちろん日本國軍の爆撃機や戦闘機は対策をされておりその散布物には影響されないレーダーを搭載していた。

 爆撃機の半数は基地に対しての爆撃は行わず、対空艦の上に爆撃をする。

 対空艦は轟沈とまではいかないが精密爆撃を行ったため対空砲などの有効な対空装備をピンポイントで爆撃しその戦術的価値をなくした。

 そして残りの半数の爆撃機は基地を爆撃し、それに随伴した戦闘機も使用していなかったミサイルを管制塔などに対して放ち基地への打撃を与えた。

 韓国軍基地への有効な攻撃が行われたことが確認されると強襲揚陸艦が近づき、上陸部隊のヘリも発進する。

 第一機動空挺課も古鷹の船尾にあるヘリポートへと向かう。

 その手には銃だけが握られており、周りの兵士はおのずと彼らの影響で緊張感が高まっていた。

 座席は2人分しかなく、残りの二人は床に直接座り脚を投げ出す形で座ることになった。

 スナイパーであるソフィアと秋宮が床に座り残りの二人は座席に座った。

 ヘリが発進してから十分ほどで基地上空へと到着する。

 対空設備はすでに爆撃や戦闘機によるミサイル攻撃で潰されていた。

 本来の上陸部隊は残存兵力を拘束または無力化し基地を占拠する目的で派遣されるが第一機動空挺課はその占拠の際の騒ぎにまぎれてターゲットの元へと向かう。

 ソフィアは上空から銃を持ってすでに上陸している兵士と交戦している敵兵を狙撃する。

 秋宮もホロサイトを覗き、敵兵のほうを射撃する。

 そうしているうちにパイロットから通信が入る。

『着陸します。着陸地点は射撃されている模様なので滞空での降下になります』

『了解だ。4mまでは降りてくれ!』

 秋宮がそう言うと、パイロットは『了解』と短く返した。

 ヘリは地上4m地点でホバリングし、隊員たちはヘリから飛び降りる。

 全員が降下すると、ヘリはすぐに離脱していく。

 先鋒部隊が設置した防弾シートバリケードに身を隠し、状況を確認するため秋宮はBIで隊員に通信をする。

『よし、車を探して基地を離脱するぞ。とにかくここから抜け出す』

 そう言うと、三人はうなづき防弾シートバリケードから身を出し21式自動小銃を撃つ。

 敵兵に的確に命中させ、バリケードを出て倒れ、物陰に隠れてしまった敵兵のほうへと向かう。

 歩きながらホルスターから拳銃を抜いて、倒れた敵兵の頭部に拳銃の弾を撃ち込む。

 瞬間的に7名の敵兵を排除し、彼らは先に進んだ。

 その行動に無駄はなく、そこにいた味方兵士はその錬度に感嘆をこぼした。

『ストライカー4。そこの事務所から車のキーを捜して来い』

 秋宮がすぐ近くの事務所を指差しながら伊達にそういい、伊達はその事務所に入っていく。

 秋宮たちは周辺を警戒していたが、伊達が事務所の隣に停められている軽装甲車のキーを見つけるのには時間がかからず、伊達がキーを見つけて事務所から出てくると、軽装甲車のほうへと後ずさりのように歩き、周囲を警戒しながら軽装甲車に近づいた。

 伊達はその間に、運転席のドアを開けてエンジンをかけていた。他の隊員たちが軽装甲車に乗り込むと伊達はギアをドライブに入れてアクセルを踏むと基地から抜け出した。

 基地を出ると、高速道路に乗りしばらくいく当てもなく走った。

 後部座席に乗っていた秋宮が、伊達に提案する。

「軍用の装甲車は目立ちはしないか?今は基地が攻撃されてるからいいけれど、そのうちにこれを乗り回すのは不自然になってくるぞ」

 それにはソフィアや佐伯も首を縦に振ったし、伊達もその意見は至極最もであると思った。

「とりあえず、高速を降りて適当な地下駐車場に入りましょう」

 ソフィアはそういい、佐伯がその意図を汲み取り続けて言った。

「地下駐車場なら車を盗んでいてもバレないわ」

 そういっている間に高速道路の降り口があり、伊達はウィンカーを出して車線をそちらのほうへと行き高速道路を降りた。

 高速道路を降りると、しばらく適当に走り地下駐車場を探した。

 そうしているうちに大きめのデパートの地下駐車場を見つけそこに入っていく。

 その地下駐車場は地下二階まであり、伊達は地下二階の奥のほうまで行き軽装甲車を止めると、全員がそこを降りて軽装甲車を乗り捨てた。

 できるだけ目立たない車で4人が乗れる車を探した。

 そうして探していると、秋宮はちょうどよい車を発見した。

 それは白のベンツのセダンであった。

 秋宮は隊員を呼び集め、それにすることを決めると携帯用コンピューターを取り出してセキリュティーを解除すると、電子ロックを解除して車に乗り込んだ。

 伊達はそれに乗り込むと、一息ついて言った。

「ふぅ、いや、こういうときに言うことじゃないかもしれんが。ベンツのシートって本当に柔らかくて寝ちまいそうだよ。こんなもん自分の車だったらベンツ以外乗れなくなるぜ。軍用の装甲車のシートもこれぐらい柔らかきゃいいんだけどな」

 秋宮はそんな伊達の言葉にフッと笑いながら、伊達が感嘆のあまり押し忘れているエンジンスタートボタンを押す。

 すると、エンジンが起動して、3Dバーチャル表示のカーナビが起動しドリンクホルダーなどがオーディオ機器の下からニュウっという感じに出てくる。

 運転手がラジオをつけたままエンジンを切ったのかラジオが勝手に流れ始める。

 彼らは誰一人韓国語がわかるものはいなかったが、BIが自動的に耳から入ってくる韓国語を翻訳するため不自由はなかった。

 すぐに出発するつもりであった彼らであったが、そのラジオの内容からしばらく聞き入ることになった。

『二時間ほど前、日本國軍および日本國民間軍事会社の戦闘員と見られる部隊が首都に程近いブサン基地に強襲作戦を行いました。これによる韓国軍の被害は軽微で・・・』

 その言葉の信用性は彼らが一番よくわかっていた。

 韓国の首都は十年ほど前に北朝鮮からの攻撃によって廃墟となったソウルからブサンへと移されていた。

 そして、彼らがラジオの内容で一番聞き耳を立てたのはその後のキャスターの言葉であった。

『韓国軍と強い連携を持っている大韓民国軍事警備会社の社長キム・チョンヒ氏と韓国大統領リ・ヒョンソン氏は官邸で緊急国防会議を行うことが決定し、これからの韓国の国防体制について・・・・』

 その内容からするに、彼らの暗殺目標は幸運にも一箇所に集まるということであった。

「よし、これからの行動は決まったな。あとはどうやって殺害するかだ」

 秋宮がそう言うと、佐伯が言った。

「やっぱり狙撃が妥当だと思うわ。官邸ということはこの状況だし厳戒態勢が敷かれているだろうし、下手をすれば多くの部隊を敵に回すわ。サプレッサーもあるしソフィアの21式なら最高2km狙撃もできるわ」

 秋宮はそれにうなづきつつも悩んでいた。

「ただ、首都であるブサンに1km近く障害物のない狙撃ポイントがあるかって問題がある。1km以内で狙撃をすれば場所は特定されるだろう。やはりここは官邸への潜入が妥当だと思うんだが」

 この場合、佐伯の意見も間違えではなかったし、多少の危険を伴う秋宮の意見も間違えではなかった。

 伊達はこの隊であれば官邸潜入による殺害も可能だと思っていたし、ソフィアも最大2kmでの狙撃を成功させる自信もあった。

 そこで伊達が口を開き、悩む彼らに提案をした。

「とりあえず、南雲機関に官邸から1kmから2km以内で狙撃が可能なポイントがあるかどうかを探してもらって、あればそこからの狙撃で、なければ官邸潜入にすればいいんじゃないか?」

 その提案はごく単純なことであったが、全員が賛成した。

 秋宮はBIの秘匿回線を使用して南雲機関第一特務小隊の音無に連絡を取った。

『こちらストライカー1、少し頼みたいことがある今送った位置情報から1kmから2km以内で狙撃が可能な障害物のない狙撃ポイントはあるか?できるだけ多く教えてくれ』

 そう言うと、音無は「了解」と短く答えて、彼のいる情報室で検索を始めた。

 それから一分ほどで検索を終えて音無は通信を返した。

『ストライカー1、検索したが条件に当てはまる場所はなかった。首都ということもありビルが多すぎる』

『了解だ。アウト』

 そういって通信を切る。それを共有で聞いていた隊員たちは何も言わずとも官邸潜入が決まったとわかっていた。

「で、どうやって潜入するの?」

 佐伯がそういって、全員が考え、数分して考えが思いついたのはソフィアであった。

「官邸の横にある大韓民国記念ビルから潜入できませんか?」

 その言葉に全員がソフィアは頭がおかしくなったのではないかと疑い、きょとんとした顔で彼女を見た。

「あ、えっと計画をいいますね」

そう言うとソフィアはBIの共有回線でいくつかの写真やデータを送信した。

「まずは、大韓民国記念ビルの画像を見てください。そのビルは、屋上が斜めに切り取られたような形になっています。おそらくそのビルであれば警戒は緩いでしょうから電磁迷彩発生装置を使用すれば簡単に入れるはずです。最上階まで行き、そこからその屋上をすべり落ちれば、官邸内に潜入できませんか?」

 秋宮たちはその資料をみながら簡単に計算し、ソフィアの計画を検討する。

「まぁ、無理じゃないな。だが、あんまりに大胆すぎやしないか?」

 ソフィアは秋宮に同意する伊達と佐伯に説明するように言った。

「いえ、私もいろいろと考えたのですが、排水管やダクトなどはセンサーなどがついており、侵入すればすぐにバレます。そうなると、この作戦以外には正面突破ぐらいしか。さすがに官邸だけあって警備は万全ですから」

 秋宮はしばらく考えると、決断を下した。

「ソフィアの案でいこう。ただし、偵察用ミニドローンによる徹底的な偵察をし目標の位置やそこまでの戦力を把握した上で突入する。そうすればおそらく失敗ということはないだろうが、問題は脱出をどうするか」

 すると、伊達が最初に意見を言った。

「脱出はそんなに悩む必要はないんじゃないか?煙幕張って強行突破で正面から出るなり裏から出るなりすれば」

 だが、その意見に対して佐伯がため息をつきながら反論した。

「第一に官邸を襲撃した時点で近くにいる警備任務の軍や警察の特殊部隊が官邸をのは目に見えてるわ。さすがの義体といえど、それだけの兵士から集中砲火を食らったりすれば死亡する恐れも十分あるわ。煙幕にしたって数秒しか効き目はないでしょ」

 伊達はその反論にたいして「まぁ、確かに」と納得し頭を抱えた。

 だが、そこで佐伯は新たな案を提示した。

「でも、要は私たちが、そこで一時的に死んだと思わせればいいわけでしょう?それだけなら簡単な話で多少古典的なやり方ではあるけれどすり替えればいいのよ。敵兵と」

 それはあまりに古典的で、簡単すぎるために三人は思いつかなかった手であった。

「私たちは暗殺後、少しのあいだそこにとどまり警備兵たちと戦闘をする。軍が到着するにはしばらく時間がかかるからその間に殲滅し、装備を入れ替える。韓国軍の兵士はほとんどがバラクラバをしているからそれをつければバレない。私たちも覆面をしていたことにしてすり替えた兵士にも日本國軍のバラクラバをつけさせて私たちは負傷兵のフリをして官邸を出る。あとは救急車なり搬送車をジャックして合流地点まで逃げればこっちの勝ちでしょう?」

 他の三人はその単純すぎる作戦に疑問符を浮かべ大変不安があったがそれ以外には手はないだろうと確信していた。

「よし、じゃあその案で行こうか」

 秋宮がそう言うと車で官邸にできるだけ近い場所まで向かった。

 三十分ほど走ると、官邸まで一キロの地点に到着した。すでに周りには警備の兵士が何人かおり今の軍服のまま降りれば捕まるだろう。

「隠れ蓑の電源を入れるぞ」

 そういうと腰にある電磁迷彩発生装置の電源を入れ体が回りに溶け込み限りなく透明になり、車のドアを少しだけ開けて車を降りると大韓民国記念ビルへと近づいていく。

 万が一サウンドセンサーなどで足音などを発見されるのを防ぐため忍び足で近づきビルから50m地点で匍匐前進で前に進む。正面口まで到達すると警備の兵士の視線が正面口の自動ドアから入り込む。

 ビルの中はすでに基地への攻撃を受けて社員は避難していたためもぬけの殻である。

 エントランスを超えて奥にあるエレベーターホールに向かうとエレベーターで行ける最上階である57階へと向かった。

 伊達はエレベーター内で隠れ蓑を解除しようとしたが、それを佐伯が無言で止めた。

 それはエレベーター内にある監視カメラに気づいてのことであった。

 高速エレベーターであったため一分ほどで57階に到着し、そこで降りるとそこは社員が休憩するための場所なのだろうか見晴らしのよい高級感の漂うラウンジであった。

 ラウンジの奥にある非常口から出てそこからさらに上へと延びる非常階段を使い屋根の上に向かった。

 屋根の一番上は整備用の足場と手すりがありそこから落ちれば生身ではただでは済まない。

「飛行型ドローンで中を確認して降下するぞ」

 秋宮がそういうと、ソフィアが小型のドローンを取り出しそれを空中に投げた。

 操作はBIによって行われドローンに搭載されているカメラの映像は全員の視界に投影されている。

 官邸の窓から部屋の中を見るとそこには計画通りターゲットである二人がいた。

「計画通りにいくぞ。スリーカウントで俺から順番に降りていく」

 そういうと手信号で三数え、秋宮は手すりを越えて滑り台を滑るようにガラス張りの屋根を滑り落ちていく。

 その上からも続々と隊員が滑り落ちていった。秋宮が一番最初に官邸のガラス張りの屋根を突き破り、地面に着地するとともにローリングするように着地した。

 そこから起き上がると同時にレッグホルスターのP36を取り出して、目の前にいるキム・チョンヒの頭部を狙い射撃した。

 彼の額部分にきれいに穴があき脳髄が後頭部から飛び出る。

 そして、そのまま辺りの敵兵を撃ち殺していき弾が切れるとホルスターに戻して21式自動小銃を構える。

 その間数秒の間に他の隊員もガラスを突き破り降りてきており、リ・ビョンホンは佐伯が撃った。

 その場には警備としていた憲兵の遺体とターゲットである二名の遺体があった。

 外にいた警備兵も中に入ってきて、激しい銃撃戦が始まる。

 隊員たちは棚や近くにあるソファーなどに身を隠し、ライフルで応戦する。

 隊員たちは視覚情報をBIで共有し、頭を出さずに敵を撃つということをする。

 すべての制圧に一分かかり、彼らは当初の計画通りあまり血で汚れていない敵兵を見つけると服を脱がしそれを着替える。

 自分たちの脱いだ制服をできるだけ丁寧に着せ、急所に数発の銃弾を撃ち込み射殺されたように偽装する。

 負傷兵役を韓国語の喋れないソフィアと伊達が務め佐伯と秋宮は軽度の負傷で二人を運び出す兵士の役を務める。

 そのうちにサイレンが聞こえてくると、ソフィアと伊達が壁にもたれて重症兵士のふりをし、秋宮と佐伯は応急処置をするふりをした。

 ポーチからガーゼを取り出すと死んでいる敵兵の傷口や床にある血だまりにガーゼを置いて滴るほどの血を含ませ、手にも血を塗る。ガーゼを負傷兵役の握らせ彼らにも血を塗る。そうしているうちに警察機動隊と憲兵が入ってきて彼らに銃を向ける。ソフィアと伊達は苦しんでいるふりをし、秋宮が韓国語で話し始めた。

「やっと来たのか!遅いぞ。いきなり奴らが入ってきて・・・・護衛対象は守れなかった・・・・・

こいつと彼は重症だ!早く運びだしたい!」

 そういうと憲兵は拳銃をおろし、装備を着せ替えた兵士のもとに行き簡単に遺体を調べ始めた。胸元にある日章旗のマークを見つけ、憲兵は言った。

「クソっ日本人め・・・・お前らは負傷兵を運び出していい。表に救急車が来ているそれに乗って陸軍病院に向かえ」

 そういわれ。秋宮と佐伯は負傷兵役の二人の腕を首に回して担ぐと正面口へと向かう。

 救急車に乗り込むと二人を担架に乗せ二人も一緒に乗るとドアを閉めた。

 それとちょうど同じころ官邸の中で日本兵に偽装した韓国兵の遺体を調べていた憲兵はおかしなことに気づく。

 ガーゼや手は血だらけであったのに正面口まで向かうときに血の道ができていないということと、そして遺体のバラクラバをとると、それは明らかに日本人の顔ではなく朝鮮人の顔であったためだ。

 彼らが救急車に乗り込み発進したとき、憲兵は自分がだまされていたことに気づきすぐさま入口に向かって走り救急車が発進したことに気づくと拳銃を構え数発発砲した。

 そのうちの数発は救急車に当たったが救急車を止めるには至らなかった。

 救急隊員は救急車を止めようとしたが、それよりも前に彼らによって殺害され救急車の運転は伊達がしていた。

 秋宮はBIの通信で司令部と連絡を取っていた。

『こちらストライカー1だ。プレゼントを受け取った。ケーキの受け取り場所は』

 プレゼントとは暗殺ターゲットのことであり、受け取るということは殺害したということだ。ケーキの受け取り場所というのは合流地点ということだ。

『ストライカー各員に次ぐ。プランB地点での合流だ』

 それを聞くと通信を切って一息ついた。

 伊達は合流地点である市街地から20km地点にある廃校へと向かった。

 その途中、ソウルから首都外へ出ようとした時のことである。そこには検問が敷かれそこを通る車は一台一台入念に捜索されていた。

 救急車とはいえ、簡単な捜査も免れずには通れないだろう。中には救急隊員の遺体もあるし、運転しているのは韓国兵の格好をしている伊達だ。

「伊達、運転を変われ。お前は韓国語話せないだろ」

 そういって検問官がそこに到達するよりも前に秋宮は運転席に座り、伊達は患者収容スペースに座った。

 アサルトライフルを持った検問官がゆっくりと車列の右側を歩き、外見に異常がないか見ていた。

 そして、車が一台検問を抜けると前に進むように指示される。

 そして前に一台車がおり、それが検問を通れば次は秋宮たちの救急車の番であった。

 前のセダンが検問を通ると検問官が彼らの車両を検査し始めた。

 スキャナーを車に当てて爆発物などの検査をし、検問官は秋宮に身分証の提示を求めた。

 そんなこともあろうかと前もって準備されていたダミーの韓国陸軍の身分証を提示した。

 カードをスキャンするとそれを秋宮に返した。

「救急か?悪いが中身だけ見させてもらうぞ」

 そういわれ検問官が後ろの収容ハッチを開けようと車体後部に向かった。

 秋宮はBIを使い隊員たちに告げた。

『ハッチが開いたら憲兵を殺せ。強行突破だ』

 そういうと、秋宮はレッグホルスターの拳銃を握りすぐに撃てるようにした。

 患者収容スペースでは佐伯とソフィアがハッチが開く時を今か今かと待っている。

 そして、ハッチが開くと佐伯は一人の兵士の頭を撃ち抜き、ソフィアは首にナイフを突き立て殺害した。そして伊達は重量の関係で邪魔になる救急隊員の遺体を乗せてあった担架を外に放り投げハッチを閉めた。

 ソフィアたちが敵兵を殺害しているころ秋宮はすぐ横にいた検問官の頭を撃ち抜き、ギアをドライブに入れ、ハッチが閉まる音を聞くとアクセルと踏み急発進させた。

 突破しようとする救急車に集中砲火が浴びせられ防弾ではない窓は弾を貫通させた。

 それだけではなく救急車のあらゆるところに穴が開き、いつガソリンに点火してもおかしくないほどの弾を受けていた。

 秋宮の体には数発の弾をうけたが痛覚センサーを遮断していたおかげで体に弾が当たったときにボスっという感覚を感じるのみであった。

 検問所を突破したもののもちろん追跡車両にも追われ、ガソリンタンクにも穴が開いたのだろう。ガソリンの残量を示すメーターは急激にLに近づいている。

そして最悪なことに次の瞬間車体が不意に揺れた。

 それは後輪の左側のタイヤに被弾したことでパンクしているということを示していた。

「クッソ!後ろの左パンクした!ガソリンも漏れてる!次の橋で止まるぞ!」

 隊員たちにそう告げると秋宮は残り数百メートルをアクセル全開で走った。

「恵一!集合地点を変更させるわよ」

 佐伯がそういい、BIを使って本部と連絡を取っていた。

 橋に差し掛かった時、右側の車輪もパンクし車体はそれまで以上に暴れた。

 そして橋のつなぎ目にタイヤが躓きそのまま車体は横転した。

 橋に対し、横になって車体が倒れた。

 後部ハッチをあけソフィアと佐伯と伊達は這い出し秋宮は運転席の扉を開けようとしたがゆがみがひどく開かなかったため銃弾によってもろくなった窓を蹴りそこから這い出した。

 先に救急車から脱出した三人は横転した車体に体を隠し、秋宮もそこに身を隠した。

 脱出する際に佐伯たちは秋宮の分のライフルも持ち出しておりそれを秋宮に渡した。

 秋宮はそれに弾倉を入れ、簡単な動作確認を行いながら佐伯に聞いた。

「で、本部はここに来るって?」

「ええ、ここにきてくれるそうよ。まぁ、それまで15分はかかるって。それまで生きてればいいけどね」

 そういっているうちに追跡をしてきていた韓国兵がぞろぞろと橋の入口にたむろした。

 そしてそこから彼らに銃撃を開始した。

 秋宮たちはその銃撃の中、救急車を盾にして敵兵を銃撃した。

 追っ手の敵兵力は機銃付き装甲機動車二台に兵士役十五名であった。

 ソフィアは佐伯が車から体を出して撃ち弾幕を張っているうちに確実に一人ずつ射殺していく。

 機銃についている兵士を優先して射殺する。

 だが、そうしているうちに手榴弾が二つ彼らの隠れている救急車の隣に投げられた。

 秋宮はそれに気づくと大声で叫んだ。

「手榴弾だ!離れろぉ!」

 そういうと彼らは救急車から即座に離れ、そこから10mほど離れたときに手榴弾は爆発し、救急車に残っていたガソリンに引火し誘爆を引き起こした。

 その時、爆発によって飛んできた金属片が伊達の足に刺さった。

「伊達、大丈夫か?」

 そういいながら秋宮に歩み寄った。

 右腕でライフルを構えて進んでくる敵兵を撃つ。

 佐伯とソフィアも弾を撃ち続けるが、障害物もない彼らはすぐに敵兵の弾に被弾する。

 痛覚センサーは切っているものの、数十発の弾を食らえば動きも制限される。

 佐伯とソフィアはその場に倒れ、秋宮は伊達を引きづりながら後ろに下がるがすぐに数発の被弾をし、立膝をつくような体制でしか体制を保てなくなる。

 立膝を月しばらく応射しているうちに腕に抱えていた伊達のほうから白い液体が飛び秋宮の顔にかかり腕にかかる重量はずっしりと重くなっていた。。

 恐る恐る伊達のほうを見ると、首はぶらっとなり目は見開いていた。

 その額には穴が開いており、彼が死んでいることを確信した。

 何かが頭ではじけるような感覚が走るとともに秋宮は伊達の遺体を地面に置くとライフルをしっかりと構えて確実に敵兵を殺害していく。

 軋みをあげる義体を動かし、敵兵のほうへと近づきながらライフルを撃つ。

 弾が切れるとスペアの弾を取ろうと腹部の弾倉ケースを探すが一つもないためライフルを捨て、ホルスターから拳銃を取り出して射撃する。

 反動をできるだけ小さく、確実に頭部に当てるために両手でしっかりと持ち、トリガーを引く。敵兵を迷いもなく撃つ。先ほど弾を使っていたこともあり七発撃つと弾が切れるが弾倉を入れ替えて再び射撃する。だが、その間も体に弾を食らっており、そのたびに彼の体は軋みをあげ、ついには視覚にもノイズが走る。

 拳銃の弾が切れると足元に落ちている敵兵のライフルを使い応戦する。

 伊達が死亡してからわずか二分の間に敵の増援含め二十名を殺害していた。

 だが、すでに義体の限界を超えた秋宮は敵兵がいなくなることを確認すると意識が途切れ橋の中央に倒れた。

 佐伯とソフィアは這うこともできずに倒れていた。

 それから数分後、日本國軍のヘリがその場に到着した。

 燃えた救急車から黒煙が上がり、遺体の多さに日本兵は驚いた。

 橋は横幅も広かったためヘリはそこに着陸し、ソフィアと佐伯が最初に収容され、秋宮もすぐに収容された。

 伊達が最後に遺体袋に入れられ収容されると、ヘリは彼らの搭乗艦である古鷹へと向かった。

 佐伯とソフィアは被弾し、体を動かすことは困難であったが二人はさほど重症ではなかったが、秋宮は重症であった。ヘリの中で秋宮は人工呼吸器を装着され脳波を測定されて応急処置が施されていた。

 三十分ほどで母艦に到着し、秋宮は古鷹の医療室のICUに入れられた。

 それから適切な治療により秋宮は一命をとりとめたが、その義体はすでに限界を超えており、義体の交換を余儀なくされる状況であった。

 佐伯とソフィアは一部パーツを交換し、すぐに動けるようにはなっていた。

 秋宮は目を覚ますまでに三日間昏睡状態が続き、その間に古鷹のICUから東京陸軍病院に移されていた。

 そして日韓戦争については彼らの活躍や日本國軍の活躍もあり、首都総攻撃作戦は成功し、日本國軍は勝利した。

 だが、戦争は終わっておらずまだ韓国軍の抵抗は続いていた。一時占拠した軍港やそのほかの軍港から出航した駆逐艦などにより、海上での戦闘などが続いていた。

 だが、ほぼ日本の勝利は決定したようなもので、韓国軍にももう抵抗するすべはあまり残されていなかった。

 首都総攻撃作戦から三日後、秋宮が目を覚ますと視界はぼやけていたが、心拍を示す断続的なピッピッという音が聞こえ、首を少し動かすと自分の体に何本のケーブルが挿さっていることに気づいた。

 そうしているうちに看護婦が秋宮が目を覚ましたことに気づき、急いで医者を呼びに行った。

 一分ほどで医者が走って秋宮のもとにきて心拍を確認すると、聴覚を接続するケーブルを挿し込み秋宮に話をした。

「君の精神状態や脳や脊髄には損傷はないから安心してほしいのだが、問題があってね。君の義体が受けた損傷がひどすぎるために義体を交換しなくてはいけない。一応君の今の義体と同じ型のマスクを用意してはいるんだが、義体はどうする?」

 それは、旧型であった彼の義体をどの新型義体に交換するかを相談している内容であった。

「とりあえず、軍用の最新型義体のタイプBにしてくれ。顔はそのままでいい」

「そうか。じゃあ、君の会社にそう伝えておく。早ければ今日の夜には換装作業に移れると思うが準備が整い次第初めていいかな?」

「はい、お願いします」

 そういうと、医者は病室を出ていき、秋宮は精神的な疲れから再び眠りについた。

 医者はEMS社に連絡を取り、秋宮の指示した軍用の最新型義体タイプBを発注するように注文すると、EMS社の整備担当は会社に在庫があるため、すぐに輸送するといいその日の18時には義体が病院に届き、それから二時間ほどですべての換装手術の準備が整った。

 秋宮の義体換装手術はすぐに施術され、その施術手術は7時間もかかったが、無事に終了した。制御プログラムなどのインストールのため3時間ほどは動くこともできなかったがインストールが終わると、それまで十分な睡眠をとっていた秋宮はすぐに動くこともできた。

 それから義体のフィッティング検査などが行われ問題がないことが確認されると、翌日の12時には退院が決定した。

 その夜、秋宮は睡眠をとったり制御プログラムを自信でカスタマイズしたりしていた。

 翌日、朝食を食べるとナノマシンによる消化活動を正常に行いエネルギーに変換できているかを確認し、それが正常に行われていることを確認すると、退院までの時間を待った。

 11時30分ほどに佐伯とソフィアが病室に訪れ、彼にEMS社の制服を彼に渡し佐伯は秋宮に言った。

「元気そうね。全身義体の便利なところよね。重症になってもすぐに治るあたりは」

 そしてその隣でソフィアは微笑みながら言った。

「元気そうで何よりです」

 だが、秋宮はある虚空感を感じていた。

 それは、そこにいるはずである伊達がいないことへの虚空感であった。

「伊達の、葬儀は?」

「あなたが目覚めてからのほうがよかったんだけど、昨日終わったわ」

 佐伯が俯きながら言った。ソフィアもやはりつらいのだろう。その表情は曇っていた。

「そうか。最後に一言ぐらい言ってやりたかったな。墓はどこなんだ?」

「墓は基地内の墓地よ」

 ベッドに座ってため息をつくと、制服を見て言った。

「せっかく新品の正装をもらったわけだし、帰りに墓参りしようか」

 そういうと二人はそれに同意するように、うなずいた。

 病院のパジャマから制服に着替えると、病院の書類にサインをし、病院をあとにした。

 佐伯とソフィアが乗ってきた車の助手席に乗ると、EMS社の基地へと向かった。

「会社とEMSの基地はあれからどうなったんだ?」

 佐伯は運転しながら答えた。

「会社は株主と会社の上役たちが話し合って結局はABCT社の副社長が経営最高責任者になってABCT社傘下のPMCになって会社としては存続よ。基地はボロボロだけど日本國軍とかが力をかしてくれるから急速に復旧中よ。基地としての機能は取り戻しつつあるわ」

 そう話しているうちに基地に到着し、車は基地内を走り墓地の近くの駐車場に車を止めた。

 秋宮は佐伯に連れられて伊達の墓の前につれられると、無言で墓の前に立ちポケットから病院の自動販売機で購入した缶ビールを取り出した。

 膝をついてしゃがむとそれを墓石の前で開け墓石にかけた。

 ビールを墓石にかけながら、伊達との思い出が頭の中を流れる。

 ビールを流すと同時に彼の目からも涙が流れていた。

 佐伯やソフィアたが見ていることなど関係ないように喉からは嗚咽が漏れていた。

 佐伯はそれをただ黙ってみており、ソフィアは彼の横にしゃがみ方に手を置き、片方の手は背中をさすった。

 ニ十分ほどその場でそうしていると、秋宮も落ち着きを取り戻し、ソフィアの手を握りながら立ち上がった。

 秋宮は隊長という立場で隊員を死なせてしまったということや隊員という以前に友人であった彼を失ったという悲しみは深いものであったのだ。

 それからは再び車に乗り、仮設の第一機動空挺課の事務室に向かった。

 仮設といってもしっかりとしたプレハブができており、活動に支障はないようだ。

 中に入ると、普段の位置に机が配置されていたが、伊達の机であるはずの机にはなにも荷物がない。

「そういえば課長は?」

 机に座り、一息ついてそういうと、作業中の佐伯に代わりソフィアが答えた。

「課長は、異動になりました。今回の作戦の成果が認められたようで、ABCT社本部に。時間があまりなくて秋宮さんの隊員を待っていられなかったので、また落ち着いた頃にあいさつにくると言ってました」

 秋宮は、それについては驚くことはなかった。社内での異動というのは珍しい話ではないためである。

「そういえば、うちの隊もEMS社管轄じゃなくてABCT社管轄に移って、隊の名前も変わるらしいわよ」

「そうか。そりゃ意外だな。まぁ、いいけれども。隊長は誰だ?」

「もちろんあなたのままよ。しかも今回は正式な特殊部隊だから装備や経費もそれでもって給料も跳ね上がるわよ」

 そういって、佐伯は秋宮の机のほうに来ると机に拳銃を置いた。

 それは秋宮が使用していたR3拳銃であった。装備品はすべてなくなってしまっていたため、佐伯が新たに購入してきたものだった。

 


 それからしばらく時が経ち「第一機動空挺課」は「第一機動特殊作戦群」という名前に変わり、日韓戦争も終戦した。

 日本は韓国に圧勝し、日本は賠償金と竹島の所有権を得た。

 秋宮たちの主な職務は国内外のテロ組織や反乱分子を警視庁公安部の指示のもとに排除するということが仕事になっていた。日本国内のテロ組織や国外からのテロリストは増加しており、彼らの仕事は多かった。

  


 ABCT社東京本社 七階 第一機動特殊作戦群 待機室

 秋宮と佐伯、ソフィアはいつも通り待機の時間を過ごしていた。

 待機室は今まで以上に綺麗になっており、なおかつ広くなっていた。

 お茶を飲み、適当にダラダラと過ごしていると待機室の入口の横についている赤い緊急出動を告げるランプと出動を知らせるアナウンスが流れた。

『第一機動特殊作戦群に出動命令。東京都学明院高校に立てこもり事件が発生。SITなどの出動があるものの、警視庁公安部より出動要請』

 秋宮は、たばこを灰皿に押し付けると席を立ち装備品管理室に向かった。

 すでに着ていた特殊戦闘服の上から防弾ベストと腕章などをつけ、ヘルメットとゴーグルをつけると短銃芯で射程がアサルトライフル並の性能を持つP2型機関銃を持ち、レッグホルスターにR3拳銃を収めた。

 佐伯とソフィアも自身の装備を整えそれが終わると、装備品保管室から直接つながる緊急出動階段を使って隊の装甲車のあるガレージまで向かい、装甲車に乗り込んだ。

 大型車の運転に慣れている佐伯が運転席に付き、ソフィアと秋宮は兵員乗車スペースに乗り込んだ。

「そういえば、新人が来るんですよね?」

 ソフィアがそういうと、発進のためにエンジンを始動させていた佐伯が答えた。

「新人くんね、現場に直接くるらしいわよ。さっきそうやって連絡が来てた」

「は?俺のところに来ないでなんで佐伯のほうに最初に来るんだよ」

 秋宮がいうと、佐伯は鼻で笑い何も言わずに装甲車を発進させた。

 そこから十五分ほどで現場に到着した。ブリーフィングをBIの共有回線で行った。

「よし、ブリーフィングだ。占拠してる奴等は最近無差別テロを頻繁に行っているアレフの弾丸のメンバーを名乗っているらしい。警視庁からはSITの行動許可が遅れているから迅速に行動してくれということだ。すでに七名の死者が出ている。

 隠れ蓑を使用して校内に潜入し、テロリストを一人ずつかたずける。いつも通りだ。いくぞ」

 そういうと、ハッチを開けて装甲車を勢いよく飛び出した。

 装甲車の横にはSITの装備を拝借した新人が立っていた。秋宮は彼に話しかけた。

「お前が新人か。名前は?」

「皆川 堅持です。日本國軍陸軍第二十七連隊にいました」

 秋宮は、P2型機関銃のコッキングレバーを引き弾を装填しながら言った。

「得意分野は?」

「得意分野・・・・ですか。爆破と近接格闘は得意です」

「そうか。隠れ蓑はあるか?」

「電磁迷彩発生装置ですか?陸軍支給のものなら」

 それを聞くと秋宮は現場のほうに歩きながら言った。

「作戦はその都度指示する。臨機応変に動け」

 皆川は小走りでそれについていった。

 彼らはこれからも更なる戦場へと向かい、戦い続ける。


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