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第一機動空挺課

 第三東京の摩天楼を眺めることのできる港に、男は立っていた。

 男はロングコートの軍服を着ており、襟には日本國軍少尉の襟章がつけられており、肩には艶のない金色の金属の装飾がついている。

 サングラスを付けており、顔は覗けないがそれなりに整った顔立ちであることがわかる顔である。

 そして何より、男の手には拳銃が握られていた。

 男はスライドを引いて装弾しセーフティーをかけると、海に背を向けて歩き始め拳銃を腰のホルスターにしまうと止めてあったバイクにまたがる。

 そのバイクは今となっては古い型のネイキッドタイプのバイクであった。

 ミラーの角度を変えるとエンジンをかけ、二、三度ふかした後バイクを走らせた。

 バイクを走らせているうちにあるトラックに並走する。

 トラックには「皆瀬工業」と書かれており、運転席の人物は男を見ると助手席の人物が窓を開けてサブマシンガンを発砲する。

 着弾点に男はいたがバイクを横に滑らせるように移動させ弾をよけるが腹部に一発だけ命中し、男はうめき声を上げるが、ロングコートの防弾機能のおかげもあり、ダメージは小さい。

『対象からの発砲を受けた。反撃を開始する』

 彼はブレイン・インターフェイス(BI)を使用して本部に連絡を取ると、腰から拳銃を抜きセーフティーを解除して運転席へと向ける。

 拳銃のセーフティーを解除すると、レイルマウントに装着されているレーザーサイトの電源が自動的に入るようになっている。

 それを運転席に向け、赤いポインターを助手席に座っている男に当てるとトリガーを引いた。発射された弾丸は正確に助手席の敵に当たり、運転手は助手席の人間が死んだことで動揺したのかトラックがゆらゆらと揺れる。

 その直後、運転手が投げたのだろう。助手席の窓から手榴弾が投げられた。

 バイクを素早くスライドさせても、爆破範囲から逃げることはできないと悟った男はバイクを足場にしてトラックへと飛び移るとトラックの突起につかまり、わずかな足場に足をかけた。

 真後ろで手榴弾によってバイクごと爆発し、男を少しばかりの爆風が襲う。

 だがそんなことは気にも留めずに男は運転席の方へと体を摺り寄せていく。

 男がミラーをみると運転手が男の方をちらちらとみているが、運転席からでは反撃はできないのだろう。

 助手席の扉に到着すると、ドアを開け助手席にある死体を車内から引きずりおろし中へと入り込む。

 拳銃を持っていないほうの手で腰についているナイフを抜くと運転手の胸部に突き立てようと振りかぶる。

 だが、刃先が運転手の胸に当たったところで運転手は男の手首を掴んでナイフを自分から遠ざける。

 運転手はつかんだ男の手首を関節の曲がる方向とは逆方向にまげナイフを床に落とさせる。男は腕を振りほどくと先ほどまでナイフを保持していた手で運転手の顔面を殴りつける。ハンドル操作がぶれ、車体が壁に擦りつけられるように衝突する。

 ガガガガガガガッという嫌な音と共に運転手側のミラーが吹きとび、火花が散る。

 だが、男はなにも気にせずに怯んだ運転手に肘鉄を入れる。

 とどめとばかりに運転手のこめかみに拳銃を当てると引き金を引いた。

 運転手は糸の切れた人形のようになり、こめかみからは白い血液が流れ出している。

 ドアを開けて運転手を外に放ると、ハンドルを握り、壁の接触から脱する。

 ふらふらと揺れる車体を操作して路肩に寄せると、男はトラックから降りてトラックの貨物を確認する。

 貨物のロックを開けると、中には大量のライフルの入った木箱や手榴弾の入った木箱などが所狭しと入っていた。

 男は耳の後ろを人差し指と中指で押さえた。男は生身の人間ではなく脳と脊髄以外のほぼすべてを義体に変えているサイボーグである。

 耳の後ろは通信をするための装置などが内臓されており、彼の視界には通信相手の情報がARで投影されていた。

 通信相手は男の所属する日本國軍の上官であった。

「目標物を確保しました。貨物は情報通りの武器や弾薬です。現在地点で待機します」

 男がそう言葉に発すると上司から音声で返事が来る。

 上司の声は男の脳内にのみ流れており周囲には聞こえていない。

『了解した。貨物回収、現場整理部隊を送る。それまで待機していろ』

 男は通信を終えると、男は運転席に向かい先ほど落としたナイフを拾いシースに納める。

 一連の騒ぎによってざわめく周辺を横目に、ポケットからLARKの煙草を取り出して一本咥えると、古いジッポを取り出して煙草に火をつけた。

 サイボーグである彼はそれによって得るものはないが、そうして煙草を吸うと彼の気持ちは落ち着いた。

 煙草を吸いながら、摩天楼の光に掻き消される夜空を見上げた。

 彼の名は秋宮 恵一という。そして、この話は彼の物語である。





         一章


 神奈川県新横浜港 民間軍事会社エクストラミリタリーサービス(EMS)社海上プラント

 海上には飛行場を含める軍事施設が凝縮された八区画に分けられた基地がそこにはあり、陸上基地施設の中心部にビジネスビルと呼ばれる地区がある。

 そのビジネスビルの三号棟四階に第一機動空挺課の事務室はあった。

 第一機動空挺課は空挺隊という役割に加え、隊員全員が全身を義体化しているサイボーグで機動部隊という側面も持ち合わせる。

 秋宮はその第一機動空挺課の事務室の自分のデスクに座りコーヒーを飲みながら昨晩の事件について警察に提出する報告書を作成していた。

 そうしているうちに同僚の佐伯 涼夏が出勤してくる。

「おはよう。恵一早いわね」

 そういいながら佐伯は自分のデスクに向かい、秋宮はキーボードを打つ手を止めて返答した。

「ああ、昨晩からいるよ。非常出勤で家に帰るのも面倒でな」

 佐伯は適当に返事をすると、パソコンをつけ事務仕事を始めた。

 「ご愁傷様。その分給料は私たちよりいいんだから我慢なさい。それにこんな美人と朝から一緒なんだからいいじゃない」

 秋宮はその発言に一瞬手の力が抜けマグカップを落としそうになった。

「お前が美人なのは、義体だからだろ・・・・義体化の前は顔中そばかすだった癖によくいうぜ」

冗談交じりに言った秋宮だったが、彼の頭の横をテロ対策マニュアルがかすめた。

 テロ対策マニュアルは1600ページ近くあるテロに関しての辞書だ。

 大体の場合秋宮たちはBI経由で見るため紙は必要ないのだが、イレギュラーの時のために配布されているものだ。

 それはともかく、全身義体化しているとはいえ秋宮だって脳と脊髄は生身だ。壁に当たって壁にへこみを作ったテロ対策マニュアルが秋宮の頭にヒットしていれば、脳震盪は避けられなかっただろう。

 佐伯は秋宮の頭にヒットしなかったことが悔しかったのか舌打ちをして自分のデスクについた。

 秋宮は佐伯の義体化前の生身の体であったときのことに触れるのはタブーであると知り今後その事柄に触れないことを心の中で硬く誓い、自分の後ろに落ちているテロ対策マニュアルを拾い、埃を掃ってから佐伯の元に返しに行った。

 返す際に佐伯にギロリとにらまれ涙目になりながら自分のデスクへと戻った。 

 マグカップの中を覗くとすでにコーヒーはほとんどない。

 もう一度コーヒーを飲もうかとも思ったが、口の中が少し粘つくことに気づく。

 秋宮はその粘つきを落とすためにお茶にしておこうと思いながらマグカップを持って席を立ちキッチンへと向かう。

 キッチンにはガスコンロと食器干し棚と洗い場に給湯器、電子レンジがある。

 マグカップを洗い場で洗い、食器干し棚にさかさまにして干しておく。

 その隣に置いてある自分のお茶用の湯飲みを代わりに取り、そこに粉末茶葉を入れて給湯器からお湯を入れる。

 湯飲みを持ってデスクに戻ろうとすると、佐伯が手を上げながら少し大きめの声で秋宮に言った。

「わたし、紅茶お願いね~」

 先ほどのことについて多少の引け目を感じているため、秋宮は頭が上がらず黙って佐伯のマグカップに紅茶のティーバックを入れて給湯器からお湯を入れるとティーバックを上下させてお茶を出す。

 程よく色が出てきたところでティーバックを洗い場の隅にある三角コーナーに入れ自分の湯飲みと佐伯のマグカップを持ってキッチンを離れた。

 秋宮は佐伯の元にマグカップを持って行き、マグカップをデスクに置くと佐伯は秋宮の方をみてにっこりとしながら「ありがとう」と短く言った。

(このドSめ。俺のことを顎で使っていい気分になりやがって・・・仮にも俺は隊長だぞ・・・)

 彼らは基本的に出動時以外は訓練であるが、出勤してからしばらくは事務の仕事(書類をまとめるなど)をしていることもある。

 そうしているうちにほかの隊員二名も出勤してくる。

「おはようございます」

 一礼して事務室に入ったのはソフィア・グラスゴーという女性隊員だ。

 彼女はEMS社に入社する以前はイギリス軍特殊空挺団に在籍していた狙撃兵である。日本國軍に派遣されていたところを課長にスカウトされEMS社に入社した。

 ブロンドのショートポニーテールの髪と蒼い瞳が綺麗な女性である。

 そしてもう一名の短髪の男は伊達 仁という男だ。彼は車両の運転や航空機の操縦を担当するほか突撃なども得意とする。

彼らはデスクに座りとりあえず一息つこうと、なんとなくついていたテレビをふと見た。そこではいつものようにテレビキャスターの女性が原稿を淡々と読んでいた。

『近年、開発の進んでいる新東京中央海上環状線の完成が近づいてきました。予定では二か月後に工事は完了。予備開通を経て本開通となる見込みです。田中さん、新しい環状線の開通は楽しみですね』

『ええ、実に楽しみです。海上に高速道路ができたおかげでこれからは今まで以上に交通の便は良くなるでしょうね。これから日本全国に広がっていくだろう海上高速道路の第一号として非常に楽しみです』

 秋宮はそんなニュースを横目に見ていたが、彼はニュースキャスターが考えるほど楽観的な考えは持っていなかった。

「なぁ、佐伯あれどう思う?」

 顎でテレビを指しながらそう言った。佐伯は少しテレビを見て、鼻で笑いながら答えた。

「あんなの危険に決まってるわ。高速防衛課に回ってきた設計予定書を見たけれど、主柱の非常時の一斉分解機能や道路自体の設計にも問題があるように感じたわ。高速防衛課の連中も安全なもんじゃないって言ってたわ。一昔前の海底トンネルの方が幾分安全ね。今じゃ封鎖されて使用もできないけれど」

 秋宮もほとんど佐伯と同じ考えであった。

 見ただけではわからないが、欠陥だらけである。なによりもそのような脆弱な構造を持つことがテロ組織にでもわかればそこを突かれる可能性だって十分にある。

 赤軍はなぜかそういうことに詳しいから今までだってああいう新造されたものを狙われたことなんて何回もある。

 佐伯の意見に全員が首を縦に振り、全員が一息つくと部屋から直接つながっている銃器保管室へと向かった。

銃器保管室に入るため、秋宮は7ケタの暗証番号を入力すると厚さ4cmの特殊金属製の自動ドアが開く。

だが、その扉をくぐり二メートルほど歩くと、黒い網格子の扉がありそちらはキーを差しこんで扉をあける。

その網格子の扉を開けるとそこには大量の銃器や弾薬が置かれていた。銃器などは会社が支給するのではなく部署に配給される資金をしようして直接取引するようになっているため武器や弾薬の購入は自由である。

そのため、部署によっては第一機動空挺課のように武器をため込む部署もある。

彼らは部屋の奥に並ぶ鉄製の棚に向かうと自分の名前が書かれたロッカーを開ける。

そこには彼らが専用にカスタムしたライフルなどが入っている。

第一機動空挺課ではマガジンや使用弾薬の共通化を目的に使用ライフルなどを統一化している。

ライフルはSCARシリーズ・M4・21式自動小銃と決められている。拳銃はH&KUSPとなっている。狙撃銃や散弾銃は例外となっている。

秋宮はロングコートを脱ぐと、下に着ていた戦闘服の上に防弾機能付きタクティカルベストを着るとヘルメットを装着し、レッグホルスターを付けるとホルスターに拳銃を入れ最後にSCAR‐Lを持ちだすとロッカーをしめてロックをする。

他の隊員たちも同様に準備をすると、弾薬ケースが積まれている場所に向かいそこから弾の詰められているマガジンを取りタクティカルベストの中に入れる。

SCARをベルトを使用して体に回すとそのまま部屋を出た。内側からはロックを解除する必要はなく簡単に開き、扉が閉まると自動的にロックが閉まる。

隊員全員が武器保管室を出ると事務室を出て射撃訓練に向かった。

射撃訓練の方法はあり、一つは地下射撃場を使用した方法で二つ目は海上射撃場と呼ばれる施設を使用するほうほうである。

海上射撃場とは海に鎖でつながれた鉄板の射撃的を浮かべそれを射撃する方法である。

これは海に面する場所に本部基地をもっているEMS社特有の射撃訓練方法である。

海上射撃場は波によって不規則に的が動くため非常に良い訓練となる。

第一機動空挺課の隊員たちはそちらの射撃場に向かっていた。

射撃場までは歩いて10分ほどかかるため部隊で使用しているSUVに乗り込む。

BMWの最新型のSUVの防弾モデルで出動する際にも使用する場合のある車である。

 SUVに乗り込む際にソフィアの持っていたM82が引っかかるため後部座席全体を使って入れる。

 後部座席にはソフィアと佐伯が座り、助手席には秋宮、運転席には伊達が乗った。

 伊達はエンジンスタートスイッチを押してエンジンをかけ、クラッチを踏み、ギアをニュートラルから一速に入れて車を発進させた。

 秋宮は窓を開けて港の潮風の香りを楽しみながらボーとしていた。

 外の景色はいつもと同じで訓練のために腕立て伏せをしている部隊や同じく訓練で隊列をくんでランニングをしている部隊もある。そのほかには輸送トラックが行き来していたりする。

 そうしているうちに軍港エリアに入り、ミサイル駆逐艦や空母・軽空母などが見える。整備のために空母の様々なところから火花が散っている。

 海上射撃場は軍港エリアの先にある。

 軍港エリアの船を見ているうちに目的地に到着する。そこにはフェンスが張られておりフェンスには『射撃場 注意』という看板が張られている。

 フェンスに一つある扉を開けるとそこにぞろぞろと入って行った。

 コンクリートの地面に黄色い線が描かれておりそこが射撃位置である。その黄色い線のすぐ横にはコンソール付きの装置があり、その装置で的の位置を決められるようになっている。

「よし、一度集合!訓練前にブリーフィングをする」

 秋宮がそういうと各員が秋宮の元に集まる。

「今日の内容だが、俺と佐伯はアサルトライフルで20mから90mの射撃訓練。伊達は10mから60mの射撃訓練。ソフィアは300mから1kmの射撃訓練をする。各員気を引き締めてかかれ」

 そういうと隊員たちはそれぞれの射撃レーンに行き装置に秋宮から言われた数値を打ち込む。距離は最大3kmまで調整でき、距離の調整は鎖を手前に巻かれるか奥に巻かれるかで決まる。

 秋宮たちは立って射撃をするが、ソフィアだけは伏せて射撃をする。伊達はSCARをショットガンに改造したものを使用して射撃をする。

 バララララッという発砲音と的に命中する際に起こるカンッという音が港に鳴り響いている。

 一時間ほど、射撃訓練をしていたころだろうか。全員の肩についている通信端末が鳴った。彼らはそれを端末の収納スペースから取り出すと通信内容をみてため息をついた。

 そして、秋宮が少し大きめの声でいった。

「訓練中断!任務に行くぞ!弾薬補給をしてから任務に向かう。全員車に乗り込め」

 そういうと隊員たちはその場に落ちている薬莢をかき分けるように歩きフェンスにある扉をくぐってフェンスの前に停められている車に乗り込んだ。

「伊達、時間がない。共有弾薬庫まですっ飛ばせ」

 秋宮がそういうと伊達は鼻で笑いながらいった。

「いいのか?ラリーみたいな運転するぜ?」

 秋宮はその冗談に鼻で笑いながら許可を出した。

 佐伯とソフィアは後部座席で普段つけないシートベルトをして、バーにつかまっている。

「ねぇ、伊達。事故らないでね」

 佐伯はそう一言いうと、シートに体を埋めた。

 伊達はエンジンをかけるとギアを一速に入れ、来るときとは全く違うアクセルの踏み方をした。

 一瞬でレッドゾーンまで吹き上がるようにアクセルを全開で踏み8000回転に達するころにギアを二速に入れる。

 エンジンのギアが変わるときエンジンはウォンッと一回唸り、さらに回転数を上げる。

 走り始めて一分するころにはギアは四速に入っており、速度は120km/hに達していた。(基地内の制限速度は40km/hである)

 曲がり角に140km/hで突っ込み、伊達の助手席に乗りなれている秋宮でさえ顔をひきつらせた。

 伊達はサイドブレーキとフットブレーキを巧みに使い車をドリフト状態に持ち込み素早くカウンターステアをだして車が曲がり角にあった倉庫に衝突するのを寸でで避けそのままアクセルを全開にして共有弾薬庫に向かった。

 共有弾薬庫の前に車を停めると通用口から入って行った。

 係りの社員に必要とする弾薬を告げると社員は一分ほどでその弾薬を金属のケースに入れて持ってきた。

 すでにマガジンに詰められておりすぐに使用できる。それを受け取ると、それと引き換えに自分の持っている使用済みのマガジンを係りの社員に渡し、受け取ったマガジンを隊員たちに配給すると通用口から出てまたすぐに車に乗り込む。

 車に乗り込んだ後は先ほどのようなアクロバティックな運転はせず、通常運転でゲートを出た。

 さきほど、彼らが受理した任務は緊急性の高い任務で内容は韓国大使館を襲撃したテロリストの排除および人質の解放であった。

 そういった任務が警察から彼らに回されることは少なくない。

 特に軍や警察がしくじりたくない事件などはよく回されるのである。

 主な理由としては軍や警察が行った作戦で失敗すれば世間から非難の嵐であるが民間軍事会社が行った作戦であれば落ち度は会社にあり警察や軍は責任を最小限で押さえられるためである。なおかつ、民間軍事会社もこれを受け入れるのはニュースなどで報道されたとしても自社の名前を出さないように依頼者である警察や軍と契約を交わしているためである。ニュースなどでは「警備員が対処」や「警備会社に委託された結果失敗」などとされるだけである。

 秋宮は車内で簡易ブリーフィングを行った。

「敵勢力は自由日本共産党派のテロリストだ。人数は不明だが報告によればアサルトライフルなどを所持している。現場に行かなければわからないが恐らく建物には屋上からの潜入になると考えられる。現時点で質問は?」

 そう聞くと、ソフィアが手を上げた。

「狙撃ポイントはありますか?」

「それは、到着しないとわからないが、大使館の構造上一緒に入ってもらうことになるだろうと思う。他には?」

 他に質問するものはいなく、簡易ブリーフィングはそれで終了した。

 それから十五分ほどで現場に到着した。ソフィアは室内への潜入のため、バレットM82ではじゃまになるといいトランクを開けて予備に備え付けられているSCARを取り出すとそこに狙撃銃のスコープと至近距離射撃用のレーザーサイトを付けた。ポーチからバレットM82の弾薬を取り出すと代わりにこれも備え付けられているSCARのマガジンをいれた。

 その間、秋宮たちは現場指揮官から状況を聞いていた。

「EMS社のコンストラクターです。現在どういう状況ですか?」

 秋宮は丁寧にそう聞くと、現場の指揮官は通信機をパトカーの中に放り込んで秋宮たちのほうをみて話した。

「あぁ、やっときたか。現在の状況は死者・負傷者不明ですがすでに数回ライフルのものと思われる発砲音がしてる。通用口と表口にはクレイモア地雷の反応があって侵入できない。いくらお宅らが義体化してるサイボーグだとしてもあの地雷を食らったら無事じゃすまない。侵入方法などはあなたたちに任せるが、恐らく奴らは爆薬をほかにも隠し持ってるだろう。気をつけてくれ」

 秋宮たちは一礼すると準備をし終わったソフィアの元に向かった。

「じゃあ、直前ブリーフィングを開始する。話によると一階の扉はほぼすべてに地雷が設置されているらしい。とりあえず侵入は三階の屋上から侵入する。壁を登るぞ。ソフィアについてはやはり狙撃ポイントはなさそうだ。一緒に潜入する」

 ソフィアはコクリと頷き、SCARのスライドを引いた。

 他の隊員たちも質問はないらしく装備の最終確認をし、突入待機をする。

 隊員たちはポケットからバラクラバを取り出すとそれを被る。

「よし、行くぞ!」

 短く言うと秋宮は大使館正門に向かい、その他の隊員もそれについて行く。

 警察官が指揮官の指示で門を少しだけ開けそこから彼らは大使館に潜入した。

 潜入後はプランターなどに身を隠しながら本館に向かう。

 建物の側面につくと、彼らは一列に並び、腰についている小型ワイヤー射出装置を空に向けた。

 ロックを解除し、ボタンを押すと、細く頑丈なワイヤーが建物の屋上に射出され、屋上の縁に引っかかる。

 ぐいぐいと数回引っ張りしっかりと固定されていることを確認すると、ワイヤーを掴んで壁に足を付けるとワイヤー巻き取りボタンを押し巻き取られる力を借りながら屋上へと上る。

「はぁ~私これ嫌いなのよね。手が痛くなるのよ」

 佐伯はそうぼやき、ソフィアはそれを小さく笑った。

「全身強化外骨格なら苦労しないんだけどなぁ。あれ運用コスト高いから予算が有り余ってないとなかなか運用できないんだよな」

 秋宮が佐伯に答えるようにぼやいた。

 そうぼやいているうちに屋上に到着し、屋上の淵の段差を掴むと、ワイヤーを外し体を屋上に乗り上げた。

 最初に秋宮が上り、匍匐の姿勢であたりを見回して言った。

「屋上クリア」

 そう告げると隊員たちはぞろぞろと屋上に上がってくる。

 彼らは屋上に上がると、内部に侵入できそうな場所を探す。まず最初に扉を確かめるものの扉の鍵はしまっており開かない。そしてそれと同時にセンサーによる爆薬の反応があり無理やり開ければ自分たちに危険が及ぶ可能性もあった。

「ほかには?窓は。二階とかの」

 秋宮が少し困りながら言うと、ソフィアが答える。

「ダメですね。中から非常用のシャッターが下ろされていて簡単には侵入できません」

 はぁ、と秋宮はため息をつくと通気ダクトのある場所を指差して言った。

「全員、あの通気口から侵入する。あのぐらいの穴の大きさなら全員入れるだろう」

 全員が鈍い顔になったが反対するものは誰一人いなかった。

秋宮はSCARを背中に回し、匍匐前進をしてそこに侵入し、続いて佐伯がそれに続き伊達、ソフィアの順番で侵入していった。

 通気ダクトの中は薄暗くなにも見えないために視界モードを暗視モードに切り替える。

 薄い緑色の視界の中、音を出さないように静かに通気ダクト内を這う。

 そして、数十メートルほど這ったところで通気ダクトのふたを見つける。そこからは部屋の明かりが差しこんでおり、そのわずかな隙間から部屋を覗く。

 中には二名の兵士がおり、部屋に入るにはそれを排除しなくてはならない。

 秋宮はBIを使用して隊員たちと通信を行う。

 BIは言葉を発しなくとも音声通信が行えるため、非常に便利なものである。

『敵は二名いる。俺が侵入して片づける。もしもの時には援護頼むぞ』

 秋宮がそういうと、隊員全員が口をそろえて返答をした。

『了解』

 秋宮はネジを外して静かに通気ダクトの先にふたを置くと暗視モードをオフにしてからするりと足から部屋に侵入する。

 タスッという着地音がし、敵兵士が気づく。

 だが秋宮は敵兵が発砲したり叫んだりするまえに秋宮はタクティカルベストについているナイフを抜き取ると敵兵の一人の首を切り裂きそのままもう一人の敵兵の胸部にナイフを突き立てる。

 敵兵は血を吐き、ぴくぴくと痙攣するとその心臓を止めた。

「クリア。降りてこい。」

 そういうと、全員が排気ダクトから降りてくる。

「隊長はやっぱり手馴れてますね。暗殺任務」

 ソフィアがそういうと、伊達が笑う。

「暗殺とかいうな。暗殺とか。普通の潜入任務が得意なんだよ」

 そういいつつ、部屋の扉を開けようと横につく。

 伊達がドアノブを握り、秋宮が頷くと勢いよく扉を開ける。

 秋宮が廊下に出ると、続いて佐伯が出る。それに続き伊達とソフィアが部屋を出る。

 ソフィアは部屋を出る際にドアの音をさせないように静かに扉を閉める。

 廊下の数か所に地雷が仕掛けられている。

「伊達、解除できるか?」

「解除したとしても、数が多すぎてな。意味ないだろう」

 そうしているうちに、彼らのすぐ真隣りの部屋の扉が開いた。

 秋宮は素早くSCARを構えると、トリガーに指をかける。彼以外の隊員も一瞬にして警戒心を強める。

 だが、彼らの警戒心は一瞬で解け、秋宮は指をトリガーから外して銃口を床に向けた。

 部屋から出てきたのは大使館の職員であった。

「あの、あなたたちはヤツらとは違いますよね?」

 そういった大使館職員の男は顔面蒼白といった感じであった。

「とにかく、廊下で立ち話も危険だ。中に入れてもらえますか?話はそれからだ」

 秋宮はそういうと、職員の男は「どうぞどうぞ」といい彼らを部屋に招き入れた。

 部屋に入ると、扉の鍵を閉め、職員は椅子に座って一息ついた。

「で、どういう状況か教えてもらってもいいですか」

 伊達たちに扉の前で廊下を警戒させ、秋宮たちは話を聞いた。

「ええ、私は以上に早く気づきましてね。ロッカーに隠れていたんです。そしたらライフルを持った男たちが銃を乱射しながら入ってきまして。他の職員は捕まったようなんですが、私はそうして難を逃れたんです。というわけでロッカーの中からしかみていないんでそれぐらいしかわからないんです」

 秋宮はそう聞き、頷くと部屋を見渡した。部屋にロッカーと呼べるものは灰色のアルミ製の物しかない。だがそのロッカーは成人男性が入るには小さく恐らく入れないだろう。クローゼットなどをロッカーと形容したということも考えられるが、クローゼットはない。秋宮はそのロッカーを指差して言った。

「ロッカーってあれですか?失礼ながらあれ、あなたの体系じゃ入れませんよね。本当にロッカーに隠れたんですか?」

 そう聞くと、職員の顔色が変わった。

「ええ、多少きつかったですがね。無理やりと言った感じで」

「ふぅん。そうですか」

 秋宮はそういうと職員から目線をはずした。

 すると職員は冷や汗をかきながら机のほうを向き、机の棚を開けた。

 そして、棚からタクティカルナイフを取り出してそれを秋宮に向けて刺すため勢いをつけた。

 秋宮は職員が刺そうとしたナイフを持つ手を弾きそのまま男の顔面を殴った。

 職員は後ろに昏倒し秋宮はその男をうつぶせにして腕を拘束する。

「お前、職員じゃないだろ?ロッカーなんかに入れないだろうし、この部屋、強烈な血の匂いがするんだよ。どこに死体を隠した?」

 職員は秋宮を睨み付けると言った。

「職員ならこの部屋に入ったときに撃ち殺したさ。俺は自由日本共産党員の一人だ。俺らは崇高な目的のために動いているんだ。貴様らはさっさと引き返すことだ!」

 秋宮はそれを呆れ返って聞きながら立ち、スタンガンを取り出すとそれを胸部に当ててスイッチを押した。

 男の体がピクピクとし、昏倒する。

「とりあえず、これで三時間は起きないだろうから大丈夫だろう。だが、こういう職員にまぎれた奴が他にも大使館職員になりすましているかもしれない。気を付けて進むぞ」

 隊員たちは頷き、秋宮はそれに続けて言う。

「このままでは効率が悪い。二手に分かれて制圧する。A隊は俺と佐伯。B隊はソフィアと伊達で進む。俺たちはこのフロアと一階フロアを制圧する。伊達とソフィアは二階フロアを頼む」

「了解です。制圧終わり次第対応ですね」

 伊達がそういい、秋宮は頷く。

 秋宮が部屋の扉を開けると、秋宮と佐伯は三階フロアの奥へと向かい伊達とソフィアは二階フロアへと向かう。

 秋宮たちは廊下の突き当たりにあたると頭を少し出して廊下の奥の様子をうかがう。

 廊下は曲がるとずっとまっすぐであり、見通しが良くその突き当りの部屋の前にアサルトライフルとサブマシンガンを持った敵兵が三名いる。

「佐伯、隠れ蓑を使用するぞ。敵が三名いる」

 隠れ蓑とは、電磁迷彩発生装置の別名である。電磁迷彩発生装置は光学迷彩などとも呼ばれる装置である。

 佐伯は、腰にある隠れ蓑に手を伸ばして電源を入れた。

 ヴゥンッという装置の駆動音がすると同時に佐伯の姿が消えていく。秋宮も同じく装置のスイッチを入れその姿を消す。

 隠れ蓑は対象物の姿をほぼ完全に消すが、近寄ると駆動音が聞こえてしまうという点が難点である。秋宮と伊達はお互いのデータを送信し合っているためお互いの姿が認識できている。

 秋宮たちはSCARを背中に回しH&K USPを抜きそれにサプレッサーを付けると前進を始める。

 できるだけ敵兵に近づき、最大限まで命中率を上げ、敵兵から4メートルほどの場所から狙いを定め、息を合わせて発砲する。

 ピシュッというサプレッサーによって消音された発砲音が鳴ると同時に敵兵の頭部を撃ち抜き、その後ろに血が飛び散る。

 秋宮と佐伯は敵兵が倒れて扉にぶつかり部屋の中にいるかもしれない敵兵に気づかれないように敵兵が倒れるまでに駆け寄って受け止める。

 脚力の強化された義体である彼らは4mほどの距離であればその気になれば1秒とかからずに距離をつめられる。その動作はトリガーを引いてからわずか0.5秒ほどで行われたことだった。

 隠れ蓑の電源を切りながら敵兵の遺体を床にゆっくりと横たえる。

 秋宮は扉に部屋の中の音を聞くためのサウンドセンサーシールを扉に張るとBIを使用して中の様子を音で聴く。

 中では男数人の声がしており、銃を動かしたときに鳴る金属の擦れる音も聞こえている。

 秋宮と佐伯はその部屋に敵兵がいるという推察を確かなものと確証を持ち、突入を決めた。H&K USPをホルスターに戻し、SCARを手に持つと、内向きの観音開きの扉に体を摺り寄せるようにし、タイミングを合わせて扉を押す。

 バタンッという音が鳴ると同時に二人は部屋の中に入ると中には三人の敵兵がおり、とっさの襲撃に驚きつつ手に持っている銃を秋宮たちに向けた。

 だが、秋宮たちはそれよりも早く照準を合わせSCARのトリガーを絞っていた。秋宮と佐伯の狙いをつけてから発砲するまではほとんど差はなく、敵兵二名の殲滅はほぼ同時であった。三人目は秋宮が佐伯よりも寸分早く殲滅した。

 そして、彼らが敵兵を殲滅後部屋を見渡すと、部屋の奥の方に人質である大使館職員が固めて座らされていた。

 秋宮と佐伯は人質に近寄って行くと、その人質たちを五秒ほど見た後に二人はナイフを抜くと猿ぐつわと腕を拘束している結束バンドを切っていく。

 彼らを五秒間見た理由は先ほどのような人質のふりをした敵兵がいないかを見定めるためである。二人は人質を見て怪しい行動などをしていないか見たがなにも怪しい行動はなかったため全員を解放し、秋宮は大使館職員たちに告げた。

「みなさん、私たちは警察から雇われたPMCの社員です。みなさんはすでに安全です。ですが、まだみなさんを大使館外には出すことはできません。理由はまだ大使館の安全が確保されていないためです。ですが、この部屋にいる限りは安全です。ですからこの部屋からは絶対に出ないで静かにしていてください。絶対にあなた方を助け出します。」

 そういうと職員たちは多少の戸惑いはあるものの、それまでの状況から解放されたという状況に安心しており、秋宮の言葉に首を縦に振っていた。それだけではなく、今までの状況から解放された安堵感から泣き始めるものまでもいた。

 秋宮は部屋から出ると、廊下にセンサートラップを仕掛けた。もし、このセンサーが反応すれば秋宮と佐伯の元に警報がいくしくみとなっている。

 それと同時に秋宮の元に伊達からBIで通信があった。

『こちらハウンド4、二階フロア。トラップ解除完了。プレゼントはなし。指示を』

ハウンド4というのは伊達のコールサインであり、無線通信の際にはそれを使用する。ソフィアはハウンド3で秋宮がハウンド1、佐伯がハウンド2である

「こちらハウンド1。プレゼントは受け取った。プレゼントを受け取りにきてくれ」

 プレゼントとは今回の任務において人質を表す隠語で、秋宮と佐伯がその場を離れる代わりに伊達とソフィアがその場にくるということである。

 その間に佐伯はけが人がいないかを確認したり、事情聴取などをしていた、それが終わると廊下に出て先ほどの敵兵の死体を部屋の中に入れる。人質の前に死体を持ってくるのはあまりよいことではないがなにしろ隠す場所がないため仕方のないことであった。

 だが、前もって佐伯が男性職員に事情を話し、精神的ショックを受けやすい女性職員に後ろを向かせ死体をみせないように最低限の対処していた。死体を運び込むと、ポーチから折り畳みシートを取り出すと、死体にそれを掛け死体を隠す。

 その後は、血痕消すため、血を透明にするようにできるスプレーを壁についた血に対して吹きかけるとほんの数秒で血は透明になり、一見なにもなかったように見える。

 秋宮と佐伯は部屋を静かに出ると一階へと向かう階段に向かった。

 さきほどの佐伯の事情聴取で職員はその部屋にいた職員ですべてであると証言していた。

 同時刻。二階フロア

 伊達とソフィアは秋宮たちと別れ三階から二階フロアに階段で降りると、彼らはまず廊下のトラップを確認すべく視界モードを暗視モードに切り替える。

 廊下には何本もの赤外線センサーが張り巡らされていた。

「ソフィア、これはまた激しいな」

「ええ、そうですね。匍匐前進で進んでも引っかかるように張り巡らされていますし、どうしましょうかね」

 そういうと、伊達はため息をついた。

「とりあえず、ここに人質がいるにしろいないにしろ解除するしかないんだ。手分けして無効化していくぞ」

「了解です」

 そういい、二人は壁の両側に立つと、目線の高さのセンサーから順番に無効化を始めた。

 二人は一つ当たり約30秒ほどでセンサーを無効化していく。

 赤外線センサーのトラップは赤外線レーザーを発信する送信機とよばれる部位とそれを受け反射する受信機が存在する。

 もし、この受信機の反射がなくなった場合、送信機側に仕込まれている爆薬に点火し爆発するという仕組みである。非常にシンプルな構造であるが、それ故に引っかかりやすくなおかつ金額が安いためテロリストが良く使用する爆弾の一つである。

 無効化するには鏡などのレーザーを反射するものを至近距離において無効化するかもしくは送信機をショートさせて無効化することが一番効果的である。

 ショートさせることは非常に簡単でスタンガンなどで900ワット以上の電力を送信機の稼働部位に当てるだけでよい。

 伊達とソフィアはその方法で次々と無効化していくが、数が多いために時間が掛る。

 そうしている間に、哨戒の敵兵が廊下の奥に現れる。

 伊達とソフィアは瞬時にSCARを構えた。

 伊達とソフィアはほぼ同時に構えるが、伊達よりもはるかに早くソフィアはトリガーを引いた。その動作の速度は狙撃用スコープを使用している狙撃兵の射撃する速さであるとは思えないほど早い。

 そして、ソフィアの狙撃は早いと同時に正確であった。もしセンサーに銃弾があたればセンサーが感知し爆発し、その近くの爆弾にも誘爆し続け、ソフィアと伊達は生きていなかっただろう。

 わずか一瞬の間に、ソフィアはセンサーに当たらない弾道を計算し、それと同時に敵兵の頭部を撃ち抜く弾道を感覚的計算で導きだしトリガーを引いたのである。

 それはエリートスナイパーでも十秒ほどは要する行動で、その行動自体がソフィアの能力の高さを語っている。

「ソフィア、お前すごいな」

 伊達がそういうと、ソフィアはSCARを背に回し再び赤外線センサーの無力化にかかりながら答えた。

「それより、伊達さんライフルを構えましたけど、撃つ気でしたか?」

「あ、あぁそりゃもちろん」

 そう答えた伊達にソフィアはため息をついた。

「伊達さんのライフルの弾、ショットシェルとですよね。あれで撃ったりしたらセンサーに弾丸が当たって誘爆して死んでましたよ。本気で撃つ気ならハンドガンを構えるべきでした。本気で撃つ気だったならもう少し考えてから撃つ気になってください」

 そう丁寧ながらも辛口なコメントに伊達は返す言葉もなく無言のまま赤外線センサー無力化作業に戻った。

 それから五分ほどでほぼすべてのセンサーを無力化し、廊下の奥へと向かった。

 奥に行くと、突き当りで二つに分かれており、右はボイラー室へ左は書類倉庫であった。

 あまり警戒すべき場所ではないと二人は判断し、二手に分かれた。ソフィアはボイラー室へ。伊達は書類倉庫へ向かった。

 ソフィアがボイラー室に入ると中は暗く一見何もない。

 視界モードを暗視モードに切り替え、奥へとゆっくりと進む。

 前進するたびにブーツで踏むコンクリートの破片がジャリジャリと鳴る。

 一番奥まで進んだが、ボイラー室には人の入った痕跡もなく、爆弾などもない。

 ソフィアはBIを使用して伊達に状況を伝える。

『こちら異常なし。ハウンド4どうぞ』

『こちらハウンド4。了解した。こちらも異常はない』

 伊達もそういい、二人は部屋を出ると廊下の突き当たりで再び落ち合う。

『二階はハズレだな。きっと三階に人質がいるんだろう。秋宮に連絡しておく』

『こちらハウンド4、二階フロア。トラップ解除完了。プレゼントはなし。指示を』

『こちらハウンド1。プレゼントは受け取った。プレゼントを受け取りにきてくれ』

 そういわれ、伊達とソフィアは三階の秋宮の指定した部屋へと向かい、人質の確保、防衛に向かう。

 その頃、秋宮と佐伯は三階から一階へと向かう。

 一階には敵兵が7名ほどいるため、厳戒態勢が敷かれていた。

 正面エレベーターの前を警備していた敵兵は3階からエレベーターが降りてきていることに気付いた。

 その兵士は無線で仲間を呼び、四名でそのエレベーターの前でライフルを構えて待ち伏せていた。

 一階の階数ランプが点灯し、扉が徐々に開く。

 だが、中には誰一人いない。敵兵は怪しみ4人ともエレベーター内に入った。

 それが間違いであった。

 入った瞬間、エレベーターの扉は閉まり、4人の敵兵は閉じ込められた。

 だが、扉が閉まっただけでなにもおこらない。

 4人のうちの一人がエレベーターの開くボタンを押した瞬間、爆音が響き、エレベーター内は炎に巻かれた。

 その仕掛けは非常にシンプルなもので、秋宮たちは扉が閉まったあとボタンを押したとき、焼痍手榴弾と破片手榴弾のピンが抜かれるように仕掛けていた。

 その手榴弾はエレベーターのコンソール内に仕掛けられており、確実にエレベーターに乗り込んだ人間を殲滅できる方法であった。当の秋宮と佐伯はというと、階段を使用して一階におりており、エレベーターは完全なブラフであった。

 秋宮と佐伯は階段から降りてきており、残りの敵兵の排除に取り掛かっていた。彼らは残り何名いるか知らなかったが残りは一階のみでそれを制圧すれば全館制圧完了であるということはわかっていた。

 秋宮たちが階段を下りてくると、メインホールへとまっすぐつながる廊下に出てくる。

 廊下はまっすぐな一本廊下でそこには敵の姿はない。

 秋宮と佐伯が部屋の探索をしようとしているとき、彼らが探索をするまでもなく敵兵の一人は姿を現した。

 秋宮と佐伯はSCARを構え照準を合わせてトリガーを絞る。

 だが、照準はしっかりと合わせていたにも関わらず、その弾は敵には当たらなかった。敵兵は横にローリングし避けていく。秋宮も佐伯も避けた敵兵を追いかけるように照準をずらしていくが、それは一発も敵兵には当たらず壁に穴をあけるだけであった。

 敵兵はローリング状態から体勢を立て直すとホルスターから拳銃を抜き、秋宮たちに発砲する。

 その弾は秋宮の頬をかすめ秋宮の頬に赤い線を作った。

 佐伯はそのまま、SCARでの射撃を続けるが、秋宮はSCARを背中に回しH&K USPとナイフを抜くと廊下を走った。

 走りながらH&K USPを撃ち続ける。もちろん、その弾は一発も敵兵に当たりはしないが、佐伯のSCARの射撃も合わせれば牽制射撃としては十分である。

 弾が切れるとほぼ同時に、敵兵との距離2mの位置まで詰めていた。

 拳銃をホルスターに戻すと同時にナイフを敵兵の顔面に向けて突き出す。それを躱されるが、そんなことは想定に入れていた。

 ナイフを持った腕をはじかれるが、反対の手で敵兵の顔面にパンチを繰り出す。

 それは避けられず、顔面の中央にヒットし、敵兵がよろめいたと同時に首をめがけてナイフを突きだした。ナイフは喉仏のちょうど真上に差しこまれ首の血管や気管を切断する。

 秋宮は首にナイフを刺した後も五秒間ほどそのままの状態を保ち、敵兵の脈が消えるのをじっと待つ。

 敵兵の脈がほぼなくなったとき、ナイフを横にスライドさせて首を切断する。

 床には血の池ができ、その上に敵兵の遺体が横たわる。

「恵一は、相変わらずそういう体術戦は得意よね」

 佐伯は彼が敵兵にとどめを刺している間に近寄ってきていた。

「身にしみついているんだろうな。いやっていうほど実戦も訓練もしてきたからな」

 そういいながら秋宮はしゃがみ、敵兵の衣服でナイフについた血を拭きとり鞘に戻す。

 そうしていると、隣の部屋の扉の奥から銃のスライドを引く音がする。秋宮はとっさにその音に気づき、佐伯を押し倒すようにして無理やり伏せさせ、銃弾の雨から避ける。

 銃声は20秒ほど続き、扉の木屑が頭や体に降りかかる。

 敵兵は穴だらけになったボロボロの扉を蹴り飛ばして廊下へと飛び出した。

 秋宮はそのタイミングで佐伯の上から降り、あおむけの状態でSCARを敵兵の頭部に向けて撃った。佐伯もそれと同じタイミングでレッグホルスターからH&K USPを抜き放ち、少し遅れて出てきた敵兵の頭を撃ち抜く。

 二人は少し、はらはらとするような状況に胸を熱く躍らせ、自分が生きているということを実感するように息を吸うと、立ち上がり服についた木屑を払う。

 その後、秋宮は扉の半分が消えた部屋の中を覗き込み残りの敵兵がいないことを確認すると他の部屋も片っ端から部屋の中を見ていき、制圧を確認した。

 正面玄関に設置された爆弾を解除すると、玄関を開け伊達に大使館職員を連れ階段で正面玄関までおりてくるように言うと、周りの安全確認をし、玄関の外で待機する。

 五分ほどすると、職員を連れて伊達たちが正面玄関に現れる。

 職員たちは正門から入ってきた警察官や救急隊に保護され、伊達とソフィアは秋宮たちの隣に並んだ。そして、伊達は秋宮のわき腹を肘でつつき言った。

「エレベーター派手にやったな。あれ、何使った?C4か?」

「いや、手榴弾だ。うまくやっただろ?」

 そういうと伊達は吹き出し、笑いのツボにはまった。

 ソフィアたちも同じような話をしているらしく、ソフィアも笑っていた。

 職員たちが全員救急車や輸送バスなどに乗せられると、秋宮たちの元に警察の指揮官が歩いてくると言った。

「任務の遂行お疲れ様です。いや、あなた方に頼んでよかった」

 そういいながらバインダーの上にある契約書の任務遂行確認書に指揮官のサインをするとそれを秋宮に渡した。

 その契約書が秋宮たちの給料になり、それがなければたとえ任務を遂行しようとも給料が払われることはない。

 秋宮はそれを受け取ると、二つ折りにしてポーチに入れると、出動の際に乗ってきた車に再び乗りこんで基地への帰路へとついた。

 車に乗り込むと、オーディオプレイやーで音楽をかけるべく、SDカードケースを取り出す。カードケースの中には十枚ほどのSDカードが入っている。

のうちの一枚を取り出すと、オーディオプレイヤーに差しこんだ。

 SDカードのタイトル名にはけして綺麗とは言えない字で2010年にヒットしたアメリカのロックバンドの名前が書かれている。

 差しこんだ後、再生ボタンを押すと、車内にそこそこの音量で激しいメタルともロックともいえないような激しい音楽が流れた。

 ソフィアもそのロックバンドを知っており、隊のなかでは一番うまくその歌を歌える。

 アメリカ海兵隊のような激しいテンションで車のなかで自分たちの任務遂行を喜んだ。

 基地まではゆっくりと車を走らせれば15分ほどだ。

 15分すると、基地につきゲートでIDカードを提示すると基地内に入り課の駐車場に車を停めた。

 彼らは課の事務室に戻ると、課長の冴島に契約書を提出し、汗と埃を流すために装備を保管庫に戻す。戦闘服も更衣室で脱ぎ、適当に汗をぬぐうと新しいTシャツを着て新しい戦闘服のズボンを持ち、プライベート用の小型拳銃を腰に挿してシャワールームに向かう。

 シャワールームにつくと簡易ロッカーに拳銃と着替えを詰め込んでタオルだけを持ってシャワーに向かう。

 男子のシャワールームは腰までの高さほどの薄いアクリルの壁が一枚あるだけの簡易な作りであるが、女子のシャワールームはなぜかアロマの香りが漂っていたりシャワールームの壁もしっかりと個室になっている。

 シャワーを浴びながら伊達は秋宮に言った。

「この会社、俺らの扱いひどくないか?なんで女子のシャワールームだけアロマの香りがするんだよ」

 前述したことを愚痴ると、秋宮はシャンプーで頭を洗いながら答える。

「そうでも女子が入ってこないんだろ。女性職員は戦闘員だけじゃないからな。事務員なんか全員男にしたら依頼が入ってこないぞ。そういうこと考えると女子は豪華にしなきゃならないんだろ。戦闘員の女性職員はゴリラでも事務員は乙女だからな」

 そういうと、伊達は笑い、秋宮も笑いながらシャンプーの泡を流し腰にタオルを巻いて更衣所に向かい、更衣所で着てきたTシャツを着ると、下着とズボンを穿くと、ベルトをしてそのベルトに拳銃を挿して支給タオルを返却口に放りシャワールームを出た。

 髪の毛が湿ったまま事務室に戻ると、まだ女性陣は戻っておらず課長は不在であった。秋宮と伊達はデスクに座って報告書を作成することにした。だが、そうしているうちに女子更衣室のとなりの医務室と書かれた部屋から義体整備士の千代田 仙波が出てきた。

 千代田 仙波は義体を製造している会社である二階堂インターナショナルコンポレーションから派遣されている医務官である。

「秋宮君、伊達君うちの会社から最新の軍事BI更新プログラム送られてきたんだけど、暇なら今のうちに更新しちゃわない?数分で終わるから。」

 千代田はポテチをつまみながらそう言った。

「え?ああ、早めの方がいいですよね。じゃあ、今のうちにやりますよ」

 秋宮が言うと伊達もうなずき椅子から立ち上がった。

 千代田は医務室の中に入り、それに続いて秋宮と伊達も医務室に入る。 

 医務室に入ると、千代田は椅子を二つサーバーの前に置くと、パソコンを少し操作し、サーバーから伸びるコードを二本差し出し秋宮と伊達はそれを一本ずつ取ると左耳の後ろの接続口にコードを接続すると彼らの視界にアップデートの進行度が表示される。

 それは五分ほどでアップデートが終了し、二人はコードを抜いた。

 視界にはバージョン9.2と表示され「アップデートが終了しました」と表示される。

「お疲れ様。アップデート内容はデータ送信しておくから読んでおいて」

 そういわれ、二人は部屋を出ると、椅子に座って送信されたアップデート内容に関する書類を閲覧した。

 アップデート内容は簡単にまとめれば、射撃照準補正機能・フィールドスキャン機能が追加されたということであった。フィールドスキャン機能とは、以前より支給されているボールペンほどの大きさのセンサーを設置することで見えない場所のスキャンをし、見えない場所の索敵が安全にできる。

秋宮たちにとって射撃照準補正機能はあまり魅力的なものではなかったが、フィールドスキャン機能は魅力的なものであった。

 秋宮たちのBIのアップデートが終わった頃、佐伯とソフィアもシャワーから帰ってきており、入れ違いのようにアップデート作業に移った。

 佐伯たちもアップデートが終わると、大使館占拠事件の報告書を作成する。

 三十分ほどで報告書の作成は終わり、その頃には時計は五時を回っていた。

 秋宮は、机の棚からショルダーホルスターを取り出すと、それをTシャツの上から装着し、拳銃をそこに入れると、更衣室に向かって黒いジャケットを着た。

 それと同じころ佐伯も帰宅しようとしており、秋宮は佐伯に言った。

「佐伯、今日飲みにいかないか?」

 そういうと佐伯は少し考えて答えた。

「いいわよ。ちょうど飲みたい気分だったのよ。家で一人で飲むつもりだったけどたまには人と飲むのもいいかもね」

「伊達とソフィアもどうだ?せっかくだし一緒に飲みにいかないか?」

 秋宮がそう誘うが、二人はその誘いを断った。

「いや、ちょっと溜めてる仕事があって」

 伊達はそう言って断り、ソフィアは用事があると断った。

 秋宮と佐伯は駐車場に向かった。

 酒を飲んでから車に乗ることは飲酒運転にあたるが、サイボーグである彼らにはあまり意味はない。彼らのエネルギー摂取として食を取るが、それを分解するのは内臓器官を通して、その後ナノマシンから義体のエネルギーに転換する。そのナノマシンはエネルギー転換だけではなく、有害物質の早期分解もできる機能である。アルコールなどの分解は一升瓶一本分の日本酒を飲んでも数秒で分解されるほどの速度だ。アルコールによる酔いという感覚を残すためにナノマシンのアルコール分解機能を一時的に停止することができる。

 だが、分解機能の一時停止を解除すれば数秒で酔いからさめる。そうすれば車を運転したとしても体内にアルコールはないために飲酒運転にはならない。

 秋宮は駐車場で自分のバイクにキーを差し込み、フルフェイスのヘルメットをかぶるとバイクに跨りエンジンをかけた。

 佐伯は自分の車に乗り込み、同じようにエンジンをかけていた。

 秋宮はバイクを足で転がして佐伯の車の元に行くと、佐伯に言った。

「いつもの店でな」

 そういい、馴染みの店で待ち合わせるように打ち合わせをするとヘルメットのバイザーを閉めてバイクを走らせた。そのバイクはヤマハの古いバイクでYZF‐R1というバイクである。

 一般道を通り10分ほどで店に到着する。その店の駐車場にバイクを停めてヘルメットをバイクに固定して先に店に入る。居酒屋に駐車場があるというのも一昔前ではおかしな話だっただろうが、今では普通だ。

  居酒屋に入ると、店員が小走りで秋宮たちの元にくる。

「お車でご来店ですか?安全登録証の表示をお願いします」

 そういいながら店員はB5サイズほどの大きさの端末を秋宮と佐伯に差し出した。彼らはガラスパネルのような携帯端末を取り出すと店員の差し出した端末にかざした。

 その携帯端末からそうしんされた情報は店員の視界情報に表示され、彼らが全身義体であるという情報やナノマシンを使っているなどの情報が表示され、店にあるサーバーを通して彼らへのアルコールの提供が許可される。

「アルコール類の提供許可が下りました。こちらへどうぞ」

 そういって店員は店の奥側にある掘りごたつの席へと秋宮たちを案内した。

 佐伯の制服がスカートであることを考慮して座敷ではなく掘りごたつの席にしたのだろうと秋宮は店員の気遣いの良さに感心した。

席に着くと、秋宮はジャケットを脱いでメニューを見ると、とりあえずドリンクを注文しようと考えた。店員は水だけ置いて「注文がきまったらおよびください」と決まり文句を言ってカウンターに入って行った。

「佐伯は何にするんだ?」

 そう聞くと、佐伯はドリンクメニューのページを少し見て、ウォッカ(ロック)を注文した。

 さすがの秋宮もすこしだけ顔が引きつった。

(ウォッカのロックなんて人が飲むもんじゃない・・・・)

だが、秋宮も負けじと八海山のロックを注文することにした。

 店員を呼ぶと、その二つの酒とイカリングと枝豆を注文した。

「佐伯って結構強い酒飲むんだな」

 すると、佐伯は「そう?」と言ってメニューをテーブルの奥にあるメニュー立てに戻した。

 そうして、酒とつまみが来るまでの間たわいもない話をして待っていた。

 五分ほどしたころ、店員が二つの酒とつまみを運んできた。それがテーブルの上に置かれると店員は伝票を置いていくと会釈をして下がっていった。

 秋宮は八海山を自分の方に寄せ、ウォッカを佐伯のほうに寄せてつまみをテーブルの中央においた。

 それから二時間ほど絶えず飲み続けていた。二人とも度の強い酒をがぶがぶ飲んでいたためか呂律が回らなくなり始めており、佐伯は上着を脱いでYシャツだけになっていた。

 視界情報にアルコール分解警告が出ているがそれを気にせずに飲んでいると、一定のレベルまでのアルコール分解がされた。

 だが、アルコール分解がされてもなお、彼らは泥酔といった状況だった。

「恵一、気持ち悪い・・・・」

「俺も、気持ちわりぃ」

「そろそろ、やめておきますか。恵一君」

 秋宮はヒックヒックとなりつつもそれに同意して、アルコールを分解した。佐伯も同様にアルコールの分解をした。

 視覚情報に出ている有害物質の分解度がレッドゾーンからどんどんと下がって行きブルーゾーンまで下がった。(レッドゾーンは最高度でブルーゾーンは正常値)

 伝票を持ってレジに向かうと、会計を始めた。

「支払いは電子マネーで頼む」 

 そういうと、先ほどとおなじ携帯端末を読み取り機にかざした。ネット上にチャージしてある電子マネーでの支払いが済む。

 秋宮は佐伯の分も同時に払い、領収書をネットワーク配信で受け取ると、店を出て車へと戻った。

 車に戻ると、佐伯は自分の分を払おうとしたが、秋宮はそれを受け取らなかった。

「今日はこっちが誘ったんだ。おごりでいいよ」

「じゃあ、お言葉に甘えて」

 佐伯はそういうと、自分の車に乗り込み秋宮に別れを言うと車を走らせ帰宅した。

 秋宮も佐伯を駐車場から見送ると、バイクを走らせ家に向かう。

 BIによって視界にARでナビが表示される。

 近くにあるランプから高速道路に乗ると、十分ほどバイクを走らせ家の近くのランプで下道へと降りる。

 下道に降りると、五分ほどで家に到着し家のガレージの車の隣にバイクを収納し、ガレージのシャッターを閉めると家の中へと入って行った。

 家に入ると、リビングの服掛けにコートをかけて、ポケットに入っている車のキーや財布などを机に置いた。

 BIの遠隔操作昨日を使用してテレビの電源をつけニュース番組をつける。

 ホルスターから銃を取り出し机に置くとソファーに座りソファーの隣にある小型の冷蔵庫から水の入ったペットボトルを取り出すとそれを飲みながらニュースを見る。

 ニュースでは早くも今日の大使館占拠事件を特報として流しているが、報道規制がかかっているためか、警察官が大使館に入るシーンがテレビに映し出されている。自分たちが突入後の死体処理のために警官が入って行くシーンであった。

 現場の映像が流れた後は、評論家などによるくだらない評論が入りニュースキャスターがそれに対して短い返事をしていた。

 水を飲みきると、テレビの電源を落としシャワーを浴びて寝室へと向かった。寝室のベッドの横に置かれているサイドテーブルに拳銃を置くとベッドに入り眠りについた。

 

一章 完

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