その1 失われた世界
★魔闘少女ハーツ・ラバーズ!
第十一話『未来を夢見て! フューチャーラバー誕生!』
その1 失われた世界
teller:穂村 ミク
かつて、ぼくの世界は人より少し変わっていた。
ぼくには友達が沢山いた。
老若男女入り乱れた、沢山の大切な友達。
それぞれが自分の世界を、人生を持っていた。
幼いぼくじゃ想像もつかない世界を、彼らは知っていた、経験していた。
彼らはぼくに色々なことを教えてくれた。
ぼくの友達が普通じゃないってことを知ったのは、いつだっただろう。
ぼくにはハッキリ見えていた彼らが、両親をはじめとした普通の人間には見えていないことに気付いたのは、いつのことだっただろう。
結論から言うと、ぼくの友達はみんな『幽霊』だった。
ぼくは所謂、霊感体質というやつらしかった。
それでも、ぼくにとって確かに彼らは存在していて。
誰に理解されなくても良かった。
ぼくにはちゃんとぼくの世界があった。
ぼくには、彼らさえ傍にいてくれればそれだけで良かった、幸せだった。
なのに、ぼくの両親はぼくの世界を否定した。
ぼくを普通の子どもにしようとした。
でも、普通って何?
ぼくには友達がいる、毎日友達と遊んでいる。
そんなの他の子どもと同じじゃないか。
なのに、何でぼくだけそんな異端扱いされなくちゃいけないの?
ぼくがどれだけ抵抗しても、拒否しても、両親はぼくをお祓いだのお清めだの、色々な場所に連れて行った。
そして、小学校に上がる頃には。
ぼくは、ぼくの友達が全く見えなくなってしまっていた。
ぼくの世界は、壊れてしまった。
ぼくは、独りぼっちになってしまったんだ。
その日から、ぼくは世界の全てがどうでも良くなってしまった。
友達の居ない世界に、生きている意味なんてないように思えたから。
こんな世界、いっそ壊れてしまえ。
いつしかそんなことばかりを思うようになっていた。
全てに心を閉ざしたぼくを見て、両親は責任を押し付け合い、言い争うようになった。
ぼくがぼんやりしている間に両親は離婚が成立していて、ぼくは母に引き取られた。
でも、別にどっちでも良かった。
ぼくの世界を身勝手な理由で壊した両親を、許すつもりなんてなかったから。
でも、最初は確かな怒りを感じていたはずなのに、それすらも日に日に希薄になっていった。
自分の感情がどんどん死んでいくのがわかった。
毎日が虚無的な物になった。
そんな中でもぼくは一縷の望みを捨て切れずに、デジカメで写真を撮るようになった。
心霊写真、なんて物に期待して。
また、彼らに会いたかったから。
でも結局会えなくて、見つけられなくて。
こんなぼくの日々に意味が見出せなくて。
今のぼくは、生きてるって言えるんだろうか。
ああ、どうせなら。
ぼくも、彼らと同じ存在になりたかった。
そうしてぼくは――穂村ミクは、今日も。
死に焦がれながら、生きるんだ。




