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魔闘少女ハーツ・ラバーズ!  作者: ハリエンジュ
第九話『愛歌トキメキ! 千雪にアコガレ熱視線!』
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その1 馴染みました

★魔闘少女ハーツ・ラバーズ! 

第九話『愛歌トキメキ! 千雪にアコガレ熱視線!』

その1 馴染みました



teller:小枝(さえだ) こずえ



「いっただっきまーす!」


 千雪さんが、お皿の前で上機嫌にぱちんと手を合わせる。


 私の隣には鈴原くん、向かいの席にはたっくんと千雪さん。

 ゼロットさんはテーブルの上に直接乗って夜ご飯を食べていた。

 ゼロットさんは本人はこちらの方が落ち着くらしい。

 テーブルの上の小さなクッションを悠々と占拠して、ゼロットさんはもぐもぐと食事を楽しんでいるようだった。


 千雪さんが、鈴原くんが私の家でご飯を食べていることを知って、『ずるい! 私も!』と言って聞かず、こうなったわけだけど。


 ど、どうしよう、急に緊張してきた。

 ちゃんと美味しい物作れたかな。

 失礼な物を出してしまっていたらどうしよう。

 心配のあまり箸が進まない私とは対照的に、千雪さんもまた、ゼロットさんと近い勢いでもぐもぐとご飯を食べ進めていて。


「煮物美味しい……おふくろの味……!」


「せやろー! こずえは和食が得意なんやでー! まあ、ワイは何でも好きやけど!」


「……何で鈴原サンが得意気なんすか」


「俺様はアレだな、こないだ出た……サクサクの天ぷらが好きだな!」


 千雪さんが心底美味しそうに声を上げ、鈴原くんも嬉しそうに笑って。

 たっくんだけはちょっと複雑そうで、ゼロットさんはがつがつと晩ごはんを食べていて。


 ……美味しく作れていたのかな?

 そうだったらいいな。

 皆の反応見る限り大丈夫なのかな。


 少しだけ安心して、私も煮物のにんじんに箸を伸ばす。


「っつーか、何でねーちゃんと鈴原サンが隣なんだよ」


「ん。拓海くん、ヤキモチ?」


「そんなんじゃねーよ、ばーか」


 茶々を入れた千雪さんの頭を、たっくんが軽く小突く。

 ……仲いいなあ。

 二人を見て私がしみじみそう思っていると、千雪さんは何でもないことのように言った。


「だって私が、拓海くんと隣がいいんだもん」


「な……っ、な、な、何恥ずかしいこと言ってんだよ! ばか!」


「へー」


「へー」


「鈴原サンもクソコウモリもニヤニヤすんな!!」


 何だか、平和だ。

 凄く平和だ。


 私、千雪さんとも打ち解けられたと思ってもいいのかな?

 もしそうなら、私は凄く嬉しいし幸せ。


 自分の世界が広がるのが、こんなにも楽しいなんて。

 ……人と関わるのがこんなにも楽しいなんて。


 少し前の私じゃ、想像もつかなかったこと。

 ちょっとは以前の私から、成長できてたらいいな。


 なんてほのぼのとした空気を噛み締めていたら、千雪さんの鞄に入っているらしい携帯電話が、唐突に鳴り響いた。


 千雪さんの表情が一瞬険しくなる。

 けれど、千雪さんは電話を完全無視してご飯を食べることを継続している。


「あ……あの、千雪さん……電話、出なくていいんですか……?」


「いいのいいの。どうせ母さんから仕事の話だ。ちゃんと友達の家でご飯食べてくるって連絡は入れてるし、大丈夫大丈夫」


 仕事。

 というと、モデルのことかな。


 千雪さんの表情が、僅かに暗い。

 モデルさんをやっているなんて凄いことだと思っていたけれど、千雪さんは。


「モデルのお仕事……好きじゃないんですか?」


「好きじゃない」


 即答だった。

 あまりにもばっさり言われてしまい、言葉が出て来なくなってしまう。


 どう反応したらいいのかわからない私に、千雪さんは無邪気に笑いかけてきた。

 食器はいつの間にか、空になっている。

 全部平らげてしまったんだ。


「そんなことよりこずえちゃんのご飯すっごく美味しい。これからもたまに食べに来ていい?」


「あ、ありがとうございます……千雪さんさえ良ければ、私も、腕によりをかけて作りたい……です……」


「馴染むなよな、ったく……」


「えへへー」


「えへへじゃねーよ。ばーか」


 呆れつつも、たっくんは千雪さんがこの場にいることで嬉しそうだ。

 段々食卓が賑やかになるのは、私も素直に嬉しい。


 だからこそ。

 そんな時間を与えてくれる千雪さんが大事だからこそ、好きだからこそ。

 千雪さんの垣間見せた暗い感情に何もできない自分が、ひどくもどかしかった。

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