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魔闘少女ハーツ・ラバーズ!  作者: ハリエンジュ
第六話『愛歌VS詩織!? 試されるハーツ・ラバーの絆!』
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その5 幸福の音

★魔闘少女ハーツ・ラバーズ! 

第六話『愛歌VS詩織!? 試されるハーツ・ラバーの絆!』

その5 幸福の音



teller:小枝(さえだ) こずえ



「こずえ、どないしたん。元気ないみたいやけど」


 鈴原くんの言葉で、はっと我に返る。


 食事中にぼーっとしてしまうなんて、行儀が悪い。

 見れば、隣の席に座るたっくんも夕食のハンバーグを頬張りながら怪訝そうに私を見ていた。


 晩ご飯の時間。

 私の隣にたっくん、向かいの席には鈴原くんとゼロットさん。

 四人で過ごす食卓は、最早すっかり当たり前になっていた。


「え……えと……ごめんね……何でもないの……」


 えへへ、と作り笑いを浮かべてお味噌汁を口につける。

 だけど、視界に映る鈴原くんの表情はどこか寂しげで。


「ワイには言えんこと?」


 そんな顔で、そんな声で言われてしまったら。

 罪悪感というか、良くわからない気持ちが胸の奥から湧き上がって来てしまう。

 私は少し迷ってから観念してお茶碗をテーブルに置き、ぽつぽつと話し始めた。


「愛歌ちゃんと……詩織ちゃんがね……喧嘩しちゃったの……」


「ああ、やっぱりか」


 鈴原くんの言葉にびっくりして、俯きがちだった顔を上げる。

 鈴原くんは、頬杖をついて私を見ていた。


「最近のこずえ、一人で昼飯食っとるやろ。声かけたかったんやけどな。変に周りに茶化されたらこずえに悪い思て。すまんかった」


「え……えと……鈴原くんが謝ることなんて、一個もなくて……その……気付いてくれてたんだ……」


「ああ。こずえのこといっつも見とるからわかるわ」


 そう言って、鈴原くんはからっと笑う。

 予想外の言葉に、しどろもどろになってしまう。


 私のこと、気にかけてくれてたんだ。

 やっぱり、鈴原くんは優しいな。


 不意に、たっくんが箸を皿に強く突き立てた気がした。

 どうしたんだろう、何でたっくんは微妙にイライラしてるんだろう。


「……こずえは、どうしたいん?」


 たっくんの様子がおかしいことに気を取られそうになっていると、鈴原くんがひどく優しい声で問いかけてきた。

 その声の響きは胸の奥底に妙にすとんと落ちて、私を安心させてくれる。


 だからか、私もすぐに答えを出せた。


「……二人に、仲直りしてほしい。その為なら、私、何だってしたい……二人のこと、大好きだから」


「……そか」


 鈴原くんが席を立つ。

 気がつけば、鈴原くんの分の食器は既に空になっていた。


 鈴原くんが私に近付き、ぽん、と頭を撫でてくれる。


「せやったら、それを星野さんと委員長にちゃんと言わなあかんな。大丈夫や。こずえならできる。ワイが保証する。気張りや、こずえ」


「……うん……がんばる……」


 頭を撫でられたのが気持ち良くて、幸せで、自然と笑顔が零れる。

 何だかふわふわした気持ちになる。


 なのに、たっくんはまた箸を皿に突き立てていて。


「……イチャイチャ禁止ー」


 ゼロットさんは、吐き捨てるように何かを呟いていた。


 偽善者と、エゴの塊だとミクちゃんには一蹴されてしまったけど。

 例えそれがエゴでも、私は二人に仲良くして欲しい、笑い合って欲しい。

 二人は初めてできた、大切な女の子の友達だから。


 少し前は想像もできなかった幸せな絆を自分が持っているんだと思うと、胸がきゅんと鳴った。

 きっとこれは、幸福の音なんだと思う。

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