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魔闘少女ハーツ・ラバーズ!  作者: ハリエンジュ
第六話『愛歌VS詩織!? 試されるハーツ・ラバーの絆!』
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その1 君のことが大好きです

★魔闘少女ハーツ・ラバーズ! 

第六話『愛歌VS詩織!? 試されるハーツ・ラバーの絆!』

その1 君のことが大好きです



teller:星野(ほしの) 愛歌(まなか)


 

 河本詩織ちゃんという女の子は、あたしと違って、すっごくすっごく頭が良かった。


 寝坊して遅刻なんて日常茶飯事なあたしとは正反対に、とっても真面目で。

 姿勢は常にぴんと正しくて、ハキハキと物を言って、委員長としてクラスを纏める頼れる女の子。


 テストの成績なんていつも学年最下位のバカなあたしが、彼女に憧れるのにそう時間はかからなかった。


 この子ともっと話せたら、仲良くなれたら、絶対に楽しい。

 そんな確信すらあった。


 頭が良い人と話していると、自分の世界が広がる気になれたし、河本詩織ちゃんという一人の女の子は普通に好感の持てる人だったし。


「しーおーりーちゃんっ」


 中学1年生のある日、あたしは思い切ってクラスメイトの河本詩織ちゃんに声をかけた。


 いつものような笑顔で、いつものような明るい声で。


 授業の予習をしていた詩織ちゃんは、不思議そうに顔を上げて。

 眼鏡の奥の大きな瞳が、やけに綺麗だなあと思ったのを覚えている。


「……星野さん? どうしたの?」


 そんな風に、あたしの名前を呼ぶ詩織ちゃんの声も、すっごく耳障りが良くて綺麗で。

 何となく幸せで、へにゃっと表情がますます綻んでしまった。


 自分の名前を呼んで貰えるのは大好きだったから。

 だってあたし、自分の名前は、苗字も下の名前もだいすきだもん。


「べんきょー、おしえてっ」


 そう言って何の躊躇いもなく、一桁の点が書かれたテスト用紙を掲げると、詩織ちゃんはぽかんと固まった。

 もしかしたら、あんなに低い点数を見たのは生まれて初めてのことだったのかもしれない。


「あたし、バカだからね。詩織ちゃんのこと凄いなって思って。詩織ちゃんみたいに勉強ができるようになれたら学校がもっと、もーっと楽しくなるんじゃないかなって思ったんだけど……だめ?」


 笑顔で首を傾げると、詩織ちゃんは僅かに溜息を吐き出した。


 あれ、あたしがあまりにも頭悪いから、呆れちゃったのかなあ。

 仲良くなりたいって思ってたのに、どうしよう。


 そんなことを考えていると、詩織ちゃんは凛とした声で言った。


「……自分を自分でバカと言うのは感心しないわ」


「……ほえ?」


 少し責めるような視線を向けられる。

 別にそれで怯むようなことはなかったけど、何で詩織ちゃんがそんな顔をするのか、そんなことを言うのか、良くわからなかった。


「自分をそう貶める必要はないと思うけど。それに、星野さんは自分を変えようと今こうして努力している。その時点で、貴方の言う『バカ』とはまた違うんじゃない?」


 いつもクラスを引っ張っている時のようにハキハキと、詩織ちゃんが話す、語る。


 あたしは何故か身動き一つできなかった。

 頭が、上手く働かなかった。


「……まあ、テストの成績が悪いのは今後のことを考えると問題ね。わかったわ。私が貴方を『勉強が不得意な子』から脱却させる。これでいいかしら?」


「えっと、つまり……?」


「勉強、教えてあげる。私、少し厳しいかもしれないけど、それでもいい?」


 その言葉を聞いた瞬間、胸があったかい感情でいっぱいになる感覚があった。

 嬉しくて、脳みそも心臓もとろけそうで。


 ただただ、目の前の女の子が愛しくて。


「しぃちゃん、だいすきー!」


 そう言って詩織ちゃん――もとい、しぃちゃんに思いっ切り抱きつくと、しぃちゃんはさっきまでの涼しい態度から一転、あからさまに狼狽え始めた。


「ちょ、ちょっと何!? っていうか『しぃちゃん』って!? 私のこと!?」


「だーって、あだ名で呼んだ方が仲良くなれた気がして好きなんだもーん! えへへ、これからよろしくね、しぃちゃん!」


 そう言って満面の笑みを向けると、しぃちゃんはどうしたらいいかわからない、とでも言うかのような困った表情を浮かべた。


 それからあたしとしぃちゃんは、二人で行動することが多くなった。

 あたしのあまりのバカさにしぃちゃんは頭を抱えて何度も匙を投げかけたけど、何だかんだ言ってあたしを本当に見捨てることはしなかった。


 真面目なしぃちゃんにあたしのだらしない生活態度を注意されることもしょっちゅうだった。

 しぃちゃんには叱られてばっかりだったけど、しぃちゃんと過ごす毎日はすっごくすっごく楽しかった。


 思えば、しぃちゃんはあたしが声をかけるまで、いつも一人だった気がする。

 真面目すぎて、ここー……そう、孤高! だったって言うか。


 そんなしぃちゃんが、あたしの前では表情をコロコロと変えてくれるのが好きだった、大好きだった。


 あたし――しぃちゃんのこと、とっても大切で大好きなんだ。

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