その3 彼の作戦
★魔闘少女ハーツ・ラバーズ!
第三話『ドキドキ! こずえの新学期!』
その3 彼の作戦
teller:ナハト
「明日オレ、ハーツ・ラバーちゃんと戦ってみようかなあ」
地球で買ってきたホールケーキを切り分けながら、そんなことを些細な世間話のように口にする。
オレの言葉を聞いて、ソファに寝転んでいたネスが怪訝そうな顔をして身を起こした。
本当はここには姫っち――アガペラバーもいないといけないんだろうけど、姫っちは愛しい愛しいコウモリ様と触れ合えなくて傷心中。
そんな状態の年頃の乙女に無理矢理仕事させるとかさ、可哀想じゃん?
可哀想といえばさ、お前もだぜ、ネス。
「ほら、いっつもネスにばっか任せっきりで悪いじゃん? オレだってそろそろ頑張んねえとさあ、年上として示しがつかないっていうか」
よし、上手にケーキ切れた。
我ながらうまくできたんじゃね?
やっぱさ、落ち込んでる女の子には甘い物が一番だよな。
姫っち、喜んでくれるかねえ。
ネスはあんまり甘いもん好きじゃねえけど、せっかく買ってきたんだから食べてくれよな。
切り分けたケーキを皿に乗せていくと、部屋の中央のローテーブルを囲むソファから低い声が聴こえた。
「……じゃあ、明日はあいつのとこに行けねえんだな」
「ネス、なんか言ったかー?」
「……っ、何でもねーよ」
と、言いつつオレは笑いを堪えるのに心底苦労した。
危ない危ない、もうちょっとで吹き出すとこだった。
やー、正直オレもびっくりしてんだよねえ。
ネスが女の子と、それも地球の女の子と良い雰囲気になるなんてさあ。
ネスはあんだけ地球の奴ら毛嫌いしてたのに。
世の中何が起きるのかわかんねえもんだな。
だからこそ楽しいんだけど。
なあ、知ってる?
オレと姫っち、お前とあの女の子――穂村ミクちゃんが親しくなってく所、こっそり監視してはニヤニヤしてんだぜ?
なんっつーかさ、恋愛ドラマ見てる気分になんだわ。
恋愛ドラマは言い過ぎかな、子供向けの少女漫画?
いや、童話かな。
お前ら体格差だけ見れば完全な美女と野獣だもん。
あ、ドラマとか言ってもネスはわかんねえか。
こいつ地球の文化さっぱりだし。
疎いと言えば、ネスさあ、お前こないだ穂村ちゃんにとんでもない台詞言われたの気づいてる?
16歳になるまで待ってくれれば考えてもいいって、ネスは意味わかってねえだろ?
わかってねえんだろうなあ。
地球の、日本の女の子はちょっと前は16歳になったら法律上は結婚が許されたんだぜ?
つまりさあ、あの子はお前とそういう関係になっても良いって思ってるわけだよ。
おいおい、お前ちっちゃいお嫁さんできちゃったじゃん。
これ、教えたらネスはどんな顔するかな。
面白いから黙っておくけど。
青春だねえ、若いって良いねえ。
「何ニヤニヤしてんだよナハトさん、相変わらず緊張感ねえぞ」
おっと、顔に出てたか。
ネスが不審そうにオレを睨んでいる。
「まあまあ、そうイライラすんなって。ケーキでも食って癒されとけば?」
「いらねーよ。あんたは毎度毎度、地球を侵略する気あんのか。絶対やる気ねえだろ」
「いやいや、オレだっていっつもあの星をただブラブラしてるわけじゃないんだぜー? オレなりに、一応調べてることもある」
フォークを手の中で弄んでから、ケーキの上に乗っていたイチゴにぐさりと突き刺す。
そういえば、ブレイブラバーちゃんのカラーも赤だったなあ。
このイチゴみてえに、容易くぐちゃってできればいいんだけど。
「だからさ、オレ、明日プチ奇襲作戦かけてみようと思うんだわ」
作戦っつっても、大したことじゃないんだけどさ。
なーんて言ったら、ネスはもっとちゃんと考えろとかキレそうだから言わないけど。
「奇襲って……どこにだよ」
「んー?」
フォークに刺したイチゴをぱくりと口の中に放り込む。
甘酸っぱい味に、酔いしれてしまいそうだった。
ごくりと、その赤い果実を飲み込んでから、オレはくすっと笑った。
「ブレイブラバーちゃんの通う、学校、にだよ」




