その8 絶望と奇跡
★魔闘少女ハーツ・ラバーズ!
第十一話『未来を夢見て! フューチャーラバー誕生!』
その8 絶望と奇跡
teller:穂村 ミク
ぼくは、暗い暗い闇の中にいた。
もう、ぼくのみっともない泣き声は聴こえない。
馬鹿だな、ぼく。
何で今更泣いたんだろう。
涙なんて、とうに枯れた筈なのに。
今になって、生きてる人間ぶるなんて馬鹿みたい。
会いたいけど、別に寂しいわけじゃない。
ぼくは一人で大丈夫。
そう考えると、この闇の中も心地いい物に思えた。
ぼくの姿だけがぼうっと浮かび上がってるけど、それ以外は真っ暗で真っ黒。
ああ、いっそ。
「……このまま、いなくなりたいな……」
ぽつりと呟く。
そうすれば、ぼくも――ぼくの友達の所に行けるのだろうか。
「ざっけんな!!」
急に。
誰かに胸倉を掴まれた。
ついでに思い切り怒鳴られた。
流石に驚いて顔を上げると、そこには息を切らしたネスがいて。
「ネス……何で……」
「俺だってわかんねーよ!! ああくそ!!」
がしがし、とネスが自分の頭を乱暴に掻く。
それから、彼はぼくをぎろりと睨みつける。
人相が悪いんだから、やめた方がいいと思うんだけど。
ぼく以外の子どもだったら、多分泣いてたよ。
「何で、お前はいつだってそうなんだよ!!」
ネスが怒鳴る。
ぶつけどころのない感情をぶつけるかのように。
「これがぼくだもの。ネスには関係ない」
「ああ、関係ねえよ! 関係ねえはずなのに……お前がそうやって全部諦めてるのを見ると、イライラするんだよ!」
何で。
何で赤の他人のネスがそんなに怒ってるの。
意味がわからないし、不快。
ネスは、こんな風にぼくに踏み込んでこないって信じてたのに。
なんか、がっかり。
「お前はまだガキじゃねえか! いくらでも未来があるじゃねえか! 何で……何で、そんなに早く諦めちまうんだよ……!」
「……未来なんてなくていい。未来にぼくの友達はいない。ぼくにはもう、何もない」
「じゃあ、俺はお前にとって何なんだよ!!」
怒鳴られて、一瞬呼吸が止まる。
馬鹿だな、ネス。
ぼくたちが友達でも恋人でもないって言ったのは、他でもないネスなのに。
「ネスは――ぼくの世界を、本当の意味で壊してくれる人」
ネスが、顔を歪める。
何でそんなに辛そうなのか、意味がまるでわからない。
きみは、ぼくと違って感情が随分と豊かなんだね。
やがて、ネスは静かに言った。
「……壊さない。お前の世界だけは、俺は壊さない」
彼の言葉に、息を呑む。
それは、ぼくにとっては死刑宣告と同義だった。
どうしようもない絶望を突き付けられた感覚。
ああ、本当、がっかりだ。
ネスのことだけは、信じていたのに。
「……どうしてそんなこと言うの。ぼくにはきみしかいないのに」
思わず洩れた言葉は、ひどくか細く弱々しい物だった。
その時、世界にかっと光が差して。
『――どうして、そんなことを言うの?』
……懐かしい、声が聴こえた。
次に瞬きをすると、目の前にネスの姿はなくて。
代わりに居たのは、幼稚園生ぐらいの女の子、セーラー服の少女、サラリーマン、老婆、老若男女入り乱れた様々な人々。
ぼくは、彼らを知っている。
だってずっと、焦がれてた。
「……みんな……?」
そこに、いたのは。
ぼくの――かつてはこの目に視えていた、『友達』だった。




