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貴方がいる終焉の先へ  作者: 天野綾
一章 勝利に導く世界は
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13話 唯一の友達

クレア視点です。

 足元から火のような熱が伝わり、石畳が肌をじりじりと焼いた。


 レカとコオの行方不明から数時間が経過した。この広い世界から一人を探すには時間がかかる。場合によってはさらにかかるかもしれない。

 

 クレアはヒアの住む廃屋の前、石段に立って転移の準備が整うのを待っていた。何もできない事実が歯痒い。落ち着け、と言い聞かせても不安は拭えない。

 

 四番の一族は交戦的だ。彼らは戦いのためなら、無関係な人でも容赦なく殺す。――もし、レカがその犠牲になっていたら?


 不安がよぎるたびに爪を噛み、かろうじて冷静を取り繕う。


 気を紛らわすためにも、今後について頭を働かせた。


 まずは目先の問題から。

 明日には、七番国との関係が外交問題に発展するだろう。

 七番ユカ・ライトリヤー。感情的で、娘のレカを溺愛する女だ。彼女に行方不明を悟られるのは避けなくてはならない。

 

「……レカさん」


 一人でいるせいか、思考は危うい方に歩を進める。


「何処にいるんですか……貴方がいないと私は……」


 指先が白くなるまで手を握った。どうしようもない気持ちが胸に浮かび、自然と責任を押し付けられる相手を探していた。

 

「……そうだ、全部コオのせいです。コオがしっかりしていれば、レカさんは行方不明にならなかった」

 

 それが正しいと確信して頷いた。

 すべてはコオのせいなのだから、クレアが何かを思う必要はない。そう言い聞かせた。

 けれど、胸の奥の何かが、それでも足りないと囁いている――。

 

「クレアいるか!?来い、大変だ!」


 その時、血の気の引いた顔でヒアが走り込んできた。彼を見て正気に戻る。微笑みを作る余裕はなかった。

 

「あぁ転移の準備が出来たんですか?」


「転移の準備はできたんだが……場所がまずい」


 ヒアの言葉がクレアの耳に届いた。


「レカは影の国にいる。早く連れ出さないと壊れるぞ!」


 その名を聞かずとも、理解が身体を凍らせた。呪われた土地――二番国。

 長期間滞在すれば、その土地に犯され、やがて「人でなくなる」場所だ。

 その土地に足を運び、全身が歪んだ者を見たことがある。

 

 ただの誘拐とは比べ物にならない。身の毛が逆立つほどの恐怖で歯が鳴った。


 近づくこと自体が自殺行為だ。だが、レカはそこにいる。

 

 胸の奥で何かが決まった。

 

 クレアは息を吸い、目線を上げて言った。


「場所がどこであれ、することは変わりません。私をそこに連れて行ってください。――レカさんの敵は排除します」

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