プロローグ 傍観者の観測
この世界には十人の王がいる。
この十人の王はそれぞれ自国を治めているが、時には協力して世界を守っている。
「守っている?……っふふ。キミは面白い事を言うなぁ。十人の王が、『互いに世界を壊しあっている』でしょ?」
十人の王は総じて十王と呼ばれ、世界を守る為、それぞれ特別な能力を持っている。
「へぇ……持っている、か……そうだね、間違ってないよ。たとえ、それが盗んだ力でも、今持っているのはキミ達だもんね?」
十王の選別方法は国によって様々だが、どの国にも共通する絶対的なルールがある。
――絶対に、能力を受け継ぐ者を王にする事。
いくら教育に欠けていても、身分が卑しくても、まだ幼い赤子であっても、能力が持つものが王にならなくてはいけない。
「逆を言えば、とても賢くて、正当な王族で、たくさん努力したとしても……能力がなかったら王になれないんだよね」
だが、このルールに問題がある。
それは、能力を持った子が全く生まれなかったり、生まれてきても環境によっては、存在を隠蔽されたりして、王座が空席になる事があるのだ。
「あれ?そっちなの?別に空席は良くないかな?……だってさぁ、王がいないからって、すぐに国が滅ぶわけじゃないじゃん。一時的に代理を立てとけば良いんだし。……それよりさぁ、」
もう一つ、このルールには問題がある。
――同じ能力を持った者が二人以上いる時があるのだ。
「そうそう、それだよ!まぁ、ボクの言葉を遮られたのは不満だけど……」
二人以上いた場合は、国によって様々な基準で、より相応しいと判断された者を王する。そして、選ばれなかった者は、王を支える存在となるのだ。
「ちょっとちょっと!その方法は大抵の場合は、だろう?だって――彼らは、殺し合いで王を決めるじゃないか!」
この物語において、この場での話し合いは重要ではない。
だって、傍観者の言葉は物語には影響しないのだから。
「そう、重要じゃない。ボク達が何を言おうが結末は変わらないよ。だから、ボクと一緒に見届けよう?」
世界が滅ぶその時まで。
「バッドエンドに辿り着くまでを」