表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/72

1章8 子犬の名前

――13時


「ワンちゃん……まだ起きないのかしら」


部屋に戻り、昼食を済ませたアンジェリカはカゴの中で眠っている銀色の子犬の身体をそっと撫でていた。


「そうですね。こんなに小さいのだから、ひょっとするとまだ赤ちゃん犬なのかもしれません。それで良く眠っているのではないでしょうか?」


「そうなのかしら……ふわぁぁ……」


ヘレナの言葉に返事をしながら、アンジェリカは欠伸をした。


「あらあら、アンジェリカ様もお食事が終わって眠くなられたのではありませんか?」


「うん……眠くなってきちゃった……」


アンジェリカはゴシゴシと目をこする。


「朝から色々ありましたからね。ベッドでお昼寝をなさってください。それでは、お着換えいたしましょうか?」


「うん……そうする」


早速ヘレナはアンジェリカをお昼寝用のゆったりした服に着替えさせると、ベッドへ連れて行った。


「さ、どうぞお休みください」


「うん、あのね……ヘレナ」


アンジェリカはベッド潜り込むと、眠そうな目でヘレナに話しかけた。


「はい、何でしょうか」


「あのワンちゃん……お父様に見つからないようにしておいてね?」


「ええ、勿論分かっております。お任せ下さい」


優しく返事をするヘレナ。


「目が覚めたら……ワンちゃんの名前、考えなくちゃ……」


それだけ言うと、アンジェリカは目を閉じる。


「アンジェリカ様、ゆっくりお休みください……」


ヘレナの優しい声を聞きながら、アンジェリカは眠りに就いた――



****



 アンジェリカは夢を見ていた。

それは父親のチャールズが、子犬を連れ去る夢だった。


『私に黙って犬を飼うなど、何ということだ! こんな生き物など捨ててやる!』


『お父様! お願い! ワンちゃんを捨てないで! 私、もっといい子になるから連れて行かないで!』


アンジェリカは夢の中で必死に父親に詫び――



「…クゥ~ン……クゥ~ン……」


耳元で犬の鳴き声が聞こえて、アンジェリカは目を覚ました。


「あ……」


ふと枕元を見ると、銀色の子犬が心配そうにアンジェリカを見つめている。


「ワンちゃん……」


すると子犬は尻尾を振って、まるで猫のようにアンジェリカの頬にすり寄ってきた。


「フフ……ありがとう、心配してくれていたの?」


ムクリとベッドから起き上がると、アンジェリカは銀色の子犬を抱き上げて語りかけた。


「私ね、さっき怖い夢を見たの。お父様はとても厳しい人でね、私は駄目な子だからいつも怒られているの。それで、夢の中でワンちゃんを取り上げられちゃったんだけど……」


そしてアンジェリカは子犬の背中を撫でた。右後ろ脚は包帯が巻かれている。


「でも、夢で良かった。ワンちゃんの怪我が治るまでは、私がお世話するからね?」


すると子犬はますます嬉しそうに尻尾を振る。


「嬉しいの? 私も嬉しいわ。……早速ワンちゃんに名前をつけてあげなくちゃ……何がいいかしら?」


アンジェリカは子犬をじっと見つめ……。


「そうだわ、銀色だからシルバーって名前にしましょう! 今日からあなたはシルバーよ。よろしくね?」


そして笑顔でシルバーの頭を撫でるのだった―


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ