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結婚

 私達は結婚しました。その少し前に同棲していましたから、生活はあまり変わりませんでした。

 

 夫はおとなしい人でした。夫が既に借りていたアパートに私が転がり込むという形を私達は取りました。夫は自分の部屋で静かに読書をしたり、インターネットを見たりするのが好きな人でした。私は時折、寂しい気持ちを抱いた事もありました。

 

 夫の部屋には本が沢山積んでありました。私のまわりには読書家はいなかったので、少々新鮮でした。ですが、夫が読んでいる本をちらっとめくってみても、何が書いてあるか、さっぱりわかりませんでした。

 

 「ねえ、これ何が面白いの?」

 

 分厚い哲学書を指して私は聞いた事があります。夫は笑いもせず

 

 「いや、面白くないよ」

 

 と言いました。私は笑って、

 

 「面白くないなら何で読むのよ」

 

 と言いました。面白くない本を一生懸命に読む夫が私には少し、可笑しかった。夫は、「なんでだろうね」と真面目な顔をして言っておりました。

 

 それと、夫から聞いた話ですが、夫は昔、小説を書いていたそうです。小説家を目指してもいたそうです。ですが、それはもうとっくにやめてしまって、小説を書く気はないとの事でした。

 

 私はそこでも質問しました。

 

 「どうして書くのやめちゃったの? …名前が「藤沢周平」なんだから、才能あったかもしれないじゃない?」

 

 「どうしてだろうね? …ただ、もうやめようと思ったんだ。作家になるのなんて、本当は望んでいない事がわかったんだ。後から、ね。僕は何者にもなりたくなかった」

 

 「ふうん、変なの」

 

 「僕はね、芸術を作る側じゃなくて、人生を芸術にしようと思ったんだ。ある時にね」

 

 …夫はそんな事を言いました。その言葉は、私には全く理解不能で、今も、理解ができません。それに夫の人生のどのあたりが"芸術"なのか、それは芸術に疎い私にはさっぱりわかりません。今も、わからないままです。

 

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