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11'back  作者: ヒグマ
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第2幕五章 

お楽しみください。

「じゃあ、その日、辻さん達の前に現れた入れ墨の男達を探してるんすね」


食事を済ませ、二人は紅茶を飲みながら話していた。辻は城ヶ崎から説明を聞く前に、自身が何を調べているか教えた。信用したわけではないが、情報と信用を与えることで、どんな反応をとるか見たかった。


「そうだ。」


辻は答えた。辻の人生でこれまでに自身の話を信じた人間はいなかった。しかし、城ヶ崎はすぐに事実と受け取った。


「何故信じる」


「はい?」


城ヶ崎が辻を見つめる。


「自分で言うのもなんだが、かなり突飛な話だろ。」


城ヶ崎が言うと辻が、またニヤつき顔をしながら答えた。


「そりゃ、私はそっちの世界のこと知ってますからね。辻さんの頭疑うんだったら、それは私の頭も疑ってんのと同じっすよ」


辻は考えを巡らした後、取り敢えず疑問を尋ねることにした。


「それで?そろそろ話してくれないか。お前は誰で、あいつらは何者だ。」


城ヶ崎は紅茶を一口飲むと話始めた。


「私は城ヶ崎 栢、あいつらが私達の世界で起こした行動を追跡しています。」


城ヶ崎は、謎の敬礼をして、カッコつけながら説明する。しかし、カッコつけた話し方のせいか、紅茶が上手く飲み込めなかったらしく、胸を激しく叩きながら、騒がしく咳き込んだ。収まると、反省したのか今度は普通に話し始めた。


「あいつらは門を通してこちらの世界へとやって来ます。門の場所は決まっていて、辻さんが調査したマンホールも、その一つでした。私はやつらの身体ににタトゥーが入っているから、そのまんまタトゥーって言ってます。タトゥーの行動には特徴的なことが3つあります。一つは目的があるときしか姿を現さないってことです。辻さんのを例にとれば...。


少しばつが悪そうに城ヶ崎は言い淀んだ。


「娘さんの殺害ですね...。それを果たしたら奴らはすぐに姿を消しました。」


「待て。」


辻が静止する。


「じゃあ、昨日襲ってきたやつは何が目的だったんだ。俺を襲うことが目的だったとは思えない。仕方なく襲ってきたという印象だった。」


辻は昨日の警官の舌打ちや、動揺を思い出していた。


「それは、さっきも言った通り、彼が門番だったからっす。」


「門番?」


「そうっす。彼らの特徴的な行動のもう1つは、彼らは「門」と言われるものを通して現れるっていうことです。そして、それを守っていたのが昨日の女です。」


「女?」


辻の記憶では警官は男で、周りにも女がいたとは感じなかった。


「あ、そっか。辻さん、倒れてましたもんね。あれは、女のタトゥーが辻さんを調査するために男性警官に擬態してたんすよ。だから、辻さんが倒れてすぐ、擬態を解除してました。」


「擬態...」


言われてみれば、意識が途絶える最中、女の姿を見たような気がしなくもなかった。


「あいつらは何なんだ。擬態したり、意識を途絶えさせたり...」


辻は頭を抱える。二年前のあの日起きた、不可解なことの数々。自身の頭さえも疑うほど、現実離れした現象。それが昨日もまた起きたのだ。辻は混乱した頭を整理したかったが、どうにもできなかった。


「それが奴らの特徴の3つ目っす。タトゥーは魔術を使えます。」


「魔術?」


辻は目を細めた。


「はい。分かりやすく言えば魔法です。」


城ヶ崎は辻の目をまっすぐ見つめて言った。


「その根拠は?」


辻は目を離さずに言った。話を信じたわけではない。しかし、現実離れした現象に現実の常識が通じることもないとも思っていた。


「お見せします。」


城ヶ崎は立ち上がると、紅茶を一気に飲み干して、脱ぎ捨てられた上着を掴むと、玄関に向かった。辻も立ち上がると、城ヶ崎に続いた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「私の父は民俗学者だったんすよ。」

城ヶ崎は自宅から、スカイライン76年式に乗り込むと、辻と共に目的地へと向かって車を走らせた。


「その界隈では結構有名だったらしくて、幼心に父の話してくれる不思議な話や、発見したことなんかに、ガキの時分は夢中になってました。」


赤信号で車が止まると、城ヶ崎は窓を開け、アメリカンスピリットを咥えて火をつける。


「で、自分が高校生ぐらいの時、父は淡路島で古くに使われていた呪術的言語の解読を行っていました。そしたら、それが実は淡路島だけでなく、ギリシャやエジプトなんかの世界各地の古代遺物や遺跡で確認されていたことに気がついたんす。」


城ヶ崎はそこまで話すと、アメリカンスピリットを深く吸い込み、ゆっくりと煙を吐き出した。


「ほんで、ある時、父が夜遅くに帰ってきて、寝ている私を叩き起こして、父が調べていた呪術的言語が書き出されたメモを私に握らせました。そして、何かあったらこれを体のどこかに彫れと言いました。そして、追われるように家を出たあと、父は帰ってきませんでした。」


辻は黙って城ヶ崎の話を聞く。


「それからは、父を探すために、父が調べていた言語について調査しました。私は民俗学者じゃないんで、最初は手こずったんすけど。でも、ある時、いくつかの事件で、共通して不可解な証言が出ていることを知ったんです。「奇妙な文字が書かれたタトゥーをしているやつがいた。」と言う証言です。そして、辻さんもそのうちの一人でした。」


城ヶ崎は運転しながら、片手でスマホを操作し、辻に渡す。辻が受け取ると、そこには小さなメモに不可解な文字が表示されていた。


「見覚えありませんか?」


「あいつに入っていた刺青だ...」


あの時のことを思い出して、スマホを握る辻の手に思わず力が入る。


「それが父が遺したっつうメモです。父が私に彫れって言った呪術的言語を、奴らは自身の体に彫っていたんす。そして、その言語を掘っている奴らは共通して妙な術を使える。」


「あの気絶したものか?」


「多分そうっすね。」


「誰も気づかないのか?」


至極当然の疑問だった。それだけの力を行使していれば、どこかで漏れる可能性はある。


「まあ、気づきにくいでしょうね。奴らは、普段誰かに擬態して、目的のためにしか表には出てきません。それに、最悪、バレても記憶を消すか、殺してしまえば良いですから。それに、私も魔術のこと全部わかってるわけじゃないんで、もしかしたら記憶を操作したり、洗脳したりすることもできるのかもしれないっす」


「...」


辻には城ヶ崎が話しているが真実か分からなかった。しかし、真実かどうかは、今はどうでも良かった。ただ、娘を襲った人間の手がかりを掴めたということ。そして、そのために、得られそうな情報は全て聞いておきたかった。


「タトゥーの目的は何なんだ?」


「正直分からないっすね。でも、奴らが何か目的を持っていることだけは確かっすよ。それが世界征服なのか、友好条約かは分かりませんけど。」


辻は、城ヶ崎の言ったことを咀嚼していた。タトゥーが何らかの目的で動いていることは分かった。では、息子は何の目的で殺される必要があったのだろうか。


何にせよ、魔術について知らなくては...


辻がタトゥー達について考えている間、辻達を乗せたスカイラインはまだ少し紅葉が残る森の中へと進んでいた。


たくさんの人に楽しんでもらえると嬉しいな


下書きと前書きの使い方これであってるのか...?

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