第2幕四章
今回短めです。
辻が目を覚ますと、朝日に照らされたマリリンモンローが笑っていた。
天井に貼ってあったマリリンモンローの白黒写真はまるでこちらを見ているかのようで、少しの間、目を合わせてまどろんでいた。そして、なぜこんなものが?と疑問に思ったところで、自身の気絶する前の状況を思い出して飛び起きる。
ここはどこだ?
見るとどこかの部屋の中のベッドの上で、部屋の中にはベッドの他、民俗学や宗教学の本など入った本棚や一世代前のPCなどが置かれている。
人の部屋か...?そもそも俺を誰がここに運んだ?
ベッドから降りると、部屋に備え付けられた木製のドアに近づき、音を立てずにゆっくりと開いた。
部屋の外はリビングとキッチンがあわさった部屋になっていて、本や何かの書類など、様々なものが散乱している。そして、キッチンには女が一人料理をしていた。
短く逆立ったピンク髪、痩せた身体、鋭い目に細い丸眼鏡をかけた女で、黒く塗られた唇と爪が印象的だった。服装はノースリーブの黒いTシャツにダボついたジーンズという出立で、パンクロッカーのようだった。
誰だ、あいつは
辻は静かに背後から近寄ろうとした。しかし
「起きたっすか?」
と女は振り返らずに言った。
辻は驚き、少しの間固まった。
「お前、誰だ」
「安心して下さい、あいつらとは違いますから」
フライパンで何かを焼きながら、やはり振り返ることはなく答える。
「証拠は?」
まだ信用はできない。しかし、暫く待っても答えは返ってこない。
「おい、聞いてるのか」
「シッ!」
女は人差し指を辻に向けて、辻を制止した。
「紅茶は、静かに入れるのがマナーっす。」
女は沸かしたお湯をゆっくりとテイーポットに注ぐと、上から浮いた茶葉を暫く満足そうに眺めた。そして、暫くすると口を開いた。
「あんたは、やつの攻撃をモロに食らって意識を無くしたっす。その場に倒れ、あいつに記憶をなくされそうになってました。だから、そこを私があれやこれやで助けたってわけです。」
辻は女の後ろで説明を聞いていた。女はティーポットから離れ、棚から食器を取り出しながら話を続けた。
「あいつは警察に擬態してました。あんたが『門』に近づいたからっす。そして、あいつはあんたが、あいつらの仲間を探してることを知った。それからあんたは奴が擬態してることに気づいてしまいました。だから、あんたは記憶を抹消する、しかもひどく不安定な薬を飲まされようとしてたんす。私が助けなけりゃ、最悪、記憶どころか意識もぶっ飛んで、廃人になってましたよ。」
辻は説明を聞いて、様々な疑問が湧いていた。だが、最も聞かなければならないことを尋ねた。
「お前は誰なんだ。」
女は2つの食器にそれぞれベーコンエッグをのせ、テイーポットを持つと辻に押しつけた。
「私は城ヶ崎 栢です。まずは飯っす。衝撃的なんで聞いてる途中に吐きそうになっても我慢してくださいね」
女はニヤニヤしながら辻を見つめた。
ありがとうございました。