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追放された蘇生術師の、死なない異世界放浪記  作者: ココアの丘
第6章 死者の国篇
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封印、解除

 ラールの頭が、ぼくの方を振り向いた。


 その狂気をはらんだ視線は、まっすぐにぼくを向いている。いや、それは正確じゃないな。彼女が見ているのは、ぼくが手にしている聖剣だった。そういえば、フロルも言ってたっけ。ラールは、自分の弱点となる属性の魔力には敏感に反応するから、できれば聖剣は使わないように、って。けどぼくたちは、魔王ケイリーとの戦いで一度、聖剣を抜いてしまっている。ここからは遠く離れた場所だったけど、あの時の魔力が、ラールに検知されていたのかもしれない。そのせいで、聖剣の魔力に敏感になっているのかも。

 けどここまできたら、このまま攻撃をするしかない。ぼくの存在はバレてしまったし、ラールは吹き飛ばされて後ろに倒れそうになっている、不安定な体勢だ。これ以上に、有利な状況はない。ぼくは予定どおりに縮地スキルを発動して、彼女に接近しようとした。

 その瞬間、ラールは崩れた態勢のまま、すさまじい速さで体を縦軸に半回転させて、ぼくに攻撃を加えてきた。


「グゥラァァアアッ!」


 咆哮と共に加えられた、強烈な一撃。腕にまとった魔力を投げつけるような乱暴な攻撃を、ぼくはかろうじて避けることができた。いや、避けたと言うより、無理な体勢からの攻撃だったために狙いが外れた、が正しいだろう。ともかく、魔力の直撃は食らわずに済んだ。そのはずだった。だけどその瞬間、ぼくの目の前は真っ暗になってしまった。

 え、ぼく、死んだの?

 一瞬、そう勘違いしてしまったほどだった。けど、気がつくと足下近くの地面だけは、ほんの少しだけ光っている。どういうわけか、ぼくの視野が暗くなっていたんだ。何が起きたのかまったくわからず、ぼくは急いで、自分自身に鑑定を使った。


【種族】ヒト(マレビト)

【ジョブ】剣士(蘇生術師)

【体力】18/18 (111/111)

【魔力】6/6 (77/77)

【スキル】剣Lv6

(蘇生Lv4 隠密Lv7 偽装Lv6 鑑定Lv5 探知Lv7 罠解除Lv3 縮地Lv3 毒耐性Lv4 魔法耐性Lv6 打撃耐性Lv5 状態異常耐性Lv3 痛覚耐性Lv3

小剣Lv2 投擲Lv6 強斬Lv3 連斬Lv4 威圧Lv2 受け流しLv2 

火魔法Lv4 雷魔法Lv3 土魔法Lv4 水魔法Lv5 風魔法Lv4 氷魔法Lv1 闇魔法Lv2 精霊術Lv6)

【スタミナ】 18(95)

【筋力】 17(114)

【精神力】12(63)

【敏捷性】Lv5(Lv8)

【直感】Lv2(Lv7)

【器用さ】Lv2(Lv8)


 たくさんのスキルが、リストから消えていた。王都イカルデアで蘇生した時に得た、大工や演奏、家事と言ったスキルたちだ。そのほとんどは使うことはなかったし、使うつもりもなかったけど、失われたものの中には「暗視」があった。あれがなくなったため、視野が暗くなったんだろう。

 そうか、これが『魂の形への影響』か。ラールの攻撃は、魂の形に影響を与えることがあるらしい。そして魂の形とは、生きてきた痕跡みたいなものなんだそうだ。当然、その中には戦いの記憶や、スキル取得の経験も含まれるんだろう。それが削られたため、スキルがなくなってしまったんだ。だからフロルは、この攻撃には注意しろ、と言ったんだな。


 でも、攻め続けるしかない。


 あれだけ大きな魔力のかたまりによる攻撃を、完全に避けるのは不可能だ。と言うことは、どんなにうまく避けても、攻撃されるたびに、スキルを失ってしまうはず。戦いを後伸ばしにしていったら、どんどんこちらの不利になってしまう。ぼくは今度こそ、準備していたスキルを発動した。


「縮地」

「グゥァァッ!」


 ほとんど同時に、ラールの追撃があった。縮地スキルで瞬間的な移動をしていたおかげで、今回も直撃は食らわなかった。それでもやっぱり、かすってはいたらしい。出したままだった鑑定の表示が、大きく変化していた。


【種族】ヒト(マレビト)

【ジョブ】剣士(蘇生術師)

【体力】18/18 (98/98)

【魔力】6/6 (70/70)

【スキル】剣Lv4

(蘇生Lv3 隠密Lv4 偽装Lv4 鑑定Lv2 探知Lv5 縮地Lv2 毒耐性Lv3 魔法耐性Lv3 打撃耐性Lv2

小剣Lv1 投擲Lv2 強斬Lv1 連斬Lv1 精霊術Lv5)

【スタミナ】 18(69)

【筋力】 17(96)

【精神力】12(40)

【敏捷性】Lv5(Lv8)

【直感】Lv2(Lv6)

【器用さ】Lv2(Lv7)


 今度は、威圧や受け流しといった戦闘スキル、そして精霊術以外の魔法スキルが、ごっそりなくなっていた。体力や筋力と言ったステータスも、かなり落ちているみたいだ。それでも、縮地のおかげで、ぼくはラールまであと少しのところまで来ることができた。ただ、攻撃を警戒して少し斜めに進路をとったために、ラールとは少し離れた場所に着地してしまった。聖剣の一撃を浴びせるには、あともう二、三歩、近づかなければならない。ぼくはためらわず、もう一度、スキルを使った。


「縮地!」

「──グゥァッ!」


 そのわずかな距離を、再びの縮地で埋める。ラールも足を踏ん張り、移動後のぼくに対して、突きのような攻撃を加えてきた。見るからに苦し紛れの打撃で、そこまで大きな魔力を伴ってはおらず、攻撃そのものからは、ダメージはほとんど感じなかった。けど、それでもやはり、避けきることはできなかったらしい。その直後に、


【種族】ヒト(マレビト)

【ジョブ】剣士(蘇生────


 鑑定の表示が、ふっつりと消えてしまった。

 どうやら、鑑定のスキルもなくなってしまったらしい。たぶん縮地も、発動することはできないんだろう。けど、そんなものはどうでもいい。それらを代償に、ぼくはラールのすぐそばにまで、来ることができたんだ。

 それにぼくは、最後の一つのスキルだけは、消えてはいないことを感じていた。なんとなくの、感じなんだけど。たぶんだけどあのスキルは、ジョブと共にあるというか、ぼくの芯にあるものなんだ。


 互いの剣とこぶしが届く位置に立った、ぼくとラール。ラールは既に、体勢を立て直していた。ぼくは剣を横に払ったけれど、ステータスが落ちて、スピードも鈍っていたせいだろうか。その時には相手の攻撃が、文字どおり目の前まで迫っていた。

 ぼくはその攻撃を、避けるつもりはなかった。その代わりに、


「秘剣──」


 本当に久しぶりに、一度は捨てたはずの、あの技の封印を解いた。


「──相打ち」


 ほとんど同時に、正面から迫ってきた膨大な魔力の流れが、ぼくの体を蹂躙(じゅうりん)した。


 聖剣の一撃は、ラールに届いたんだろうか。そしてラールを倒すことはできたんだろうか。それを確認することもできないまま、ぼくの意識はブツンと途切れて、視界は今度こそ、真っ暗になった。




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