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追放された蘇生術師の、死なない異世界放浪記  作者: ココアの丘
第1章 王都追放篇
22/248

鑑定と偽装

 「鑑定」スキル。

 これもまたその手の小説やゲームでおなじみのものだ。人や物の性能や価値がわかるスキルで、作品にもよるけど、たいていは便利で使い勝手がよく、価値の高いスキルだったりする。見たものの価値がわかれば商人として成功できそうだし、相手の強さがわかるのなら、武人として百戦危うからず(逃げるのも含む)、になりそうだもんな。

 さっきの文字が鑑定スキルというものだとしよう。いや、実際に文字が浮き出て、その結果が当たっていたんだから、鑑定ができていたのは間違いない。問題は、昨日まではそんなスキルなんて持っていなかった、ってことだ。ジョブのおかげでスキルが得られることもあるだろうけど、蘇生術師というジョブと鑑定のスキルなんて、あんまり関係がなさそう。訓練してレベルが上がったら自然と身についた、というのでもないように思う。だいたい、訓練と言っても元高校生同士で木剣の打ち合いをしていただけで、魔物の一匹も倒していないしね。いや、魔物を倒せばレベルがあがるとは限らないし、そもそも「レベル」なんてものがあるかどうかも、わからないんだけど……。

 そんなことを考えながら、しげしげと自分の手を見ていたら、思わず「おっ?」と声をあげてしまった。目の前に再び、文字が浮かび出たからだ。


【種族】マレビト

【ジョブ】蘇生術師

【体力】22/22

【魔力】21/21

【スキル】蘇生 隠密 偽装 鑑定 探知 毒耐性 魔法耐性 小剣 投擲 火魔法

【スタミナ】 13

【筋力】 11

【精神力】9

【敏捷性】5

【直感】4

【器用さ】7


 なんだこれ?

 あ、そうか。これ、自分を「鑑定」したんだ。さっきのバッグもそうだったけど、鑑定するにはそのものをじっと見つめて、意識を集中させればいいみたいだな。

 それにしても、なんだかスキルの欄が、すごいことになっていた。

 やっぱり、「鑑定」がある。これで、この文字が鑑定スキルのおかげであることは、もう確定だろう。それから、「小剣」とか「投(てき)」なんてのもあるぞ。そうか、ぼくは小さめの剣とか、ナイフや手裏剣を投げることに才能があったのか。だから、ふつうの剣の練習では成績が出なかったのかな。「火魔法」って、どうして魔法が? おー、そういえば、最初のうちは魔法の訓練もさせられて(才能無しということで、すぐにお役御免になったけど)、その時に火を出す練習をさせられたっけ。あの訓練が、今になって花開いたのか。「隠密」と「偽装」、「探知」はよくわからないけど、「体力」とか「スタミナ」などのパラメータも、最初に宝玉で測った時よりも増えている気がする。武術組の訓練は嫌でしかたなかったけど、あれでも一応、意味はあったのかな。

 それにしても、ちょっとスキルが増えすぎのような気も……。


 にやにやしながら鑑定結果を見ていたぼくは、ふと思いついた。このスキルって、なんだかやばいんじゃないか?

 問題は「隠密」だ。隠密というと、単身で敵のアジトに侵入して、諜報なり暗殺なりをするイメージがある。名前からすると、これもそんな感じの仕事に向いたスキルなんだろう。「偽装」「探知」「投擲」あたりも、なんだか諜報員っぽい気がする。

 とすると、これをもっていることがばれたら、そんな仕事をさせられるんじゃないだろうか。

 ただの高校生をスパイに仕立てて、敵陣に潜り込ませる……普通なら考えられないけど、この国のやばさを考えれば、そんなことがあってもおかしくはない。諜報員なんて、どうかんがえても死亡率が高いよね。ちょっと物音を立てただけで、槍で突かれて屋根裏で死んじゃうようなイメージが……。「蘇生」があるのが、さらにまずい。生き返ることができるとなると、文字通りの「死んだ気で行ってこい」、をやらされそうだ。本当は、復活した後で動けないんだからあんまり意味がないんだけど、そんなことには配慮してくれないだろう。

 まずいことに、この国のやつらは、時々ぼくたちのステータスを調べている。つい先日も、騎士とも魔法使いとも違う制服をした人が訓練場に入ってきて、ぼくらの前に立ってじーっとにらみつける、ということがあった。後で聞いてみると、鑑定スキルを持っている人だったらしい。定期的にあれをされたら、ぼくが変なスキルを持っていることが、ばれてしまう。


 なんとか、蘇生以外のスキルを隠す方法はないかと首をひねっていたら、またまた「おー」と声が出てしまった。もしもメイドさんに見られてたら、ちょっとおかしなやつと思われたかもしれない。何もない空中を見ながら、何度も声を上げているんだから。でも仕方がない。鑑定結果の表示が、こんなふうに変わっていたんだから。


【種族】マレビト

【ジョブ】蘇生術師

【体力】22/22

【魔力】21/21

【スキル】蘇生 (隠密 偽装 鑑定 探知 毒耐性 魔法耐性 小剣 投擲 火魔法)

【スタミナ】 13

【筋力】 11

【精神力】9

【敏捷性】5

【直感】4

【器用さ】7


 「隠密」「偽装」などのスキルを示す字が薄ーくなって、ほとんど読めなくなった。ぼくは直感した。たぶんだけど、これ、隠せているんだよね? 

 いろいろと試してみた結果、鑑定の時と同じように、項目をじっと見つめて、この項目を隠したい、と願っていれば、このステータス修正が発動するらしいとわかった。これが、「偽装」スキルの効果なんだろうか? 考えてみたら、これもスパイ向きのスキルのような気がする。もしも自分のスキルを隠せないと、鑑定されたら簡単にスパイだとばれてしまいそうだし。

 さらに試してみたら、隠すだけではなく、体力などの数値を変えることもできた。よし。ついでだから、スキルだけじゃなくて、体力や魔力などの項目も、以前と同じような数値に変えておこう。よく覚えていないけど、体力はたしか、十くらいだったっけ。魔力も十で、それからスタミナは……。


 バッグと鑑定、そして偽装スキルのことに夢中になっていたぼくは、いつになっても朝食が運ばれてこないことに、まったく気がついていなかった。


 メイドさんがやってきて、「昨日の夜、魔族の襲撃があった」と聞かされた時には、もうお昼を過ぎていた。


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