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追放された蘇生術師の、死なない異世界放浪記  作者: ココアの丘
第5章 狂騒の王都篇
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決定的におかしなもの

 ガラスに映った銀の髪と、銀色がかった青色の瞳。

 ぼくが王都に戻った、二つ目の理由がこれだった。


 黒髪に黒い目という、この世界ではかなり特徴的な見た目をしていた人間が、銀髪と青い目になったら、それだけで大きく印象が変わる。しかも、王城を追放されてから、もうかなりの日数が経っていた。追放される前にぼくを見たことがある人でも、なかなかぼくとは気づかないだろう。だったら、王都に入って情報収集するのもありだな、と思ったんだ。黒髪黒目でこの世界を旅するのって、結構目立ってたんだよね。カラーリングする方法が見つかって、良かったよ。

 といっても、そのへんの道具屋に入ったら毛染めがあった、というわけではない。実はこれまでも、いろいろな街でいろいろな店を回っていたんだけど、見つけることはできていなかった。カラーコンタクトにいたっては、こういうものがないかと尋ねたお店の人に、「なんだって、そんなものを目に入れなければならないんだ?」と変な顔をされる始末だった。

 ところがそれは、意外なところに転がっていた。


 きっかけは、「リスト」の魔法だ。生活魔法の一種で、これを使うとマジックバッグの中に入っているものの一覧を知ることができる。グラントンの迷宮で柏木に教えてもらっていたんだけど、迷宮脱出後のゴタゴタで、すっかり忘れていた。ある晩、街の宿屋でベッドに寝転んでいた時にふいに思い出して、手持ちのマジックバッグに使ってみたんだ。

 すると、いろんなもののイメージが、頭の中に次々に浮かんできた。

 ちょっと勘違いしてたんだけど、この魔法、ものの名前の一覧を出してくれるのではなかった。名前ではなく画像が、10個くらいまとまって頭の中に出てくる。考えてみれば、名前が出てくるなら、ただの生活魔法が「鑑定」の機能を持つことになってしまうもんな。ちなみに、その画像が消える前にもう一度「リスト」を唱えると、次の10個が表示される。これでわかった画像を頭の中でイメージして、マジックバッグの中に手を突っ込めば、それを取り出すことができる、という仕組みらしい。

 イメージに浮かんだものを取り出して、鑑定する。そんな単純作業を繰り返したところ、バッグの中にはいろんなものが入っていた。まずはお金関係から。


  「白金貨」 58枚

  「大銀貨」 100枚以上

  「契約書」 数通


 白金貨はカルバート王国のもの。大銀貨はイザーク王国の発行だけど、現在は主に魔王国で流通しているものらしい。そして「契約書」というのは、どうやら商売に関する契約書らしかった。この世界の法律とか習慣とかを知らないし、読んでも内容がよくわからなかったけど、どうやらこのバッグの持ち主は、何かの商売をしていたようだ。

 白河も、「マジックバッグを持っているのは、貴族か大商人くらい」と言っていたもんね。白金貨、銀貨の種類をみると、カルバート王国と魔王国で商売をしていたのかな。あるいは、その国境あたりで。

 それにしても、白金貨が58枚か……1枚で大金貨10枚分、日本円ならざっと、1000万円。それが実に58枚。めっちゃ、大金だな。けど、こんなお金、どこで使えばいいんだろう。そのへんのお店で出しても、たぶんだけど扱ってくれないような気がする。それに、これだけお金があると、何に使えばいいのか、逆にわからなくなるよね。特にこんな、良く知らない世界だと。

 お金関係以外では、こんなものがあった。


  「毛染め(銀色)」

  「毛染め落とし」

  「瞳染め(青色)」

  「瞳染め落とし」


 ここで出てきたのが、毛染めと瞳染めだ。「瞳染め」って、名前だけ見るとちょっと怖い感じがするけど、要するに目の色を変えてくれる目薬だ。どちらもかなりの高性能で、一度毛染めをつけただけで一発で黒髪が銀髪になったし、瞳染めを目に差すと、目に見える景色はまったく変わらずに、瞳の色だけが変わった。もしかしたら、何か魔法的な効果があるのかもしれない。最初、うっかり宿の中で使ってしまったので、そこを出る時に変な目で見られないか、ビクビクする羽目になった。宿代は先払いだったから、そのまま逃げるように出てきたけどね。

 ちょっと引っかかるのは、これが商人の持ち物とは思えない、というところだ。商人が、自分の髪の毛や目の色を変えようとすることなんて、あんまりないよね。その人が白髪に悩んでいたとしても、「瞳染め」が意味不明だし。

 もしかして、詐欺師みたいな悪徳商人だったのかな? それで逃げる時に、これを使っていたとか。でもそうなると、白金貨が引っかかるんだよなあ。こんな大金を持っている人が、逃亡前提の詐欺なんてするのかね。それに、そんな大物の商人が逃げる手段としては、ちょっと弱い気がする。どっちかって言うと、役人に袖の下を渡して逃がしてもらう、そんなイメージが……。


 バッグの中には、他にもいろいろなものが入っていた。テント、雨具、防寒着、着替え用と思われる大量の衣類、きれいに個包装された携行食……どれも、けっこうな高級品に見えた。携行食なんて、食べてみるとけっこうおいしかった。あんまり数がないのが、残念だったけど。

 まあこのあたりは、商人が非常用に準備していたと言われても、そんなに変ではない。けど、商人の持ち物にしては決定的におかしなものが、一つ入っていた。

 それが、これだ。


  「自爆玉(火魔法)」



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