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古代のエイリアン  作者: 毒腹
3/6

3...食人族の村



一先ず幼馴染の女を隣村に逃すことにした。

川を越えた先にある村で、以前はよく小競り合いを起こした村人が拐われ食べられる事件がちょくちょく起きていたが、ジャーキーを拉致する事件が起きて以来、最近ではめっきり大人しいものだった。

ジャーキー曰く全て食ったらしい。

食ったと言うのが性的にと言う意味なのか食事と言う意味でなのかわからないが、性的に食っていたらジャーキーの子供が溢れかえっているだろうし、単純に人食し返してやったのなら隣村は無人になってもう誰も住んでいないのかもしれない。

長年隣村でも小競り合いを起こすくらいしか交流がなかったため乗り込むのは初めてのことだった。

だが此方の村の状態を伝えればお互いに協力し合えるかもしれない。ジャーキーに物理的に食われて無人になっていなければの話しだが…。



村の連中が寝静まる頃合いを見て、女を連れて村を出た。

川を越えて、それから崖を登る必要があった。

村の灯台には傭兵崩れが月夜の明かりを頼りに脱走者や襲撃者がいないかと川縁を見張っている。

サーモンは死角になる岩に隠れて闇世に紛れて川を目指した。

傭兵崩れ達よりもサーモンは夜目が効く為、傭兵の視界を逃れての移動は然程難しいことではなかった。

そっと水に入ると後は竹筒を咥えて、女を引っ張って極力素潜りで泳いだ。

槍で襲ってくるピラニアを始末しつつ川を渡るとまた岩陰に隠れた。少し負傷した部分に布を巻いて手当てを施し、女は仕留めたピラニアを惜しんで衣服に巻き付けて取ってきたピラニアの口からエラに草紐を通して数珠状に繋技合わせた手土産を簡単に作成していた。


「こんな夜遅くに訪ねるんですもの手土産は必要でしょ?」


「彼らはピラニアを食べるのかな?」


食の事情はうちの村とは異なって魚類や肉類は食べないと聞いたことがあった。

食べるのはバナナの木や野草や家畜の乳が主で、偶に迷い込んできた他村の村人などを脅しの目的で食って骸骨を被ったり装飾品として飾る文化圏の者達だった。

うちはピラニアもワニも亀も何でも塩漬けにしたり干したりして食べるのだが、あちらはそれらを守り神と見なしているのでおぞましき蛮食の民として此方のことを敵視していた。


「食べられることを彼らは知らないだけよ。食べられることを教えてあげれば普通に食べると思うわよ。」


「そうだといいけど…」


村の長老の信奉の強さ次第では文化交流は不可能な場合もあることをサーモンは知っていた。

下手に関わると彼らは一斉想起したり集団自死に及んだりすることも珍しくはない。

森に入ると松明を作ってサーモンは恐る恐る目と鼻の先に見えてきた隣村に進んだ。


地面に突き立てられた生首が風化して頭蓋骨だけになった物が並んでいた。頭蓋骨や骨が道沿いに無数のオブジェのように飾られ、道の上にも木から木に骨がアーチのように紐で吊るして飾られている。


「怖いわサーモン…」


「大丈夫だよ。こんなのはただのこけ脅しさ。彼らは生来草食なんだから」


「でも人は食べるのよね。自然霊崇拝の名目で…」


「でも今は僕らが争っている場合じゃないよ。彼らもそのことは話せばわかると思う。」


突然ガサガサと周囲の木々が軋んで、ブンッと腕組みした男が逆さまにぶら下がった状態で降りてきて、女が頭部を抱えて悲鳴を上げて蹲った。

ぶつかりそうなほどすぐ目の前に迫ったのはジャーキーと瓜二つの姿の者だった。

泥で顔と体に装飾は施しているもののそれはジャーキーと違いはなく、ただほんの少しジャーキーと比べて雄々しい筋肉をその身に纏っていた。


「オマエ、サーモンか?」


「何だ、どこの侵入者かと思ったら向こうのオレの村の奴らか。」


「向こうは侵略者とオレが共存を試みる実験をしているからな。逃げ出したくもなるだろうよ。」


「なっ!?オマエ達…」


「ど、どう言うこと!?どうしてジャーキーがこんなに沢山っ」


ぞろぞろと辺りの木の上にも現れた無数のジャーキーに取り囲まれて女はあたふたと周囲を返り見た。

どう言うことだ。ジャーキーが、ジャーキーが無数にいる。

サーモンも異様な状況に愕然とした。


「まあ、折角きたんだし茶でも飲んで行けよ。」


ぶら下がった木から飛び降りるとジャーキーはそう言ってヒラヒラと手で呼び寄せる仕草をして見せた。

無数のジャーキーに招かれて高い木の塀で囲われた集落に入るとこんな時間にも関わらず松明がゴウゴウと焚かれていて明るかった。

そこにはジャーキー以外にも女や子供が沢山居て、村の中にもまだ沢山いるジャーキーのお世話を怯えて萎縮した様子で行っていた。


「あの女達は、この村の?」


「いや、アレは東の集落の女達だ。子が欲しかったんで連れてきたが、どうやらオレの種ではマトモな子はなせないらしい。」


ジャーキーは少し悲しげな様子で足に纏わりついた子を抱き上げた。子供は女児だったがよく見ると左右の目がなく、鼻と口だけがその顔には乗っていた。

他にも足のない子供や腕がない子供、全身毛むくじゃらの子供や首が二つ生えた子供、背中に羽根のような物が生えた子供。

奇形児が無数に溢れかえっていた。

それでも子供は大事に育てられているようで皆明るく笑みを浮かべてジャーキーによく懐いていた。

あちらの村のジャーキーは癇癪を起こして他人の子供の目を髪飾りで突き潰して殺していたが、この村のジャーキーは自分の子供だからか奇形の我が子を大事にしていた。

村の中央にある一際デカイ村長の土造りの邸宅に招かれて、獣の骨や頭蓋の首飾りをして髪をオールバックに逆立てた上半身裸のジャーキーに迎えられた。彼がこの村の村長役のジャーキーらしい。

獣の皮や人間の皮を椅子の背もたれに敷いた少し周囲よりも高身長で強そうなジャーキーだった。


「よくきたな、歓迎するよサーモン」


「状況が全く読めないんだが…説明してもらえるかな?君が背中に敷いてるニンゲンの生皮のこともだ…」


指摘を受けてジャーキーはチラリと背凭れを振り返り、これか、と言ってひき下ろすと自身の膝の上に抱きかかえた。

そのニンゲンの生皮は脱皮したセミの抜け殻のように背中に一筋の切れ込みが入って中身だけが綺麗に繰り抜かれていた。





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