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銀河のお時間

銀がのまいご

作者: 黒森 冬炎

小学校三年生程度の漢字を使用しました

厳密ではありません

 チョコチョコは銀が系におつかいに来て、まいごになってしまいました。

 火星ステーションのおばさんに、お母さんのとくせいパイをとどけるまでは、よかったのです。

 帰り道、チョコチョコは、おんなじ道をまじめに歩いているつもりでした。わく星間歩道を、よそゆきの青いワンピースを着たせなかをぴぃんとのばして進んだのですから。



「あれ?こんなとこ、通ったかな?」


 チョコチョコは、頭につけた大きな赤いリボンをゆらして、上や下を見回しました。


「立ち止まったらあぶないよ」


 わく星間歩道を歩く大人たちが、やさしく教えてくれました。ここは、大通りなのです。とてもたくさんの人が()きかっております。


 いくつもの曲がり角がありますが、行き先矢じるしをきちんと見てきたはず。大きな交さてんには、お店だってあります。曲がり角の目じるしに、ちゃあんとおぼえておいたのです。

 それなのに、いまチョコチョコが歩いているのは、見おぼえのない場所でした。


 そこは、六つもの大通りがこうさする場所でした。行く先矢じるしも六つ。でも、()()()のあることばは、書いてありません。


 横を見ると、わく星間歩道の外を乗り合いシャトルがとんで()きました。

 チョコチョコの通ったはずの歩道からは、見えなかったけしきです。こんなに近くをシャトルが飛ぶのが見えたら、チョコチョコはうれしくて、わすれるはずがありませんからね。



 チョコチョコは、仕方がないので、店番をしていた火星人に聞いてみることにいたしました。


(そと)うちゅう行きの発着所はどこですか」


 火星人は、大きな丸い頭から()()に出ている、細長い手をぐにゃぐにゃ動かしました。


「この道を来た方にもどって、さいしょの角でまた聞いてごらんなさい」


 チョコチョコは、自動ほんやくきを持っているので、火星人とだってお話ができるのでした。


「ありがとう」


 チョコチョコは、大きな赤いリボンのついた、もえぎ色のおかっぱ頭をゆらして、ていねいにおじぎをいたしました。

 それから、くるりと後ろをむきました。そして、道をはんたいがわにわたると、白いあみあげブーツをかたかたならして、もどりはじめました。


 このブーツは、チョコチョコが 7才になったおいわいに、火星ステーションのおばさんからいただいた物でした。

 今日は、おばさんの所へおつかいだったので、はりきってはいて来たのです。



 火星人に教わったさいしょの角には、ざっしスタンドがありました。いろんな星のざっしを売っているお店です。店先(みせさき)に立っていたのは、ピンク色のたるんだおなかが、だんだんになっている人でした。

 チョコチョコの知らない星の人です。


(そと)うちゅう行きの発着所はどこですか」


 チョコチョコには、べんりなほんやくきがありますから、言葉ののしんぱいはいりません。

 ピンク色の人は、細長いピンク色のかおの中で、きれいな緑色の小さな目を四つながらにぐりぐりと動かしました。


「まっすぐいきな」


 しわがれ声でしめした先は、曲がらずそのまままっすぐでした。チョコチョコはまた、ていねいにおじぎをいたしますと、青いワンピースのすそにかくれるほど長い、じまんのブーツをならして進みます。


 ワンピースには、えりと、すそと、長そでのそで口に、白いレースがついておりました。チョコチョコはそれがたいそうお気に入りなのでした。

 チョコチョコのももいろをした小さな手足を、こまかくすけたまっ白なレースがかざります。きゃしゃなくびの回りにも、おなじレースがまぶしいくらい白くなみうっているのでした。



 チョコチョコは、ワイ字ろにやって来ました。ここにお店はありません。でも、矢じるしかんばんが立っています。

 チョコチョコは、かわいらしい茶色の目で、矢じるしかんばんをじっくりとみました。

 さんご色のぷっくりしたお口が、しらない内にとがります。つんとつき出た三角おはなも、しぜんにぴくぴく動いてしまいました。


「ここでまちがえたみたい」


 矢じるしかんばんは、三つの方こうをさしていました。

 一つは火星ステーションの外うちゅう行きの発着所。一つは、チョコチョコが今もどってきた道。そして、最後のひとつが、火星ステーションのおばさんの家に向かう道でした。


 わく星間歩道のすき通ったドームから、にじ色の星雲が遠くにみえます。にぎやかなお祭で食べるわたあめみたいです。

 シャトルが飛んで行くむこうには、やさしい銀のかわが見えました。あれはみんな星なんだよ、と先生が教えて下さいましたっけ。


 ワイじろで立ち止まっていると、また大人にしんぱいされてしまいます。チョコチョコは、もうすこしだけ、このすてきなけしきを見ていたかったのですが、しぶしぶ外うちゅう行きの発着所へとむかうのでした。

お読み下さりありがとうございました。


冬の童話祭りには、他に以下を投稿しました


冬の谷間

魔法使いの就職

豪雪師匠の名前

お転婆姫と暗闇の部屋

歌う暖炉

谷間の佳人

トーベ・ニコルソンを探して

うせものや

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― 新着の感想 ―
[一言] 可愛らしい作品でした。 道分かって良かった^_^
2023/04/25 18:36 退会済み
管理
[一言] 大きな街は道が複雑で、案内板があっても迷子になってしまったりしますよね。 新宿駅でも迷子になれる私は、銀河なんて行った日には確実に迷子でしょう。 便利過ぎると色々な楽しみが減ってしまうもので…
[一言] お使いの行き先が今以上に広範囲になっても、子どもたちの迷子になる理由はあまり変わることがなさそうですね。 世界がどんなに進化しても、生き物の生き方や子どもらしさがそのままであることがとても…
感想一覧
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