古ぼけたビデオデッキ
気が向いた時に投稿します。
「………ん?これは……」
掃除中、押し入れの奥底で懐かしい物を見つけた青年は目を丸くした。
そこにあったのは、旧型のVHSデッキである。
DVDの台頭やブラウン管の衰退と共に消えていったそれに、青年は感慨深い想いを抱く。
「懐かしいな……ブラウン管とテープはもう全部捨てたはずだが。何故これだけ残っているのだろうか。」
青年は掃除の手を止めて記憶を辿る。
「あぁ、思い出した。あいつにやるつもりだったんだ。あいつめ、土壇場でやっぱいらないとか言いやがって……」
忌々しげに眉を寄せながらデッキを掴む。
そして悩むように唸った。
「捨てるか。いやしかし……」
様々な思い出が詰まったこのデッキ。
捨てるのは憚られるところだが、断捨離を旨とする青年は、それを取っておく必要がない事をこれ以上なく理解していた。
「やはり捨てよう。しかし折角見つけたんだから、最後に一度くらい使ってやりたいところだな。とは言ってもビデオテープなんて全て廃………あったよ。」
全部捨てたつもりだったのだが、デッキの影に一つだけテープがあった。
タイトルも何も書いていないそれを手に取って繁々と見る。
「これ何のビデオだ?俺がラベルシールをつけ忘れるなんて……」
几帳面で物の整理が好きな青年らしくもない失念である。
彼は無駄に賢明な頭を回転させるものの、そのビデオについて思い当たる事は何もない。
どこから入手したのか、どうしてこんな所にあるのか、青年には理解できなかった。
「……まぁ良い、ビデオテープでウイルスやらを心配してもしょうがない。どうせだから見てみるか。」
青年は液晶テレビに古めかしいVHSデッキのコードを引っ張り出して接続し、デッキが正常に作動する事を確かめ、ビデオを入れた。
地デジに慣れた身からすれば荒すぎる画質の映像が流れ始め、その懐かしさに青年が頬を緩ませる。
「たった10年前まではこんなの見てたんだよな。電子機器の進歩ってのは早いもんだ。……それにしてもこれ、何のビデオなんだ。」
テレビでは暗い夜道をゆっくりと進む映像が流されていた。
映像にある街並みは都会というよりはやや田舎寄りのもの。
やや古そうな住宅の並ぶ道路を進み、森の近くへと移っている。
「ふむ、何やら悍ましい雰囲気がしてきたな。面白い。」
オカルトマニアの青年は、自分好みの空気漂う映像にニヤリと笑みを浮かべた。
カメラは更に進み、湿った落ち葉に覆われた地面と一本の電柱が映し出される。
その電柱に付いた灯りに照らされた所に、錆や苔だらけのマンホールがあった。
暫しカメラが静止する。
撮影の季節は秋の終わり頃のようで、紅葉が冷たい風に煽られてパラパラと降っていた。
「ふむ……む?」
意味深長な映像に首を傾げた青年は、ある事に気づいて眉を寄せた。
彼が注目したのはマンホールである。
古ぼけた汚らしいマンホールが、少しずつではあるが動いていた。
「何が出てくる…?」
青年が食い入るように見つめる画面の中、マンホールの下にある下水道への穴が徐々にその姿を現す。
一般的なホラー映画であればおどろおどろしい音楽が流れるところだが、このビデオにはBGM等が何もついていないようだ。
木枯らしや落葉、撮影者の歩く音だけがうっすらと聞こえる。
「……お。」
画面を凝視していた青年が目を見開く。
マンホールの下の穴から、ほっそりとした白い手が伸ばされた為だ。
白い手は穴の蓋を掴み、体を持ち上げようとしているように見える。
「まぁ、ありがちではあるな。」
穴から少しずつ人の頭部が現れる。
女性と思われるその人物は長い黒髪で顔を隠していた。
這いずるように穴から出てきた女は、病的なまでに白い肌に汚れたワンピースを着ている。
「ふむ……」
女はズリズリと画面に向かって這いずって進む。
長い髪の間からたまに覗く口元には、不気味な笑みを湛えていた。
「…………」
青年が無言で見据える先、不気味な女は進み続け、やがて画面に手を置いた。
ここまではホラー映画等でよく見る光景とも言えるものであったが、青年が目を剥くような出来事が起きる。
「なっ!!」
女の白い手が画面を飛び出し、テレビの縁を掴んだのだ。
更に体を引き寄せるように力が込められ、真っ黒でべっとりとした頭が出てくる。
ほっそりした首まで出てきたところで、女は俯けていた顔を上げた。
「………ィ」
「っ!?」
女がニィッと笑い、青年は息を飲んだ。
「…ァソ…ボ……」
女がボソボソと呟く。
「タノ…シィ…コト……ショ…」
キーキーとした耳障りな音に青年は顔を硬らせながら、ズリズリと後ずさった。
「…ネェ……ァソボォ…ョ……」
「な、何なんだよ……」
「キモ…チ…ョク……シ…テェ………」
後ずさる青年を追うように這いずり、女は彼に覆い被さって不気味に笑った。
怯えていた浮かべていた青年は、ある事に気付いて思わず眉を顰めた。
彼の頭を支配していた恐怖が、一瞬にして怒りという炎に燃やし尽くされた。
「ぐっ…う……うぐぅぅぅ……」
「ネェ…ネェ……ヮタシト……ァソ「うっがぁぁぁぁぁ!!!」…ひゃぇっ!!」
突如として雄叫びを上げた青年に、女は可愛らしい悲鳴を上げた。
彼女を押し退けるように立ち上がった青年は、血走った眼で女を睨み付けた。
そして再度叫び声を上げる。
「くっっっせぇんじゃボケェェェ!!」
「っ!?」
青年の叫びに女がビクッと肩を震わせる。
そんな彼女を追い込むように青年は叫び続けた。
「くっさ!くっせぇ!!何だお前!何があったらそんな臭くなるんじゃボケッ!!くっせぇしきったねぇし……クソ妖怪如きが俺様の家を汚しやがって!!」
「あ、あの…私、妖怪とかじゃなくて……」
「知るかボケナス!!とりあえずその服脱げやぁ!!」
「え、いや、これ私のお気に入りで…」
「じゃかしぃわぁ!!んなもん幾らでも買ってやっからとりあえず脱ぎ晒せぇ!風呂入れぇ!!」
「は、初めて会った人の家でお風呂なんて…」
「言い訳無用!隅々まで洗ってお前の汚れと悪臭を殲滅してくれるわぁ!!!」
ゴチャゴチャ言う女を無理矢理抱えた青年は、浴室に運んで汚れたワンピースを破り捨てた。
「ひぇぇぇ、恥ずかしいですぅ!」
「丸洗いだオラァ!!」
ゴシゴシゴシゴシ
「ひゃっ!そ、そこはらめですぅ!」
ゴシゴシゴシゴシ
「いやぁ!お嫁にいけなくなるぅ!」
ゴシゴシゴシゴシ
「あっ…そこ、だめっ…んっ……」
ゴシゴシゴシゴシ
「やっ…んぅ……イッ……あっ……」
ゴシゴシゴシゴシ
「……っ………っ……」
「ふぅ……」
「あっ…ひゃっ……」
ビクビクしている全裸の女の横で、青年は息を漏らした。
そしてニヤッと笑い口を開く。
「さぁ、二回戦といこうか。」
「ひぃぃぃ……も、もう無理れすぅ……」
「あと四回は洗わないとお前の汚れを完璧に死滅させる事はできん。時間がない、再開するぞ。」
「ひぃぃぃ……これ以上はらめぇぇぇ!!」
その夜、青年は何度も女を洗い続けた。
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