29ー3.男達の休日作戦
「こ・・・これは・・・!? 雨・・・だと!?」
外はバケツをひっくり返したような大雨だった。
これではどうやっても海に誘うなんて・・・無理だ・・・。
俺は両手と両膝を地面につけてこれでもかというぐらいに落ち込んでいた。
「寝ずに考えた俺の作戦が・・・」
カイは俺の背中に優しく手を置いた。
その優しく温かな手は絶望した俺に一筋の光を与えてくれた。
落ち込んでいるなんて俺らしくないな。
気に入らないならすべてをぶち壊せばいいんだ。
「ごめんねゲイル。天候までは気にしてなかったよ。これじゃあ作戦どころじゃないね。皆に作戦中止って伝えてくるよ」
俺は可能性がゼロに近かろうが俺の・・・いや、俺達の時間を無駄にしないために考えた。
カイが他の人に作戦の中止を伝えるために俺から離れたその瞬間。
思いついた。
全てを何とか出来るそんな作戦をな。
「・・・待てカイ」
俺は立ち上がった。
「どうしたんだいゲイル?」
「作戦は続行と伝えろ」
「こんな雨の中じゃあ海で水着なんて無理だよ」
「俺を誰だと思っている! 気に食わない結末を全て、力を持って変えてきた魔王ゲイル・リバスターだぞ! 大船に乗ったつもりで任せておけ」
「ゲイル・・・。わかったよ」
「何も言わないのか?」
「ゲイルを信じているからね。それに任せろって親友に言われたら頼りたくなるじゃないか」
カイは恥ずかしそうに笑って俺にそう言った。
親友か・・・。
今までそんなのは居なかったが・・・悪くないな。
「そうだな」
「俺達の希望の為に」
「希望の為に」
「「互いにベストを尽くそう」」
俺とカイはハイタッチをしてその場を去った。
互いに互いを信じて己がやらなければならない事をするために俺達は行動した。
「俺は俺のやる事をやるか」
俺は天に手を向けた。
そして雲の中に魔法陣を作り出した。
「旋風」
作り出した魔法陣から風が吹き出し、一時間もしないうちに雨雲はオーネスト領の上空から去っていった。
「この魔王に出来ないことなど無い! 天候は変えた。後は俺の考えた作戦を実行するのみ」
俺は襲い来る眠気と疲れを気合で吹き飛ばしながらある人物を探していた。
探すこと数分その人物を見つけることが出来た。
その人物は黒髪ショートカットの可愛い女の子だ。
その子は頭についている犬の耳をピコピコと可愛く動かしながら楽しそうに廊下を歩いていた。
「見つけた。ハユ!」
そう俺が探していたのはハユだった。
俺の声に反応したハユは俺の居る方向に振り返った。
「あ、おはようございます。師匠。・・・なんか顔色悪くないですか?」
「これは気にするな。昔はこんなの当たり前だったし」
「それが当たり前はやばくないですか!?」
「それは置いて置いてだ。今日は快晴だ。他の皆も連れて海へ行かないか?」
「ん? 師匠。さっきまで大雨でしたよ。そんなに早く晴れるわけないじゃないですか」
ハユは何をバカなことを言っているんですかと言わんばかりに俺を残念な人を見るような目で見てきた。
「外を見て見ろ。曇り一つない快晴だぞ」
俺は近くあった窓を開け曇り一つない空を指で指した。
「本当ですね。・・・私はもっと雨が続くと思っていたのですが・・・師匠何かしました?」
ハユは俺に疑いの目を向けてきた。
まあこんな事が出来るのは俺ぐらいだろうし疑われるのはわかる。
だが、ここで俺の仕業だと言うわけにはいかない。
俺には俺のやる事があるのだから。
「俺は何もしてないさ。今日の天気はとっても気まぐれだったって話だろ」
俺は平気で嘘を言った。ハユは俺をじっと見つめる。
俺は笑顔を絶やさず不信感を抱かせないようにした。
それで何かを察したようでハユはため息を吐いていた。
「・・・そうですね。そういう事にしておきましょう」
ハユは諦めたようで俺の仕業ではないという事で納得した。
物分かりの良い奴は好きだぞ。
「じゃあリーネ誘いに行くか」
「はい!」