27ー2.グレイからの挑戦
「ハッハハハ。・・・おいおいハユ。俺がいつ大胆不敵に笑ってたよ・・・そんなキャラじゃねえよ。それにそういうのはリーネの担当だ・・・」
「し、ししょう・・・」
ハユは不安そうに俺を見つめた。
俺はそんなハユを抱きしめて小さな声でお礼を言った。
そして俺はハユを放してグレイの目を見ながら言ってやった。
「だが、今日ばっかりはそんなキャラも有りだ!! この魔王ゲイル・リバスターに人が作った理論なんて関係ねえ!」
「よく言ったわゲイル!」
聞いたことがある声が廊下に響き渡った。
そして俺は振り向いてその声の主を見た。
そこには堂々と胸を張って偉そうにしているリーネとその後ろに隠れながらこちらを見ているミリアが居た。
「リーネ!」
リーネはグレイに近づき目の前まで来た。
「あなたも随分偉くなったわね? 人の人事に文句をつけるなんて」
「申し訳ありませんがここは引くことはできません。・・・ですが、どうしてもというのであればこのわしと決闘し勝つことが出来れば認めることにしましょう」
「いいわ。ゲイルもそれでいいわね」
「ああ」
「それでルールとか場所とかどうするつもりなの?」
「場所はオーネスト領にある闘技場で行います。闘技場には魔法技術が使われておりましてそこで受けるダメージは事前に設定されたシールドが肩代わりしますので死には至ることはありません」
「なるほど。それなら安心ね」
「それによりゲイル殿には断罪剣ヴァルカンザードの使用は禁止させて頂きます。それともう一点、ゲイル殿が持っているもう一つの異世界の武器の使用も禁止させていただきたいのです」
もう一つの異世界の武器? ・・・ああ、銃の事か。
「断罪剣ヴァルカンザードはわかるのだけど、なぜゲイルの異世界の武器は禁止なのかしら?」
「ゲイル殿の異世界の武器は勇者一行に付いていたはずの魔法障壁を無視して体を傷つけたという報告が上がっております。なので闘技場にかかっているシールドも無視される恐れがあるため使用禁止にさせて頂きたいのです」
「それなら仕方がないわね。ゲイルも良いでしょ?」
「ああ、もとよりこんな所で使うつもりは無い」
弾数にも限りがあるからな。弾の残りは5発。
これに頼り過ぎないようにしないといけないという事だ。
「ありがとうございます。そしてわしは英霊剣心デブラスネーヴァの根源憑依は使いません」
「ハンデか?」
「違うぞゲイル殿。これは全力の出せないゲイル殿と条件を同じにしただけじゃ」
「別に気にしなくてもいいぞ」
グレイは俺の胸ぐらをつかんで睨んできた。
「粋がるなよ小僧! 全力のわしと戦いたいならそれだけの実力を見せる事じゃ!」
俺は胸ぐらをつかんでいたグレイの手を振り払った。
「だったら全力を思わず出してしまうように戦うさ」
グレイは一瞬ニヤリと笑い、後ろに振り向いた。
「闘技場へ案内しましょう」
グレイは闘技場に案内するために歩き出した。
グレイは闘技場への道中に無線を使って指示のようなものを飛ばしていた。
声が小さくて何を指示しているのかは聞こえなかった。
俺は闘技場への道中から気になっていることをリーネに聞くことにした。
「なあリーネ」
「なによ?」
「爺さんの孫娘に嫌われているのはなんでだと思う?」
「知らないわよ。何かしたんじゃないの?」
「さっき会ったばっかりで何が出来るんだよ・・・」
「ゲイルのイヤらしい視線が不快だったんじゃないの?」
「そんな目で見てねえよ・・・。わからないなら後でこそっと聞いといてくれないか?」
「・・・何? あの子そんなに気に入ったの?」
リーネはジト目でこちらを見てきた。
え? 何? 地雷踏んだ?
「そういうんじゃねえよ。ただ初対面で何も知らないのに嫌われるって言うのが嫌なだけだ。勘違いしているかもしれないしな」
「・・・そう。暇があったら聞いておくわ」
リーネはやる気がなさそうに返事をした。
そんなこんなしていると闘技場に着いたらしくグレイは鉄の赤い大扉の前で止まった。
「この扉の向こうが闘技場になっております。リーネ様達はとても見やすい部屋を用意しておりますのでそちらに移動してください。案内はミリアが行いますので」
「リーネ様。こちらです」
ミリアがリーネとハユを別室に案内していた。
そして俺とグレイだけがこの場に残っていた。
「ゲイル殿準備は良いかの?」
「ああ、いつでもいいぜ」
そうグレイに返事をした後、グレイはその赤い大扉を勢いよく開いた。
そして目の前に広がったのは二百人以上いそうなほどに埋め尽くされた会場、そしてその中央に円形状の舞台があった。