21-3.ルーエンブル領奪取作戦
前回のあらすじ
敵の位置情報をもとにリーネ達はルーエンブル領軍を翻弄していた
だが、そこは頭の切れる領主
すぐに位置情報が洩れていると察してそれをみこして兵を対応できない数を送り込んでいた
そんな時、城を守る城門を開閉するための歯車が爆発し城門が閉められなくなってしまった
どうするバード・ルーエンブル? 絶体絶命か?
その頃リーネ達はルーエンブル領の兵士達が城門付近に固まっているのを敵の位置情報で知った。
「北門と東門を守るように兵を固めたわね。ここで二手に分かれるわ。カイは私と来なさい!」
「かしこまりました!」
「ゲイルはバレッタを連れて北門へ向かってちょうだい」
「良いだろう」
「ゲイル、貴族章は持っているかしら?」
俺は人の顔が彫られた黒い板を出した。
これはアジトを出る前にリーネから貰ったものだ。
「ああ、これだろ? なんの意味があるんだ?」
「それは戦闘員と非戦闘員を分けるために使われる物よ。つまりこれを持っていれば敵の位置情報感知システムに誤認させることが出来るわ」
「なるほどこれで裏からこそっと侵入すればいいんだな」
「ええそうよ。でも貴族章は二つしか手に入れる事が出来なかったからバレッタと二人で侵入しなくちゃいけないの」
「任せとけ。後はこっちで何とかするさ」
「頼んだわよ」
「問題はこっちね。カイ、あなたには敵の将軍と戦ってもらうわ。一番きつい所だけど将軍と張り合えるのはあなたしかいないの。やれるわよね?」
「はい、もちろんです! ご要望とあればそのまま倒して見せましょう」
「強気ね。その強気が油断に変わらない事を祈っているわ」
リーネは周りを見渡してそれぞれの準備が完了していることを確認した。
「総員行動開始!」
リーネの言葉と共にそれぞれがそれぞれの道を進んでいった。
***
ゲイル・リバスターとバレッタ・ホークスは大通りを外れた脇道に来ていた。
目の前には十メートルは越える領主城の城壁があった。
これを越えるのか・・・。
「壁まで来たが・・・本当にやるのか?」
「あら、今更怖気づいたのかしら?」
口調の乱れたバレッタが返事をした。
まあ察しの通りこいつはバレッタ・ホークスではない。
本物のリーネ・クリスタリアだ。普段の美しい銀髪を頭の上でくくり上げてその上からブロンドカラーのウイッグを被っている。
服装もバレッタが普段来ているミニスカメイド服だ。戦場に来る格好じゃないぞ。
「そんなわけねえだろ。最終確認だ。あと口調が戻ってるぞ」
「はあ、他人に成りすますのって疲れるのよね。もういいんじゃないかしら?」
「お前の作戦だろうが・・・。変装しているバレッタの身にもなれよ。あっちは大将に変装して囮役をやってくれているんだぞ」
「わかっているわよ。だから誰もいない所で戻っているでしょ?」
「中に入ったらちゃんとやれよ」
「ちゃんとやるわよ。・・・それより私を抱えてここ飛び越えられるわよね?」
リーネは疑いの目をこちらに向けてきた。
人づてにこいつ飛べるぞと聞いただけだから疑うのは当たり前だろう。
「多分な。人を抱えて飛んだことないからぶっつけ本番だ」
「多分じゃダメでしょ。まあいいわ。飛べなかったら飛べなかったで別の案はあるし」
「そりゃあ頼もしいことで。・・・ところでリーネ。どうやって抱えるんだ? おんぶで飛ぶのか? それとも姫らしくお姫様抱っこの方がいいのか?」
「・・・な!? お、おんぶでいいわよ」
リーネは少し目をそらした。
「・・・本当に?」
俺はリーネの目を見て聞いてみた。
「・・・っ! ちょ、ちょっとよ。ちょっと憧れているだけよ! 決してお姫様抱っこをして欲しいなんて言ってないんだからね!」
「はいはい」
俺はリーネをお姫様抱っこした。
その過程で暴れていたが問答無用だ。
「ちょ、ちょっと何してるのよ! 背中におんぶで良いって言ってるでしょ!?」
「さあ飛ぶぞ! 飛翔!」
飛んでしまえばさすがにリーネも諦めたらしく暴れるのをやめた。
「人生最大の黒歴史ね」
そう言いながらリーネはため息をついていたが、俺はリーネの頬が吊り上がっているのを見逃さなかった。