表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
54/80

21-1.ルーエンブル領奪取作戦

前回のあらすじ

 ゲイルはリーネに呼び出された

 そこではゲイルが疑問に思っていることをすべて聞いたのであった

 決戦当日、俺達は西門に堂々と隊員を集めていた。


 兵士の数はリーネの軍とオーネスト軍を合わせて百人程度だ。


 今から千人は超えている敵陣に堂々と乗り込もうというのだ。


 それも奇襲ではなく正面から堂々とだ。


 どんな軍師が見ても卒倒ものだろうな。


 死にに行っているようにしか見えない。


 そしてその百人を束ねるのはリーネ・クリスタリアだ。


 リーネは百人の前に立ち、目の前にある魔力で音が増幅され遠くまで聞こえるマイクに話し始めた。


「諸君! 今日まで生き抜いてきた強者(つわもの)達よ! よくぞ耐え抜いたわね。そんな者達には褒美を与えないといけないわね? 何がいいかしら?」


 リーネがそう聞くと隊員達だけでなく近くにいた平民達も声を上げた。


「みんなが笑顔で生きていける国!」


「子供達が幸せに生きていける国!」


「いいわ! すべて叶えてあげる! でも覚えておきなさい! 叶えるのは私じゃないの、私達よ! ハルト・クリスタリアは死ぬ直前にこう言ったわ。その命は未来を支える柱として使って欲しいと! 今日は未来を変える日よ。その命を惜しみなく使いなさい! あの時使えなかった分まで! 希望は私じゃない! 私達よ! 今日は誰もが英雄よ! その力存分に発揮して戦いなさい!」


「「「おおおお!!!」」」


 掛け声を発していたのは隊員だけではなかった。


 ルーエンブル領のほとんどの平民達も声を上げていた。


 ルーエンブル領を包み込むような大きな喊声から平民達自ら今の現状を変えようとする意志を感じた。


***


 大きなモニターに十人ほどの兵士達がいる管制室の中央で椅子にふんぞり返っている男がそこに居た。


 その男は頬にある大きな斬り傷が特徴の茶髪で短髪だった。


 その男こそルーエンブル領の領主バード・ルーエンブルだ。


「全く騒がしい連中だ。門前で堂々と鼓舞とは舐められたものだ。絶対に扉は開くなよ!」


「は!」


「軍の準備状況はどうなっている?」


「現在三割が準備完了しております!」


「いいか、丁寧に準備していけ。あいつらは結局あの門を越えないとここへたどり着く事も出来ないんだ。万全の準備を整えてあの小娘ごと叩き潰すぞ」


 その時、モニターにグレーカラーのオールバックなごつい男が現れた。


「ダース・バックス将軍、どうかしたのか?」


「おい領主バード・ルーエンブル、俺をあいつらの所に送れ。俺が全員殺してやる!」


「落ち着けダース・バックス将軍。将軍とは城の守りのかなめだ。お前にもしもの事があったら我が軍は崩壊してしまう。機会は必ずやるから今は準備に専念しろ」


「クライスを殺った奴は俺の所に寄越せよ。俺が殺してクライスより俺が強いという事を証明してやる」


「あの戦闘で帰ってきた者は誰もいなんだぞ。誰がクライス将軍を殺したかわからんからその約束はできん」


「そんなの簡単だ。あの中で一番強い奴が殺ったに決まっている。そいつを俺の所に寄越せばそれでいい」


「はあ、わかった。強そうな奴が居たらその居場所を教えてやる」


 ダース・バックス将軍はニヤリと笑うと通信を閉じた。


「たく、脳筋は使いにくくてかなわない。あいつじゃなくてクライス・ディベルトが生きていればもっと物分かりが良いんだがな・・・。おい、連中はどうしている?」


「まだ鼓舞をしている模様です」


「悠長な奴らだ。リーネ・クリスタリア、その門が開いた時それがお前の最後だ」


 バード・ルーエンブルは大きく口を開けて笑っていた。


 まるで勝ちを確信しているようだった。


***


 リーネ・クリスタリアは全体の鼓舞が終わり最終準備の確認を行っていた。


 西門は隊員百人だけだが、他の門にはルーエンブル領の平民達が続々と集まっている。


 平民達がやる気なのはクライアットが声をかけているからだろう。


 人数的にはルーエンブル領の兵士達とそう変わらないぐらい集まっている。


「戦闘の準備は整ったかしら?」


「北、東、南門への突入準備は整っております!」


 リーネは大きく深呼吸をした後、よし! っと自分を鼓舞するように声を出した。


 そして大きな声で話し始めた。


「諸君! すべての英雄達の準備は整ったわ! あなた達の準備も万端よね?」


「「「おおおお!」」」


「よろしい! では開門せよ!」


 リーネの声と共に領主城の城門を含むすべての門が一斉に開いた。


***


 その異常事態に一番驚いていたのはもちろんバード・ルーエンブルだ。


 そのバード・ルーエンブルは状況を確認すべく管制室にいる兵士達にすぐさま調査をさせた。


「何がどうなっている!? 誰だ! 門を開けるているのは!?」


「門担当兵士です!」


「今すぐそいつに繋げ!」


「は!」


 通信は意外と直ぐに繋がった。


 これはまだ敵側に全てが落ちていないという事なのだろうとバード・ルーエンブルは思っていた。


「西門担当のワルト・ダンギルです」


「門を開けている奴は殺して構わん! 今すぐ門を閉めろ!」


「その命令は聞けません!」


「・・・っ! どういうことだ!」


「私の所属はクリスタリア王国軍です! 命令権の無い元上官の命令を聞く必要はありません!」


「な!? 裏切りだと・・・! 馬鹿な!? 他の兵士達はどうした!? 異変に気付かなかったのか?」


「他の元隊員達には食事に毒を混ぜたので今頃下で眠ってます。永遠に・・・」


 そういうと西門の兵士は無線を切った。


「他の門の兵士繋げ!」


「北門担当のグルト・ローエスです。以下同文です」


「東門担当のニブル・サージェス。以下同文!」


「南門担当のウェン・グロックだ。以下同文だ」


「な、何!? 全員だと・・!? ・・・深呼吸だ。いったん落ち着けバード・ルーエンブル」


 バード・ルーエンブルは大きく息を吸って吐いた後、頬を両手で叩いて自身の動揺を吹き飛ばした。


 そして冷静に指示を兵士達に行った。


「開いたものは仕方がない。全兵士に通達しろ! 戦闘準備を急げと! それまでは準備が整っている兵士を向かわせろ! 決して無理をさせるな。人数差はそれほどではない、だが戦闘力ではこちらの方が上だ。じっくり行けば必ず勝てる!」


「かしこまりました!」


 バード・ルーエンブルの冷静な判断と姿勢によって動揺するはずだった兵士達も落ち着きを取り戻し着実に準備が整っていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ