18-2.アジト防衛戦
前回のあらすじ
アジトにルーエンブル領軍が攻め込んできてリーネも戦わなければならなくなった
そしてその相手は元クリスタリア王国将軍セラ・ファリストだった
元将軍相手にリーネは勝てるのか・・・?
「クライス坊やが十年間どんな思いで協力者を作ったのかわかっているのかい! 血を流さず国を変えるためだよ!」
「そんな事わかってるわ。だからこそ彼にはちゃんと報いるつもりよ。この国を変えるという形でね」
「貴様!!」
セラ・ファリストは腰に下げた真っ黒の剣を抜いて私に斬りかかってきた。
だが、私はそれを結晶剣オーヴィタルプライズで弾き返した。
セラ・ファリストは弾かれた瞬間大きく後ろに下がった。
私の追撃を意識して大きく下がったのでしょうね。
良い判断ね。
「私の駒に平和ボケした人間は一人もいらないわ。クライス将軍の元まで送ってあげる」
「水雷炎土フューリーブレイダー・武技解放!」
セラ・ファリストは真っ黒の剣を頭の上に掲げると剣の中心から赤い文字が浮かび上がってきた。
その文字は空中で円型の魔法陣を作るように組み合わさっている。
「あんたのような人間はクライス坊やの軍には必要ない。あたしの武技で吹き飛ばしてあげる!」
「その武技の対策を私がしてないとでも思っているのかしら?」
「対策をしているなら魔獣の森を焼き払う時に使っているでしょ」
セラ・ファリストは掲げた剣を私に向かって振り下ろした。
その後、空中で作られた魔法陣から炎のブレスが私に向かって吐かれた。
「平和が長すぎて研いだ牙が抜け落ちたあなたに教えてあげるわ。奥の手って言うのは最後に出すから効果的なのよ」
私は持っていたもう一つの剣で炎のブレスに向かって斬りかかった。
その剣が炎のブレスに当たると炎のブレスは塵になって魔法陣ごと消えた。
「あたしの武技が消された!? ど、どうして・・・?」
「元将軍のあなたにも聞いたことがあるんじゃないかしら。断罪剣ヴァルカンザードの名前を」
ゲイルから貸してもらった断罪剣ヴァルカンザードを私は持っていた。
「どうして国宝級の武器があんたの手元に・・・?」
「とある勇者を殺した魔王から借りたのよ」
「魔王が・・・? 魔族とダリウス王国は協力関係にあるはずだ。敵対なんてありえない」
「下っ端にはわからない事情って言うのもあるのよ。それに説明する気は無いわ。私はそんなに優しくないのよ」
私は地面を強く蹴り一ステップでセラ・ファリストの目の前まで詰め寄って片方の剣で斬った。
その剣に反応してセラ・ファリストは剣で防いだが、私の一撃が重く、セラ・ファリストは砂煙を舞わせながら後ろに押された。
「・・・っく。強い・・・。ただの小娘の技量じゃない・・・」
「私をそこら辺ののうのうと生きている小娘と一緒にしない事ね。私は日輪で修業を受けたこともあるのよ」
「あの戦闘集団を作り上げ、その一領だけで国家と張り合えるほどの戦闘力を持つと言われている日輪の事かい!?」
「あら、説明ありがとう。その通りよ。クリスタリア王国の元将軍のあなたも知っていると思うけどクリスタリア王国は日輪と懇意にしているわ。私の許嫁が日輪に居るぐらいにはね」
「その伝手で修業を積めたってわけかい。でも修業を受けれたのはほんのひと時でしょ。そんな付け焼刃ならあたしにも勝機はある!」
「そうかしら?」
セラ・ファリストは私に詰め寄って斬りかかってきた。
だが、私はその剣を剣で擦らせながら防いだ。
その後も次々と斬りかかってくるもすべてを防いだ。
「・・・勝てない。全ての攻撃が剣で往なされる・・・!」
「剣が素直なのよ。平和が長すぎて戦いの感覚を忘れたんじゃない? 六国大戦で戦っていた時の方が強かったんじゃないかしら」
「フェイントもかけているのにすべて読まれる・・・。なんで!?」
「相手の言葉を鵜呑みにして剣筋を変えてはダメよ。そんなのは相手の思う壺よ」
「足りない。相手を圧倒する力が・・・あたしには・・・」
「力なんてのは、願って手に入るほど簡単じゃないのよ! 日々の研鑽と鍛錬が生み出す結果なの! それをサボってきたあなたに願う資格なんてないわ!」
「それでもあたしはクライス坊やのためにここで負けるわけには・・・いかない!!」
「だったらここで終わらせてあげるわ。クライス将軍の夢もあなたの夢もここで終わりよ!」
「何をやっている水雷炎土フューリーブレイダー! ここで力を出さないでいつ出すんだよ! あたしに力が足りないならあたしのすべてを持って行け! 代わりにあんたの力をあたしによこしな!」
「剣に祈る暇があるならこの危機を脱するための知恵を絞りなさい!」
「案外、祈ってみるのもありかもしれないね」
「まさか、武器が応えたというの!?」
「水雷炎土フューリーブレイダー・根源憑依!」
セラ・ファリストは光に包まれた。
そして光が周りに吹き飛ぶとそこには黒い全身甲冑を着たセラ・ファリストが立っていた。
「まあ、ちょっと無理やり力を借りてるもんだから、あたしもそんな長くはもたないけどね」
「命を消費した力の解放ね・・・。最後の足掻きとしては悪くないわね」
「最後? 何を言っているんだい? これからを切り開く最初の一歩さ!」