17-1.クライス・ディベルト将軍戦
前回のあらすじ
カイは敵の三人組グラス、ジラス、バラスを倒しきった
そしてゲイルの援護に向かおうとするもゲイルにアジトの援護を頼まれる
バレッタは敵本陣をクライス・ディベルト将軍以外を殲滅していた
カイとバレッタはアジトの援護に向かって行ったのであった
一人残されたゲイル、相手は将軍。本当に勝てるのか・・・?
「随分余裕ですね。将軍相手に」
「そう見えるか? 結構ギリギリなんだがな」
「三人で戦った方が勝つ可能性が高いのに一人で戦おうとしている所ですよ」
「あんたこそ余裕ぶっこいているが大丈夫か? 戦とは将が打ち取られたら終わりなんだぜ」
「その点はご心配なく。ここで打ち取られる気はありませんので」
「その割には防戦一方だな」
「そういうあなたこそあれだけ魔法を撃っておいて私は無傷ですよ」
「まだ本気は出してないからな」
「私もです」
この野郎・・・俺の真似をしやがって。
良いだろう。
もう時間稼ぎは終わりだ!
「だったら先に本気を出させてもらう! 火矢、大地槍」
上空から火の魔法矢の雨、そして地面から出てきた模造の槍がクライス将軍を襲う。
「これはまずいですね」
「空と大地からの両方の攻撃だ。今のお前では防ぎきるのは無理だろ。お前が本気を出す前に潰してやる! 精々余裕をぶっこいて本気を出さなかった自分を恨むんだな!」
「槍貫絶壁スピアリングウォー・根源憑依」
クライス将軍を光が包み込む。
だが、俺の攻撃はもうクライス将軍の目の前まで来ていた。
たとえ力を使える状態にしてもこの距離なら防ぎきるのは無理だ。
「もう遅い!」
「いいえ、間に合いますよ」
俺の攻撃がクライス将軍に直撃し、周りに砂塵が舞った。
この直撃を受けて無傷ではいられないはずだ。
だが、砂塵から出てきたクライス将軍は白い全身甲冑を装着していた。
俺の攻撃は全く通っておらず無傷だった。
「受けきっただと・・・。硬すぎやしないか?」
「この槍貫絶壁スピアリングウォーの盾と鎧はどんな攻撃も必ず防ぎきる事が出来るのですよ。そして!」
クライス将軍は槍を前に突き出し突進の構えを取った。
その構えを取ったと認識した瞬間奴は消えた。
「この速度によって増した貫通力を持ったこの槍はどんな物だろうと貫く事が出来る」
クライス将軍はいつの間にか俺の後方に立っていた。
俺が構えを取ったと認識した瞬間に俺の真横を掠めるように突進したのだろう。
俺を直接狙わないとはな。
その慢心、必ず砕いてやるよ。
「それ矛盾しているだろ。お前のその槍で盾と鎧を攻撃したらどうなるんだ?」
俺は重箱の隅を穿る様な嫌味な質問をしてやった。
「矛盾などしていませんよ。この盾と鎧と槍は一つでも欠ければ能力は失われる。だからこの槍が盾と鎧を攻撃する事は無い。つまり矛盾は証明する事はできない」
「だが矛盾でないと証明するのも無理だろ」
「確かにそうですね。であればこの問答に意味はありませんね。どちらも証明できないのですから」
「証明方法は単純だ。戦って最後まで立っていた奴が正解だろ?」
「随分野蛮な考え方ですね。・・・でも、嫌いじゃないですよ。その考え方は。・・・いざ尋常に殺し合おうじゃないですか」
「望むところだ」
クライス将軍が俺に向かって突進をしてきた。
突進が終われば別の場所に一瞬で移動し、またこちらに向かって突進してくる。
「お前の攻撃は確かに早い。だが、来る方向が分かっているなら避けるのは簡単だ。一発目で俺を狙わなかったことを後悔しろ」
クライス将軍の突進は突進する瞬間に一瞬だけ止まる。
「なら速度をもっと上げましょうか。あなたが認識できないほどに」
「まだ速度が上がるのか」
見えなくなるぐらい早い。
だが、癖は直ってないようだな。
突進する瞬間だけ一瞬止まっている。
それさえわかればクライス将軍が何処から攻撃しようとしているのかがよくわかるんだよ。
だから避けるのは簡単だし奇襲にだって使える。
「そういえばあなたに一つ聞いておきたかったんですよ」
クライス将軍はこちらに攻撃しながら話しかけてきた。
「戦いの最中にお喋りとは余裕だな」
「ただ興味があるだけですよ。答えたくなかったら答えなくても構いません。あなたは何故あのような者達と一緒に戦っているのでしょうか? あなたほどの力があるならダリウス王国でも相当な地位を獲得する事が出来ると思うのですが」
「あいつらの目的と俺の目的が似ているからだ」
「あなたの目的とは?」
「俺の目的はダリウス王に復讐する事だ」
「復讐ですか。何故そんなことを?」
「お前に言ってもわからないだろうな。それに恨まれても仕方がない事をしてるじゃないか。民を虐げ、富を貪り食う。典型的な愚王だろ」
「確かにこの国は腐っています。でもクーデターという方法は間違っています! そんなやり方では復讐の連鎖が始まるだけでしょう!」
「だったら将軍のお前ならどうするんだ?」
「私だったら将軍の地位を利用し内側からこの国を変えてみせます!」