16-2.クライス・ディベルト軍との戦い
前回のあらすじ
ゲイル達はルーエンブル領軍の本陣の近くに潜伏することが出来た
そしてバレッタを使って敵の人数を減らす動きをするためにカイを囮役として敵陣に突っ込まさせるのであった
はたしてカイは無事に生きて帰ってくることが出来るのだろうか・・・?
作戦開始の合図とともにバレッタは敵の後方に潜り込むために動き出した。
ここには俺とカイだけだ。
作戦通りカイにはいい囮になってもらわないとな。
「最初はどうするのさゲイル。どうやって敵の注意を引き付けるの?」
どうやらカイはトイレを我慢することにしたらしい。
「ああ、飛び切りの挑発をしてやれ。お前を無視できないぐらいのやつだ。なあに簡単だ。相手はプライドの高い貴族様だからな」
「任せてよ。人を怒らせる天才と隊で言われ続けた僕に適任さ」
「期待してるぜ」
カイは森を出て敵本陣に向かってゆっくり歩いて行った。
「やあ軍人さん」
カイは本陣に居たよく目立つ三人組に話しかけた。
話しかける人選は悪くないな。
「・・・トイレ、貸してもらっていいですか?」
あいつまだ諦めてなかったのか!?
そんな怪しい奴に貸すトイレなんてあるわけないだろう!
「いや、お前誰・・・」
目立つ三人組の一人の男が反応した。
その男は大柄でごつごつとした筋肉を持ち、スキンヘッドだ。
その頭の中心から眉の中心までに剣の入れ墨が入っていた。
「こっちはもう瀬戸際なんだよ!! こんな問答をしている暇は無いんだ! あ、ちょっと漏れた・・・」
「お・・・おう。トイレは右奥にあるあのテントだ」
カイの勢いに押されたスキンヘッドの男はトイレのあるテントを指で刺した。
そしてカイがトイレに入って十数分後、すっきりした顔でカイが返ってきた。
「いやあ、すみませんね。急に借りちゃって」
「漏れそうだったんだろ。ピンチの時は互いに助け合うもんだ」
「で? 誰なんですか、こいつ」
反応したのは三人組の中で最も背が低い男で、身長は150センチぐらいで右眉の上に剣の入れ墨が入っている。
「兄貴、絶対こいつ曲者だぜ」
眼鏡をかけたインテリヤクザっぽい男がカイを睨みつけてきた。
その男は身長は170センチぐらいで左眉の上に剣の入れ墨が入っている。
「その恰好は・・・もしかしてどこかの貴族の坊ちゃんか?」
カイは兄貴と呼ばれる男の質問に答えずおどおどしていた。
トイレの時の勢いはどうした!
あのままの勢いで敵をけなせばいいだけだろ!
カイは兄貴と呼ばれる男の視線に耐えきれずこっちに振り向いて助けてと表情で言ってきた。
こっちを向くなよ。
位置がバレるだろうが。
・・・確かにあいつは人を怒らせる天才だな。
味方限定だけどな。
俺は仕方なく助け舟を渡すためカイに無線を使って指示を出すことにした。
(カイ、この通信聞こえているな)
「うん、聞こえるよ」
(バッカ! 返事をするな! ジェスチャーさえすればわかる)
カイは手を後ろに回して親指を立てて俺にわかったの合図をした。
(いいか、これから俺が言う事をそのまま目の前の三人に言う事。わかったか?)
再びカイは親指を立てて合図を出した。
「何を勘違いしているんだこのハゲは」
「なんだとクソガキが! 調子こいてっと潰すぞ!」
カイの挑発に一番最初に乗ってきたのはスキンヘッドの兄貴と呼ばれる男ではなく一番背が低い奴だった。
「まあ落ち着けってジラス。貴族の坊ちゃんが大人ぶっているだけだ見逃してやれ」
意外なことに兄貴と呼ばれる男は大人だった。
見た目は完全にすぐに頭にきそうな直情的なバカに見えるのに。
「グラス兄貴・・・。くぅ~。大人な兄貴は違うな~」
ジラスと呼ばれる背が一番低い男がグラスと呼ばれるスキンヘッドの男の言葉に感動していた。
「さすが兄貴! 未来の隊長!」
そこにすかさずインテリヤクザっぽい眼鏡をかけた男がグラスを褒めていた。
「よせよ。褒めすぎだバラス」
「ここまでくると平和ボケではなくただのバカだな」
「どういうことだ?」
カイの言葉にグラスが反応した。
「良いかよく聞けデカブツ。普通こんな所に貴族の坊ちゃんなんて来ることは無いだろ。魔獣の森だって恐れられているからな」
「だったらお前は何者なんだよ?」
「そんなの一つしかないだろ。俺はお前達に歯向かう反逆者の一味だ! ・・・て言っちゃうの!?」
今日の「魔王と亡国の姫が造るキングダムロード」
自ら正体をばらして敵を引き付ける事にしたカイ
だが、相手は異世界の武器所持者だった
その相手に勝てるのか!?
更新話 16-3.クライス・ディベルト軍との戦い
10月12日 更新