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15.ルーエンブル領軍の進行

前回の「魔王と亡国の姫が造るキングダムロード」

 ゲイルはリーネに将軍の殺害依頼を命令を受けた

 依然としてルーエンブル領軍に取り囲まれているがリーネには作戦があるらしい

 本当に止める事が出来るのか・・・?

 クライス・ディベルト将軍が作戦開始の合図をしてから一時間弱がたった頃だった。


 ディベルトはにこやかに戦況を確認していた。


 隊の雰囲気を明るく保つのも上官の責務と考えての行動だ。


「そろそろ先遣部隊が敵部隊とぶつかっている頃合いですか。定期連絡はどうなっていますか?」


「それが、先ほどから連絡が付かない隊があります」


「敵部隊と接敵すれば連絡を入れるようにと伝えてありますが、連絡はありましたか?」


「いえ、そのような連絡はありませんでした」


「妙ですね・・・」


「魔獣に襲われたんじゃありませんか?」


「それはあり得ません。先遣部隊全員には魔獣除けの香を持たせているので魔獣は寄ってこないでしょう」


「ではなぜ・・・?」


 兵達は何かあれば連絡をしてくるはず。


 だがそれができないのだとすると答えは一つですね。


「魔力振動によるジャミングが行われている可能性がありますね」


「そんなもの用意しているなんて」


 多分兵達はジャミングされていることに気づいているはず。


 引き返して連絡をしないという事は死んでいるか、もしくは引き返さないという選択をしたかという事ですね。


 彼らに敵の人数を言ってしまったのが間違いだったかもしれませんね。


 武勲欲しさに敵を人数通りの戦力だと侮って前進したのでしょう。


 全く貴族という者は貪欲が過ぎる。


「どうやら敵の将はこちらが来ることを読んでいたようですね」


「どうしますか? 先遣部隊に進軍を停止させますか?」


「それはいけません。ここは魔獣の森ですからね。そんなことをすれば先遣隊の精神力が持たないでしょう」


「ですが、このままでは先遣部隊との連絡が取れず、他の部隊との連携が取れません。そんなことになれば各個撃破に追い込まれてしまいます」


「わかっています。だからこそその装置を叩くのです。先遣隊にそのまま進軍し、通信が取れなくなったエリアでジャミング装置を探し出し破壊するよう命令を出してください」


「わかりました」


「さすがは予言王の娘。一筋縄ではいかないですね」


***


 リーネは状況を目で見て判断するために外にテントを張って隊員に指示を出していた。


 そんなリーネの元に連絡係が大急ぎで報告しにきた。


 凄く焦っているのが目に見えてわかる。


 こういった行動を敵に見られでもしたら敵の士気上がっちゃうからやめて欲しいのよね。


「リーネ様! 報告です。今だ敵軍前進止まらず! このままでは囲まれてしまいます!」


「うろたえないで! こっちにはジャミング装置があるの。それが壊されない限り相手がこちらを攻めてくることは無いわ」


「ですが一軍だけが異様にこちらに近いのです!」


「良いのよ。その一軍はこちらの陣地までおびき寄せなさい。そいつらは指示も持たない烏合の衆なのよ」


「は!!」


「もう少し堂々として欲しいわね。そういった訓練でもやらせようかしら」


***


 クライス・ディベルト将軍のジャミング装置破壊作戦命令直後の事だった。


 ディベルトは自分の作戦に不安があるのかいつものニコニコした笑顔は消えていた。


 その事に兵士達もわかっていてかその場の空気はとても張りつめていた。


「各隊通信途絶。通信遮断エリアに入りました」


「わかりました。魔法砲撃部隊に準備を進めるように通達してください」


 通信遮断エリアに部隊が入ってから二十分弱、その間誰も一言も発することは無かった。


 返ってきた通信を聞き漏らすことの無いようにするためだ。


 そんな重く張り詰めた空気を打ち破るように通信機の音が鳴り響いた。


「先遣隊の通信、回復しました!」


 その場に居る全員がガッツポーズをしたり抱き合って喜びあったりしていた。


 当然私も喜んでいた。


 そして余裕を取り戻したのかいつものニコニコ顔のディベルトが隊に命令を下す。


「よし! 後方の部隊も突入させてください! ここで一気に方をつけます!」


「ま、待ってください! 先遣部隊より通信です!」


「なんですか!? こんな時に!」


「魔獣です! 先遣部隊が魔獣に襲われています!」


「そんなわけないでしょう! 魔獣除けの香があるはずです!」


 ジャミング装置を破壊したら魔獣が現れるわけがない。


 ジャミング装置にはそんな機能は備わってないはず。


 だが魔獣は現に現れている。


 なぜ? 偶然? いや違うタイミングが良すぎる。


 確実に人の手が加わっている。


 そう悩んでいると兵から報告が来た。


「ジャミング装置を破壊した時に妙な紫色の煙が上がっていたとの報告が上がっておりますが、もしかしてこの煙のせいでしょうか?」


「魔獣寄せの香ですか」


「それは六国大戦時に使用された非人道兵器じゃないですか!? ですが使用後の魔獣処理に苦労するからという理由で生産中止されているはずです」


「生産中止になる前の骨董品を持っていたという事でしょう。全体に伝えてください。一時撤退と」


「ですがジャミングが解けた今なら敵も油断しているはずです。魔獣を討伐してから前進すればいいのではないのでしょうか?」


「ダメです。それこそ相手の思う壺です。疲弊した状態の兵を戦わせて勝てるような相手ではありません。撤退です」


「は!!」


 私の命令を聞いた兵達が一斉にすべての隊に撤退命令を出していた。


「魔法砲撃部隊隊長のセラ・ファリストに無線を繋げてください」


「かしこまりました!」


 無線が繋がったのか無線機を兵が持ってきた。


「こちらセラ・ファリスト。どうしたんだクライス坊や」


 向こうから聞こえてきたのは女性の声だった。


 セラ・ファリスト、魔法砲撃部隊隊長で歳は私の三個上だ。


 彼女の見た目は年相応だが、彼女の魅力は見た目ではない。


 その信念と心意気だ。


 彼女の行動には迷いはなく、付き従う者すべてを安心させる。


 本来は彼女の方が将軍に向いているのだが実力不足によって今のこの国では将軍にはなれていない。


「坊やはやめてくださいといつも言ってるでしょ。それにそんなに歳変わらないじゃないですか」


「あたしにとっては坊やは坊やよ」


「もういいです。その話は後でじっくり話すことにします。一つお願いがあるのです」


「あら、別にお願いしなくてもいいじゃないか。今はあなたが上官なのだから」


「それはわかっていますが、私は兵士の自主性を尊重したいのです」


「それでお願いというのは?」


「あなたの武技解放(ヴァリアント)で魔獣の森を焼き払って欲しいのです」


「あの森を? あたしの武技解放(ヴァリアント)を一度撃ってしまえば次撃つまで時間が掛かるよ」


「ええわかってます。それに森を焼き払ってしまえばこちらの物です。あなたが次に撃てる頃には戦いは終わってますから安心してください」


「それだったら敵陣地に私の武技解放(ヴァリアント)を撃ちこんだ方が早くないかい?」


「それは最終手段です。それにここまで私達の行動を読まれています。武技解放(ヴァリアント)の対策をしてないとは言い切れません。それならば森を焼き払って兵達を進軍させた方が勝率は高いでしょう」


「わかったわ。坊やがそこまで言うならそうしましょう」


「兵達が撤退しきったら連絡を入れさせます。それまでには準備を完璧にしておいてください」


 私は無線を切って兵に渡した。


「それにしても魔獣寄せの香を使うとは、この戦いの後の魔獣処理を考えると非効率なはずですが・・・まさか私が魔獣の森を焼き払う事も視野に入れた行動・・・。フッ、あり得ませんね。そんなことが出来るのならこの国はとっくの昔に滅んでますよ。きっと」

次回の「魔王と亡国の姫が造るキングダムロード」


アジトと軍との間にある森が焼き尽くされてしまった


アジトのピンチにゲイルはどうするのか!?


更新話 16-1.クライス・ディベルト軍との戦い

               10月8日 更新

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