1-4.魔王降臨
前回のあらすじ
魔族と人族の違いが結局全くなかった。
扉が勢いよく大きな音を立てて開いた。
その音にびっくりした俺は飛び上がり腰のホルスターに手をかけた。
いつでも拳銃を抜けるように臨戦態勢を取りつつ振り返った。
そこに居たのは緑色の肌、豚のような鼻と鋭い牙が口から飛び出ていた人ではない魔族が息を切らしながら立っていた。
そいつの身長は俺とあまり変わらないが白金の鎧を纏っており位が高いものだと目に見えてわかった。
その緑の豚は俺を警戒しつつアンダーの元まで駆け寄り膝をつき報告をした。
「アンダー様! 大変です! 勇者が迫ってきております!」
「何ですって!? 早すぎる。早すぎるわ」
アンダーのその大きな声からは動揺が伝わってきた。
アンダーにとって予想外の事が起きているのだろう。
「目測で後5時間ぐらいで到着してしまいます」
「・・・仕方がないですね。ゲイル様まもなく勇者がこちらへ到着してしまいます。我々もできるだけ時間稼ぎをするつもりですがあまり効果は無いと思います」
そう言うアンダーの顔には俺と話していた時のような余裕はなく焦っているようにも感じられた。
「どうか、異世界の知恵と武器を駆使して勇者を倒していただきたいのです」
「倒すと言っても勇者の力は未知数だ。今の段階では確実に倒せる力が足りない。何か使える武器とかないのか?」
「武器は魔王の剣と鎧ぐらいしかありません」
アンダーはどこからともなく黒い大きな鎧と両手剣を出してきた。
その鎧と剣は豪華な装飾が施されていてまるで芸術品かのようにも見えた。
とても強そうな装備だが、俺には鎧は重すぎて足かせになりかねないし、両手剣に至っては剣に振り回される可能性がある。
そんなものを実践で使うのは自殺行為だ。
「その剣と鎧は俺には使いこなすのは無理だ。もっと違う何かはないのか?」
「とっておきのはありますが、これは知識です。有効かどうかはゲイル様の判断に任せます」
そう言ってアンダーは本を俺に渡してきた。
「魔法の書の初級編? なんだこれは?」
「これは初代魔王様が魔法の師匠から受けた教えを誰でもわかるように書かれた書物です」
「つまりこれを読めば俺でも魔法を自由に使う事ができるということか」
「はい。ですがここに書かれているのは初級魔法。魔法の中では威力が弱い部類です。残りの猶予を考えるとこの書物にある魔法が使える様になるのが限界かと思います」
「時間が無いのなら最初から上級の書とか読んで覚えるとかどうなんだ?」
「魔法の基礎が固まっていない状態では上級魔法は使う事は出来ません」
「だが、初級魔法で勇者に勝てるのか? 威力が弱ければ決定打がないだろ」
「その書物には初級魔法の応用方法も載っております。使い方次第では上級魔法を超える威力がでます。だから決定打はあるはずです」
「なるほど。つまりこの本で魔法を完璧にマスターすれば勇者に勝てる。そういう事だな」
「はい。その通りです」
「わかった。これを読んで必ず魔法をマスターしてみせる」
俺は時間のある限り魔法の書を読み実践を繰り返していた。
初級魔法を覚えるのは簡単だったが応用していくのがとても難しかった。
それでも時間内に初級魔法の書をマスターすることが出来た。
「ゲイル様、勇者がそろそろ来ます。準備をお願い致します」
「わかった。すぐに準備をする」
俺は玉座の間に向かった。
玉座の間はとても豪華な装飾が施されおり王の名にふさわしい部屋だった。
俺は玉座の間で色々準備をして勇者が来るのを待っていた。