12-1.クーデターとリーネの思惑
前回の「魔王と亡国の姫が造るキングダムロード」
ハユは汚れを落とすために水浴び場に向かった
そこにはリーネが居て一緒に水浴びをする事になった
ハユはリーネと仲良くなりとっても幸せな日々を送っていたのであった
ハユがここにきて数日が立ちハユもここの生活に慣れてきたころの事だった。
朝起きてハユと一緒に洞窟の外に出るといつもはのんびり見張りをしている隊の人達やそうでない人達が忙しそうにバタバタ走り回っていた。
「なんでこんなに騒がしいんだ?」
「わかりません。でも、ピリピリしてます」
俺は近くに通りかかった隊の人にこの状況を聞くことにした。
「なあ、なんでこんなに騒がしいんだ? 何かあったのか?」
「何かって・・・。ルーエンブル領の平民達がクーデターを起こそうとしているんだよ!」
「良いことじゃないか。むしろ遅すぎるぐらいだ」
「ダメなんだ。今はまだ・・・。話はここまでだ。私は行かなくては」
隊の人は意味深な顔をした後、その場を早々に立ち去った。
「あ・・・。行っちまった」
「師匠。ここの隊ってダリウス王国軍の方達なのでしょうか?」
「詳しくは知らんが多分違うだろう。リーネがダリウス王国を嫌っている節があるからな」
「だったらなんでこの隊の方達はここに居るんでしょうか?」
「さあな。そこは聞かされてないからな。わからん事だらけだ。とりあえずリーネの所にでも行って聞くか」
「はい!」
リーネを探してあちこちウロウロしていると馬車付近に透き通るようなクリスタルの輝きを持つ銀髪が見えた。
あれはリーネだろう。
俺達はリーネが居る馬車に向かった。
「リーネ! この状況を説明して欲しいんだが」
「来たわね。さあ、馬車に乗りなさい」
リーネは俺を待っていた口ぶりだった。
俺何も聞いてないんだが。
「え? どういう事だ?」
「良いから乗る! あ、ハユちゃんはここで留守番しててね」
「は、はい。わかりました」
ハユはこちらを心配そうな目で見つめていた。
俺は大丈夫だと言いハユの頭を撫でてやった。
そうするといつも通りの笑顔で俺を送ってくれた。
馬車の準備が終わり走り出した。
リーネは馬車の中でも色々指示を飛ばしていて状況説明を求めるとかそんな状況には無かった。
というかこの世界にも無線とかあるんだな。
そうして俺達が着いた場所はルーエンブル領のとある平民街の酒場の前だった。
この場所には俺とカイとリーネの三人で来ていた。
外観的には西部劇に出てきそうな感じだ。
リーネはそんな場所に堂々と入って行った。
「失礼するわよ」
「んあ? 今は取り込み中だ。飲みたいのなら夜にでも来な」
酒場のカウンターに右肩にネズミの入れ墨をした筋肉質のある男が立ってグラスを磨いていた。
「今すぐクーデターを中止しなさい」
リーネの核心をついた言葉に驚いたカウンターに居る男は驚いて手に持っていたグラスを落とした。
そしてカウンターで酒を飲んでいたスキンヘッドの男が立ち上がった。
その男の頭にはネズミの入れ墨が入っていた。
「な!? なんで知ってやがる! ダリウス王国の回しもんだな! おい! 全員出てこい! こいつらを袋叩きにしてやれ!」
そうスキンヘッドの男が言うとカウンターの奥の部屋からぞろぞろと屈強な男達が6人出てきた。
いずれの手には剣が握られており完全にこっちを殺す気でいるようだ。
「ゲイル!! あいつらを拘束しなさい!」
俺はリーネの言葉を聞くと男達の足元に緑の魔法陣を一人当たり二十個作り出した。
「地面拘束」
俺の言葉の後、緑の魔法陣から蔦が生えてきて男達に絡みつき動きを止めた。
「な、なんだこれは!?」
当然リーダーっぽい奴の足元にも魔法陣は置いていため蔦に絡まれて動きを封じられていた。
「いいから話を聞きなさい。クライアット・ルバニア支部・支部長ジルス・レーン」
「どうして俺達レジスタンスの名前を? それどころかそんな情報まで・・・」
「情報源なんていくらでもあるでしょう?」
「クライアットに内通者が居るという事か」
「そういう事よ。さてもう一度言うわね。クーデターを中止しなさい。勝機の無い戦いをして無駄死になんてごめんでしょ?」
「勝機はある!」
「へえ。じゃあその勝機、聞かせてもらおうじゃない」
「この国には不満を持った国民は大勢いる。だからこそクーデターを起こすことで他の地域でもクーデターが起きる。この小さな波紋が大きな波紋に変わるときこの国は国として維持できなくなり国は崩壊する。それが俺達の勝機だ」
「それじゃあ最初にクーデターを起こすあなた達は死ぬ前提じゃない」
「そうだ! だがこの死は無駄ではない! 国を変えるための最初の礎だ!」
「ダメよそんな作戦! ナンセンスだわ!」
「国を変える最初の一歩を踏み出すための作戦だ! センスは関係ねえ!」
「違うわよジルス・レーン! 死を前提にした作戦なんて作戦とは言わないわ。それはただの特攻よ!」
「俺達にはこれしかできないんだ! それにお前みたいな何処の誰かもわからない小娘に何を言われようとクーデターはやめねえ!」
「カイ! あれを持ってきなさい!」
「は!」
そう言われたカイは手に持っていた布に包まれた剣のような物リーネに手渡した。
そしてリーネはその剣の布をはがした。
「そ、その剣は・・・」
次回の「魔王と亡国の姫が造るキングダムロード」
クーデターを止める為にリーネは平民達の前に現れた
そしてリーネは正体を明かした
その正体とは!?
更新話 12-2.クーデターとリーネの思惑
9月28日 更新