10-3.いつもの平穏
前回の「魔王と亡国の姫が造るキングダムロード」
ハユに試練(セレネの料理)を受けさせた
涙を浮かべながら乗り切ったハユはその場に倒れたのだった
ゲイルはハユをベットのある部屋に運び、ハユを寝かせると自分も寝てしまったのだった
ハユに起こされたゲイルはハユに
セレネがなぜ料理というなの薬(劇物)を作るのか?
と聞かれた
理由を知らないゲイルが悩んでいた時カイが現れたのだった
「なぜあの方はあのような形で薬を作るのでしょうか?」
そういえばなぜだろうな。
俺も聞いたことが無い。
「俺も知らないな」
二人して頭に疑問符を浮かべていると急に扉があいた。
そこには元気なカイの姿があった。
頬にあった切り傷も綺麗に無くなっていた。
いや本当にあの料理何でも治せるな。
「そこは僕が答えよう」
「生きていたのかカイ!」
「普段より量が多かったけど、何とか生き残れたよ」
「師匠!? どういうことですか!? 生死をさまようような物を私は食べさせられたのですか!?」
「大丈夫だハユ。まだ死人は出てないから。記録更新中だ」
「ハユちゃん元気になってよかったね」
「そうだな。元気があり余り過ぎてはしゃいでいるしな」
「この抗議をそう見るんですか!?」
「セレネがなんで薬を料理という形にしようとしたのかって話だったね」
「また無視なんですか!? ここの人達は都合が悪くなると無視するんですか?」
「たまたまだ」
「・・・そこは答えるんですね」
「薬が粉状や液状の場合に子供たちが進んで飲まないからそれをどうにかしようと料理に混ぜて食べやすくしているんだよ」
「皆さんはなんで子供が薬を進んで飲みたがらないか知ってますか?」
「それはぐらいは知ってるよ。苦いからだよね」
「そうです。それを改善しようとするなら見た目だけでなく味もどうにかすべきだと思うんです。でもあの味はどういう事なんですか? 食べやすくするという目的が全く達成できていじゃないですか」
当然の疑問だ。
「カイ。なんで味を指摘しないんだ?」
「そういうゲイルこそなんでだい?」
「「そんなの可哀想に決まってるだろ(じゃないか)」」
俺とカイの声がハモった。
ああ可哀想だ。
俺達がな・・・。
「それがダメなんですよ。言ってあげるのも優しさだと思います」
「ハユはまだわかってないな。味を指摘するという恐ろしさを」
「ど、どういうことですか!?」
「いいかハユ。味を指摘するという事はな、その味が指摘した本人が納得するまで味見をさせられるという事だ」
ハユはその瞬間を想像したのだろうか、とても恐ろしそうな顔をしていた。
「つまり味を指摘したが最後、あの地獄を毎回受けなければならない。それも改善するまでだ。この恐怖、恐ろしさ。あの料理を食べたハユにもわかるはずだ」
「でもそれは犠牲を一人出せば改善するという事ではないのですか?」
「そうだ。だがハユ。お前は進んで犠牲の一人になりたいか?」
ハユは答えなかった。
「つまりそういう事だ。誰も指摘しないという現状。そして味が全く改善されない理由」
「じゃあ師匠かカイさんが指摘したらいいじゃないですか?」
「俺は魔王だからな。自分主義なんだ。他人のために進んで犠牲などあり得ないな」
「ぼ、僕はこの拠点を守る仕事があるから体調は万全にしないといけないから無理かな」
「師匠とカイさんの意気地なし! というか師匠に関しては逃げたいからって魔王ってことを都合よく使っているようにしか見えないです」
ハユと賑やかに話していると部屋の扉がノックされた。
俺は部屋の扉を開いた。
そこにはセレネが居た。
相変わらずの可愛らしい笑顔がそこにあった。
セレネはハユの所に行きハユの体を触って色々調べていた。
「賑やかですね。どうですかハユちゃん。体とか痛みは無いですか?」
「全くないです。とても元気になりました。ありがとうございます」
「そうですか。よかった。・・・あ、そろそろ戻らないといけない時間なので戻りますね」
そう言ってセレネは足早にその場を去っていった。
ハユの様子を少し見に来ただけのようだ。
「なあハユ。セレネに何か言いたいことでもあったんじゃないか?」
「食べ物の影響でしょうか言いたいことを忘れてしまいました」
ハユがすっとぼけるので俺を少しだけハユに意地悪をすることにした。
「それは大変だ。セレネに言って薬を作ってもらわないと・・・」
「ごめんなさい。嘘つきました。言いたくないんです。わかってもらえますよね師匠」
「ああ、わかるさ。とてもな」
俺はハユの傷がちゃんと治っているのかを改めて見ていた。
傷は治っているが汚れと匂いが目立つな。
「汚れてんな。水浴びでもするか?」
「できるんですか?」
「ああ、女性用の水浴びの場所があるんだ」
「わかりました。じゃあ場所だけ教えてください」
「途中までは俺が案内するさ」
「え~。そんなこと言って覗くんじゃないんですか?」
ハユは俺に疑いの眼差しを向けてきた。
ハユは確かに可愛いし、成長途中とは言え胸に小さな膨らみもある。
人によってはストライクゾーンかもしれないが、俺はボンキュッボンのグラマーなお姉さんが好みなんだ。
「安心しろ。ハユみたいな幼い体には興味が無い」
「それはそれでムカつきます」
ハユは口をゆがめてそっぽを向いた。
また怒らせてしまったようだ。
俺は師弟関係の危機を感じながら水浴び場の前の森までハユを案内した。
その間ハユは一言も発することは無かった。
次回の「魔王と亡国の姫が造るキングダムロード」
汚れを落とすために水浴びをする事になったハユ
だが、行く道は暗く
魔獣の気配がしていた
恐怖を押さえ無理やり進んだ先にいたのは?
更新話 11.ハユの理想
9月24日 更新