9-1.危険な帰り道・・・?
前回の「魔王と亡国の姫が造るキングダムロード」
虐められていた少女を助けたゲイル
代わりに金貨一枚の借金を背負ってしまう
これで後は帰るだけかと思っていたが
リーネは何かあると考えているようだった
俺達は荷物を詰め込んだ馬車に乗り込んで帰路についた。
馬車はカイが操っており、何かあっても対処できるだろう。
そんな帰路の途中リーネが質問してきた。
「さて、ゲイル。その子を引き取った理由を聞きましょうか」
「理由? そうだなあ、昔の俺に似ていて放っておけなくなったからだな」
俺のしょうもない理由を聞いてリーネはため息をついていたが、どこか嬉しそうだった。
「まあいいわ。でも、そんな理由で引き取るのはこれっきりにしなさい。そんな境遇な子はたくさんいるんだから」
「わかってるさ。俺も面倒を見切れるのは一人ぐらいだからな」
「あと、あの金貨1枚はあげたわけじゃないんだからね。しっかり働いて返してもらうわよ」
リーネのその言葉を聞いた女の子は小さく手を上げながらかわいく主張した。
「あ・・・あの、そのお金はわ、私が返しますから・・・」
「いいのよ。ゲイルの都合で拾われたんだから、おもいっきり甘えときなさい」
「で、でも・・・」
女の子は俺の方をじっと心配そうに見てきた。
俺はその心配を吹き飛ばすように自信満々に答えた。
「おう、任せておけ。それぐらいすぐに稼いでやるよ」
「ちなみに平民が金貨1枚稼ごうとした場合、5年はかかるわよ」
「な!? ・・・まあ、リーネも返す当てのない奴に金を貸すほどバカじゃないだろ?」
「もちろん。稼げる場所は用意してあげるわ。ただし、命の保証はないわよ?」
「望むところだ。最近の仕事は危機感が無さ過ぎて退屈してたところだ」
「・・・あ、ありがとうございます。えーっと・・・」
女の子はどういっていいか困ってアタフタしていた。
そういや名前言ってなかった。
「そういえば自己紹介してなかったな」
「よくそんなので連れてこれたわね」
ぐっ・・・。痛い所を。
少し抜けてただけだ。
うん。次からしなければいい。
俺はリーネの言葉を無視して自己紹介を始めた。
「俺の名前はゲイル・リバスターだ。職業は魔王やってたな」
「・・・魔王?」
「はいはい、無職の人は黙ってなさい」
「・・・な!? ちょっと今は職を失って休職中の身であって無職とはちょっと違うというか・・・」
無職という言葉のボディーブローを受けた俺は悲しくなって隅っこで体育座りをして放心状態になっていた。
「安心しなさい。ゲイルは力はあるんだから時が来ればいくらでも稼げるわ」
リーネのフォローの言葉は放心状態の俺には届かなかった。
リーネは諦めたのか俺には見向きもせず女の子と話し始めていた。
「私の名前はリーネよ。それ以上でもそれ以下でもないわ」
「・・・よ、よろしくお願い致します。り、リーネ様」
女の子は気に入られようと笑顔をリーネに向かって振りまいていたが、慣れていないのかその笑顔はぎこちなく感じる。
「はあぁあ。かわいい!! このままずっとこうしておきたいわ」
その笑顔はリーネにとってはドストライクの模様ではしゃぎながら女の子に抱き着いて頭をなでなでしていた。
女の子は抵抗する気は無くリーネのされるがままに身を委ねていた。
だが、そんな空間を引き裂くようにカイがリーネに注意した。
「リーネ様。はしゃぐのはいいのですがもう少し静かにお願い致します。周りに聞こえてしまいます」
「わかっているわよ。・・・あいつの名前はカイ・シェールストーン。バカだから呼び捨てにしてもいいわよ」
「リーネ様、もしかして怒ってます?」
リーネはカイの質問を無視した。
カイもそれで何となく察したようで肩を落としていた。
だが仕事だし仕方がないと心の中でカイは思い、すぐに立ち直って元気に馬車を操っていた。
「それで、あなたの名前は?」
「ハ・・・ハユ」
「そう、ハユっていうのね、よろしくね」
リーネはハユと握手をしようと手を出したその時、馬車が急停止した。
リーネはとっさにハユを抱え丸くうずくまって馬車の衝撃に耐えていた。
一方俺はというと完全に油断していたので受け身は取れず荷馬車の木の板に頭を思いっきりぶつけていた。
とても痛い。
だが、おかげで目が覚めた。
状況はあんまり良くなさそうだな。
「ちょっとカイ! いきなり止まるんじゃないわよ! 危ないじゃない!」
リーネもこれには本気で怒っていた。
多分ハユが怪我しそうだったことに怒っているのだろう。
「申し訳ありません。リーネ様・・・敵襲です」
次回の「魔王と亡国の姫が造るキングダムロード」
虐められていた少女を助けた帰り道
20人ぐらいの野党に囲まれた!?
そこで立ち上がったのはカイだった・・・
勝てるのか?
更新話 9-2.危険な帰り道・・・?
9月12日 更新