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7-1.ルーエンブル領へ

前回の「魔王と亡国の姫が造るキングダムロード」

 ゲイル達の前に立ちはだかる黒き魔獣


 常軌を逸したゲイルの攻撃にカイ達は驚きを隠せなかった


 そんな時に現れる二体目の魔獣

 颯爽とゲイルの剣を奪い取って駆けだすリーネ


 その圧倒的な力をリーネはゲイルに見せつけるように戦い

 魔獣を打ち倒したのであった

 あの熊騒ぎから1週間がたった。


 その間仕事は探していたが俺にあった仕事は見つからず、今の今までニートをしている。


 いい加減仕事をしたいものだ。


 そんなことを思いながら外を歩いているとカイが俺の方に向かってきていた。


「やあ、ゲイル。今、暇かい?」


「ああ、暇だ。やることないからな」


「なら、買い物に付き合ってくれないかい?」


「買い物? 何買うんだ?」


「隊の食糧とか、備品とか足りない物の補充だよ」


「なるほど、荷物持ちとして俺を連れていきたいという事か」


「あははは。それもあるけど、街とか行った事なさそうだからついでに案内しようかと思っててね」


「街か・・・確かに行った事は無いし興味はあるが、あんまり素顔とか見せたくないんだよな」


 なんたって魔王だからな。


 ダリウス王国の勇者を殺しているから、さすがに指名手配ぐらいはしているだろ。


「ああ、大丈夫だよ。変装して行くから」


 そう言ってカイは金髪のサラサラウイッグを俺に差し出してきた。


 え? これだけ?


 こんなので変装した気になっているのかこいつは。


 いやいや待て、こいつがバカなのは知っているがさすがにこれだけで終わるわけがないはずだ。


「なあカイ。変装道具はこれだけなのか?」


「そうだけど。・・・もしかして金髪じゃなくで銀髪がよかった?」


 カイは俺の顔色を覗き込むように疑問を投げかけてきた。


 そうじゃないんだ。


 俺が聞きたいのはそういう事じゃないんだ。


「色はどっちでもいいんだが。このウイッグに特殊な魔法効果とかが付いてたりするのか?」


「え? 何それ? そんな特殊なウイッグをゲイルは知っているの?」


 俺はあきれて大きくため息をついた。


 こんなウイッグ一つで変装した気になっているとは、やはりこいつはバカだったようだ。


 この程度の変装でバレないなら犯罪者はみんな犯罪を犯した後、髪形を変えて犯罪を繰り返す世の中になっているさ。


「ちょっとリーネに相談してくる」


 俺は振り返って洞窟に向かおうとしていた。


 が、カイに肩を掴まれ洞窟に行くのを阻止された。


「どうしたのさゲイル。リーネ様に相談なんて」


「いいかカイ。こんなウイッグ一つで変装なんてすぐにバレるに決まっているんだ。だからもっといい方法が無いかリーネに相談するんだよ」


「いやいや、大丈夫だって。僕は外に出るたびに使っているけど僕だってバレたことは一度もないんだ」


 カイは胸を張って堂々と言ってきた。


「そのウイッグに自信があるようだが、それはカイの知名度が足りないだけではないのか?」


「た、確かに僕の知名度が低いだけの可能性はあると思う。でも、この案はリーネ様が出したんだ」


「な、なんだと!?」


「うお! びっくりした。急に大声出すなんて・・・」


 びっくりしたのはこっちだ。


 まさかリーネがこの案を出すなんて。


 ・・・いや待てよ。


 この隊の一番上の人間が出す案だ。


 何か考えがあるはずだ。


 ・・・そうか、そういう事か。


 あえて単純にすることによって変装をしている感覚を失わせ自然体で接することが出来ることで違和感を紛らわせているのか。


 なるほど、深いな。


 さすがリーネだ。


「そうか、リーネがそう言うんだったら大丈夫だろ」


「ねえ、なんで僕が言った時は信じないのにリーネ様が行った事にした途端に信じるの?」


「いいかカイ。信用とは普段の行動によって生まれるものだ。普段のカイとリーネの行動と考え方を比較したとき最も信用にたる証言はどっちだと思う?」


「リーネ様だけど・・・」


「そうだろ。そして普段のカイの行動には単純な行動が多いんだ。だからこういった慎重をきす作戦の場合にはカイの意見は最も合わないんだ。だから俺はリーネに頼るんだ」


「え? それって直訳するとバカは信用ならないって言ってない!?」


 そういう所はこいつ鋭いんだよな。


「それより街ってどんな感じなんだ?」


「それよりって、まあいいよ。それについてはまた今度話そうか。僕たちの行く街はルーエンブル領の領主の住む城の周りにできている街さ。詳しくは行ってみればわかるさ」


「そうだな。行ってみればわかるか」


 俺達は出発用の木製の馬車の前まで歩いて行った。


 そこにはたくさんの木箱と馬車が並んでいた。


 俺は仕方なく金髪ウイッグを被った。


 鏡が無くて見ることが出来ないが似合ってないんだろうな。


 まあ、あれよりはマシか。


 俺はカイのウイッグを見た。


「何、ゲイル? なんかついてる?」


 カイのウイッグは黒髪のアフロだった。


 絶望的に似合ってないし、見た目はただの眼立ちたがりのバカだ。


「何も付いてないぞ。ただそのウイッグはとてもカイの雰囲気に合って似合っているなと思っただけだ」


「あ、本当? よかった。みんなこのウイッグを見るだけで避けるんだよね。・・・あ、実は同じようなのがもう一つ・・・」


 カイがウイッグの詰まった木箱から金髪のアフロを取り出そうとしていた。


 俺は目の前に止めてある木製の馬車に会話を切り上げるようにそそくさと乗った。


 絶対あのアフロだけは被りたくない。


「おい、カイ。何やってんだ。早くいくぞ」


「あ、待ってゲイル。アフロは?」


「いらん!」


「同志ではなかったのね・・・」


 カイは手を地面につけて落ち込んでいた。


 すまんカイ。


 それだけは無理だ。


 俺は落ち込んでいるカイを馬車に乗せて馬車を出発させた。

次回の「魔王と亡国の姫が造るキングダムロード」


ゲイルは異世界に来て初めて街に入った


 貴族と平民との絶対的格差

搾取される現実を変えようとしない人々


その理由とは!?


次回 7-2.ルーエンブル領へ

        9月2日 更新

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