1-2.魔王降臨
前回のあらすじ
ゲイルは魔王として呼び出され、自分の死を知るのであった
「俺は、死んだはず・・・なんだよな?」
俺は自分の死の疑問をアンダーにぶつけた。
「はい、ゲイル様は一度死んでおります」
そう言い放ったアンダーの目は真剣でとても嘘を言っているようには見えなかった。
俺はその言葉で絶望するものと思っていた。
だが、実際には安心していた。自分の記憶に間違いがなかったことに。
それでも疑問はあった。
その言葉を信じきるには確かめなければならないことがあった。
「なぜ俺は生きているんだ。死んだ人間を生き返らせることができるとでも言うのか?」
そう、死んでいると聞かされているのに実際には生きている。
この矛盾を解決しなければ俺は自分の死を受け入れることができないのだ。
「ゲイル様の仰る通りです。我々魔族の魔法という力は人を生き返らせることもできるのです」
「そういう魔法があるのか。恐ろしいな魔族というのは」
アンダーはコホンと言って別の話題を切り出してきた。
「さて、そろそろ本題を話したいのですが、よろしいでしょうか?」
「本題?」
「はい、ゲイル様にご依頼したい事がございます」
「依頼だと?」
「はい。殺しの依頼です。相手は人族の勇者と呼ばれる者です」
「俺は人族だぞ。人族が不利になる様な事をすると思っているのか?」
「はい。そこは大丈夫だと思っております。ゲイル様はプロの傭兵なのでしょう。だったら貰った報酬に対して相応の仕事をするのがプロという者ではないのでしょうか」
俺はアンダーの言ったもらった報酬という言葉に疑問を抱いた。
俺自身受け取った記憶はない。
だが相手が悪魔に部類するものなら命のやり取りをしているはず。
・・・そうか。
「報酬・・・。命ということか」
「さすがゲイル様。聡明でいらっしゃいます。前払いというやつです」
やり方は非常識だが、受け取ってしまったものは仕方がない。
プロだからな、やるしかないだろ。
「そうか。仕事なら仕方がない。貰った報酬分は働くとしよう。・・・だが、腑に落ちない点が一つある」
俺は殺しの依頼を切り出してきた時から感じていた違和感をアンダーにぶつけた。
「人の生死を操る魔法があるなら、俺が出なくても人族を支配する事はできるのではないのか?」
「彼等人族には特殊な力が備わっているのです」
「特殊な力?」
「はい。彼等にはユニークウェポンと呼ばれる異世界の武器の力を自らの意思で使う事ができるのです」
「異世界の武器なんて、そんな数ないだろ」
「確かに異世界の武器の数は少ないです。ですが、この世界にはなぜか異世界の武器が多々流れ着いてくるのです」
「だから敵の力が未知数で勝てる見込みが湧かないから、勇者に唯一対抗できる魔王としてこの世界に俺を呼んだという事か」
「はい。左様でございます」
「だが待てよ、人族から見た魔族だって力は未知数のはずだ。魔王が居なくても数で押せば勝てるのではないのか?」
「現在、魔族の数はおよそ三百、対して人族の数は数百万は超えているでしょう。数で押すのは無理という事です」
「魔族は繁殖能力が低いのか?」
「繁殖能力は人族と大して変わりありません。ただ我々魔族はこの世界の者では無いということです」
アンダーから衝撃の真実が告げられた。
俺は人族と魔族が古くから領地争いをしてるものだと思っていたので、俺は動揺して思わず大きな声を出してしまった。
「ど、どういう事だ?」
「我々は逃げてきたのですよ。元いた世界、魔界から」
アンダーの表情は悲しげで、まるでつらい記憶を思い出しているようだった。
「魔界は弱肉強食、戦争なんて当たり前。常に戦いの毎日です。そんな世界に嫌気がさして初代魔王様とその志を持つ者と共にこの世界に逃げ出してきたのです」
アンダーは辛そうな笑みを浮かべた。
その表情からは魔界が辛く、苦しい場所だとわかるようだった。
「そんな我々に数万倍近い戦力差がある人族に対抗する手段など、無いのですよ。だから、ゲイル様の力が必要なのです」
「だが俺にはこの世界の人族の様な力はない。あるとしても傭兵として戦った経験のみ。この世界の人族に有効とは思えない」
「そこは安心してください。体を再生させた時に手を加えて魔族になるようにしましたから」
アンダーは胸を張って、満面の笑みで自信満々に言ってきた。
「おーそれは安心だ・・・。ちょっと待て、今なんて言った?」