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4-2.どん底からの出会い

前回のあらすじ

 どこかの人族の隊に拾われたゲイル。そこで気軽に話せそうなカイ・シェールストーンと薬師のセレネ・ワーランドと出会うのであった。

 俺がそんな腹黒いことを考えていると扉が開き、小さな鍋を持ったさっきの美少女、セレネが現れた。


「お食事が出来ましたので、持ってきました。お口に合うといいのですが・・・」


 鍋にはおかゆが入っていた。


 おかゆ特有の優しい匂いが部屋中に行きわたり、ゲイルのお腹が早く食べたいと言わんばかりにまた大きな音を立ててなっていた。


「おお。旨そうだな。ありがとうセレネ」


「あ、あれ自己紹介しましたっけ?」


 セレネは首をかしげて悩んでいた。


「僕が代わりに言ったんだよ」


「あ、カイ君。変な自己紹介とかしてないですよね?」


「してないしてない。話したのは名前とどういう職に就いているかぐらいだよ」


「そうなんですね。よかった。カイ君エッチなので変なことまで言っているんじゃないかと心配しました」


「そんなことはしないよ。ほら、ゲイル冷めないうちに早く食べなよ」


「そうだな。ではいただくとしよう」


 熱々の鍋からスプーンでおかゆをすくい、口に入れた。


 その味は見た目と匂いで想像した味ではなく、次々に辛さ、甘さ、渋さ、苦みといった味が襲ってきた。


 俺の脳の処理速度が追い付かず飲み込んだ後、しばらくボーっとしていた。


「・・・は!? ・・・俺は一瞬意識が飛んでいたのか」


 この食べ物は見た目と匂いは完璧だが、味がぶっ飛んでいる。


 はたして食べ物と呼んでいいのかどうかも怪しい所だ。


 俺がスプーンを鍋に置き明後日の方向を向き現実逃避しているとカイがニヤニヤしながら話しかけてきた。


「ゲイル。せっかくかわいい女の子が作ってくれたんだ。残すなんてひどいことはしないよね?」


 こいつ、結果がわかってて食わせやがったな!


 ・・・フッフッフ、ハッハッハ。


 いい度胸だ。


 お前を必ず道ずれにしてやろう。


 俺はどうにかカイにこの劇物を食わせる方法をスプーンに手を付けず考えていた。


 するとセレネが不安そうな顔で話しかけてきた。


「お口に合いませんでしたか?」


 セレネは今にも泣きそうな顔になっていた。


 俺も男だ。


 一生懸命に作ってくれた食事を不味いなどと口が裂けても言えるわけがない。


 というか誰もこの味の事を言わないのか!?


 どうにか対処しろよ!


「・・・そ、そんなことないさ。と、とても奇抜な味で驚いただけさ」


 俺は食事に目を向けたときにカイの行動について思い出したことがあった。


 これがあればこいつにも食わせることが出来るぞ。


「あ、そういえばカイ。さっきお腹が鳴ってたし、お腹が空いているんじゃないか?」


 俺のカイへの先制攻撃。


 だが、カイの笑顔は変わらない。


 まだ焦っていないということだろう。


「いやいや、全然。お腹は減ってないよ」


「遠慮することは無い。俺なんか気にせず作ってもらえよ。こんな奇抜な味そうそうお目にすることは無いぞ?」


「いや~そうしたいんだけど。他の隊の人達を差し置いて先に食べるのは気が引けるんだよね」


 その言葉を聞いたセレネが「いいことを思いついた」という表情になると走って外に出て行った。


 カイはその行動で察していたのだろう。


 だからカイはセレネを追いかけようとした。


 だが、俺はカイの行動を予想しカイが動く前にカイの腕を掴んでいた。


「おい、どこに行こうというのかね。カイ」


「放して、あれは絶対他の隊員に確認取るつもりだよ! そんなことはさせてはいけないんだ。僕の寿命が縮むかもしれないんだ!」


 カイの表情からは笑顔が消え、焦りに満ち溢れていた。


 何なら目から涙も少し出ていた。


「そんなものを俺に食わせてどういうつもりだカイ!」


 そんなやり取りとしていると扉が開き、そこからセレネが現れた。


 相談は終わったのだろう。


 カイは絶望しその場に座り込んでしまった。


「隊の方々に相談したら先に食べてもいいと仰ってましたよ。後、隊の方々についでに一緒に食事を取りませんかと聞いたら忙しいからまた今度って言われて断られてしまいました」


 なるほど、ここの隊の人間はこの子が作る料理は劇物ということをわかっていたわけか。


 うまい回避方法を取ったな。


 俺は必死に笑いをこらえながらカイに話しかけた。


「・・・よかったなカイ。先に食べてもいいなんて良い隊員を持ったじゃないか」


「ソウダネ。トテモ良イ隊員ヲ持ッテ僕ハウレシイヨ」


 カイの目は死んでいた。


「カイ君、私は料理を作ってきますね」


「・・・カイ、先に逝って待ってるから」


 俺はカイにそう告げると残りのおかゆを流し込むように口に入れ、ベットに倒れた。


 目が覚めると目の前には大きな川があり、対岸には死んだはずの師匠が手を振っていた。


 とても楽しそうに見えたので、俺は川を横断し始めた。


 川を半分越えようとした時、誰かに足を掴まれた。


 その手は振り解けず誰が掴んでいるのかと見ると、死んだ目の表情のカイが川の底に居た。


 あまりにびっくりしてはその場で転んだ。


 そして俺はもう一度川を渡ろうと起き上がった。そこは川ではなくベットの上だった。

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