閑話:1924(大正9)年白露~秋分 ミュンヘンのオクトーバーフェスト
1924年9月14日日曜日午後1時、ドイツ・バイエルン王国。
「あいたたた……」
バイエルン王国の南には、ドイツ帝国の最高峰・ツークシュピッツェ山が、オーストリアとの国境地帯にそびえ立っている。その北麓にあるパルテンキルヒェンの街は、休日にはツークシュピッツェ山に登山しようとする者で賑わっていた。しかし、パルテンキルヒェン近郊の畑の中を通る道の端でうずくまり、右の足首をさすっている男の目的は、ドイツ帝国の最高峰を極めることではなく、ドイツ・アルプスの美しい山々のスケッチをすることだった。
「まったく、ついてないな」
転んだ拍子に右の足首をひねってしまった男は、そう呟いて舌打ちする。彼の名はアドルフ・ヒトラー。ミュンヘンにある森ビタミン研究所の職員であるが、絵が得意で、最近バイエルン王国では画家としても知られるようになっている。
「せっかく、マシなスケッチができたと思ったのに」
道端に落ちている大きなスケッチブックに収められたアルプスのスケッチは、今度の研究所報の表紙の下絵にしようと考えていたものである。それがまずまずの出来に仕上がったので、上機嫌でミュンヘンに戻ろうとしたら、うっかり足をひねってしまった。ミュンヘン中央駅から自宅までは至近距離だから、ここからパルテンキルヒェンの駅まで戻れれば何とかなるだろう。しかし、ここはパルテンキルヒェンの駅から2kmほど離れている。大きなスケッチブックと画架を抱えてパルテンキルヒェンの駅まで歩けるか……ちょっと見当がつかない。
「困ったな。しかし、歩くしかないか……」
そう言いながらヒトラー氏がため息をついた時、
「どうした、君?」
上から野太い男の声が降ってきた。ヒトラー氏が見上げると、屈んでいる自分のそばに、立派な口ひげを生やした2人の男が、腕組みをして立っていた。
「足をケガしたのか?」
ややイタリアのアクセントが混じるドイツ語で、右側に立っている男が問いかける。「あ、ああ……」と答えたヒトラー氏に、
「では、我々が医者の所まで送ってやろう」
今度は左側の男が力強く申し出た。
「い、いや、申し出はありがたいが、医者までは……」
勢いにやや押されたヒトラー氏に、
「何、遠慮するな。骨が折れていたら一大事だぞ」
右側の男が迫るように言う。
「どうだ、立てるか?」
「立てないなら、俺が背負っていこう。何、これでも、体力はだいぶ戻ってきている。人1人背負って10km歩くなど造作もない」
「さぁ、遠慮は無用だ。山で出会った者同士、困った時は助け合おうではないか!」
「い、いや、ここは登山道ではないし、それに、足をひねっただけだから、医者に行ったり、背負ってもらったりまでは、その……」
暑苦しいまでに自分に厚意を押し付ける2人の男を、ヒトラー氏は何とか押しとどめようとする。しかし、それを完全に無視して、2人の男はヒトラー氏の身体を抱え上げてしまった。あっと言う間にヒトラー氏の身体は、右側にいた男に背負われる。
「さぁ、行こう!我々はドイツ最高峰を極めた帰りに、怪我で苦しむ者を助けるという崇高な行為に身を捧げるのだ!ドイツの天地よ、照覧あれ!そして、我らに自由を与えたもうた章子内親王殿下よ、照覧あれ!」
自分の荷物を軽々と抱え上げた左側の男に、
「な、なぜそこで、日本の章子内親王殿下が出てくるのだ?!」
ヒトラー氏は思わず反論したが、その言葉はもちろん2人の男には届くことなく、ヒトラー氏は背負われたまま、パルテンキルヒェンの駅のある方角に連れて行かれたのだった。
1924年9月27日土曜日、ドイツ・バイエルン王国の首都ミュンヘンにあるテレージエンヴィーゼ。
「……いや、先日はありがとうございました」
ミュンヘン旧市街の南西に位置するこの公園では、毎年9月半ばから10月の上旬まで“オクトーバーフェスト”という祭が開催される。テレージエンヴィ―ゼには移動式遊園地や巨大なテントが設置され、巨大なテントの下にあるたくさんの客席では、ビールと料理が大量に消費されるのだ。
その巨大なテントの下の客席で、アドルフ・ヒトラー氏は2人の男性と向かい合っていた。兄をマリオ、弟をルイージというこの兄弟は、先日、パルテンキルヒェンの近郊で、足をひねって動けなくなっていたヒトラー氏を駅まで連れていき、更にはミュンヘンにある自宅まで送ってくれたのである。ヒトラー氏自身は、イタリア人と思われる、異様に暑苦しい兄弟に余り会いたくなかったのだけれど、彼らに助けてもらったのは事実なので、折から開催中のオクトーバーフェストで、彼らにビールを奢ることにした。
「何、我々は当たり前のことをしただけだ。気にすることはない」
兄のマリオがヒトラー氏に応えてニカっと笑う。その顔をヒトラー氏はどこかで見たような気がしたのだが、思い出すことはできなかった。
「ああ。山で困っている者を見かけたら助けなければならない。それは山の掟だ。だから気にすることはない、ヒトラー殿」
登山をこよなく愛しているという弟のルイージが胸を張る。助けられた場所は田園地帯で、どう考えても山の中ではなかったのだけれど、ヒトラー氏は考えないことにした。
と、3人の前に、給仕が大きなビールジョッキを3つ運んできた。“マス”と呼ばれる1リットル入りのビールジョッキには、通常のビールより味が濃く、アルコール濃度の高いオクトーバーフェスト用ビールがなみなみと注がれている。
「さぁ、お2人ともどうぞ。今日は私の奢りです。普段酒は飲まんのですが、今日ばかりは飲みますよ」
ヒトラー氏は暑苦しい恩人に酒を勧めると、自らも“マス”を手に取り高く掲げる。酒が入った3人は、唾を飛ばしながら機関銃のように喋り始めた。
「あなた方は、確かイタリア出身でしたか」
ヒトラー氏が大きな声で話しかけると、
「ああ。我々には、叶えたい夢がある。それでこうして、愚弟と語らって故郷を出てきたわけだ」
マリオはやや尊大な態度で答え、誇らしげに胸を張った。
「ほう、その夢とは……」
「日本にリストランテ……食事を出す店を作りたい」
ヒトラー氏の問いに、今度は弟のルイージが胸を張って答える。
「ほう、日本ですか。それはまた、いかなる訳で?」
「うむ、昨年日本で、大きな地震が起こったのを覚えているか?首都・東京の建物がいくつも壊れ、横浜の港も大損害を受けた……」
「もちろんだとも」
ヒトラー氏はマリオに返答すると、ソーセージにかぶりついた。「……ミュンヘンに戻る列車の中で話したと思うが、私の勤務先には日本人が大勢いるし、日本人の留学生も大勢出入りしている。去年の今頃、彼らは一様に、故郷は大丈夫なのかと心配していた」
「……その時に俺は聞いたのだ。日本には、西欧の料理を出すような店はまだ少ない、と」
ビールを呷ったルイージは、空になった“マス”をテーブルに置くとこう言った。「特に、俺たちの故郷イタリアの料理を出す店は、日本にはほとんど無いということだった。……そこで思いついたのだ。大地震に打ちひしがれている日本の人々に、我が国の旨い料理を食わせる店を作ろう、と」
ヒトラー氏は知る由も無かったが、マリオもルイージも酒には強く、アルコールを大量に摂取しながらも、自分たちの真の目的を包み隠す理性は残っていた。そのためか、彼ら2人の日本行きの正しい動機を、ヒトラー氏は看破できなかった。
「しかし、一気に日本に行く金はないから、肉体労働をして金を稼ぎながら、少しずつ日本に近づいているのだがな」
なぜか得意げに語るマリオに「はぁ、なるほど……」とヒトラー氏が相槌を打った時、
「おや、ヒトラー係長ではありませんか!」
騒がしいオクトーバーフェストの会場に、男性のよく通る声が響いた。ヒトラー氏が声のした方を振り返ると、眼鏡を掛けた東洋人の男性が、こちらに向かって大きく手を振っているのが見えた。
「おお、斎藤さんではないですか!」
ヒトラー氏が手を挙げて応えると、「お知り合いかね?」とマリオが尋ねる。
「ええ、日本からミュンヘン大学に留学している医師ですよ。森所長がご存命の頃は、私の勤め先にもよく来ていましてね」
ヒトラー氏が説明している間に、“斎藤さん”と呼ばれた東洋人は、ヒトラー氏のいるテーブルに近づいたが、
「や、これはお邪魔でしたか。では、私は向こうで……」
ヒトラー氏と同席している兄弟の存在に気付いてその場を立ち去ろうとする。しかし、
「いいや、構わん、構わん!ヒトラー殿の知り合いなら、それは即ち、我らの知り合いだ!」
立ち上がったマリオが東洋人の両肩を掴み、半ば強引にヒトラー氏の隣に座らせた。
「そうだ!そうだ!景気よく飲んで、ヒトラー殿の快癒を祝おうじゃないか!」
ルイージも“マス”を掲げて威勢よく叫ぶ。
「あんたら……そんなに馴れ馴れしくしていいのか?」
ビールに酔ったのか、ヒトラー氏はややぞんざいな口調になり、マリオとルイージを睨みつけた。
「この斎藤茂吉先生はな、医師として活躍しているだけではない。“短歌”という日本の伝統的な詩の創作に秀でていて、日本で既に何冊も詩集を出版している偉い先生なのだぞ」
「いや、単に昔から短歌が好きなだけですよ」
ヒトラー氏に紹介をされた斎藤氏ははにかんだように答えると、
「しかし、それで森先生と親しくなれたのは、望外の喜びではありましたね」
と言って微笑した。
「ほう、森先生と言うと、7月に亡くなった森林太郎博士のことかな?ノーベル賞を受賞した後、日本からドイツに帰化し、ヒトラー殿の勤め先の所長でもあった……」
マリオの問いに「ええ、そうです」と頷いた斎藤氏は、
「あの方は、ミュンヘン大学でも教鞭を執っておられましたから、ビタミン研究所の方に日本人の留学生たちを招いて、何かと世話を焼かれたのです。それでお話していたら、森先生も以前は文学にかなり心を寄せておられたというのが分かったのですよ。日本におられた頃は文集も出版されていますしね」
遠くを見つめるような目をしながらこう言うと、ちょうど運ばれてきた“マス”を呷った。
「何と、世界的な医師に、そんな顔があったのか」
目を丸くしたルイージに、
「私は何度か短歌の創作のことで森先生と議論を戦わせましたが、あの方は確かな歌論をお持ちでした。ご本人も、“これほどビタミンの研究に打ち込むことにならなかったら、私は文学者になっていただろう”とおっしゃっておられましたからね」
斎藤氏は補足して答えると、再びビールを呷る。
「ドイツに帰化なさったとは言え、森先生の中には、望郷の念もあったのでしょうなぁ……。しかし、森先生の死顔は、安らかで満ち足りたもののように私には見えました。こんなことをあなたのお国の方に言うと怒られかもしれませんが、私は、森先生は奥様との愛に生きて、本当に幸せだったと思いますよ」
“マス”を持ったヒトラー氏は、そう言って再びビールを飲むと、“マス”をドン、とテーブルの上に置き、
「ああ、神というものは何て残酷なんだ。我々職員からも、奥様からも、あんないい人を奪うなんて……畜生め!」
と悔しそうに叫ぶ。
「日本で森先生のことを悪く言う人はいませんよ、ヒトラー係長」
両目にうっすら涙を浮かべているヒトラー氏の肩を、斎藤氏が慰めるように叩いた。「森先生の結婚は、今を時めく内府内親王殿下のご命令ですからね。森先生も、縁を切った日本の家族に慰謝料を払い続けておられた。ですから、森先生が責められる謂れは無いはずです」
すると、
「な、何っ?!」
「内府内親王殿下、だと?!」
マリオとルイージが急に立ち上がった。
「な、何だ、どうした?!」
暑苦しい客人が更に暑苦しくなったのを感じたヒトラー氏は、思わず彼らから身を遠ざけたが、彼らはヒトラー氏のことは無視して斎藤氏に殺到し、
「おいっ、今の話は本当か?!」
「世界に名高い森博士の結婚に、あの章子殿下が関わっていたというのは!」
次々に質問を浴びせた。
「あ、はい、真実です」
ずり落ちた眼鏡を元の位置に戻しながら、斎藤氏は2人に答えた。
「森先生は日本にいた頃、内府殿下のお召しを受け、度々御殿に参上していたそうです。それに、内府殿下が幼い頃、討論会の相手を罵った演者を叱りつけたのは、森先生が登壇していた、“脚気”という病気に関する討論会ですよ。もちろん、内府殿下のお叱りを受けたのは、森先生の相手側ですがね。更に、森先生は、内府殿下が日本の女子として初めて国軍軍医学校にご入学遊ばされた時、軍医学校の校長だったのですよ」
ビールに酔ったためか、斎藤氏の話はやや長くなってしまったが、それを最後まで頬を紅潮させて聞いたマリオとルイージは、
「「うおおおおっ!」」
と歓喜の雄叫びを上げた。
「何と素晴らしいのだ!世界的な医学者の傍らに、あの美しい姫君あり!まさに医学の理想ではないか!」
「ああ、兄者!日本の医学が急速に発展しているというのも納得だな!」
興奮して唾を飛ばしながら話すマリオとルイージのそばで、
「私は余り、あの姫君に近づきたくないのだがな……」
ヒトラー氏がボソッと呟く。誰にも聞き取られないだろうと思っていたその声は、
「何っ?!近づきたくない、だとぉ?!」
「貴様、あの美しく聡明で、そして登山がお好きな姫君に近づきたくないとは何事だ!」
この世で最も聞かれてはいけない兄弟に聞かれてしまい、ヒトラー氏は彼らに鬼のような形相で睨みつけられた。
「い、いや、私は数年前、章子内親王殿下が研究所にいらした時、ちょっとした行き違いからご勘気を被ってだな……」
両手を振りながら慌てて弁解するヒトラー氏に、
「会ったのか、章子内親王殿下に!」
「そうかそうか!素晴らしいだろう!あの美しいオニキスのような漆黒の髪に漆黒の瞳!世界でも類稀な美貌!そして明晰な頭脳!まさに、全世界の平和の女神と呼ぶにふさわしい!」
マリオとルイージは一転上機嫌となり、日本で、いや世界で最も有名な内親王のことを熱く語り始める。更には、
「そうですよ。何と言っても内府殿下は我が日本の誇りです。関東大震災で亡くなったという報にウィーンで接した時には肝を潰しましたが、誤報で本当にようございました」
ヒトラー氏の隣に座る斎藤氏も、日本の医学界に貢献している章子内親王のことを、目を輝かせながら喋り出した。
……こうして、オクトーバーフェストのテントの一角で、“マス”を片手に2時間以上章子内親王について熱狂的に語ったイタリア人の兄弟と日本人の医学者は、
「章子内親王殿下、万歳!」
と自棄になったように叫ぶミュンヘン在住の研究所職員(35歳)を、自分たちの同志に引き入れることに成功した。
一方その頃、イタリア王国の首都・ローマにある王宮。
「命令しただろうが!首相にあいつの存在を消せと命令しただろうが!」
イタリア国王、ヴィットーリオ・エマヌエーレ3世は執務室に、呼び出した側近たちに1冊の本を示しながら怒鳴り声をぶつけていた。本の表紙には、“アルプスのSekuhara-Yarou”というタイトルと、“マリオ”という著者名が記されている。イタリアの流行小説家・マリオ……いや、昨年死去したとされている国王の従弟、ヴィットーリオ・エマヌエーレ・トリノ・ジョヴァンニ・マリーア・ディ・サヴォイア=アオスタ……“トリノ伯”という儀礼称号を有していた男の最新作であった。
「一体どこの誰が、俺の命令に背いたのだ!……その結果がこれだ。首相は俺を欺きやがった!」
国王の剣幕はすさまじく、その怒鳴り声は廊下まで響いている。騒ぎで集まった女官たちのうちの1人が、その余りにも恐ろしい声に怯え、すすり泣きを始めた。
「誰もが俺を騙していた、側近たちまでもだ!卑劣で、忠誠心のない、卑怯者の塊以下の存在の閣僚たちなんざ大嫌いだ!」
「陛下、陛下のために働いている閣僚たちをそのように言うことは……」
「うるせえ!大っ嫌いだ!裏切り者だ!バーカ!」
側近たちは怒っている国王をとりあえず落ち着かせようとしたが、その言葉は逆効果だったようで、国王は額に青筋を立て、罵詈雑言を吐き続けている。
「陛下、陛下のおっしゃることはとんでもないことですぞ!」
国王の無様な姿に呆れ返った側近の中の長老格が、一歩前に進み出て国王を叱り飛ばす。しかし、国王はその諫言を完全に無視し、
「閣僚どもはイタリア国民の中のカスだ!」
更に暴言を吐くと、手に持っていた鉛筆を机に叩きつけ、
「畜生めーっ!」
と絶叫した。
「なぁ……あの新刊、どこから出てきたんだ……」
執務室の外には、女官たちだけではなく、呼び出されなかった側近たちも騒ぎを聞きつけて集まってきていた。そんな側近たちの1人が、国王の怒鳴り声が響く中、隣にいた同僚にそっと尋ねた。
「どうやら、王妃様の所にあったらしい」
同僚は小さな声で返答した。「それを陛下が見つけたとか」
「うーん、王妃様に、マリオ先生の本は、国王陛下に見つからないところで保管なさるようにと申し上げなければな」
「ああ、このままでは、陛下がマリオ先生の本を発禁すると言いかねない。それだけは絶対に避けなければ」
執務室の外に集まった側近たちは、ドアの向こうの様子を窺いながら、コソコソと話し合う。側近たち……いや、王宮に勤める全ての者たちにとって、王族でありながら奇抜な冒険譚を創作できるトリノ伯は憧れの存在であり、その著作は高く評価されていた。
「マリオ先生のような才能を失うのは、イタリアにとっての損失だ」
「しかし、どうやって国王陛下に誤魔化す?」
「遺作として原稿を出版社に託していたのを出版したらしい、とお伝えすればよかろう。少なくとも、トリノ伯が死んでいる、と国王陛下が信じれば、それですべては解決する」
「それはいい。次の新刊が出ても、“また遺作の原稿が発見された”とすれば誤魔化せる」
「うん、Sekuhara-Yarouの活躍は、我々の生きる活力だからな」
側近たちは彼らの主君が聞いたら発狂しそうなことを囁き交わしながら、トリノ伯の著作を生き残らせるための策を練る。彼らの前にあるドアの向こうでは、彼らの主君である国王が、長老格の側近に羽交い絞めにされながら、
「俺の判断力が足らなかった。トリノ伯を粛清しておくべきだったのだ、皇帝ネロのように!」
と叫び続けていた。




