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転生内親王は上医を目指す  作者: 佐藤庵
第59章 1916(明治49)年大暑~1916(明治49)年霜降
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イギリス(1)

 1916(明治49)年9月18日月曜日午前9時40分、イギリス・リヴァプール港に入港した客船“マージ―号”の上甲板。

「ええと、私たちを迎えに来てくれるのは、コンノート公だっけ?」

 軍医大尉の真っ白い軍服に身を包んだ私は、斜め後ろに控えてくれている千夏(ちなつ)さんに尋ねた。

「はいです」

 千夏さんは首を縦に振ると、私と、私の隣に立つ栽仁(たねひと)殿下に視線を固定する。千夏さんの両頬が、次第に紅潮していくのがハッキリと分かった。

「あの……千夏さん、どうしたの?」

 風邪を引いてしまったのだろうか。イギリスに到着したばかりだけれど、場合によっては、療養を命じなければならない。私が千夏さんに一歩近づこうとした瞬間、

「素晴らしいです!」

千夏さんは胸の前で合わせた手のひらの指を組み合わせ、うっとりとした声で叫んだ。

「へ……?」

 キョトンとした私に、

「3人お子を挙げられたとはとても思えない、引き締まった美しい身体、色褪せることの無い艶やかな花のような(かんばせ)、神々しさを感じさせる軍医大尉の白い軍服……ああ、そんな宮さまと、凛々しくお美しい若宮殿下とが並んでお立ちになっていると、まるで、仲睦まじい男神と女神とがこの世に顕現しているような……これは……これははかどります、はかどりますよぉ!」

 千夏さんの両眼からは、ギラギラと異様な光が放たれている。そんな彼女が私に向かって一歩踏み出そうとしたので、私は思わず後ずさった。

「千夏さん、少し落ち着いてください。章子さんが驚いていますから」

 栽仁殿下が私の身体を後ろから受け止めるように抱き締めながら、千夏さんに苦笑いを向ける。「も、申し訳ありませんでした!」と謝りながら、千夏さんは後退し、私に最敬礼した。

 と、

「おい、(ふみ)姉上、真面目にやれよ」

私の弟・鞍馬宮(くらまのみや)輝仁さまが、呆れたような声を上げた。

「コンノート公、もうこの船に乗り込もうとしてるぜ」

 今回、イギリス側は、この“マージ―号”の中まで、私たちを迎えに来てくれる。船に乗り込もうとしているところなら、ここにコンノート公がやって来るまで10分は掛からないだろう。私も栽仁殿下も千夏さんも慌てて姿勢を正し、コンノート公の到着を待った。

 ほどなくして、上甲板に、軍服を着たイギリス人男性の一団が現れた。その中心に、先代国王・エドワード7世の弟で、現在の国王・ジョージ5世の叔父であるコンノート公がいた。イギリス国王の名代として、ガーター勲章をお父様(おもうさま)に奉呈するために来日して以来、10年ぶりの再会である。私たちは彼と握手を交わし、迎えに来てくれたお礼を丁重に述べた。

『章子殿下に、このような形でお目に掛かることになるとは、思ってもみませんでした』

 今年で66歳になったコンノート公は、私と握手をすると、感慨深げにこう言った。

『貴女は以前、“私は父と兄のそばを離れることはない”とおっしゃっておられた。ですから私も、もうお会いすることはないだろうと思っていたのですが……』

『私も、信じられない思いでいっぱいです、殿下』

 私は英語で答えると、コンノート公に微笑した。『けれど、我が国の優秀な医師たちは、古くからの非合理的なしきたりを飛び越えることができました。彼らの努力のおかげで、私は今、このイギリスにいることができます。彼らには、感謝してもしきれません』

『日本はノーベル生理学・医学賞の受賞者を何人も輩出しています。今や、日本の医学は、ヨーロッパのそれと比べても遜色のないものになっています』

 そう言ったコンノート公は、

『しかも貴女は、この10年の間に、素晴らしい人生の伴侶を得られた』

私の隣に立つ栽仁殿下に穏やかな視線を向けた。

『初めてお会いした時はまだ学生でいらっしゃったが、栽仁殿下は、この10年で、非常に立派な士官に成長なさった。まるで、貴方のお父上を目の当たりにしているようだ』

『過分なお褒めのお言葉を賜り恐れ入ります、殿下』

 栽仁殿下は頭を軽く下げ、流暢な英語で言った。『僕はまだ、修業中の身です。今後も己を磨き、より一層精進する所存です』

『……本当にご立派だ』

 コンノート公は感心したように言った。『もっとも、以前から、本当に素晴らしかった。有栖川宮(ありすがわのみや)家で私をもてなす晩餐会が開かれた時、ご気分が優れずに倒れた章子殿下を抱きかかえて介抱なさったのは、まさに騎士道物語に出て来る立派な騎士のようだと絶賛の嵐でしたから……』

 すると、

「は?!」

私たちの横でコンノート公の言葉を聞いていた輝仁さまが目を丸くした。

「ウソだろ、(ふみ)姉上?!あの時、酔っぱらって倒れたのは知ってたけど、その時、栽仁兄さまに介抱されてたのかよ?!」

 激しい口調で迫ってくる弟に、

「あ、あー、うん……」

私は曖昧に頷いた。

「栽仁兄さまのこと、全然話してくれなかったじゃないかよ!どうして黙ってたんだよ、(ふみ)姉上!」

「あー、うん、そのぉ……よく覚えてなくて……ね?」

 輝仁さまは所定の位置から離れ、私に足音高く歩み寄る。そんな弟になんとか返答した私に、

「章子さん、嘘をついたらいけないよ」

栽仁殿下が優しい声で言った。

「初めて気持ちが通じ合った時、章子さんは、コンノート公歓迎の晩餐会の時、僕に助けられたと言ったよ。僕が倒れた章子さんを横抱きで抱えて、客室のベッドまで運んで寝かせた、って……」

「そ、そこまで言ってないわよ!」

 私の顔は一気に赤くなった。「か、抱えてくれたのは、微かに覚えているけれど!その後、客室に運ばれたところまでは覚えてないし!」

「じゃあ、章子さんの目が覚めるまで、僕が客室の外で待っていたのは覚えているの、章子さん?」

「そ、それは流石に覚えているわよ。いい若者に成長したな、って思って、(たね)さんのお嫁さんになる人は幸せだな、って思って……っていうか、こんな時になんてことを言わせるのよ、(たね)さんは!め、滅茶苦茶恥ずかしいわよ!」

 思わず目をつむって叫んでしまった私の頭を、「ごめんね、章子さん。少しからかい過ぎた」と言いながら、栽仁殿下は優しく撫でる。コンノート公のそばにはいつの間にか大山さんが立っていて、私たちの方を見ながら、コンノート公に何か喋っていた。

『栽仁殿下と章子殿下が仲睦まじく、大変結構なことでございます』

 やがて、コンノート公は、私と栽仁殿下をニコニコしながら見つめてこう言った。

『パトリシアも、ミハイル陛下と、このように仲睦まじく暮らしているといいのですが……嫁に行ったら行ったで、便り1つよこしてくれない。少し寂しいですね』

 コンノート公の言った“パトリシア”というのは、彼の次女であるパトリシア・オブ・コンノートさんのことだ。彼女は先月、ロシアの皇帝(カイザー)・ミハイル2世と結婚した。ロシアは、国境を接するドイツの陸軍に対抗するため、皇帝自身の結婚というカードを使い、ドイツを仮想敵国としているイギリスとの結びつきを強めようとしているのだろう。大山さんや幣原(しではら)さんはそう読んでいた。

 すると、

『便りが無いのは良い便り……とも言います』

コンノート公に向き直った栽仁殿下は言った。『次にお手紙が来るときには、お孫さんのお写真が同封されているかもしれません』

『だといいですな。それを信じることにしましょう』

 コンノート公は一瞬寂しげに微笑すると、『さぁ、列車にご案内いたしましょう』と、私たちに呼びかけたのだった。


 それからは、今までに経験したことのないことの連続だった。

 港からリヴァプールの中心駅であるライム・ストリート駅までの道には、儀仗兵や軍楽隊だけではなく、多数のリヴァプール市民が出て、喜びの声を上げながら、私たちの車列に向かって帽子やハンカチーフ、あるいは、日本とイギリスの小さな国旗を振っていた。街の各所にも、日本とイギリスの国旗が掲げられている。ハワイやアメリカでも、市民に歓迎されているのは感じたけれど、イギリスの市民の熱気は、その両国の上を行くものだった。

 沿道からは『章子殿下!章子殿下!』と、私を呼ぶ声が盛んに聞こえる。警備している警察官や歩兵を振り切って、車列に近づこうとする人もいた。そんな人影が視界に入るたび、私の隣に座った栽仁殿下は、私に覆いかぶさるようにして私の身を守った。

「た、栽仁殿下、そこまでしてくれなくてもいいよ……私、一応軍人だし……」

 何度も抱きしめられるような形になり、流石に恥ずかしくなった私は夫に抗議したのだけれど、

「ダメだよ。章子さんは、軍人でも淑女(レディ)でいるべきなんだから。淑女(レディ)を守るのは、夫たる紳士(ジェントルマン)の義務だよ」

栽仁殿下は真剣な表情で私に言う。反論できなくなった私は、公衆の面前で夫に何度も抱きしめられるのに黙って耐えているしかなくなってしまい、馬車から降りた時には、こもった熱で頭がクラクラしてしまっていた。もし、栽仁殿下に、いつもの“おまじない”を掛けてもらっていなかったら、私は馬車の上で失神していただろう。

 ライム・ストリート駅から特別列車に乗り、ロンドンの中心駅・ヴィクトリア駅に到着すると、22歳のエドワード皇太子や首相のハーバート・ヘンリー・アスキスさん、ロンドンの市長や陸海軍の司令官たちが、プラットホームにずらっと並んで私たちを出迎えた。彼らの後ろには、赤い上衣を着て熊の毛皮でできた長い帽子をかぶった――おそらく、“イギリスの兵隊”と言えば、今の時代も私の時代も、日本人が真っ先に思い浮かべるであろうあの姿をした近衛兵たちが整列している。近衛兵たちがキビキビと動く様子を見て、

(本当に私、イギリスに来たんだなぁ……)

そう思った私は、感嘆の吐息を漏らしたのだった。そして、このロンドンでも、市民たちは熱烈に私たちを歓迎してくれて、私は集まった市民たちに会釈をするのに忙しかった。

『遠路はるばるようこそ、輝仁殿下、栽仁殿下、章子殿下。我が王室はあなた方を賓客として心から歓迎します』

 ……午後1時30分。国王陛下のお住まいで、私たちのイギリス滞在中の宿舎ともなったバッキンガム宮殿の謁見の間。エドワード皇太子とコンノート公に付き添われた私たちは、イギリス国王・ジョージ5世とその奥様・メアリー王妃に拝謁していた。51歳の国王陛下は先王・エドワード7世の次男で、兄の病死により、王位を継ぐことになった人である。

『リヴァプールまでコンノート公を、そしてヴィクトリア駅までエドワード皇太子殿下やアスキス首相、その他、名立たる将官たちを迎えに差し向けていただき、心から感謝申し上げます』

 私たち一行を代表して、輝仁さまが英語で国王陛下にお礼を言った。彼も英語はかなり得意なのだ。

『おお、見事な発音だ』

 国王陛下は満足げに頷いた。『貴方の兄君が、かつて我が国に来訪した際におっしゃっていた。自分の弟は、かつて劣等生だったが、死に物狂いで勉強して、英語も上手になり、士官学校でも良い成績を取っている、と』

『ありがとうございます!』

 輝仁さまが勢いよく頭を下げると、

『そして、栽仁殿下は、お父君と同じ海兵に進まれたわけだ』

国王陛下は、今度は栽仁殿下に視線を向けた。『余は海軍にいた頃、貴方のお父君を遠目に見たことがある。ちょうど、我が国の海軍大学校に留学なさっていてね。いい男ぶりだったことを覚えているが、貴方もお父君に負けず劣らず立派な方のようだ』

『過分なお言葉、恐れ入ります』

 私の隣の栽仁殿下は、英語で答えると、国王陛下に最敬礼をした。『僕の力量は、まだ父には遠く及びません。今後も精進し、日本一の海兵大将になりたいと存じます』

『で……貴女が、日本で、いや、世界に並ぶ者のない才女であるという訳だ』

 栽仁殿下の言葉を受けた国王陛下は、いよいよ私をじっと見つめた。

『貴女の兄君は、貴女のことを、口を極めて褒め称えていた。自分が世界で一番誇りにしている妹だ。海外では心配する声もあるが、貴族院の議長という職、妹ならば軽くこなしてしまうだろう、と』

『しょうがない兄ですね』

 私も弟や夫と同じく、英語で国王陛下に言った。『兄が私を買ってくれているのは大変ありがたいのですけれど、私も夫と同じく、修業中の身です。本当に兄が自慢できるような妹になるためには、まだまだ修業が必要です』

『……本当に素晴らしい方々だ』

 私の言葉を噛みしめるように聞いていた国王陛下は、私たちの顔を1人ずつ見つめると言った。

嘉仁(よしひと)皇太子殿下に、輝仁殿下に、章子殿下……。日本の天皇陛下は、優秀なお子たちに恵まれた。きっと、これからの日本は、我が国と同じ立憲君主国として、ますます発展していくのでしょうな』

 国王陛下の言葉に、自然と頭が下がった。お父様(おもうさま)のように、いるだけで周囲のすべてを圧倒してしまうような威圧感を、国王陛下は持っていない。けれど、穏やかな風貌の中に、自然と人をひれ伏させるような何かが存在していた。

 と、

『アメリカでは色々と大変だったようだが、我が国と日本は同盟国の間柄。どうか我が国を第2の故郷と思ってくつろいでいただきたい』

国王陛下はこんなことを言った。

(ん?)

 引っかかるものを感じて、私は国王陛下の言葉を素早く吟味した。私たちのアメリカ訪問は、表面上は何事もなく終わったのだ。ただし、実際には、ウィルソン大統領が私にセクハラしようとしたり、ウィルソン大統領とマーシャル副大統領が私たちの前で醜悪な争いを繰り広げたりと、結構派手な騒動があったのだ。けれど、それらの出来事は、周囲に記者や一般市民がいなかったこともあり、その場にいた全員に緘口令を敷いて隠蔽し、アメリカにたっぷり貸しを作った。

(ウィルソン大統領のセクハラの件を、国王陛下は知っている……MI6の仕業ね。国王陛下、自分たちも日本と同じように、諜報機関を持っているというアピールをしたいのかしら)

 そっと周囲を観察すると、栽仁殿下の顔が少し強張っているのが分かった。輝仁さま、幣原さん、山本大尉などの中央情報院の存在を知っている人も、心なしか緊張しているように見える。そしてそれは、広瀬さん、秋山さん、大山さん……中央情報院に実際に所属している人たちも同様だった。

(MI6の実力、大山さんの想定以上に上がっている、ということね……)

 けれど、それを今、大山さんに確かめるわけにはいかない。それを聞いてしまえば、日本は非公式の諜報機関の存在を、対外的に認めてしまうことになる。それは避けるべきだろう。

(ここは、私が何も気が付かないふりをして、相手をいなす方がいいわね。それで国王陛下の頭を、この話題から離さないと)

 そう考えた私は、

『ええと、アメリカでは、本当に大変なことが色々とあったのですけれど……どのことをおっしゃっておられますか?』

何も気が付かないふりをして、国王陛下にこう返してみた。

 すると、

『いや……』

国王陛下は一瞬口ごもり、

『……日本から太平洋を渡って、アメリカを横断して我が国にやって来れば、長い道中、様々なことがあるだろうと思っただけでね』

と言葉を続けて微笑んだ。

『きっと、様々な発見や驚きがあったのだろう。是非とも、昼食会でお話いただきたいものだ』

 最後に国王陛下はこう言って謁見は終了となり、私たちはその後別室に移って、国王陛下ご夫妻と昼食を共にしたのだった。

「……ねぇ、大山さん。込み入った話をしたいのだけれど、何語で話せばいいかしら?」

 当たり障りのないアメリカでの思い出話に花が咲いた昼食会を終え、宿舎として割り当てられた部屋に入った時、私は大山さんに尋ねた。一瞬考えこんだ大山さんは、『では、ドイツ語で』とドイツ語で答える。その言葉に応じて、

『国王陛下の“アメリカでは色々大変だったようだが”という言葉、MI6の実力を私たちに誇示したと解釈していいのかしら?』

私は大山さんにドイツ語で話しかけた。

『おそらく、そうでしょう』

 大山さんはそう答えると微笑した。『妃殿下は、これ以上国王陛下が(おい)たちのことを追及できないよう、話題を変えようとなさっておいででしたが……』

『そうよ。だって、あなたまで動揺していたのだから、このままだと、院の存在を公言しないといけなくなると思ったの。それだけは避けないといけないと思ったから、私、何も気が付かなかったふりをして、あんなことを言ってみたのだけれど……』

『それはありがたいことでございました。しかし妃殿下、(おい)たちは心の底から動揺していたわけではございません。国王陛下のお言葉に、あえて反応してみせたのでございます』

『あえて反応してみせた……?』

 なんだか、嫌な予感がする。恐る恐る、ドイツ語で尋ねた私に、

『国王陛下にワシントンでの事件を伝えたのは、マーシャル副大統領の秘書官の1人で、MI6の協力者でございます』

大山さんはとても楽しそうな声で説明を始めた。

『しかし、その実、その秘書官は院の協力者でもありまして、イギリスにどのような情報を流したか、院に逐一報告して参ります』

『つ、つまり、その秘書官、2重スパイなの?!』

『そうなります。そして、その秘書官が忠誠を誓っているのは院でございます』

 大山さんはドイツ語で答えると微笑んだ。その顔から僅かに漏れ出る殺気に、私の顔が引きつった。

(つまり、MI6は、院の手のひらの上で踊らされているということなのね……)

「章子さん、どうしたの?さっきから、ドイツ語で喋って……」

 思わず頭を抱えてしまった私に、栽仁殿下が心配そうに声を掛けた。

「ん……私の臣下はとんでもない人間だということを、改めて確認してね……」

 私はため息をつくと、大山さんに向き直り、

『こちらに忠誠を誓っていると思っていた2重スパイが、実は敵方に忠誠を誓っていたり、更に別の国に情報を売り渡していたりするのは、私の前世のスパイアクション映画だとあってもおかしくない筋書きよ。大山さんと金子さんなら大丈夫だとは思うけれど、実は院が敵国に操られていたなんてことが無いようにしてね』

と、ドイツ語で言った。

『そのようなことが無いように、全力で事に当たらせていただきます』

 大山さんは私に最敬礼すると、再びニヤリと笑う。その不敵な笑みを見てしまった私は、

(やっぱりこの人、本当に恐ろしいわねぇ……)

その思いを新たにしたのだった。

※実際にはこの時期、コンノート公はカナダ総督になっているので、イギリス本国にいる可能性は低いです。

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[良い点] 欧州での章子様の評判。 [気になる点] アメリカの諜報体制がOSSが成立するまではガバガバだったから。 [一言] 大山閣下の掌の上で踊らされている。
[良い点] 大山さん根回し速い [一言] まあ、史実でもアカにめちゃくちゃ浸透されてたアメリカだし……
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