表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/50

008 ☆賊に狙われたのは?☆

 ダン!


 この音は、ヌティーナさんがカウンターを叩いた音です。滅茶苦茶ご立腹です!

 私はリーさんの後ろに隠れた。

 別に私に怒っている訳ではなく、宿屋の亭主に怒っている。


 「私はわざわざここに寄って、三部屋予約していったはずだが!」


 「そう、申されましても。ないですという前に出て……」


 「私に盾突く気?」


 「いえ、滅相もございません。申し訳ございません」


 亭主はかわいそうに、深々と頭を下げている。


 一人部屋の部屋が一部屋しか空いてないらしい。

 どうやら予約と言っても、三部屋よろしくと言うだけ言って、直ぐに出て行った。つまり私達の救出に向かった。

 何か申し訳ない。


 「あの……ううう」


 部屋が一つしかないなら三人で使ってもいいと言おうとしたら、リーさんに口を塞がれた!


 「口を挟まない方がいいよ」


 ボソッと耳元でささやかれ、頷くと口から手を離してくれた。ヌティーナさんを見ると、私を凄い目で睨んでる。

 ひ~! リーさんの言う通りみたい。

 私はサッと、リーさんの後ろに隠れた。


 バン!

 勢いよく女将さんが入って来た。


 「あのすぐ傍の宿で、二人部屋が一つ確保できました! どうかこれでお許し下さい!」


 女将さんも深々と頭を下げる。

 よかったこれで何とかなった!


 「そう。わかったわ。では、私がそちらに行きます。案内なさいなさい」


 「え……」


 つい声を出すと、キッとヌティーナさんが睨んで来た。


 「何か問題でもありますか?」


 穏やかに声を掛けてはいるけど、目が怖いです!

 私は首を横にふるふると振るのが精一杯だった。


 「そう」


 「では、こちらです」


 ヌティーナさんが、女将さんに振り向くと二人は出て行った。

 私達は胸を撫で下ろす。


 「怖かった……」


 つい口走る。


 「いやいや、君達も災難だね。本当に一人部屋だけどいいかい?」


 「はい。布団を一組貸して頂ければ構いません」


 「勿論、後で持って行きます」


 そう言って、宿屋の亭主は私達を案内してくれた。

 案内された部屋は一番奥で、ベットが一つ。後は何もない部屋だった。


 「はあ。本当に今日は散々な日だったね」


 「うん……」


 今更だけど、ここに二人っきりで泊まるんだよね?

 チラッとリーさんを盗みみると、平然としている。

 どうしよう……。男の人で父さん以外の人と、同じ部屋で寝た事何てないんだけど!


 「ねえ、いつまでそこに突っ立てるの?」


 私はビクッと肩を震わす。

 ドアの前に立ち尽くす私に、呆れ顔でリーさんは声を掛けてきた。


 「あのね、何もしないから」


 「あ、うん……」


 とんとんとん。

 ドアをノックする音にもまた、ビクッと肩を震わせた。


 「失礼しますよ。ここにお布団置いておきます。ごゆっくり」


 宿屋の亭主は、ニヤリとして布団を置くと部屋を出て行った。


 「君さ。冒険したいんだよね? だったらこういうのも慣れないと。年齢も性別も関係なく、一緒に寝食を共にするんだよ? たまにこうやって二人っきりっていうのもある」


 置いていった布団を敷きつつ、リーさんは私に語った。


 確かにそうだけど……。

 はぁ……。

 ため息をしつつ、ベットに腰を下ろす。

 リーさんは敷いた布団に、背を向けてごろんと横になった。


 「それにしてもヌティーナさん、凄い人だったね……」


 シーンと静まり返り、居たたまれなくなって、そう口にする。


 「王宮にいると君もあぁなるよ。あの中は、力ある者が生き残れる世界。……俺も憧れていた時は、知らなかったけどね。ギルドでマスターの補佐なんてやっていると、王宮の人と接する機会があるんだけど、皆あんな感じ」


 「そうなんだ……」


 リーさんって、マスターの補佐だったんだ。


 「あの人、鑑定師だよ……」


 ぼぞっとリーさんが呟いた。

 うん? あの人?


 「あの人って、ヌティーナさん? え、でも、杖持っていなかった?」


 多分、賊に魔法を使ったんだと思うんだけど……。


 「魔法持ちの鑑定師だよ。しかも予知スキルも持っている。確か、魔力は4」


 「詳しいね……」


 「同じ鑑定師だからね。目指す相手でしょう? 会ったのは初めてだけどね」


 なるほど。そういうもんだよね。普通は同じ職業の有名な人に憧れるよね! 私にはいないけど……。後で探してみようかな。でも王宮にいて、あんな感じだったら嫌だな。


 「ねえ、今日の賊の事なんだけど……」


 ぐるんとリーさんは振り向き、真剣な顔を私に向けた。

 何だろう……。そう言えば、冒険者の馬車だと知って襲ったって言っていたっけ?


 「狙いは君かもしれない」


 「え? 私?」


 確かに売り飛ばす様な事を言ってはいたけど……。


 「普通はギルドの馬車だってわかっていれば襲わないから。勝てる見込みないでしょ? まあ乗っているのが、俺だってわかっていれば別だけどね」


 「別って?」


 「賊って大抵、職業なしのスキル持ちが多いって聞くからさ。俺みたいに職業あっても攻撃系の魔法もスキルもなければ、彼らに勝てない。そう考えると、賊になった連中の気持ちが、わからなくもないけどね」


 そうだったんだ! 職業ないけどスキルを持っている人っているんだ!


 「そういう人は、冒険者になれないの?」


 「なれないね。職業持ちは、鍛錬つまり熟練度が増えれば強くなれる。スキルが増えたり、魔力が上がる事さえある。強くなっていける。って、それだけなのにな……」


 リーさんの言いたい事はわかる。職業を持っていて魔力があっても、職業鑑定をしている。冒険も出来ない。それでも冒険者で、攻撃できるスキルを持っていても、職業がなくては冒険者になれない。けどリーさんのような人達よりは強い。

 そう考えると、魔力も職業も目安にはなるけど、それ以上でも以下でもないかも。


 「なんかかわいそうね。それで盗賊になった人って……」


 「うん。だから今は、職業と魔力しか鑑定していないんだ。スキルとかはしない」


 なるほど。そうすれば、職業ありませんで諦めるもんね。一応考えられてるんだ。


 「話がそれた……」


 「え?」


 「俺が話そうとしていたのは、賊の狙い」


 あぁそう言えば、最初その話で振って来たんだっけ。


 「君が狙われたとしたら、王宮は危ないかもしれない……」


 「え……」


 リーさんは、私をジッと見つめそう言った――。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ