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007 ☆不機嫌な彼☆

 私達は無言で山を下りていた。

 リーさんが言った通り、途中からちゃんとした道に出たけど、それでも険しい道です。獣道に近い……。

 リーさんはサクサク進むけど、私は転びそうになりながら進んでいる感じ。


 ふと見ると、リーさんが歩みを止めて待っていてくれた。


 「ごめん。悪いけどゆっくりもしていられない。あと一時間もしないうちに日が落ちる」


 そう言って、ガシッと私の手を掴み、引っ張っていく。


 「ごめんなさい。山の中歩くの初めてで……」


 リーさんは頷くだけで、黙々と歩く。

 戦闘が出来るかもって事だけど、山の中を歩くのが出来ないと、冒険について行くって言ったって足手まといだよね。

 何となく、自分が甘い考えだったと思い始めた。


 「もう少し頑張って! 俺のスキルで道はわかるけど、暗くなったら歩けないから!」


 「うん……」


 何かリーさんが、怒ってるぽい。

 きっと一人ならとっくに下りているかもしれないからかも。


 「足手まといでごめんなさい……」


 そう言った途端、パッとリーさんが手を離し歩みを止めた。

 え? なんで? 更に怒った?


 「ごめん。俺、嫌な奴だよね?」


 「え?!」


 背を向け俯いたままリーさんは言う。

 一体何がどうなってるの?


 「どちらかというと、それ私じゃないかな。冒険者になって冒険がしたいと思っていながら、森さえまともに歩けなくて……」


 それを聞いてリーさんは、首を横に振り空を仰ぐ。


 「ごめん。八つ当たり。遅くなったのって俺が寝ていたせいだし……」


 「え? それはバットスキル使った結果だよね? でもそれ使わないと逃げられなかったんだし、仕方がないと思います」


 はぁ……。

 リーさんは、今度は大きなため息を漏らす。

 一体リーさんは、どうしてしまったんだろう? さっきから様子が変。


 「あぁ、もう! 自分が嫌になる!」


 「ひゃー!」


 突然、リーさんが叫んだのでびっくりした!


 「俺、君が現れるまで、あのギルドでは一番だったんだ」


 「い、一番って、何が?」


 「魔力が! マスターのアーチさんでさえ魔力5!」


 くるっと私の方を向いて私を見つめ、リーさんは答えた。


 「予知のスキルとか持たない鑑定師なんて、所詮職業鑑定しかする事がない。無駄に鑑定拒否なんて持っていたから期待されたけど、結局は魔力6でも王宮に入れなかった!」


 い、いきなり語り始めたんですけど……。

 そう言えば、マルモンドさんも職業鑑定しかする事ができなかったって嘆いていたっけ。そうだよね。私だってまずは職業鑑定するけど、将来的には冒険に出たいって野望持っていたし、誰だって冒険者になれば夢を抱くよね。


 「君がもっと嫌な奴だったら、俺もまだ救われたのに! なんでそんなにいい子なの!」


 「え!?」


 ちょっといい子って何! 滅茶苦茶お子様扱い!


 「このまま無事に王都に行けば君は、王宮に入れるかもしれない……」


 「え? まあ確かに……」


 ひがんでる? って、ムッとした顔つきになったんですけど。


 「君、本当に素直だね」


 「はぁ……」


 「あぁ、もう! 君は王宮に入らない方がいいよ!」


 「え? 何で?」


 マジでひがんでる?

 でも、そういう感じじゃないような……。


 「いたぞ! まだこんな所に居やがった!」


 ハッとして声の方を振り向くと、襲ってきた賊だった!


 「うそ!」


 「こっち!」


 ガシッとリーさんは、私の手を掴み走り始める。


 「やっぱり! 冒険者の馬車だと知って襲って来たんだ!」


 「女は殺すなよ! 金になる!」


 え~!! 私を売り飛ばす気!? 冗談でしょう!

 まだ冒険者になって何もしてないよ!


 「くそ! どうすれば!」


 このまま捕まれば、リーさんは殺される!?


 「うわぁ!」


 うん? 何?

 後ろからの突然の悲鳴に振り向くと、血だらけになった賊の男がバタンと倒れる所だった!


 「きゃあー」


 私はリーさんに抱き着いた!


 「どういう事?」


 リーさんは辺りを見渡す。


 「あ……」


 リーさんが目を止めた先に、杖を持った白銀の髪が長い女性が居た。サラッサラの髪をなびかせ、彼女はこちらに歩いて来る。


 「大丈夫ですか?」


 白地に緑の縁取りの服を着た女性だった。胸のボリュウムが凄い!

 私は自分の胸に目をやる。膨らみがあまりない……。うん。これからよこれから!


 「王宮の人……」


 「え? 王宮?」


 「うん。あれが王宮の制服」


 チラッとリーさんが着用している制服と比べる。うん。王宮の方がいい!


 「その顔、制服も王宮の方がいいとか思ってる?」


 「………」


 なんでわかったんだろう?


 「あ、鑑定?」


 「あのね。鑑定するまでもなく、顔に出てるって……」


 「思ったより余裕あるわね、二人共」


 「いえ、凄く助かりました。ありがとうございます」


 リーさんは、頭を下げ礼を言った。私も慌てて礼をする。


 「そう。このすぐ下に村があります。今日はそこに泊まり、明日迎えに来た馬車で王都に向かいます。あ、そうそう。私はヌティーナ。では、行きますよ」


 「はい」


 リーさんが返事を返し、ヌティーナさんについて行く。その後ろに私もついて行った。

 なんかちょっと怖そうな人かも。

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