006 ☆デッドスキル☆
「所で何を握りしめてるの?」
リーさんが、私の右手を指差し言った。
私はリーさんが指差す、自分の右手を見た。リーさんを鑑定した葉っぱをギュッと握りしてめいた。
「あ……」
「うん? 何?」
サッと、手を後ろに回す。
「な、何でもないです!」
勝手に鑑定したなんて言えない!
リーさんは、私をジトッと見ている。
あぁ、怪しさ満点の行動を取ってしまった!
あぁ、この文字消えないかな! ばれちゃうよ!
「えい!」
「え?!」
私はリーさんの行動に固まった。抱きしめられたんです!
ひゃー!?
スッと、後ろに回していた手から葉っぱを抜き取られた!
「え……」
顔を真っ赤にしたまま固まっている私の前で、リーさんは葉っぱを自分の目の前に持って行き眺めている。
「これ何? 何の葉っぱ?」
「……さぁ?」
私は顔を真っ赤にしたまま俯き答えた。
「さぁって。これで何をしようと?」
「ご、ごめんなさい。リーさんの鑑定を……」
私は体を折って土下座をして許しを請う。
「いや、そんなに謝らなくてもいいよ。でも、葉っぱって……。考えがユニークだね」
ユニークですかね。何にでも出来るっていう事だからそれも試したかったんだけど……。
体を起こし顔を上げるとリーさんと目が合う。ニコッと微笑まれて、ドキッとする。
何かさっきからドキドキが凄いんですけど!
「うん? これは……」
突然リーさんが私の前に手を伸ばす。
「ひゃー!」
「あ、ごめん。驚かせた? ここにも葉っぱが……え!?」
何故か拾った葉っぱを凝視し、こちらに問う様な視線を送ってきた。
何だろう?
「これって……」
ひらっと葉っぱの反対側を私に見せた。そこには私のステータスが載っていた!
「あ!」
「これ、何? どういう事?」
「いや、これは私のステータスの続きで……。訳したやつに、カード師がカードだと思えば何でもカードとして使えるって書いてあったから……。そしたら浮かび上がってきて……」
「なるほど。何でもカードに代用可能って事か。それでこれが、君のステータスの残りか。全部読み取れるんだ。まあ当たり前か。って、これって君のデッドスキルかな? 加護持ちなんだ……」
リーさんは、頷き葉っぱを見つめる。
加護持ち? そう言えば加護に何か書いてあったっけ? って、ここでもデッドスキル??
「あの、デッドスキルってなんですか?」
私のステータスにそんな文字はなかったけど……。
私の質問にリーさんは、顔を上げる。
「デッドスキルとは、レベル5以上の魔力が持つ者のマイナス的なスキルの事。俺で言えば、自動鑑定。君で言えばきっと、この文字サイズ固定って事」
「文字サイズ固定が、何でマイナスなの?」
「うーん。感覚的にかな? 俺のイメージだけど魔力7もあれば、自由自在にカードに書き込める気がする。まあマイナススキルだって、使い方次第だから何とも言えないけどね」
確かに。さっき自動鑑定使って助かったんだし。
「ねえ、カード師のやつ訳したんだよね? 見せてもらっていい?」
「あ、はい」
私はリュックから紙を出し手渡すと、リーさんは葉っぱを手渡してくれた。いや別に返さなくてもいいんだけどね。って……何も書かさってない!?
リーさんのステータスが消えていた!
「なんで!」
「うん? どうしたの?」
私が叫んだので、リーさんは驚いて私を見た。私は慌てて顔を横に振るも、ジーッとリーさんは私を見つめる。
「どうしたの?」
もう一度聞かれた。
何でもないと言ったところで、叫んだのだから何かあったとバレバレだもんね。
「えっと、消えていた……」
「消えていた?」
私は頷く。
何となく、リーさんと会話がかみ合っていない様な気もしていたけど。見れば鑑定したのがわかるはずなのにと。
「何が消えていたの?」
「えっと。リーさんのステータス……」
「え?! 鑑定していたの?」
私はこくんと頷く。
「だったらイレーズ持ちなのかもね」
「イレーズ?」
「情報をなどを消す能力。……まあ、カード師なら持っていても不思議じゃない能力だけど」
そう言いつつ紙に目を落とす。
紙を見るリーさんの顔が険しくなる。
「君の職業のカード師って、俺の鑑定師より能力上みたいだね」
「上? 職業に上とか下とかあるの?」
リーさんは頷く。
「剣士と魔剣士だったらどっちが上だと思う?」
「ま、魔剣士?」
リーさんは、真顔で頷く。
「カード師って、名前から想像できないような職業なんだね。能力コピーが最初から備わっているみたいだし。俺と違って戦闘が出来る」
まあ確かにスキルをコピーできるみたいだけど、今みたいに攻撃系の人と一緒じゃない場合は使えません。……って、言ったらリーさんを傷つけそうなので言わないでおく。
リーさんにしてみれば、年下の私が魔力も職業も上なんだからそれだけでショックだよね。
ふとリーさんが、空を見上げた。
「あまり遅くなると、山を下りる前に夜になるね」
「うん。あの……道わかるの?」
「大丈夫。わかるから。行こう」
私は頷くとリュックを背負い、リーさんの後を着いて行った。