005 ☆これもカードになりました☆
びゅーっと風を切る音と、水が流れる音が聞こえる。崖の下は川なのかもしれない!
「くっそ!」
後ろからそう聞こえ目を開くと、賊がこっちを崖の上から睨み付けていた! 私達は宙に浮いている! いや、凄い速さで空中を移動中だった!
リーさんは、凄いジャンプをしていた!
ザッ。
無事、向こう側の崖にジャンプする事ができ、リーさんは私を地面に下ろした。
「大丈夫だった?」
私はこくりと頷く。
リーさんは眼鏡を掛け、向こう側の崖に振り向く。
「ふう。何とかなったか。兎に角行こう!」
私達は崖を背に森の中へ入って行く。
暫くすると、リーさんがふらつき始めた。
「あの、大丈夫ですか?」
「大丈夫。デットスキルのせいだから……。でもごめん、あそこで少し休ませて……」
リーさんが指差した先は、少し開けた場所だった。
私が頷くとそこに向かって進み、到着すると草むらにごろんとリーさんは横になった。
「大丈夫ですか?」
「……ごめん。無理っぽい。少し寝るから一時間しらた起こして……」
「え? 一時間? あの私時計持ってない……けど……」
もう寝ている……。
凄く疲れたっぽい。もしかして眼鏡を外して何かスキルを使ったのかもしれない。さっきデッドスキルとか言っていたし……。
さてどうしようかな……。
私はリーさんの横に膝を抱え座り辺りを見渡す。
森にぽっかり空いたスペース的な場所。周りは木ばかりだけど、ここは背が高い草があるだけ。座れば肩ぐらいまで背丈がある。
そうだ! 訳したカード師の内容を読もう!
訳した時は、訳するのに必死で内容なんて読んでない。
リュックの中から紙を出し、それに目を通す――。
カード師とは、カードを扱える職業である。
カードとは、カード師本人がカードと認識すれば、紙でなくともカードとして扱える。木の板や石やなど形や大きさは問わない。
カード師は、鑑定師の様に相手の能力を鑑定し、カードに表示させる事ができ、魔力5以上かスキル持ちならば、ピンポイントで表示させる事も可能である。
相手の能力(魔法やスキル)をカードにコピーし、それを発動させる事も可能で、戦闘では攻撃、回復両方をこなす。
この職業は、データが少なく、最大で魔力5の者までしか確認されていない。
「………」
この職業って戦闘系もいけたの?
魔力が高いと戦闘も出来るって事か。……今更なんですけど。
カードだと認識すればカードになる。つまり葉っぱとかでもカードになるのかな?
私は辺りを見渡すと、手のひらサイズの葉っぱを見つけた。それをブチッと葉っぱだけ手に取った。
よし、これはカード!
そう思うとスッと文字が浮かび上がった!
――――――――――――――――――――
文字サイズ固定
属性:空間
加護:創作
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「何、これ……」
あ! これも私のステータスの続きだ! まだ続きがあったんだ!
まあこれで、書いてあった事ができるってわかったけど……。
私はチラッと、眠るリーさんを見た。
リーさんを鑑定したいんだけどなぁ。いいかな?
私は、ブチブチと葉っぱを摘むと葉っぱを握りしめ、反対側の左手でそっとリーさんに触れた。
寝ているのだから警戒している訳もなく、葉っぱにスッと文字が浮かび上がる。
――――――――――――――――――――
名前:リー
職業:鑑定師
熟練度:164,237
性別:男性
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やったぁ! 成功した!
って4行って、文字小さくならないのかな? あ、縦に書くようにすればよかったのか。
一度書かさった物は、そのままらしくそう思ってもそのままだった。
葉っぱをめくると、下の葉っぱにも文字が浮き上がっていた。
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種族:人間
年齢:21
魔力:6
HP:80/80
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21歳だったんだ。思ったより若かった! でも眼鏡外したらそれなりの年齢に見えるのかな?
私はリーさんの顔を覗き込む。眼鏡の奥は長いまつげ。
可愛い寝顔。眼鏡をとれば、凄くもてそうなのになぁ。
……ちょっとだけ、眼鏡外して見てみたいなぁ。
さっき外していたけど、走っている時は前を向いていたので見えていない。ジャンプしているときは、抱き着いていて顔を見れていない。
そう思うと、見てみたい誘惑にかられる。
そっと眼鏡に手を伸ばす。
ちょっとだけ拝見。
眼鏡を持ち上げた瞬間、ガシッとその手を掴まれた!
「ひゃー! ご、ごめんなさい。変な事しようとしたわけじゃなくて……」
「悪いけど眼鏡は外さないでほしいな」
私が眼鏡から手を離すと、リーさんも私の手を離す。そして眼鏡を掛け直してから、そっと目を開けた。
リーさんが起き上がるも、私は俯いて目を合わせられない。
なんか滅茶苦茶恥ずかしい! 顔が火照っているのがわかる。
「あ、別に怒ってないから。これで制御しているからさ」
「制御?」
フッとリーさんを見ると、目が合う。リーさんは、にっこりほほ笑んだ。
ドキ!
顔が更に火照る。
「俺、自動鑑定保持者で眼鏡で制御していて、眼鏡してないないと発動しちゃうからさ」
「うん? 自動鑑定?」
自動的に鑑定してくれるって事?
「それって便利そうだけど……」
「そうだけど、眼鏡をしてないと鑑定を止められないんだ。鑑定って分析の事だからさ。さっきみたいに俺がジャンプして渡れそうな所を探す時には便利なんだけど、MPはガンガン減るし、頭痛もしてくるから使い勝手が悪いのさ」
「そうなんだ! って、ジャンプ? 鑑定師ってジャンプ出来るの?」
リーさんは、プッと噴出した。
「あ、ごめんごめん。職業とは関係ないスキルなんだけど、持ってるんだよ。だから逃げ足だけは早い的な? さっきみたいに、連動出来るから使い方次第では便利なんだけどね」
リーさんに笑われてしまった。
どうやら職業に関係ないスキルとかも、持っている事があるみたい。