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偽りステータス冒険者は神秘級ステータス  作者: すみ 小桜


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048 ☆カラクリ☆

 エスペンさんとアーチさんは睨みあっている?


 先に目線を外したのは、エスペンさんだった。


 「ある日、寝ていたら声を掛けられた。あなたもう三十代なのねと……」


 そしてボソッとそう言った。


 「バットスキルの影響だろうと、お前の鑑定を俺の独断でやった。それで三十代だったと判明した。一応今まで鑑定していた奴を問い詰めたら、年齢なんて気にしていなかったと言っていた。実際、鑑定結果として年齢を記載する場所はなかったからな」


 そうアーチさんが言うと、エスペンさんは頷いた。


 どうやらエスペンさんの訴えを聞いて、独断でアーチさんは鑑定を行ったみたい。その結果、訴え通り三十代だった。

 それが半年前で、その後エスペンさんのバットスキルを詳しく鑑定した結果、十倍歳をとるバットスキルと判明。外勤から内勤になったみたい。その後、鑑定師としての仕事は回ってこなかった。


 そんな内勤の仕事に嫌気がさした頃、また声が聞こえた。そう計らったのが王子だと彼女は言った。確かめようがないが、マッタリーナ街に来るように言われる。

 その街のギルドマスターがアーチさんだったので、エスペンさんは行ってみる事にして願い出た。

 アーチさんが引き受けた為、エスペンさんは一か月ほど前にこの街に来ていたらしい。


 そして数日前、また彼女の声が聞こえた。

 『鑑定師のリーは、王子が目を掛けている人物。彼は自動鑑定というバットスキルを持っている。魔法陣を使わずに職業鑑定も出来る』

 そう教えてくれたらしい。


 アーチさんから声が掛かり、魔法陣の鑑定に行くように言われ、彼女が言っていたリーと言う少年と一緒にと言われ驚くも確かめるチャンスだと思った。

 確かめる方法も考えていた。

 アーチさんから自分と同じ、鑑定拒否持ちだと聞いていたので、ランダム封印で封印して、鑑定しようと思っていた。

 ところが封印したのがバレ、作戦は失敗した。


 帰り道で、黒いローブを着た魔術師に出会う。驚いた事に彼女の知り合いだという。そしてリーを貶める協力を願い出て来た。内容は聞かなかったが、鍵を渡せばいいと言われ、その様にした。

 部屋の鍵は掛けずに、部屋の脇に置いておくと言われ、朝鍵が掛かってない部屋のドアを開けると、すぐわきに言っていた通り鍵があり拾って立ち上がると、魔法陣がなかった!


 驚くも彼女の仕業だとわかった。

 まさかこんな事をするとは思ってもみなかった。

 だが、それが出来るぐらい凄い人物だと悟った――。



 というのが、エスペンさんのお話。

 アーチさんがエスペンさんから聞きだした。


 部屋に鍵が掛かっていなかったカラクリがわかった!

 けど、どうやって玄関の鍵を開けたかだよね?


 「なるほどな。女は人の体に入り込まなくても、話しかける事が出来るようだな。そうなると……」


 話を聞き終えたアーチさんが、そう言いながらグレイブさんを見た。


 「……いえ、俺は女性の声なんて聞いてません!」


 アーチさんが言いたい事がわかったのか、グレイブさんは首を横に振り否定する。


 「今の話からすれば、相手をそそのかして鍵を奪っている。グレイブさんがそんな手にひっかるとは思えないけど」


 ムッとしてリーさんが、アーチさんにそう言えば、エスペンさんがリーさんを睨む。


 「だよな。ちょっとした確認だ。貸し出している建物の鍵は特殊な作りになっていて、スキル持ちでも開けられない仕組みだ。そして、玄関の鍵は二つ。グレイブが持っている鍵と、ギルドに置いてあるスペアキー」


 アーチさんは説明しながら、右手でチョキを作り指を二本立てる。


 そう言えば、鍵を掛けたはずなのにアーチさん達が部屋で待っていたっけ。じゃ犯人は、ギルドからスペアキーを盗んだって事?


 「スペアキーは事件発覚後、確認するとちゃんとあった。だが、あったのは発覚後だ。つまり使って戻した可能性もある」


 アーチさんはそう続けた。


 「まさかと思うけど、ヌティーナさんをそそのかしたって言いたいのか?」


 リーさんがアーチさんに問うと、アーチさんは頷いた。


 「グレイブよりは、可能性があるだろう?」


 ヌティーナさんは、私達を恨んでいる。仕返しが出来るのなら協力するかもしれない。


 「問題はそうだったとしても、彼女は口を割らないだろうな」


 リーさんがそう言うと、アーチさんは頷く。

 確かに知らぬ存ぜんで通すだろうね。


 でも玄関のドアが開かない限り、中には入れない。もしエスペンさんが言う女の人を捕まえたとしても、どうやって入ったというんだと言われたら困るよね。


 「さて、どうするか」


 さすがのアーチさんも難しい顔つき。

 そして結局、エスペンさん以外帰された。



 △▽△▽△▽△▽△▽ △▽△▽△▽△▽△▽



 私は夜遅くに家についた。


 「あら、今日は戻って来るんだったの? 夜ごはんないわよ」


 「うん。いい。おやすみ」


 母さんにそう言って、私は部屋に入りゴロンと布団の上に横になる。


 「何か疲れた……うん?」


 何か背中がごわごわする。

 ごわごわする物を引っ張ってみると、布だった。


 「あ、これ、鑑定に使った布! あ、この前抱いて寝ちゃったんだっけ……」


 私はそれを徐に広げた。

 大きさは、両手いっぱいに広げたぐらいの大きさ。


 「これに成功して鑑定結果が出れば……うん? え? えぇ!? なんで!!」


 まっさらだった布にびっしりと文字が書かれていた!

 どうなってんのこれ?!


 「うーん。鑑定結果何だろうけど、知らない言葉が……」


 たぶん専門用語なんだろうけど、私にはチンプンカンプン。

 これ明日、持っていったほうがいいよね? あ、それとも今日?


 「あ、そうだ。これ、アーチさんには見せちゃだめだよね? リーさんに教えないと!!」


 私は、明日迎えに来るリーさんに見せる事にした。


 次の日私は、珍しく早起きをした。正確にはほとんど眠れなくて起きていた。

 リーさんが来る前に支度を整え朝ごはんを食べた。その私の行動に、両親は驚いている。


 「随分と気合が入っているな」


 父さんがそう言った。

 そっか、そういう風に映っているんだ。


 トントントンとノックされ、リーさんが予定通り尋ねて来た。


 「おはようございます」


 「リーさん、お話が!」


 リーさんだけじゃない、凄い視線を感じ振り向くと、両親がジッと私達を見ていた!


 「何? 話って?」


 リーさんも驚いていた。きっと、リーさんの場合は、私が準備を整え待っていた事に驚いているんだと思うけど……。


 私はリーさんの手を取ると、こっちと部屋に引っ張っていく。


 「え? ちょっと……」


 「ファイト!」


 何故か小さく応援する母さんの声が聞こえた。


 「何かあったの?」


 部屋に入ってすぐ問うリーさんに頷いて私は、布を手渡した。


 「これって……え? これ、どうしたの?」


 リーさんは驚いて、布から私に目線を移す。


 「よくわかんないけど、いつの間にか書かさっていたみたいなの。昨日の夜発見して……」


 「そっか。これに書き込むMPが足りなかったから、その場では書き込まれなかったって事か……」


 そう呟くとリーさんは、ジッと食い入るように布に書かれた文字を見ていた。

 あの文章をリーさんは、読んでわかるのかな?

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