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偽りステータス冒険者は神秘級ステータス  作者: すみ 小桜


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045 ☆本物の魔導士フェイ☆

 「ここに描かれていた魔法陣が一夜にして消えたと……」


 フェイさんが部屋を覗き込みそう言った。

 彼はブラックバードのリーダーだった!


 部屋の中に入り屈むと、床に触れた。


 「で、状況確認をしたいのだが、順を追って話して頂いてもいいかい?」


 すくっと立ちながら、私達にそう言った。


 「俺が事務所に着くとまだ誰も来ていなくて、五分ぐらいしたらグレイブさんが来て一緒に中に入った」


 「事務所のドアにはちゃんと鍵は掛かっていたよ」


 エスペンさんが最初に着いて、その後すぐに来たグレイブさんが事務所のカギを開けたのね。

 まあグレイブさんがカギを持っているのだし入れないよね。


 「開けたら魔法陣がなかった……」


 エスペンさんが俯いてそう説明する。


 「あのさ、部屋のドア鍵掛かっていた? 鍵を開ける音がしなかったような気がするんだけど……」


 「え? ちょっと待って! それって昨日帰る時、鍵を掛け忘れたって事?」


 「違う! ちゃんとかけた! グレイブさんも見ていた!」


 驚いてリーさんが問うと、慌ててエスペンさんが弁解する。

 皆、グレイブさんに注目すると、グレイブさんは困り顔になった。


 「確かに鍵を掛けた音は聞こえたけど……。見ていたわけじゃない」


 「何だよそれ!」


 グレイブさんにエスペンさんは睨み付けながら抗議する。


 「まあ、落ち着いてエスペンさん。どちらにしても事務所のドアにはカギが掛かっていたのだから」


 エスペンさんをなだめつつ、フェイさんは部屋から出て来て、私達の前に立った。


 やっぱりどこかで見てるよね。フェイさん。

 顔じゃなくて服装。

 フェイさんのローブは、ストンと肩からくるぶしまである普通のローブなんだけど、光沢があると言うか、ローブに模様が描かれていて、光に反射して模様が浮き出て見える。


 こういうのは珍しい。

 始めて見たはずなのに、この模様を見た記憶があるんだよね。どこでだろう?


 「一つお聞きしたいのですが、エスペンさんてブラックバードの一員ではないですよね? アーチさんからは、魔導士で俺の傷を癒した人って伺ったのですが」


 そうリーさんがフェイさんに尋ねた。


 「またあの人は……。初めてお会いする方です」


 え? エスペンさんってブラックバードの人ですらなかったんだ!

 まあ知り合いって雰囲気じゃなかったけど。


 「やっぱりね」


 リーさんは、エスペンさんを睨み付けた。


 「俺はブラックバードの一員だとは、一言も言ってないだろう?」


 「俺の回復もしてないよな?」


 って、また二人は睨みあってる。


 鑑定が出来ると者だと思わせる為に、回復した人って言ったって事だよね。

 うん? リーさんを回復……


 「あー!!」


 「何? いきなり」


 つい私は叫んでしまい、皆の注目を集めた。


 「え、いや別に……」


 「別にじゃないだろう? 何に気が付いたんだ?」


 リーさんは鋭い。


 「たいした事じゃないんだけど、フェイさんがリーさんを回復した人かなって……。この変わったローブをどかで見たなと思ったら、あの賊のアジトでだったの!」


 気を失う前に私の前を横切って行った人が、このローブの人だった。だから多分、リーさんを回復した人。

 フェイさんは、腰にロッドも下げてるし。確かこれも同じだった気がする。


 「え? フェイさんが俺を?」


 「まあな。俺は回復と攻撃両方を持っている。いやぁ、元気になってよかった」


 「言ってくれれば……。ありがとうございました」


 ボソッと呟いた後、リーさんはフェイさんに頭を下げた。

 うーん。エスペンさんの時とは大違い。

 それはエスペンさんも感じたらしく、ふんと鼻を鳴らした。


 「話がそれたな。で、昨日は何時頃帰ったかな?」


 「リーが帰った一時間後ぐらいだから四時ぐらいか?」


 フェイさんの質問に、エスペンさんに確認するようにグレイブさんが答える。それにエスペンさんは頷いた。


 「なるほど。人目につくつかないは別として、ここに入る時間は結構あったって事だな」


 フェイさんがそう言った。


 「あんたが自動鑑定を行っていれば、消えたとしても情報は手に入っていたのにな!」


 「何それ? そんなの結果論だろう? 俺だって消されるとわかってればやっていたさ!」


 またエスペンさんがりーさんを挑発する様な事を言い、二人は睨みあう。って、これじゃ聞き取りが進まないんですけど!


 「もうそろそろ、やめろよ?」


 ぞくっとする様な低い声でフェイさんが言うと、しーんと静まり返った。


 「で、グレイブ。事務所の施錠は確実か?」


 「え? あ、はい。掛けた後、ドア閉まっているか確認したので、鍵を掛けたのは確実です」


 「なるほど。では犯人は、わざわざ事務所のドアの鍵は掛けて帰り、部屋のドアは掛けずに帰ったという事か。なんでまたそんな事を?」


 グレイブさんの答えを聞いたフェイさんは首を傾げる。


 確かに。どうしてそうしたんだろう? 部屋の鍵を掛けなかった理由って何だろう? それにどうやって、事務所に忍び込んだんだろう?


 「少なくともこの部屋は見張られていたって事だろうな。しかしタイミングがなぁ。何故昨夜なのか……」


 「それは犯人に聞いたらわかるんじゃないですか?」


 フェイさんの言葉に、リーさんを見ながらそうエスペンさんは返した。何でこうこの人は、リーさんを敵対視してるんだろう?

 って、昨日の喧嘩の原因って何?


 「事務所の鍵がかかったままだったから、窓から侵入したんじゃないですか? だから部屋の鍵が掛かっていなかった」


 「なるほど」


 ムッとしながらもリーさんが可能性を述べると、頷きながらフェイさんは窓に向かった。

 フェイさんが、窓を確かめると鍵が掛かっていた。


 「うーん。鍵が掛かっているな。ここは俺が来る前に誰か確かめたか?」


 「いえ、誰も……」


 フェイさんの質問にグレイブさんが答える。


 「そうか。君達は魔法陣の消し方を知っているか?」


 「え? 俺は知りませんけど……」


 フェイさんの唐突の質問にグレイブさんが最初に答えた。私も知らないので、首を横に振った。


 「描くのと同じようにMPを消費して、なぞって消すでしたよね?」


 「スキルでも消せる。そっちの方が簡単だ。イレーズとかな」


 リーさんが模範的な回答をすると、ジッとリーさんを見つめエスペンさんが答えた。リーさんは、ムッとはするも何も返さなかった。


 エスペンさんって、もしかして敵視しているんじゃなくて、本当にリーさんがしたと思っているんじゃないでしょうね?


 まずあり得ないと思うんだけど。だってイレーズ持ってるの私だし。


 「そうだな。もう一つ簡単な方法がある。描いた本人が消去する方法だ。これは原理から言えば、MP回収を行う事で魔法陣を消滅させられる。つまり証拠を残す事もない。エスペンさん。あなたから見て魔法陣を描くとしたら、どれくらいかかるモノでしたか?」


 フェイさんは、エスペンさんに聞いた。多分、リーさんが魔法陣に疎い事を知っているのかもしれない。私もついこないだ知ったけど。


 「……複数で描けば一日あれば、一人だと三日は掛かると思いますけど。描いた者は、魔法陣を描くのに慣れていると思います。そう感じました」


 「え? ちょっと待って。賊に魔法陣を描くのに手慣れた者が本当にいるって事? 職業を持たない者がそれ出来るのか?」


 エスペンさんの答えに、驚いてリーさんが言うと、エスペンさんはムッとした顔つきになる。


 「俺は聞かれた事を言ったまでだ!」


 「参ったな。リーが言う様に賊の者だとすると厄介だ。そんな人物が賊に複数いる訳もない。だとしたら一人で行った事になる。描くのも消したのも……」


 フェイさんの言葉に全員、部屋に目をやった。


 一人で凄い魔法陣を描ける程の人物が賊にいる。そして隙を見てその魔法陣を自分で消したって事? 凄すぎない?


 「ムイ達の様に賊と繋がっている冒険者がいるって事だろうな」


 「でも……そこまで出来る人物が何故、賊と関係を?」


 フェイさんの言葉に、グレイブさんがそう問う。


 「さあな。そうとでも考えないとこの現状は、あり得ないからな。後は、強制的に従えさせられている可能性もあるが。だとすれば、何かワザと証拠を残しているかもしれないな。エスペン、リー。そういう訳で、仲良く三人で部屋の鑑定をする! いいな」


 ジロリとフェイさんは二人を見た。二人共大人しく頷いた。

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