003 ☆魔力7のステータスは……☆
私は次の日、マッターリ街の冒険者ギルドを訪れた。ここが昨日職業鑑定をしたギルド。
冒険者ギルドは、大抵の街にあり近くの地域一帯が管轄で、ギルドに登録されている組織カムラッドに依頼したり、個人で受けられる場合は張り出したりして、冒険者に仕事を提供する場でもある。
カムラッドとは、冒険者が所属する会社みたいなもので、一緒に冒険に出たり仕事をしたりする組織の事。
そして冒険者ギルド職員もまた冒険者で構成されていて、冒険に出るのが難しい職業の人達が内勤をしている。そうこれから私もする事になるかもしれない職業鑑定の仕事がそれにあたる。
はぁ。
マルモンドさんは、自分に合わなかったら無理して冒険者を続けなくてもいいって言っていたけど、そうなると私の場合は農夫にならなくちゃいけないからなぁ……。
それは嫌!
だから暫くは我慢! 何か出来る事が他に見つかるかもしれないし!
「よし!」
私はギルドに足を踏み入れた。
中は昨日も思ったけど綺麗だった。掃除も内勤の人の仕事らしく、制服を着た冒険者がせっせと掃除をしている。
どうせやるなら職業鑑定ね。うん。
「すみません。マスターのアーチさんいますか?」
「マスターですか? 少々お待ち下さい」
受付のお姉さんに話しかけるとお姉さんは、机の上にある赤い石の様なモノに触れた。
「マスター、お客さんです」
呼びに行かなくともこれで聞こえるらしい。魔法なのかな?
少しすると奥の扉から出て来て、私の顔を見ると、あっという様な顔をした。
「ちょうどよかった」
「はい?」
「話がある」
どうやら向こうも私に用事があったみたい。取りあえず、アーチさんの後をついていって扉の奥に入る。ここは通路で一番奥は、昨日職業鑑定をした鑑定の間がある。通されたのは、その手前の部屋。
ここってギルドマスターの部屋じゃ……。一体何の話だろう。
どうぞと通され入ると、リーさんがいた。私を見るとお辞儀をしたので、私もお辞儀をして返す。
昨日は緊張してよくリーさんの顔を見ていなかったけど、可愛い顔をしている。カッコいいより可愛い系。本人に言ったら怒りそうだから言わないけどね。
アーチさんに促され、リーさんが座るソファーの向かい側に座ると、アーチさんはリーさんの隣に座った。
「話なんだが、魔力が7だったような気がするとリーから聞いてな」
「あぁ、はい。そうです」
私は力強く頷いて答えた。
「そうですってそんなあっさり……」
リーさんは、少し引きつった顔でそう返して来た。
「うん? 待てよ、何でわかっているんだ?」
「昨日マルモンドさんを訪ねた時に、やり方を教えてもらって試したんです」
取りあえずそのカードを見せて、職業鑑定の職でも付かせてもらおうとポケットに入れてあったんだった!
私はポケットからカード出した。
持って来たのは、自分のステータスの一枚だけ。それをアーチさんに手渡す。
「本当に7だ……」
信じられないという風にアーチさんは呟いた。
マルモンドさんが言っていた通り、魔力7は凄いらしい。
「これ必要なかったですね」
ポケットから小さな紙をリーさんは出した。横五センチ縦十センチほどの紙。
「いや、やり方がわかっているなら試して貰おう」
アーチさんが、リーさんがテーブルに置いた紙を見て言った。
一体何をさせる気なんだろう?
「その紙ってなんですか?」
「あぁ一応、カードなんだ。マルモンドさんの前の人が置いて行ったらしい。かなり古いから、使えるかどうかわからないけどね」
私の質問にリーさんが、苦笑いで答える。
これ、カードなんだ。すっごいペラペラで向こう側が透けて見えそう。
「やってもらってもいいか?」
「あ、はい」
アーチさんに言われ紙……じゃなくてカードを手に取り掲げた。
これカードって言えるのかな?
透け具合を見ようとすると驚く事に文字が、いや点? みたいのが浮かび上がった!
「え? 何これ?」
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あ! 私のステータスの続きだきっと! でも何でこんなふうに?
「もしかして文字化け?」
私が呟くと、二人が覗き込む。
「もうやったのか? でもこれじゃ全然だめだな。どっちを鑑定したんだ?」
アーチさんの質問に、私は首を横に振る。
「違います! これ私のステータスの続きです! 昨日マルモンドさんにやり方教えてもらって、カードがなくなったので……。だからカードに触れたから続きが表示されたんだと思います」
「これは君のデータって事か?」
アーチさんに言われ私は頷いた。
「やっぱり紙が古すぎてダメか……」
リーさんがボソッと呟いた。
「でもまあ、魔力7って事はわかったんだ。悪いがリー、彼女を王都まで頼むな」
「はい。わかりました」
え? 王都? 私、王都に連れて行ってもらえるの?
「あの、王都って……」
「魔力が5以上の者は、王都の冒険者ギルドの本部に行って、研修を受ける事になっているんだ。滅多にいないんだが、まさかこの地域で出るなんて驚きだ。俺が行けないので、リーにお願いする事にした」
「大丈夫です。経費は全てギルド持ちなので、心配はいりません」
アーチさんの言葉に、リーさんが付け加える。
どうやらお約束事らしい。
ただで王都に行けるんだし、断る理由なんてないけどね!
「はい!」
私は元気に返事を返した。
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「ただいま! 聞いて王都だって!」
私は早く伝えたくて、ドアを開けながら父さんと母さんに伝える。
「おかえりなさい」
母さんは、食事の用意をしながら挨拶を返す。
「お帰り。王都がどうしたって?」
父さんは仕事が終わったらしく、湯を浴びた頭をガシガシと拭きながら椅子に座る。
「明日、王都に行きます!」
「王都ですって!?」
「何~!」
さっきの反応とは違って、二人は凄く驚いて見せた。
何せ二人だって、王都になんて行った事がない。そう聞いた事がある。
「どういう事だ?」
「魔力が凄いらしい。そういう人は王都で修行? いや、研修? 兎に角、そう言うのをするらしいの」
「もしかして王都で働けるの?」
母さんは、目を輝かせて言った。
「いや、そういう事ではないとは思うけど……」
「戻ってきたらお祝いね!」
母さんはとても嬉しそうに言って、私に抱き着いた。
もう気が早いんだから!
そう思いつつも、実は私も期待したりして。
王都で働ければ、冒険に出なくても別にいいかなって思っていたりもする。
あぁ! 明日が待ち遠しい!